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マスP文庫

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全6件 (6件中 1-6件目)

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悪魔貸します株式会社

2014.04.08
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魔鬼田の言葉に猿渡は狼狽した。

まさか政治も経済も世論も一人の意のままに動き、国民をその人間に狂信的に服従させる事の出来る禁断のアイテムがあろうとは思いもしなかったからだ。しかも、平然と魔鬼田の口から出た事に驚いた。

もし誰かが禁断を冒しこれを使ったらどうなるのだろうか?
まるでヒトラーではないか?

彼は大きくため息をついてソファに身を沈めた。

しばらくソファに体を沈め天井を見つめながら、どうにかこのアイテムを利用して自分の人生をもっと好ましい方向に、いやもっと誰も手に入れた事がないほどの成功へと至る方法はないか思案を巡らしていた彼だったが、不意に胸の携帯電話がなり思考を中断せざるを得なかった。

それは母親が療養する完全介護の療養施設からだった。そう言えばもう5か月はご無沙汰だったのを思い出した。

今や売れっ子芸人の仲間入りを果たした彼は、そんな時間などないのもあるが、どこか煩わしささえ感じているのが正直な所だった。

「はい猿渡です。」

そう言って携帯電話を耳に押し当てたまま、しばらく彼は放心したように聞き入っていた。

「は、はい、わ、分かりました。」

そう言って彼は静かに携帯電話を切った。

「どうかなさいました?」
魔鬼田は怪訝な顔をして猿渡の顔をのぞくように見つめた。
猿渡はしばらく黙っていたがやがてポツリと言った。

「お袋が死んだ。」

それからバタバタと葬式の準備が始まった。
山の様に入っているスケジュールはマネージャに色々やりくりさせて、どうにか一日間の空きを作る事が出来た。

母ひとり子一人だったせいもあり何をしてよいのかも皆目分からなかったが、どうにか葬式も最後の喪主挨拶まで漕ぎつけた。

しかし、猿渡は今別の事を考えていた。

今ここで涙を誘い、親孝行な息子として気丈に振るまい、世間の同情を一身に集めれば彼はもっと大きな成功や富を手に出来ると。

やがて喪主挨拶が始まった。
猿渡は噺家らしくあらん限りの言葉を尽くして、涙を誘う挨拶に自分ながらなかなかうまく出来ていると密かに自画自賛しながら訥々と挨拶を進めた。

母子での苦労話や、母の思い出、母への感謝、母への愛。
会場のあちらこちらから漏れる嗚咽にその出来が手に取るように分かった。

と、その時・・・・

会場の誰かがついにこらえきれずに、プッと吹き出した。
その途端堰を切った様に、しめやかな葬式会場は弔問客の大爆笑の渦となり、笑い顔で溢れ、笑いが笑いを加速して、腹を押さえる者、膝を叩く者、座席で飛び跳ねる者など、収拾もつかないほどの笑い顔の洪水となった。

ここでも猿渡犬太は最高のお笑い芸人だった。

会場の後ろでは悪魔が紫の斑点の黒い実をギュッと握りしめ、猿渡から放たれるどす黒い悲嘆を思う存分堪能していた。

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今回のキーワードは「急変」で、5,038件ヒット。

いつぞや救急訓練でAEDの使い方を習ったが、いざという時は手際よくできるか心配。やっぱり日頃の心がけが大事。


猿渡も昔はこの話の結末の様じゃなかったのに・・・・・


頭はいいかも知れないが、体はずぶ濡れだな。


いざとなると本を読んでいただけではやっぱり。
DSソフトだけど一応シミュレーションだけでもしておけば少しは違うかも?









最終更新日  2014.04.08 16:48:18
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2014.03.29
猿渡はその後、噂が噂を呼び、テレビ番組などにも顔を出すようになった。

ただ彼の漫談やトークがバカ受けする人たちと、何がそんなに面白いのか?といった冷ややかな目で見る人たちと真っ二つに分かれるという奇怪な現象が起こったが。

しかし、時勢に乗ったというか、それなりに駄洒落をとばし時にはボケていると適当に受けてなんとかなるものだった。

群集心理であろう。

周りが笑えばそれに釣られて笑いが起こり、笑いが笑いを引き起こして会場を埋め尽くすという事も少なくなかった。

それから間もなくゴールデンタイムのテレビ番組のレギュラーの座を射止める事も出来たし、今の彼はまさに大ブレイクの状態だった。
芸能記者のインタビューやバラエティ番組のプロデューサーとの打ち合わせや、アイドル歌手や大御所お笑いタレントとの対談など、分刻みのスケジュールがマネージャから次々に入れられて、寝る間もないような忙しさとなった。

大ブレークを果たした芸人たちの多くは、お茶の間の慰み者とでもいうのか、真っ盛りの線香花火の様に派手に火花をまき散らし、楽しませるだけ楽しませ、いや楽しくない者も巻き込んで目を奪い、頂点に達した後は次第に勢いが衰え、すっかりお茶の間の興味を失った頃には、しおりの先からくすぶった火の玉がぽたりと地面に落ちてしまうのだ。

よほどの真の才能か所属プロダクションの力がない限り。

収入はかつての30倍近くになり、ぼろアパートから出て超高級マンションに引っ越した。寝たきりの母は完全介護の療養施設に入院させ、もう自ら世話をしなくとも専属スタッフが至れり尽くせりの看護をしてくれる。

最近は月に一度見舞いに行くくらいだが、これでようやく親孝行ができたと彼は満足だった。


「魔鬼田君、今度俺いよいよ自分の番組がもらえそうなんだ。クイズとバラエティを合わせた様な番組で、まだゴールデンタイムとまではいかないけれどスポンサーは自動車会社でも大手の会社だし是非とも成功させたいんだ。」
猿渡はホテルの一室に魔鬼田を呼び出しこう切り出した。
「そこで相談なんだけど、君の会社で悪魔の実に代わるような、もうあんな一人ずつじゃなく日本全国を覆い尽くすような目に見えない霧か何かで、俺のくだらないトークでもみんなが拍手喝采みたいなやつないのかな?」

魔鬼田は相変わらず微笑んでいたが、やや眉を寄せて言った。
「猿渡さん、私もあなたの大出世にお役に立ててとてもうれしいのですが、今おっしゃられたような物としては『デビルウィンド』というものはあります。がしかし・・・・」
「がしかし?」
猿渡は魔鬼田の言葉を継いだ。
魔鬼田はいつもになく険しい顔つきで言った。
「がしかし。これは禁断のアイテムです。これを使えば日本はあなたの意のままになり、それはすなわち最後には破滅へと至ります。」

「日本の破滅?」

猿渡はしかし、どうにかこの『デビルウィンド』を使う方法はないか、いやそれもまたいいのではないかと思いながら、ソファに背中を預けた。


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今回のキーワードは「大ブレイク」で、29,324件ヒット。

売り文句では打ってつけだけにヒットが多い。

今回は選択せずにヒットした上から順番(使いやすいキャッチフレーズのためバラエティ)

バームクーヘンに、


酒燗器に、


リップクリームに、


ソバに、


シャツと来た。








最終更新日  2014.03.29 14:58:16
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2014.03.13
猿渡と魔鬼田は喫茶店でコーヒーをすすりながら話していた。

「えっ?これは無料なんですか?」
猿渡は魔鬼田の言葉に驚いてコーヒーカップをテーブルに置くと彼を見つめた。
「でもその代わりに俺の魂をくれとか言うんじゃないでしょうね?」
魔鬼田は猿渡の言葉に微笑んで答えた。
「猿渡さん、この話はオカルト小説ではありません。厳然とした悪魔レンタルビジネスです。そもそも悪魔がお金を欲しがると思いますか?彼らはそんなものより、人の心の奥に潜む悪意や妬み、恨みや怒りの様な否定的な感情を好むのです。それが彼らの活力となるからです。だから・・・・」

「だから?」
猿渡がコーヒーをごくりと飲み干しながら尋ねた。

「だから、そんな感情をあなたから頂ければ悪魔はそれで満足なのです。」
そう言って魔鬼田は右手を差し出した。
「この握手だけで契約は成立です。」
猿渡は一度右手をズボンでこすると差出し、魔鬼田の手を握った。


夜も明ける頃、ようやく猿渡は寝たきりの母が横たわる、2DKの古びたアパートへ帰って来た。母はやせ衰えた体をベッドに横たえ、小さな寝息を立てていた。
猿渡はそんな母の横顔をじっと見下ろし、ポツリと言った。

「俺にも少し運が回って来たみたいだ。」
それが聞こえたのか、偶然なのか母親はうっすらと眼を開けると、息子の存在を確認して安心した様に再び眠りについた。


よく晩、例のチンピラたちのリーダー格の若者から電話がかかり、急遽あるキャバレーの経営者に会う事になり、その社長は自分の前で漫談をやって見せる様に要求した。

社長とチンピラのリーダーの前で猿渡は早速漫談を始めた。
漫談が終わった時、二人の観客はもう抱腹絶倒といった感じで、苦しげに腹を押さえて未だに笑いの余韻に浸っていた。

上機嫌の社長は「猿渡犬太独演会」を企画しようと言いだし、瞬く間に契約書が交わされた。胃腸病に悩む社長に効き目があるとあらかじめ悪魔の実を食べさせていたから、その効果の素晴らしさに猿渡は内心ほくそ笑んでいた。

まあ昔から病は気から、笑う門には福来たるというくらいだから、あながち嘘ではないと自分で勝手に納得した。

それから「猿渡犬太独演会」の3か月のロングランが開催され大評判となった。この時は魔鬼田の会社から悪魔がウェイターとして貸し出され、公演が始まる前に飲み客たちから悪魔の実のオーダーを取らせたので何も問題はなかった。

『それにしても悪魔はどうやって客から悪魔の実のオーダーを取るのだろう。そもそも悪魔の実を食べるとどうして俺の漫談が受けるのだろう?』

猿渡は不思議に思わずにはいられなかった。

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今回のキーワードは「契約成立」で5,559件ヒット。

まさか悪魔が人脈戦術?誰か一人を陥れて周りを巻き込むのかも?


それとも悪魔界の契約成立教科書があるのか?
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やっぱり悪魔はこれの達人だ!


やっぱこれかも?









最終更新日  2014.03.13 20:31:30
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2014.03.01
猿渡はとんでもない事になってしまったと後悔した。
言われるがままにこの魔鬼田というおかしな奴について来てしまったため、チンピラ相手に漫談をする事になるとは。

しかも、深夜、誰も寄り付かない公園で。
そのうち飽きたチンピラどもに取り囲まれ何をされるか知れたものではない。もしかすると、先ほど支配人から手渡された、なけなしの手切れ金まで巻き上げられてしまうかも知れないのだ。

「冗談じゃない。あんな奴らを相手に漫談だなんて。お断りだ。」
猿渡は魔鬼田に食ってかかった。
魔鬼田は今度もやはり意に解することもなく平然と言った。
「大丈夫、私が請け合います。ほらごらんなさい。」
猿渡は魔鬼田の指さす方向を見て眼を疑った。

なんとあのチンピラどもが行儀よくベンチに座り、夜更けすぎの独演会を待っているのだ。

「さあ猿渡さん、早く始めないとそれこそ本当に怒りだしてしまいますよ。」
魔鬼田は急かすように言った。
猿渡は思った。

もうどうでもいいと。

大人になって手に職もなく、フリーターをしていたが生活は苦しく、そのうち一人息子の彼を女手一つで育ててくれた母親が職場で倒れ、それ以来寝たきりの状態になってしまった。やがて生活は行き詰まりどうにか生活費を工面しようと、叔父の経営する小さな芸能プロダクションに入れてもらい、フリーターをしながらこの仕事を始めたのだが。
小学校の頃、「お前面白いから大きくなったらお笑い芸人になれよ。」とよく同級生たちから言われたものだが、所詮それは仲間内のネタが受けていたに過ぎなかった事に今頃気づきながらも、生活のために観客のまばらな笑いの中で、叔父のコネだけを頼りに過ごした3年間だった。

『もうどうでもいい。』
猿渡はもう一度のこの言葉を心の中でつぶやくと、観客の待つ公園の中に足を踏み入れた。
猿渡が若者の前に立つと見下すような5人の鋭い眼光が襲ってきた。
彼は走って逃げ出したくなるのを必死にこらえながら心の中でつぶやいた。

『どうにでもなれ。』

彼は捨て鉢な気持ちで今日も全然受けなかった、最近の彼のネタをポツリポツリと始めた。
相変わらず卒倒する様な視線を浴びながら。
彼の漫談が始っても目の前の強面の観客はじっと凝視したまま何の反応もない。

こんなに緊張してやっていて面白いであろうはずがない。

彼は額から汗がにじみ出て、それを拭こうとハンカチを探した。緊張のあまりどこのポケットに入れていたか忘れあちこち手を突っ込んで探していると、チンピラどもが徐々にくすくすと笑いはじめ、ようやく汗をぬぐった後にはすっかり打ち解けて来た。
試しに自分の一番のネタをぶつけてみると、もう彼らはベンチから転げ落ちるのではないかというほど腹を押さえて、手を打ち鳴らし、膝を叩いて身を揺すって笑い転げ始めた。

こうして深夜の公園の猿渡犬太独演会は大盛況で終わった。たった5人ではあるが。

彼の漫談が終わったあと、若者たちはよく出入りしているキャバレーの経営者に掛け合うから一度そこでやってみないかと言い出した。

「どうです?この悪魔の実の効果は。」
魔鬼田の言葉に猿渡は悪魔の実をギュッと握りしめ、うなずいて言いった。
「これは悪魔の実じゃなく、笑いの種だ。」

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今回のキーワードは「笑いの種」で57件ヒット。

名前からして笑いの種。上野公園前で売っていたな。


笑いは健康の種なんだ?
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奇人達がどんな笑いの種を蒔き散らすのか?


どんな発明があるのか?昔慶応大学かなんかで、大サイズのエアーキャップ(俗にいうプチプチ)に「ヒマ」と書いて、それをプチプチ潰す「暇つぶし」という冗談発明があったが・・・・








最終更新日  2014.03.01 17:40:33
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2014.02.20
魔鬼田と名乗るその青年は明るい笑顔で猿渡に言った。
「支配人さんとのお話はあまり良くなかったようですね?」
猿渡は渋い顔をして吐き捨てる様に言った。
「クビだよ。今あったばかりの他人のあんたに言うのもなんだが。今人と話をする気分じゃないんだ、それじゃ。」
猿渡は魔鬼田の肩をかすめる様に裏門へと向かった。
「それじゃ寝たきりのお母さんを連れて部屋を出なくちゃならなくなるんでしょ?」
猿渡はドキリとして振り向いた。
「あんた、今の話立ち聞きしてたのか?」
魔鬼田は悪びれるそぶりも見せずうなずいた。

「なんでそんな事するんだ?お前には関係ないだろ?」
語気を強めて猿渡は怒鳴った。

「関係なくはありません。その名刺がその証拠です。」
そう言って魔鬼田は猿渡の右手を指さした。
猿渡はまだ握ったままの右手の名刺に再び目を落とした。

『悪魔貸します 株式会社』

「ここに悪魔の実があります。うちの契約悪魔がよく使う実なんですけど。なんなら悪魔たちを使って木の実を観客に食べさせることもできますよ。」
そう言って魔鬼田は左手を差し出して開いた。

彼の手のひらから紫色の斑点が付いた黒い実の様な物が現われた。

「契約悪魔?悪魔の実?俺をバカにしてんのか?」
猿渡はついに本気で怒りだした。
しかし魔鬼田気にも留めずにこりと笑うとこう切り出した。

「付いて来て下さい。お見せしましょう。」


薄暗い街燈が頼りなげにまたたく深夜の公園の一角、公衆トイレの傍にベンチが一つ置いてあった。
そこには5人ばかりの若者が深夜にも拘わらず嬌声を上げていた。どうやら飲み屋街をたむろしているチンピラの様である。今日脅し盗った獲物の話でもしているのだろうか?

魔鬼田は彼らが見える公園の入口まで来ると猿渡にここで待つように告げ、一人でチンピラたち向かって歩いて行った。彼らはそんな所にのこのことたった一人でやって来るカモを逃すはずもなく、さっそくベンチを立つと魔鬼田を取り囲んだ。
最初はいろいろ絡んでいるようだったが、次第になぜかうなずいたり、こっちを見たりし始め、やがて手に手に何かを渡され思い思いにそれを口へと運んだ。

まもなく魔鬼田は何事もなかったように猿渡の待つ入口のところまで戻って来ると、思いがけない事を言った。

「猿渡さん、彼らが是非あなたの漫談を聞きたいと言っているんですが聞かせてやってくれますか?」

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今回のキーワードは「悪魔の実」で1,440件ヒット。

まさかヒットするとは思わなかった。それも1,440件。

ワンピースに出て来るんだ?
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化粧品だけどネタはワンピース


1,440件すべてワンピースネタかと思ったらやっと違うネタで出て来た。


しかし、99%はワンピースネタ。まあ、このキーワードじゃねえ・・・・






最終更新日  2014.02.20 21:21:49
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2014.02.11
まばらな拍手に追い立てられるように漫才師の猿渡犬太は舞台の袖に引き上げて来た。そこで待ち構えていたのはマネージャではなくこの寄席の支配人だった。支配人は苦虫を噛み潰したような顔で猿渡を迎え、ぼそりと言った。

「ちょっと支配人室まで来てくれるか?」

猿渡は支配人の後をとぼとぼ歩いて、煙草の匂いが染みついてむせるような薄汚い支配人室に足を踏み入れた。六畳ほどの部屋には化粧板のはげた染みだらけのテーブルと所々からウレタンがはみ出してすっかりくたびれた小さなソファが置いてあり、読み古した雑誌が散乱していた。

「そこに座ってくれ。」
支配人はそのソファを指さして、自分の机につくとがたつく引出しを無理やりこじ開けて一通の封筒を取り出した。
猿渡は言われるがままにソファに座ろうとすると、先客の支配人の黒猫が猿渡に向かってシャーッと威嚇して来た。猿渡は足の踏み場もない支配人室で立っている事も出来ず、猫に遠慮しながらソファの片隅に腰を下ろした。

支配人は煙草に火をつけしばらく吹かしていたが、やがて上を向いて大きくフーッと煙を吐くとやっと話し始めた。
「猿渡。済まんが今日までで降りてくれ。面白くない。全然面白くないんだ。このままじゃ客足が遠のくばかりだ。お前の社長のたっての頼みでやらせてみたがもうこれ以上は無理だ。もうお前の社長にも頼んで今日で降りてもらう。」
その時舞台からは先程とは打って変わって、客の爆笑の声が聞こえて来た。
支配人は続けた。
「ネタは古いし、もうみんな飽き飽きしている。今舞台でやってる連中は若いが客の受けもいいし、この間も売り込んで来た奴がいて結構面白そうだからな。」
そう言って支配人は再び煙草をくゆらし始めた。

「ネタも何か新しいものを考えますから。おじきにもう一度頼んでみるんでもう少しやらせてくれません・・・・」
最後の「か?」を言う前に支配人は怒鳴った。
「お前のおじさんの社長からの頼みだから雇ったがもうお断りだ。さっきも言ったようにお前の社長には了解を取ってある。だからマネージャも帰らせて、俺がお前に直接話しているんだ。分かんねえのか?」
「俺、ここで雇ってもらえないと寝たきりのお袋を連れてアパートを出なくちゃいけなくなるんです。」

バンッ

支配人は勢いよく立ち上がり、古い机を叩き壊すほど勢いよく両手を叩きつけて言った。
「そんな人情話をして何のつもりだ。お前のお袋のために俺が首を吊れとでもいうのか?」
支配人は猿渡の前までつかつかとやって来て、先ほどの封筒を机の上に叩きつけた。
支配人の猫がその激しい音に驚いて、ソファを飛び出して行った。
「これを持ってとっとと失せろ!」

3万円の入った封筒を覗きながら廊下を歩く猿渡。
切れかけた蛍光灯がネオンサインのように瞬いていた。

彼がふと眼を上げるとスーツ姿の一人の若い男が立っていた。
その男は言った。

「猿渡犬太さん、はじめまして。私はこういう者です。」

彼はそう言って一枚の名刺を差し出した。

悪魔貸します 株式会社
営業部三課

魔鬼田悠

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今回のキーワードは「漫才師」で1,165件ヒット。

今や漫才の大御所となったこの両人。


こういう人たちって陰では相当苦労しているんだろうな?


大助・花子の日本昔ばなしなのだそうだ。


もみじまんじゅうが懐かしい。








最終更新日  2014.02.11 20:05:05
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