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マスP文庫

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カテゴリ未分類

2021.11.18
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カテゴリ:カテゴリ未分類
辺りは暗く時折通り過ぎるライトの光と足音以外は虫の声とそばを過ぎ去る車の音だけになった深夜の公園で何かが木のほこらで蠢いていた。
その何かはほこらに引っかかる体をむずむずと引き抜くように這い出すと根元にドスンと落ちた。
耳を澄ますと今は静かだった。
彼は巨体をゆすって生垣の隙間をすり抜け遊歩道を横切り、草むらに身を隠しながら超美人の妻と3人の息子とひとり娘が待つ我が家に足を急がせた。
しかし、その巨体はどうしようもなく走っているというより転がっていると言った方が良いくらいだった。
必死に走る彼は向こうに見え始めた我が家の明かりに希望が湧いてついつい我を忘れてしまった。
もうここまでくれば追手も来ないだろうと最後の原っぱを横切り始めた時、急に目の前が明るくなり、その明かりの中心に巨大な影が映っていた。
「おーい!いたぞ!未確認生物だ!」
後ろからけたたましい声が聞こえたくさんの足音が地響きを立てながら近づいてきた。
彼は彼の持てるだけの力を振り絞って家に向かって走り始めた。
ムギュムギュ、ボアボア
体の隅々の贅肉がこすれ合い、波打ちあって奇妙な音を立てた。
あともう少し、あと一歩・・・・
と思ったその時、急に顔に何かが覆いかぶさって来て前のめりになり、自ら捕獲網に絡め取られるように網の中に転がり込んでしまった。
足を蹴り、羽をばたつかせ、首をねじり、声を限りに叫んだがすべては無駄だった。
やがていくつもの手が彼を取り押さえ、もう目を剥いて自分を照らすライトに瞬きするくらいしかできなくなった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
NHK19時のニュース
「昨晩発見された未確認生物が今日16時から世界各国から集まった学者の立会いのもと解剖されました。ではこの生物の解剖を担当した東京大学の大場かな子教授の記者会見の模様です。」
-----
会見の映像が流れ始め、進行役が彼女を紹介した。
「では東京大学農学部教授、オオバカナ、コさんより解剖の結果を発表していただきます。」
進行役は彼女の名前の『かな子』を『かな』と間違えて言ってしまい慌てて『子』をつけて呼んだのだ。しかし逆にこれが悪く、彼女の鋭い非難の視線に動揺してたじろいだ。
そしてようやく会見の映像は終わった。
-----
「全世界を興奮と好奇心の渦に巻き込んだこの生物は、実は単なる太り過ぎのハトだと分かり担当者は一様に落胆の色を隠せない様子で、あっけない結果に終わり一時は大騒ぎしたメディアも一斉に撤収を開始しました。」
NHKのアナウンサーは淡々とニュース原稿を読み上げ、最後に言った。
「次は明日のお天気です。」






最終更新日  2021.11.18 00:00:20
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2021.11.14
カテゴリ:カテゴリ未分類

真っ白に輝く超ミニワームホールの出口を抜けたトットさんたちはしばらく目がくらんで何も見る事が出来なかった。

東京のど真ん中で見つかった未確認生物の一体を解剖して詳細な調査をしようと白羽の矢が当たったトットさんは追っ手を逃れツノムクドリのビッキー・ポーに案内されワームホールを抜けて時空のねじれの隙間にできた町カナイドに向かう途中、見かけぬ黄色いデブリンバトと遭遇し、そのデブリバトがやって来たビリノン星に身を隠すことになり、ここまでやって来たのだ。

付き添って来たトットさんの相棒のジョンピーも何か聞き覚えのある星の名前だとは思いながらも一行についてやって来た。
つのムクドリのビッキーはこのことを伝えに一人カナイドへ帰って行った。

先頭を行く黄色いデブリンバトは何事もなかったようにワームホールの出口を出ると、何事もなかった様に仲間の中に吸い込まれて行った。

ようやく目が慣れて来た一行は次第に目の前に広がる景色に驚きの声を上げた。

なんと見渡す限りデブリンバトがいて、ふざけ合い、じゃれ合い、歓声を上げては転がりまわっていたのだ。

「なんだこれは。デブリンバトだらけじゃないか?カナイドだってこんなにはいないぞ。」

カナイドに住むツノムクドリのビッキーは感嘆の声を上げた。

「トットさんがいっぱい!!」

一緒についてきたカナイドのデブリンバトは嬉しそうに飛び跳ねながら叫んだ。彼らは大昔に超ミニワームホールを通ってカナイドに来て住み着いたため、自分たちの故郷を見るのは初めてだった。

「どこが俺なんだ?おれはドバトのトットさんだ!」

トットさんはもうどっちでも構わない事をがなり立てて大声でどなった。

すると周りにいたデブリンバトはこのトットさんの怒鳴り声が面白いと集まり始め周りを囲み、ついには重なり合い、最後には山の様になってしまった。

「トット、トット、おっとっと~!」

こう言ってデブリバト達はもうなぜここに来たのかも忘れてまたはしゃぎ始め、その山は次第に大きく高くなっていた。

とその時、上の方から何か振動が伝わって来て徐々にデブリンバトが散らばり始め再び青い空が見え始めた。

 

トットさんもジョンピーもホッとため息をついたその時、何かがトットさんに飛びついて来た。

トットさんはそれが犬だと分かり大声で怒鳴った。

「何すんだ、このバカ犬め!!」

犬はトットさんの剣幕に驚いで転げる様に引き返して振り向いて思わぬ事を口走った。

「あれっ?おやつ?あなたもしかして、もしかしてトットさん?」

その時トットさんの後ろからも声が上がった。

「思い出した!そうだ、グーとタラさんとカナイドで会った時に出身星はビリノン星だって言ってたんだ。」

そう叫んだのはジョンピーだった。

「なに、なんだと。ここはあの宇宙人たちの星か?そう言えば何で奴らの星に住むデブリンバトがこんな所にいるんだ?とか言っていたなあ。」

トットさんもようやく思い出して言った。

そんなやり取りをしていると地球犬ジャスティンの後ろから見慣れた顔が次々とやって来た。

グーとタラ。オノ星人のジョンジさん、カシゴマ星人のコナさん、チグマヤ星人のピーマスさん達だ。

「おやおやそう言う事だったのか?デブリンバトたちは超ミニワームホールを抜けてカナイドに行っていたのか?」

タラは言った。

「それにしてもこんな所に超ミニワームホールの入り口があるとは大発見だ。」

グーも同意した。

そして、

「へえ、そんな事があったのか?まあトットさんならデブリンバトと間違えられても仕方がないけど・・・・」

「何を~!?」

ピーマスさんの一言に怒鳴り返そうとしたトットさんはジョンピーに押しとどめられた。

「トットさんここに住むのかい?だったら仲間がいていいじゃないか?」

「言わせておけば~!?」

今度はタラの言葉に切れまくるトットさんをビッキーがなだめた。

「でも地球が故郷なんだから出身星がどこでも帰りたいんじゃないかな?」

コナさんまでこんな発言をする始末で、もうジョンピーとビッキーでトットさんを抑えるのでやっとだった。

「そうだ良い事がある。トットさんを解剖してもらおう。」

グーの言葉にトットさんの目の前は真っ白になり、後ろにひっくり返ってしまった。







最終更新日  2021.11.14 00:00:20
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2021.03.28
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以前、一反木綿の記事で登場したろくろ首。あの時はちょっと汚らしいと無下にお断りしてしまった。

しかし、彼女にも言い分はあるだろうし、決して悪い娘でもないので、からかさ小僧並みに、どこか就職口を世話してやらねばなるまい。

子泣き爺なんか、あれから、各国の軍関係者から問い合わせがあったとかなかったとか.....

 

ろくろ首なら、そうだなぁ? .....うん!そうだ!!

 

ベビーシッターなんてどうだろう。彼女の長~~~~~い首を利用して床に長~~~~~く伸ばしてもらうのだ。

 

その首を枕に赤ん坊を寝かせて(多分いっぺんに5、6人は軽いだろう)彼女の美声で、子守唄を歌ってもらうのだ。歌は長~~~~~い首を通り、全ての赤ん坊に均等に届く。出来のよいBGM付き睡眠枕だ。

 

しかも、彼女首を伸ばして行灯の油をなめるという癖がある。これで眠り込んでいる赤ん坊のヨダレや鼻風船をきれいに舐め取ってもらうのだ。

 

彼女こそ、ベビーシッターをやるためにこの世に生まれ出た妖怪なのかも知れない。







最終更新日  2021.03.28 00:00:19
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2020.02.13
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親兵衛は香しい香りの花園で目覚めた。

夢の中で響いていた心が洗われるような軽やかな音は、木陰でさえずる小鳥たちの声だと気づいた。

身を起こすとまだ初春というのに穏やかで温かい日差しがさわやかな風と共に体に心地よい。

親兵衛は初めて目にする景色と、先ほどまで祖母の妙真に抱かれていた感触に戸惑いながら、澄み切った青空を見上げた。

「親兵衛?」

不意に呼ばれた自分の名前に驚き、辺りをきょろきょみ回しさっと立ち上がった。

「誰?」

親兵衛はその声に向かって叫んだ。

「こっちです。」

親兵衛が声のする方に振り向くと、白いもやのような光の中に一人の女性の姿が浮かび上がった。

彼はその女性の乗っているものに目を向け一歩退いた。

それは犬だった、が、それにしてはあまりにも巨大で、圧倒する姿だった。

「恐れることはありません。この犬の名は八房。」

彼女の言葉に親兵衛は気を取り直し、今度は一歩踏み出した。

「お姉ちゃんは、誰?」

親兵衛の言葉に女性は穏やかな微笑みを返したが何も答えなかった。

「お姉ちゃん、ここはどこ?おばば様は?丶大様は?」

女性は相変わらず微笑んでいたがようやく口を開いた。

「心配はありません。彼らは無事です。ここは、あなたがしばらくの間暮らす私の家です。寂しくはありません、後ろをごらんなさい。」

彼女の言葉に親兵衛が振り向くと、一匹の茶色い犬が座っていた。

大きさは四歳の親兵衛より少し低いくらいの高さだった。

犬は立ち上がり親兵衛に歩み寄り、ぺろりと頬を舐めた。

「きゃはははは。」

親兵衛は初めて声を立てて笑い、犬の首を抱きしめた。

「その犬の名前は比瑪(ひめ)。これからあなたと暮らし、あなたを導きます。あなたはこれから旅に出なければなりません。苦難の旅です。でも比瑪を信じて進むのです。そうすればいつか虹色に彩られた光が現れ、その光はあなたが進むべき新たな道を照らすでしょう。」

親兵衛が女性に振り向くと、そこは真っ暗な闇で一縷の光も見えなかった。

四歳の子供でなくともそれはとても怖いことだろう。

どんなに目を見開いても、もう何も見えない。ただ果てしない闇が広がるだけだった。

親兵衛は突然突き落とされた不安の中で、比瑪の方へと振り向いてぎょっとした。

闇の中に二つの光る物が浮かんでいたからだ。

彼はたじろいだ。

だが次の瞬間、二つの光る物から生暖かい息が吹きかけられ、鼻先にじっとりと濡れた物が触れた。

比瑪が親兵衛の鼻の頭を舐めたのだ。

親兵衛は比瑪の首にか細い腕を回してつぶやいた。

「僕、これからどうしたらいいの?」

すると比瑪はこう言って身を翻した。

「こっちにいらっしゃい。」

 

親兵衛は比瑪の背中に手を置いて彼女に従い歩き始めた。

そして、その先に淡い光が見え始めた。

さらに歩を進めると、彼は洞穴から抜け出した。

そこには満天の星空が広がり、足元に広がる地平線の彼方に三日月がぽっかりと優雅に浮かんでいた。

 

「坊や、すまんがわしの頼みを聞いてくれぬか?」

突然傍らから声を掛けられた親兵衛は一瞬体をすくませたが、声の主に顔を向けた。

そこには、小さな老人が立っていた。

髪は真っ白で、これまた真っ白な長く伸びた眉毛が目を覆い被そうとしていた。

白い衣を着て、白い杖をついていた。

口元にも白く長い髭を蓄えており、胸まで届きそうだった。

「おじいさん、どうなされました?」

親兵衛が訊くと老人はこのようなことを言った。

「わしの可愛いがっている猫の鞠がいなくなってしまったのだ、探してはくれぬか?」

「どっちの方角へ?」

「それは坊やが首に下げている珠に訊いてみればわかる。」

老人の声に首にぶら下げた球を袋から取り出し、そこに浮かぶ『仁』という文字をしばし見つめた親兵衛が顔を上げると、そこに老人の姿はなかった。







最終更新日  2020.02.13 11:47:05
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2019.11.11
カテゴリ:カテゴリ未分類

モハメドアリたちが倉庫にたどり着くと、アリマッグローも既に着いていた。

アリストテレスの科学知識で、倉庫の壁にあるセキュリティボックスは無効化され、扉は手動で開けられるようになっていた。

ここの扉は外に通ずるため、特に厳重なセキュリティが掛けられており、その機能を停止させられる者はそう簡単にはいない。

アリストテレスはそのため精力を使い果たし、最後にはへとへとになり壁に寄りかかっていた。

「よしみんなご苦労。さあここから脱出するぞ。」

リーダーのアリギリスは大きな声で叫ぶと、外に通ずる扉を勢いよく明けた。

 

そして、全員息を呑んだ。

 

倉庫の外では、生気を失った眼差しのアリたちが、無表情で地上から持ち帰った獲物を、重たい足取りで引きずっていた。

 

「アリって、みんなこういやいや働いているのか?」

事情を知らないトットさんは、アリランに尋ねた。

 

アリランは首を激しく横に振り訴えた。

「どこの世界のアリたちも、同じく地上から獲物を巣穴に持ち込んでせっせと倉庫に運び込むけど、そこのアリたちは生気に満ち活気に溢れているの。だって彼らは自らの意志で、自らのために食糧を得ているんですもの。でも、ここは違う。ここアリアケ・コスモポリタンは。限りなく生産性が求められ、一部の特権階級のアリたちの莫大な利益のために住民たちはマインドコントロールされ、奴隷と化して働かされているの。」

 

一歩、一歩、一歩と・・・・

アリアケ・コスモポリタン特殊部隊アリゲータのメンバーは倉庫から、無表情で行進する働きアリの行列の中に歩み出た。

行列は暗い闇の通路を延々と続いていた。

 

トットさんたちは地上を目指して出口へと昇り始めた。

やがてアリギリスが仕掛けたウィルスがマインドコントールシステムを蝕み始めるだろう。ウィルスは2ビットを破壊し、2ビットは4ビットを、4ビットは16ビットを。

やがてシステムは内部から一挙に崩壊し、最後には機能を停止するだろう。

そしてマインドコントロールが解けた民衆に革命を呼びかけるのだ。

自らの自由のために。

 

モハメドアリを先頭に一行は地上へ向かったが、思わぬ障害が現れた。

どうやら出口らしいのだが、扉を開ける開閉装置が見当たらないのだ。

辺りの壁を探ったがどこにも見つからない。

一同は途方に暮れた。

ここまで順調に脱出してきたのに、最後の最後に思わぬ難関に出くわしてしまった。

 

ところがトットさん、何を思ったか出口に向かって歩き始めた。

そして彼が扉に手をかけ軽く押すと、簡単に開いてしまった。

「おお、なんと!そうか、そうやって開けるのか?」

アリストテレスは驚きの声を上げた。

「まったく、なんでも機械仕掛けで考える奴らには困ったものだ。」

レガシーな感覚を発揮して難関を、これを難関と言えばであるが、突破することが出来たことに気を良くし、これまで大して役に立てなかったトットさんは得意げに言った。

弾薬が切れて途方に暮れる兵士は、石をぶつけて相手を倒す術を知らないものだ。







最終更新日  2019.11.11 14:57:23
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2019.10.24
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第3料理長はたった今、厨房にある皿の山を倒して床を破片の絨毯に変えてしまったアリランにゆっくり近づき覗き込みながら言った。

「お前の顔は見覚えがないがどこから来た?」

アリランは臆することもなく第3料理長に視線を合わせて言った。

「私、韓国から日本料理の勉強のために来ましたアリランと申します。アントコックさんに雇っていただき、今日が初めての厨房です。アントコックさんはここに来る直前に急に体調を崩され代わりに行くように申しつかりました。連絡はまだ入っていませんか?」

第3料理長は顔をしかめ背筋を伸ばして、アシスタントアリを手招きした。

アシスタントアリは第3料理長から事情を聴くとアリランに向かって言った。

「アントコックさんの紹介であれば間違いはないはずですが、調べますのであなたの身分証明IDカードを私に渡しなさい。」

アリランがカードを渡すとアシスタントは厨房の壁にあるカード認証リーダーに自分のカードとアリランのカードを読ませて、アリランの認証が有効であるか調べ始めた。

「私は持ち場に戻っていいでしょうか?」

アリランが尋ねると第3料理長は眉を少し持ち上げると言った。

「それはこの砕け散った皿の後始末をしてからだ。」

アリランはニコリと微笑み、さっそく掃除を始めた。

 

ドアが開き、1人のセキュリティが入って来た。

「おい君そこで何をしているんだ?」

セキュリティはキャビネットを開いているアリマッグローに近づいて尋ねた。

アリマッグローは魅惑的な視線をそのセキュリティに向けると、セクシーな足取りで近づき触れそうになるほど顔を近づけ、小声でささやいた。

「あら?あなたさっきあっちのフロアで見かけたけど、セキュリティの方だったのですね?あなたのような方にもっと早く出会えていたら、あの浮気男からあんな惨い仕打ちを受けずに済んだのに。」

そう言って彼女は憂いを込めた瞳で、上目づかいに彼を見つめた。

セキュリティはニヤッとしたが、自分の任務を見失うことはなかった。

まっすぐ彼女に視線を向けると言った。

「ところで君はここで何をしているんだい?」

マッグローは彼の口調が微妙に変わったのを聞き逃さなかった。

彼女はうなじを少し傾けて胸元までの線を微妙に強調した。

小指を口元に押し当てながら言った。

「私、『和食材における血糖値への影響』というライブラリカードを探しているんだけど見つからないの。」

セキュリティは舌打ちしながら答えた。

「ここは、レベル3機密文書保管室だからセンター内の所員なら閲覧は禁止ではないけど、分野が違わないか?」

「えっ?ここ342号資料室じゃないの?」

「ここは324号資料室ですよ。」

セキュリティはマッグローの言葉にこう返した。

「あらいやだ、私部屋番号を間違えてたわ。」

そう言って部屋を出ようとしたマッグローにセキュリティは付け加えた。

「君、セキュリティカードを出してくれないか?詳しく調べるから。場合によっては報告しなくちゃいけないからな。」

マッグローは青ざめた顔で懇願した。

「お願い。私部屋を間違えてたの信じて。」

「そうかい?それじゃ俺の部屋に行って詳しいことを聞こうか?」

そう言ってセキュリティの男はマッグローの肩に手をかけ、二人は部屋を出た。

そして、マッグローは後ろ手に親指を立て部屋を後にした。

 

物陰に隠れていた残りの4人はこのサインを見届けた。

「マッグローさんはどうなるんだ?」

トットさんが心配そうに聞くとモハメドアリは不敵な笑い顔でこう言った。

「あの男、上司から散々説教を食らった挙句クビになるだろうな。これで奴も一介の働きアリだ。」

「どういう事だ?」

「だって、勤務中に居眠りしてちゃまずかろうってもんだ。」

モハメドアリは軽くウィンクした。







最終更新日  2019.10.25 00:15:07
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2019.10.23
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第3料理長はたった今、厨房にある皿の山を倒して床を破片の絨毯に変えてしまったアリランにゆっくり近づき覗き込みながら言った。

「お前の顔は見覚えがないがどこから来た?」

アリランは臆することもなく第3料理長に視線を合わせて言った。

「私、韓国から日本料理の勉強のために来ましたアリランと申します。アントコックさんに雇っていただき、今日が初めての厨房です。アントコックさんはここに来る直前に急に体調を崩され代わりに行くように申しつかりました。連絡はまだ入っていませんか?」

第3料理長は顔をしかめ背筋を伸ばして、アシスタントアリを手招きした。

アシスタントアリは第3料理長から事情を聴くとアリランに向かって言った。

「アントコックさんの紹介であれば間違いはないはずですが、調べますのであなたの身分証明IDカードを私に渡しなさい。」

アリランがカードを渡すとアシスタントは厨房の壁にあるカード認証リーダーに自分のカードとアリランのカードを読ませて、アリランの認証が有効であるか調べ始めた。

「私は持ち場に戻っていいでしょうか?」

アリランが尋ねると第3料理長は眉を少し持ち上げると言った。

「それはこの砕け散った皿の後始末をしてからだ。」

アリランはニコリと微笑み、さっそく掃除を始めた。

 

ドアが開き、1人のセキュリティが入って来た。

「おい君そこで何をしているんだ?」

セキュリティはキャビネットを開いているアリマッグローに近づいて尋ねた。

アリマッグローは魅惑的な視線をそのセキュリティに向けると、セクシーな足取りで近づき触れそうになるほど顔を近づけ、小声でささやいた。

「あら?あなたさっきあっちのフロアで見かけたけど、セキュリティの方だったのですね?あなたのような方にもっと早く出会えていたら、あの浮気男からあんな惨い仕打ちを受けずに済んだのに。」

そう言って彼女は憂いを込めた瞳で、上目づかいに彼を見つめた。

セキュリティはニヤッとしたが、自分の任務を見失うことはなかった。

まっすぐ彼女に視線を向けると言った。

「ところで君はここで何をしているんだい?」

マッグローは彼の口調が微妙に変わったのを聞き逃さなかった。

彼女はうなじを少し傾けて胸元までの線を微妙に強調した。

小指を口元に押し当てながら言った。

「私、『和食材における血糖値への影響』というライブラリカードを探しているんだけど見つからないの。」

セキュリティは舌打ちしながら答えた。

「ここは、レベル3機密文書保管室だからセンター内の所員なら閲覧は禁止ではないけど、分野が違わないか?」

「えっ?ここ342号資料室じゃないの?」

「ここは324号資料室ですよ。」

セキュリティはマッグローの言葉にこう返した。

「あらいやだ、私部屋番号を間違えてたわ。」

そう言って部屋を出ようとしたマッグローにセキュリティは付け加えた。

「君、セキュリティカードを出してくれないか?詳しく調べるから。場合によっては報告しなくちゃいけないからな。」

マッグローは青ざめた顔で懇願した。

「お願い。私部屋を間違えてたの信じて。」

「そうかい?それじゃ俺の部屋に行って詳しいことを聞こうか?」

そう言ってセキュリティの男はマッグローの肩に手をかけ、二人は部屋を出た。

そして、マッグローは後ろ手に親指を立て部屋を後にした。

 

物陰に隠れていた残りの4人はこのサインを見届けた。

「マッグローさんはどうなるんだ?」

トットさんが心配そうに聞くとモハメドアリは不敵な笑い顔でこう言った。

「あの男、上司から散々説教を食らった挙句クビになるだろうな。これで奴も一介の働きアリだ。」

「どういう事だ?」

「だって、勤務中に居眠りしてちゃまずかろうってもんだ。」

モハメドアリは軽くウィンクした。







最終更新日  2019.10.25 00:12:58
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2019.05.28
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「マー君、汚いでしょ。そんな所に手を浸けちゃ。」

マー君は顔を曇らせると指先の木の葉の船を見送った。

「そんなドブ川で遊ばないで、さあ家に帰って手を洗って。マー君の好きなシュークリーム買ってきたわよ。」

お母さんは買い物帰りの玄関先からマー君に声をかけ家の中に入って行った。マー君もシュークリームと聞けば木の葉の船などもうどうでもいい。ニコッと笑うと元気にお家へと走り出した。

 

その頃そのドブ川ではゾウリムシ君が、今日もおいしいランチに舌鼓を打っていた。

「うまい。実にうまい。このバクテリアはいつ喰っても実にうまい。正に珍味中の珍味。グルメの俺でさえつい唸ってしまうくらいだ。」

 

ゾウリムシ君はたくさんのせん毛をせわしなく動かしながら、久し振りに見つけた超レアなバクテリアを取り囲み、取り込んで行った。

 

「あー喰った喰った。この川は栄養付加が高く、バクテリア類も多く、こんな特急グルメにもありつけるって訳だ。幸せな気分だぜ。」

 

ゾウリムシ君、ゾウリムシに出来る範囲でせん毛を伸ばして背伸びをした。

 

その時、何やら毒々しい液体が流れて来た。妙な匂いもする。気分が悪くなりそうだ。暫くその液体はゾウリムシ君の周りを淀み、ようやく去って行った。しかしゾウリムシ君の繊細なお肌はまだピリピリしており、あの状態が続けば、命にかかわったかも知れない。

 

「マー君ダメでしょ。水道出しっ放しよ。」

「あっ、いけない。」

マー君は慌てて洗面所に戻り、今石鹸でゴシゴシ洗った綺麗な手で蛇口を閉めると、食卓テーブルにすっ飛んで行った。

「ワー、おいしそうなシュークリーム。いたたきまーす。」







最終更新日  2019.05.28 14:00:11
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2019.04.14
カテゴリ:カテゴリ未分類

ある森に短い短い短~いヘビ君がいた。ヘビの世界では長~い事が立派な事だったので、短い短い短~いヘビ君は悔しくて仕方がない、だからいっぱい食べた。すると短い短いヘビになった。

「ううん、これっぽっちかあ?」

そこでいっぱいいっぱい食べたら短いヘビになった。

「だけどこれ以上食べられないよ。」

それではと今度は、いっぱいいっぱい食べた後にいっぱいいっぱい運動して、いっぱいお腹が減ってまた、いっぱいいっぱい食べた。

すると普通のヘビになった。

「やっと普通のヘビになれたぞ。でももっと長くなりたい。そうだ寝る子は育つって言うぞ。」

と、今度はいっぱいいっぱい食べた後、いっぱいいっぱい運動して、いっぱいお腹がすくのでまたまたいっぱいいっぱい食べて、いっぱいいっぱい運動すると、いっぱい疲れていっぱい眠った。

翌朝目が覚めると、なんと長いヘビになっていた。

「よーし、なかなかいいぞ。でももっと長くなりたーい。」

そこでヘビ君、こうなったらもっと長くなってやろうと、木の枝にぶら下がりいっぱい石をくわえた。するとからだがいっぱい引っ張られ、長い長いヘビになった。長い長いヘビ君、もっと長くなりたくて、もっといっぱいいっぱい石をくわえて頑張った。

こうして短い短い短~いヘビ君は、いっぱいいっぱい食べていっぱいいっぱい運動して、いっぱいお腹がすくので、またいっぱいいっぱい食べていっぱいいっぱい運動して、いっぱい疲れるのでいっぱいいっぱい眠った後に、木の枝にぶら下がりいっぱいいっぱい石をくわえたのでからだはグーンと伸ばされて、とうとう長い長い長~いヘビになれた。

前は短い短い短~いヘビだった長い長い長~いヘビ君は得意になって森中をはい回った。

「僕ほど長い長い長~いヘビはどこにもいないだろう。どんなもんだい。」

森のみんなはびっくりして、前は短い短い短~いヘビだった長い長い長~いヘビ君を見にやって来た。

「すごいもんだ。」

さすがに他のヘビ達も感心して見ていると、この噂を聞き付けて人間達も森にやって来たからさあ大変。森のみんなは慌ててねぐらに逃げ込んだ。

前は短い短い短~いヘビだった長い長い長~いヘビ君も慌てて洞穴に逃げ込んだ。だけど前は短い短い短~いヘビだった長い長い長~いヘビ君はどんどん奥に逃げ込んでも、いっこうに体が入り切らない。とうとう洞穴の奥に顔がつっかえても、しっぽはまだ洞穴の外にちょこんとはみ出していた。

人間たちは短い短い短~いヘビだった長い長い長~いヘビ君を尻尾からくるくると巻き取って町に連れてってしまった。

だから前は短い短い短~いヘビだった長い長い長~いヘビ君は、今は動物園に住んでいるんだって。







最終更新日  2019.04.14 23:16:03
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2019.03.17
カテゴリ:カテゴリ未分類

仔熊は熱でほてった顔を曇らせて、いつも父さんが帰って来る谷合の小道に目をやった。

「今日も無理かなぁ?」

窓の外では3日前に作った雪ダルマが半分雪に埋もれながら、相変わらず大きな口を開けて楽しそうに笑っていた。手にはちゃんとキャンディーを手に握り絞めている。父さんが麓の村まで炭を売りに出掛ける時に、二人で作ったのだ。父さんが出掛けた後、仔熊は雪ダルマに父さんがくれたキャンディーの一つを握らせ、夕方まで話しかけた。父さんの帰りを待ちながら。

この山奥に父さんと二人で暮らしている事。

母さんは4年前に病気で死んじゃった事。

春になったら麓のおばさんの家から学校に通うため、父さんとは一週間に一度位しか会えなくなる事。

そして父さんが大好きだって事。

雪ダルマは何も言わず、相変わらず大きな口を開けて笑っていた。父さんが焼いた炭の目を仔熊に向けて。

あれから3日、この吹雪で足止めを食っている父さんを待ちながら、部屋の中から雪ダルマに話しかけた。

「前にも2、3度こんな事あったし大丈夫。でもちょっと風邪引いちゃって頭がいたいから今日は早めに寝るよ。」

その晩仔熊は大変な熱を出し一人でうんうん唸っていた。父さんはまだ帰らない。

荒い息をしながら仔熊が寝ていると、夢に雪ダルマが現れて、雪ダルマは恐る恐る仔熊の額に手を当てて、

「あちち」

また手を当ててまた、

「あちち」

といいながらも、やっぱりにこにこしながら色々な話をして仔熊を看病してくれた。

明くる朝、

「一体こりゃどうした事だ?」

という大きな声で仔熊は目を醒ました。

ぼうとした顔で目覚めた仔熊は、まず自分のベッドを見回し、枕もとにキャンディーが置いてあるの見つけ無意識にそれを手に取り、それから父さんの声に気がついた。

「父さん!」

仔熊は嬉しくてベッドを飛び出し父さんの下に走って行こうとして、危うくひっくり反りそうになった。

床じゅう水浸し。ベッドの上も湿っていた。床にはなぜか炭が二個落ちていた。それでも仔熊は嬉しくて父さんにしがみついた。

「大丈夫かい?」

父さんの優しい声と、父さんの炭の匂いだ。

「帰れなくってすまなかったなぁ、吹雪がひどくって。やっと治まったんですっ飛んで帰って来たよ。外はいい天気だ。」

仔熊はぱっと顔を輝かせ窓際に走った。

「本当だ!」

仔熊は嬉しそうにぴょんぴょん跳ねていたが、やがて仔熊は気がついた。

 

雪ダルマが無くなっている。

 

不思議に思いあちこちに目をやったがやっぱりない。

 

仔熊は不思議に思いながらふとまだ握っていたキャンディーに気がついた。

 

もう一度外に目をやり、また今度は手に握り絞めたキャンディーをじっと見つめた。







最終更新日  2019.03.17 21:55:29
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