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グーとタラの宇宙放浪記

2021.07.01
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宇宙船組み立てキットで作ったお手製の宇宙船『俺たちゃ一番号』に乗り、宇宙で開催される色々なイベントに一番乗りする旅に出たグーとタラは、宇宙発展レベル2の未開原始惑星の地球に遭難した。しかし、その時に知り合った、レベル9のオノ星出身ジョンジさんの宇宙船の部品を載せ替える事で脱出可能になり、彼の友達であるレベル8のカシゴマ星出身のコナさん、宇宙国家加盟基準最低ラインのレベル7のチグマヤ星のピーマスさん、レベル2の地球からはジョンジさんが連れてきた地球犬ジャスティンを伴い、グーとタラの出身惑星にたどり着いた。
こうして思うとジャスティンは170万光年を旅した地球で最初の生物という事になる。
ふたりの提案でそれぞれの出身惑星に送り届ける前に、お別れ会を開くのだ。
途中、ボチコレオ星でひどいぼったくりにあったりもしたが、これはこれで結構楽しめた。
二人は一行を伴い自分たちの家に戻った。彼らの留守中に来た、地球でいうところのメールには、32の友達に対するそれぞれの回答パターンが用意され、メールの内容に従って合計65573通りの回答を留守番AIが選択して返信しており、ほとんどの要件は片付いていた。 一休みした彼らは再び二人に案内されて、ある島にやって来た。
お別れ会会場に選ばれたのは、地球に存在する超ミニブラックホールの歪みで出来た奇跡の町カナイドになぜか住み着いていたデブリンバトが生息する島だった。
ジョンジさん達も地球で見たデブリンバトがたくさんいるのに驚いた様子だった。
「みなさんの星までお送りする前に、ささやかですがここでお別れ会を開きたいと思います。そしてこれも何かの縁、これからも何かとお付き合いいただければと思います。」
グーには似合わない堅苦しい挨拶もそこそこにお別れ会が始まった。
周りでは無数のデブリンバト達が意に介さないようにじゃれ合い遊んでいた。
数にして5万羽はいるだろう。
その壮大な景色に見とれていたピーマスさんが突如素っ頓狂な叫び声をあげた。
「おやあれは?・・・・」
一同はピーマスさんの視線の先を追い一様に驚いた。
果たして彼らが見た物は?
 
「待てー、こらこら待てー!!」
先ほどから地球犬のジャスティンはデブリンバトの間を駆け抜け、デブリンバトはジャスティンが追いかけて来るの我を忘れてキャッキャッとはしゃぎながら、仲間を蹴飛ばし乗り越え逃げ回っていた。彼らのブヨブヨの体には怪我という恐れは全くなくタラたちが思い切り蹴飛ばしても嬉しそうに弾んで転がって行く程だった。
元来のんきで何にでも無頓着でただただはしゃぎまわるのが大好きなデブリンバトにとってこんな楽しい事はなかった。
ジャスティンにとっても自動翻訳装置でグーたちと話せるとは言ってもやはり犬は犬。走り回るのが大好きなのだ。
ジャスティンは久しぶりに羽目を外して駈けずり回っていた。ジャスティンがふと右手の方をみると少しこんもりと盛り上がっているデブリンバトの群れが目に入った。彼は良いことを思いつき一目散に駆け出しエイッとばかり山の上に飛び乗った。
デブリンバトの弾力のある体の上で何度かはねた後、ずぶずぶと彼らの中に沈んで行った。
ジャスティンが地べたに着くころデブリンバトもようやく横に除けはじめ、再び彼の目の前にデブリンバトが立っていた。
「それっ!」
ジャスティンが飛びつくとデブリンバトには珍しく思い切り怒鳴って怒りまくった。
「何すんだ、このバカ犬め!!」
ジャスティンは驚き慌てて引き返して振り向いて、じっと見るうちに小首をかしげた。
「あれっ?おやっ?あなたもしかして、もしかしてトットさん?」






最終更新日  2021.07.01 00:17:45
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2021.06.27
「いやいやひどい目にあった。」
タラは言った。
「大金持ちのジョンジさんがいなければどうなっていたことやら。」
グーも同意した。
「俺の世界のサッカー名場面コレクションが!!」
地球から持ってきたDVDを賠償のかたに没収されたピーマスさんがボヤいた。
原始惑星のありふれた日用品が何百光年と離れた先進文化の中ではことのほか高く売れた。
まるで古墳時代の国宝級の鏡を手に入れたように。
『これは商売にすれば儲かるかも?』と計算高いピーマスは思った。
「まあしかし、こうして帰ってこれたのだから、それだけでもありがたいと思うしかないんじゃないでしょうか?」
いつも温和なジョンジさんはとりなした。
「おいこれを見ろ!」
突然コナさんが叫んだ。元々スーパー・ハイレベル・スペシャル・スペース・テクノロジー・エンジニアのコナさんは、自分の星まで送ってもらうお礼にありあわせの部品で、この船の通信装置を500倍の速度に改造してくれたのだ。
しかし、また手作りキットで作った宇宙船『俺たちゃ一番号』がトラブルを起こしたのかと全員が駆けつけた。
それは宇宙国家が配信しているスペースネットのニュースだった。
『ボチコレオ星がオチコボレ!!』
ニュースの音声が流れ始めた。
「宇宙国家加入基準レベル7に足らないため準加盟星であったボチコレオ星がこのほど、遭難した宇宙国家民に対してぼったくり行為を行っていた事が発覚し、加盟権を剥奪される事になりました。」
「やっぱりあれはぼったくりだったんだ。」
タラは叫んだ。
「帰ったら訴訟を起こし、無人惑星を買えるほど払った賠償金を返してもらいましょう。」
ピーマスはジョンジさんに言った。
しかし超裕福なジョンジさんはボチコレオ星の行く末を案じてこう言った。
「あのくらいは大した事はありません。それよりあの星も大変でしょう。復興の資金にしてもらえばいいですよ。」
そこにグーが言った。
「みなさんもうすぐ俺たちの星ビリノンに着きます。みなさんをそれぞれの星にお送りする前にお別れ会を兼ねてちょっと一休みしていきませんか?」






最終更新日  2021.06.27 00:00:18
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2021.06.24
そもそもこのボチコレオ星政府招待のツアーは、故障した彼らの宇宙船を修理するのに時間がかかるからそのお詫びにと招待されたのだが、『奇跡樹』でも『グレート・ウォーター・ジャンボ・プール』でも思わぬ出費を要し、超大富豪のジョンジさんがいなければ、他の4人は今頃身ぐるみはがれていた状態だったろう。
「もうこんなツアーはまっぴらだ。俺はもうどこにも行かずにこの観光旅行船の中でじっとしているぞ。」
そういってタラは談話室にあったソファにごろりと横になった。
「まったくだ、何が政府招待のツアーだ。政府の招待という事は俺たちは最敬待遇のお客さまだぞ。それがなんだよ、行く先々で罰金だ刑罰だと。」
グーも同じくソファに身を投げ出した。
「私ももうどこにも行かず、ここで地球から持って来たサッカーのビデオでも見て過ごすよ。」
そう言って地球のサッカーというスポーツのとりこになったピーマスさんは、「世界のサッカー名場面集 Vol.3 (2000年~2004年)」というビデオDVDをDVDプレーヤーにセットした。
グーは地球犬のダスティンと遊び、飼い主のジョンジさんは久しぶりのバーチャルドラマの主人公(地球の読書)となり、コナさんは出身星に残した家族とスペースネット(宇宙国家のインターネット)を使って帰った後の事を話し合っていた。
それぞれが思い思いの楽しみ方をしてはいるものの、ボチコレオ星のツアーなど二度と参加しないという気持ちでは同じであった。
これは後に分かった事だが、ボチコレオ星では宇宙国家加入基準の宇宙標準レベル7以上にギリギリ足りないがどうにか加盟を許されていたものの、財政は厳しくグーとタラたちの様な者をカモに色々と難癖をつけては高額な罰金をとっていたのだった。しかし、やがて宇宙国家規律委員会に知られる事になり、徐名の憂き目にあう事となったのだった。
まさにボチコレオ星は落ちこぼれてしまったのだ。
しかしそうとは知らない5人と一匹は、最後の災難が降りかかる事など知る由もない。
彼らがくつろいでいると突然警報が観光船のデッキ中に響き渡った。
ビーッ、ビーッ、ビーッ
不気味なサイレンにみんな眉を寄せた。
「どうしたんだ?何があったんだ?」
ピーマスさんは辺りをキョロキョロ見回しながら傍らにいたコナさんに聞いたが、技術者のコナさんと言えど、さすがに知るわけもなく肩をすくめるだけだった。
その時船内放送が流れた。
「緊急事態。緊急事態。」
すぐにこの船の責任者がやって来て事の事態を説明し始めた。
「大変申し訳ありませんが船の安定航行制御装置に異常を来たしましたので、部品購入の見積もりを取り、会社の承認後ボチコレオ政府の閣議決定後すぐさま発注します。部品はこちらに直送させますので、到着次第修理にかかりますが、これらの手続きに10標準日ほど要します。このまましばらくお待ちいただけますか?」
「このまましばらくって要するに10標準日ここにいろという事か?」
タラが食ってかかると、責任者は申し訳なさそうに頷いて言った。
「別の船を呼ぶのでしたら有償となりますがよろしいですか?」
「有償って、故障はそちらの責任じゃないか?」
グーがすかさず反論すると、その責任者は澄まして言った。
「だから10標準日待っていただければ無料で目的地までお送りできます。」
「ちなみに代わりの船のチャーター代はどのくらいかかるのですか?」
ジョンジさんが聞くと責任者は言った。
「この星の船のチャーター代は非常に高額で、一番安い船で1,820万宇宙標準通貨ほどになります。」
「何だって?1,820万宇宙標準通貨と言えば超豪華クルーザー船が3隻買える金額じゃないか?」
さすがのジョンジさんも驚いたが、責任者は言った。
「はい、今この星ではパイロット協会のストライキが長引いているのが影響して人件費が非常に高騰しているものですから・・・・」







最終更新日  2021.06.24 00:00:20
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2021.06.20
すったもんだがあったものの『奇跡樹』の見学も終りグーとタラたちはぶつぶつ言いながら再び観光旅行船に乗り込んで次なる目的地に出かけた。
ガイドによるとボチコレオ星最大のレジャーランドらしい。
皆は今度こそ思い切り楽しめるのではと、密かに期待した。
そこは『奇跡樹』があった所から540宇宙標準キロメートルとそんなに遠くなく、すぐに到着した。観光飛行船のハッチが徐々にせりあがり、期待に満ちた彼らの前に、ボチコレオ星最大のレジャーランド、『グレート・ウォーター・ジャンボ・プール』が徐々に彼らの目の前に現れた。
それはボチコレオ星政府が100億宇宙標準通貨の巨費を投じた国家一大プロジェクトで、砂漠のど真ん中にドーンと作った25宇宙標準メートル巨大プールだった。1宇宙標準メートルは地球での長さの単位で1.32メートルだから33メートの大プールだ。
・・・・・・・・?
「25宇宙標準メートル巨大プール?」
ピーマスさんが思わず叫んだ。
「どこが巨大プールなんだ?しかも、そのプールにはボチコレオ星人が身動きできないほど、ギュウギュウに詰まっているし。これ以上は指一本も入りそうもなく、第一水などどこにあるんだ?」
そこにプールの管理人がやって来て言った。
「おお、ボチコレオ星政府の特別ゲストのお客様たち、よくおいで下さいました。この『グレート・ウォーター・ジャンボ・プール』に入るには3宇宙標準時間待ちなのですが、特別ゲストですからすぐにお入りいただけますよ。ちょうど5名ほど制限時間が来ましたのですぐに空きます。」
そう言って彼はピーっと笛を吹くとプールの端に並んだ5名の親子連れに声を掛けた。
「そこのご家族の方、お時間です。十分楽しんでいただけましたか?」
その家族は名残惜しそうな顔をしながらも、ついに念願かなって『グレート・ウォーター・ジャンボ・プール』に入れたことを喜んでいた。
その家族がプールの端から上がると、なるほど彼らの腰のあたりまで水が漂っていた。プールの客たちはジグザグに進む行列を徐々にずれて行き、プールの反対側に5人分の空きが出来た。
彼は言った。
「さあ、特別ゲストのお客様、あそこにお入り下さい。」
ボチコレオ星では水が極端に少なく、当然プールはおろか池も海もなく、水たまりがあってもそこは濃縮された塩分で、入ろうものなら10宇宙標準分で塩漬けとなり死に至るのだった。したがってこのような巨大プールを国家プロジェクトで開発し、この星の住人は水に浸かった事を一生の思い出にするのだ。
水はたくさんの客たちが浸かるため循環させて浄水しているとは言っても白く濁り、入る事さえ気が引ける5人と1匹だった。
そもそもプールはただ浸かって立っている所ではなく、泳ぐためのものではないのか?
どうやらこの星には水泳などという概念がないらしい。
コナさんが試しにプールの中に手を入れて水を触ってみたが、ヌルッとして生暖かく、慌てて手を引っ込めて、思わず顔を歪めて指先から水を払った。
ピ、ピ、ピ、ピーッ
すると先ほどの管理人がけたたましく笛を吹いて、先ほどのにこやかな顔を一変させてどなった。
「こらっ!プールの水を外に捨てるとは何事だ!罰金として650万宇宙標準通貨を支払うか10宇宙標準年ほど留置場に入ってもらうよ。」
ここでもやはり宇宙キャッシュサービスでお金を降ろして、後日支払う事で決着した。






最終更新日  2021.06.20 00:00:20
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2021.06.17
「キャーッ!なんて事をするの?」
女性ガイドのけたたましい叫びで、周辺を所在なくウロウロする5人は振り向いた。
そこではガイドの女性が例の『奇跡樹』の根元にしゃがみ込み、その傍にジョンジさんのペット、地球犬のジャスティンが怯えて座り込んでいた。
「ジャスティン、どうしたんだ?」
ジョンジさんがジャスティンに話しかけた。
「さあ?よくわかんないんだけど、ここにマーキングしていたら急にこのお姉さんが叫んで僕を押しのけたんだ。」
ジャスティンは訳が分からないようにポカンと口をあけながら、自動翻訳機の中からつぶやいた。
「どうしたんですか?」
コナさんはその女性ガイドに尋ねた。
「この生き物がここにオシッコをかけたんです。」
と『奇跡樹』の根元を指さした。
『この生き物』、彼女はこの生き物が犬という動物である事を知らないし、犬という生き物がそういう習性を持つ事ももちろん知らないから仕方はないのだが。
「それって普通じゃない?犬ってそういうものでしょ?」
地球暮らしの長かったピーマスさんも言った。
「この『奇跡樹』にもしもの事があれば、この星の世界遺産が一つなくなり、貴重な観光資源が失われてしまうのですよ。」
彼女は語気を強めた。
「それくらいでどうにかなるようにも思えないけど・・・・」
グーも言った。
ガイドのお姉さんはスクッと立ち上がり、ハンディホンを取り出して何やらしばらく話していたが、思いもつかない事を言い出した。
「今、観光省に相談しました。省の責任者から『奇跡樹』に何かあってはいけないから、その時の補償金として500万宇宙通貨を徴収せよとの事です。よろしいですね?」
「えええっ、たったこれだけに500万宇宙通貨?」
皆は驚いた。
500万宇宙通貨と言えばちょっとした宇宙船が買える値段だ。
「そんなもの払えるか!」
タラは憤った。
「いいえ、払っていただきます!この木はこの星の世界遺産なんです。もし枯れてしまったらあなた方を宇宙裁判所に訴える事になりますよ。」
彼女は脅しを込めて言った。
「観光名所って言ったって、砂漠の真ん中にちょこんと小さな木が生えていて、他には何にもないなんて、どこが名所なんだ・・・・」
グーも負けずに言い返したが、彼の肩を押さえてジョンジさんが言った。
「私のジャスティンがした事、私が払いますよ。」
「でもジョンジさん・・・」
グーが言おうとしたがジョンジさんは留めて言った。
「そのくらいのお金はこのツアーの最後で宇宙キャッシュサービスで降ろせばいいんだから。」
さすがお金持ちのジョンジさんは事もなげに言った。
まあ、元々ボチコレオ星とジョンジさんのオノ星ではオノ星の方の個人収入が5000倍高いのもあるが、これで済めばそれはそれでよかったのだが・・・・






最終更新日  2021.06.17 00:00:20
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2021.06.13
ボチコレオ星は砂漠だらけの星というが、実際にはボチコレオ大砂漠という砂漠が一つあるのみである。つまりボチコレオ大砂漠が星全体を覆っているのだ。
宇宙船の修理に時間がかかる埋め合わせで、彼らはボチコレオ星の観光ツアーに早速案内された。観光旅行船が空港を飛び立つとすぐにボチコレオ大砂漠が目の前に悠然と現れ、見る者はその雄大さ壮大さに圧倒され、しばらく釘付けになるほどだった。
が、しかし・・・・・
どう見てもただの砂漠、どっちを見てもただの砂漠、どこまで行ってもただの砂漠ですぐに飽きてしまい、目的地に着くまで5標準時間かかるという事なので、その間宇宙船でやっていた『7だらけ』の続きをして暇を潰すことにした。
もう勝ち目がないグーはゲームを抜けて地球犬のジャスティンと遊ぶ事にした。
「ねえグー、後どのくらいで次の目的地に着くの?」
ジャスティンは自動翻訳装置を通してグーに質問した。
「さあなあ、後4標準時間くらいじゃないか?」
グーは答えた。
「その目的地には何があるの?」
ジャスティンの質問にグーも首をひねった。
「さあ、何があるのかなあ?行ってのお楽しみという事で教えてくれないんだ。そこまで言うんだからきっとすごいものなんだろう・・・・・・多分。」
グーは最後の「多分」という言葉に一抹の不安を込めて言った。何せ先ほど初めて見る大砂漠に感激したのもつかの間、すぐに飽きてしまったくらいだから。
『7だらけ』ゲームが案の定ジョンジさんの大勝利で終わる頃、観光旅行船の機長から目的地到着の案内放送が流れた。
「皆様、間もなく『奇跡樹』生育地に到着です。見学のご準備をお願いいたします。滞在時間は1標準時間を予定しております。」
あまり当てに出来ないとは言え、他にする事もなく一同はいそいそと着陸した観光旅行船のタラップを降りた。みんなが見渡すばかりの砂漠ばかりの景色のどこにその『奇跡樹』があるのかきょろきょろしていると、現地案内人の女性がニコニコして手を振っていた。きっとそこにあるに違いないと思い行ってみると、その女性の足元に高さ40センチくらいの頼りなく小さくやせ細った木が生えていた。
「えっ?これが『奇跡樹』?」
タラは呆気にとられて言った。だがその女性は澄まして言った。
「ええそうです。この40センチの『奇跡樹』の根は何と地中に25キロメートルも伸び、そこにあるわずかな水分を吸収して生き延びているのです。」
それはすごい!・・・・とは思うものの地表に出た木の部分はたったの40センチ。この木の他にはどこを見回しても石ころひとつなくただの砂ばかり。そこに彼ら5人と1匹は1標準時間も何を見て過ごせというのであろう?
強い日差しの大砂漠にポツンと高さ40センチ、幹の太さが3センチほどの、根に比べてあまりにもひ弱な木が頼りなげに立っているだけなのに。
確かに砂漠ばかりのボチコレオ星にとっては脅威の光景なのかも知れないが・・・・・
仕方なしに周辺をウロウロするだけの彼らだったが、そこでこの星を揺るがす最初の大事件が起きた。






最終更新日  2021.06.13 00:00:17
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2021.06.10
『俺たちゃ一番』号の光5倍速宇宙エンジンが54,012本の結線の一本のプラスマイナス逆転で徐々に加熱してしまい、100%の能力を発揮できず今や光速の12,000分の1くらいの速度しか出せなくなっていた。
これはこの間までいた地球星の人類というやつらが、彼らの宇宙船で最大に出せる速度とほとんど変わりがない早さだった。
「ああここしかないなあ?」
タラはすぐに宇宙地図を調べて現在地と最寄りの宇宙国家加盟星を調べて唸った。
彼の指さす先には、宇宙国家に加盟できる宇宙標準発展レベル7以上という条件で、ギリギリ7に届かないが条件付きでどうにか加盟を許された『ボチコレオ』星という星だった。
技術者のコナさんが早速ボチコレオ星のレスキュー会社に連絡したが、いくら宇宙国家加盟星とはいえ、そのレベルの星のためたった682光年の距離をレッカー船がやって来るにも二日間もかかるという始末だった。
グーとタラはつくづく最近のツキのなさにため息をついた。
宇宙国家の高宇宙標準レベルの者がこの星を訪れる事はほとんどなく、何か観光の名所でもあれば別だが、砂漠だらけで見るべきものはほとんどないこの星は宇宙の単なる砂粒にすぎなかった。したがってここを訪れた者の待遇は宇宙賓客レベルで、星を上げての大歓迎体制で迎えられた。そんな待遇が受けられるのなら、それをあてにした不届きな者もやって来そうなものだが、宇宙国家でこれ以上の待遇に慣れ親しんでいる者にとって別段嬉しくもなんともないというのが正直なところだった。
早速星を代表して首相が挨拶にやって来た。高宇宙標準レベルの星から来たとは言え、たかが民間人の彼らの所に星の首相が挨拶に来るなんてとは思ったが、ここはそれなりに合わせる事にした。
「これはこれは、ようこそ我がボチコレオ星へ。どうぞごゆっくりお過ごしください。皆さんの宇宙船に合うエンジンがあいにく我が星にないため、最高の技術者を集めて修理させている所でございます。3宇宙標準日ほど頂ければと存じます。」
首相はばかにへりくだって言った。
ジョンジさんはどんな人にもきわめて紳士的に接するという性格のためか丁寧に言った。
「このお二人の『俺たちゃ一番』号でオノ星まで送ってもらう途中でとんだ事になりお世話をおかけします。修理代をお支払いするために宇宙間キャッシュサービスを利用したいのですがよろしいでしょうか?」
首相は顔を曇らせて言った。
「あいにくこの星に2台ある宇宙間キャッシュサービス端末の1台が故障しておりまして、もう1台は4標準時間をかけて星の反対側のボチコレオ星府出張所まで行く必要がございます。」
「えっ、星の反対側まで行くのに4標準時間もかかるの?」
ピーマスさんが呆れて言った。
「ええ、何せ宇宙標準レベル7にちょっと足りない我が星ですし、この星は通常の星の120倍の大きさですので。」
首相はすまなそうに言った。
「まあ、お世話になっているのは私たちの方なのだし仕方ないでしょ。」
コナさんがとりなした。
「その代わりと言ってはなんですが、皆さんをこの星の観光ツアーにご招待したいと存じておりますので、何とぞご容赦いただければと存じます。」
「まあ、しようがないかなあ?」
犬のジャスティンと戯れながらグーとタラは言った。
この先とんでもない目に合うとはつゆ知らず。






最終更新日  2021.06.10 00:00:21
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2021.06.06
地球のあるキョーヘン宙域にはワームホールがなく、ワームホールがある最寄りの宙域には10宇宙標準日かかる。
もう少し高価な宇宙船ならもっとスピードが出るので、せいぜい3宇宙標準日くらいなのだが安物の宇宙船組み立てキットで作った宇宙船だから仕方ないのだ。
ワームホールに飛び込めば宇宙船の速さはあまり関係ないからそれまでの辛抱だ。
地球の単位では既に地球から1万8千光年のところまで来ていた。
5人は他にやる事もないので、みんなで「7だらけ」というカードゲームをする事にした。まあ地球で言うところのトランプだ。
ルールはこうだ。(注:ここからは次のミシン目まで読み飛ばして結構です。)
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名前が『7だらけ』なのになぜかカードは581までの番号(どうせなら777枚がいいだろうに、この広く文明の発達した宇宙国家でも理由は分からず昔からそうであり、そうであるから今更変えられないだけ)が振られおり、それぞれに役目と長所短所、強みと弱みがある。さらにこの581枚のカードのうち、7枚をひとセットの組み合わせで更に様々な強さに変化する。
したがってまずは7枚のカードを集めるところから始まる。集め方は親が場札から5人の場合はプラス2枚の7枚を抜き出し、親が3枚、他の者に1枚ずつ与え必要なければ場札に返す。親は2枚以上戻さなければならない。各自親を7回ずつ行い最終的に残った7枚でまず初期ポイントが決まる。それから順番にカードを出して行き、それぞれのカードの組み合わせで勝者が決まり、ポイントも決まる。そのポイントの合計で勝敗が決まるのだ。ただし、集めたカードが7枚でない場合は失格となり0ポイントで勝敗の対象から除外される。
-------------------------------------------------------------------------------------------------
要するに知能の低い地球人には全然理解できないということだ。
5回を終わってジョンジさんが断然勝っており、グーが最下位だった。
その時自動管制装置から警報が鳴った。
ドド~ンドドン、ドド~ンドドン、カカッカカ、ドド~ンドドン、カカッカ
陽気な太鼓のお囃子が響き渡った。
「なんだこの警報の音は」
タラは眉を寄せた。
「これか?ちょっと気に入って新しい警報にしてみたんだ。」
グーはそう言い、もう勝ち目はないので何の警報か確認に席を立った。
「なんてこった!」
すぐにグーの絶叫が返って来た。
『7だらけ』を中断してみんながグーのもとに集まって来た。
「エンジンが燃えている。」
しばらくして絶句していた全員の絶叫が船内を揺るがした。
「えーっ???」
グーがすぐにスイッチを切ったため致命傷にはならなかったが、宇宙船で修理する事は到底無理だった。どこか近くの宇宙国家加盟星に降りて修理が必要だった。
原因は跳躍ユニットとエンジンの連結配線マニュアルの17,952ページの412行目にプリントミスがあり、54,012本の結線の一本のプラスマイナスが逆になっていたためだった。
「帰ったらこの会社を訴えてやる。」
グーは息巻いた。
宇宙船組み立てロボットを使えば自己診断機能で、この様なデータミスがあっても自己修正されるのだが、ロボットまで買うお金がなく、完全にお手製で組み立てなくてはならなかったため、そこまでは気付けなかったのが何とも悔しい。






最終更新日  2021.06.06 00:00:19
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2021.06.03
未開の原住民が大騒ぎしても困るので、宇宙船は海の底に隠していた。
宇宙船が飛んできても原住民に見つかりにくい場所をと考え、三角形のとても高い山の傍にある森に5人と一匹はやって来ていた。
なんでもこの国で一番高い山らしい。
タラは手につけているサバイバルバンドの一番左のボタンを軽く3回たたいた。
すぐに彼らの宇宙船が上空に現れ、あっという間に森の中に着陸した。
ジョンジさんの宇宙船の跳躍ユニットを手早く取り付けると、出発の準備は整った。
『ついにこの地球ともおさらば出来る。』
そう思うとグーとタラは心がウキウキした。
もうシュークリームが食べられないのは何とも心残りだが。
この思いはサッカーや野球の試合が見られなくピーマスさんも同じだった。
「さあグーさんたち出発しようか?」
ジョンジさんはみんなに声を掛けた。
思えばジョンジさんこそ、この地球という未開の星に7年近くも置き去りにされて来て、一番喜んでいるはずなのだ。
「そうだね。じゃあ行きますか?」
コナさんもジョンジさんに相槌を打った。
タラは宇宙船の機器類を点検してグーの指示を待った。
「それじゃ行くよ。」
グーは操縦パネルの赤と緑と紫色のボタンを次々に押してタラに言った。
「Here we go!!」
これを聞いたタラはズッコケた。
「おいグー、それは何だ?」
「ああこれか?昨日地球のDVDていうおもちゃみたいなのでトイ何とかいうのを見ていたら、バズライト何とかという変な奴が叫んでいたんだ。言語アナライザーで調べたら『さあ始めよう』とかいう意味らしい。」
グーは澄まして言った。
「まったくグーにも困ったもんだ。紛らわしい事をするんじゃないよ。おかげでヨシモト何とかみたいにズッコケちまったじゃないか?」
タラの言葉に今度はグーがやり返した。
「『ヨシモト何とかみたいにズッコケちまった』何だ?それは?」
「ああこれは・・・・」
「お二人さん、そんな事はどうでもいいから早く行かないかい?」
グーが言い返すのを、業を煮やしたピーマスさんが遮って言った。
こうしてグーとタラの宇宙船は一瞬のうちに宇宙に飛び出し、最寄りのワームホールを目指して地球星人たちが太陽系と呼ぶキョーヘン宙域をあっという間に飛び出した。
果たして5人の宇宙国家人と1匹の地球犬を乗せた宇宙船は目的の星にすんなりと辿りつけるのだろうか?






最終更新日  2021.06.03 00:00:19
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2021.05.30
ピンポーン、ピンポーン
ジョンジさんのマンションのインタフォンが軽やかな音で鳴った。
グーとタラはジョンジさんのマンションにやって来ると地球のシュークリームというフワフワのお菓子とコーヒーというドトーバックス茶に似た飲み物を御馳走になっていた。もう買い物帰りのおばさんの姿などになる必要もなくリラックスできるのがうれしかった。
「地球の宇宙標準発展レベルは貧粗なものだが食べ物だけは最高だな。」
二人はくだらないテレビ番組を見ながらそう思った。
やがてジョンジさんの友達が二人連れだって部屋にやって来た。
「ジョンジさん、コナを連れて来たよ。ああ君たちかい新しく地球にやって来て、聞くところによると船を修理して地球から飛び立てそうだって人は。」
二人はいきなりべらべら話しまくるおかしな宇宙国家人を見つめた。
「俺はグー、こっちはタラ。俺たち双子です。」
グーが言った。
その男性は答えた。
「私の名はピーマス。マグチャ星の出身だ。こっちはコナ。カシゴマ星から来たんだ。ジョンジさんとは3宇宙標準年前に地球に不時着した時に仕事を世話してもらった時からの友達なんだ。」
マグチャ星もカシゴマ星もオノ星の近くだから、送って行くにはまったく問題なかった。もっともオノ星とマグチャ星は地球の天文学的な距離単位に換算すれば1014光年、カシゴマ星とは3211光年で、地球の科学では世代を100世代超えてもたどり着く事の出来ない、無限に近い距離ではあったが、宇宙標準発展レベル7以上である宇宙国家の科学レベルではほんの隣同志の星にすぎないのである。

通常宇宙国家の領域には距離に関係なく瞬時に通信できる通信HUBステーションが一定の距離で配備されているが、地球のような原始的な星にはカバーされておらず、超古代の電波での通信しかできないので、このような遭難者が宇宙国家に救助の連絡を出来ないでいた。
これを機に宇宙国家への救助依頼ができることは地球に住む遭難者全員にとってもありがたいことだった。
「ところで君たちの船に僕たち3人と、ジョンジさんのジャスティンが乗っても大丈夫なのかい?」
コナは心配そうに尋ねた。
「部屋は3つ。他にリビングと小さいけどちゃんとしたキッチンも付いているから大丈夫ですよ。」
「ほう、なかなか大きな船じゃないか。」
ジョンジさんもタラの言葉を聞いてひと安心したようだった。
「で、いつ出発するの?今日?明日?できれば明日にしてもらいたいけど。実は今晩サッカーの試合があってね、どうしても見たいんだ。地球を離れるとサッカーや野球の試合が見られらくなるのが悲しいよ。」
ピーマスは言った。
サッカーとか野球とか何なのか二人にはチンプンカンプンだったが、二人に共通の思いは、『ピーマスって人、せっかちなんだかのんびりなんだか分からない変なおじさんだな。』ということだった。
いずれにしろグーもタラも晴れて地球におさらば出来るめどが立ったのでほっと一安心した。






最終更新日  2021.05.30 00:00:18
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