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2022.05.22
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全3件 (3件中 1-3件目) 1 理想狂
カテゴリ:理想狂
「あらあらいけない。カーテンを開けて、新しい空気を入れて。」
そう言いながら女性はテキパキと窓を開け、散らかった物を手早く片付け、持ってきた花を花瓶のすっかり萎びた花と取り替えた。 部屋の真ん中では老婆が彼女の動きを目で追いながらぽつりといった。 「だんだん寒くなって、洗濯物も乾きにくくなるし、これからいやな冬になって行くのね。」 彼女は老婆に振り向きにこりと笑いながら思った。 これを思ったというならばであるが。 『理由、北緯35度における地上からの放射熱量が太陽からの輻射熱量を上回り、一日当たり平均0.27%ずつ寒冷化進行。顧客コード1A4978T−337452の脈拍毎分5.78回、血管収縮率3.12%増加。ストレス値7.08%、誤差±0.30%上昇。 精神安静化プロセスに移行。』 「もう秋ですもの。でも秋は食べ物も美味しいし、私新しい秋の新鮮素材を使ったお料理習って来ましたのよ。今日はそれを作ってみようと思いますの。もし失敗しちゃったらごめんなさいね。」 彼女はそう言うと端正な顔立ちに不似合いな茶目っ気たっぷりな表情で舌をペロッと出して肩をすくめておどけてみせた。 実際には5200種を越える世界各国の料理のレシピを記憶しており、名だたる3つ星シェフから和食、中華料理、北欧料理、イタリア料理、スペイン料理は言うに及ばず鍋料理、寿司職人、人気ラーメン店、アメリカのバーガーショップ、アフリカの民族料理などのノウハウと技術を蓄積し、味と香りと色合いを相手の好みに合わせて自動的に調合するシステム『GRME』を搭載しており、人間でいう所の謙遜と言うには恐れ多い高性能な機能を持っていた。 そう、彼女は老婆の沈んだ心を察知しわざと初心者の振りをしたのだ。 彼女のアクションプランニングジェネレータで予測計算されたマインドチャージプロセスは高確率でサクセスエンドし、老婆はようやく顔をほころばさせた。 しばらくすると台所から空腹な者には拷問にも等しい得も言えぬ香りが小さな部屋を満たし、やがてささやかなランチが始まった。 「あなたこの料理、本当に習ったばかり?とっても美味しいしわ。」 そう言って老婆は皺深い顔をクシャクシャにして笑った。 やはり最高の料理は人に最高の時をもたらすものなのだ。 心配げな表情を安心した表情に変更しながら彼女は頷いた。 老婆へのサービスが終了し次の顧客コード5D3112U−944282に向かう途中、カスタマーサポートセンターから着信があり、その顧客は今朝6時42分に生命活動を停止したので予約はキャンセルされた。 彼女はサービスポートに戻りバッテリーチャージし待機モードに移行するとリプライして無表情な顔で振り向くと歩行用モーターを回転させた。 Copyright (C) 2014 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「GRME」で、どんなヒットをするのだろうと思いつつ55件ヒット。 REGULATEGILBERT ARENAS BLACK[黒・ブラック] TEGRME」
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2014.04.12
カテゴリ:理想狂
「チーフ。トピアから削除申請が来ました。」
オペレータの佐藤がチーフに報告にやって来た。 「何?トピアから削除申請?」 チーフは驚いて佐藤に振り向いた。 現実社会と同様のバーチャル世界の中に顧客からの依頼でそれぞれにゆかりのある人物や動物などの様々なキャラクターを作り出し、その世界で実社会と同様の人生経験をさせ、依頼主の顧客とそのキャラクターが面会した時に何の違和感もなく交流できるように育成するのがこのシステムなのだ。 このキャラクターは様々で、夭折した我が子であったり愛する妻であったり、単に心理学上の治験対象であったり、10年来ともに過ごしたペットだったりするのだが、その依頼者の思いを受けてこのバーチャル社会のキャラクタたちもそれぞれの生涯をこの世界で送っているのである。 しかし、社会が出来れば善悪の歪みが生まれいつしかコンピュータ内の社会でも犯罪を犯す者が現われてくる。 現実社会から見ると、その様な犯罪者はすぐに抹殺いや削除してしまえばよいのではあるが、善悪もやはり社会の縮図であり簡単にその様な事は行わない規則になっていた。 しかし、このバーチャル世界をホテルと見立てて運営するバーチャル・ブレイン社が「トピア」と呼ぶ世界からキャラクターの削除申請が来たのである。 トピア内にある裁判所で下した極刑判決が、外部の現実社会では削除申請としてバーチャル・ブレイン社のオペレータに通知されるシステムになっている。 「削除申請?被告は一体何をしたんだ?」 チーフは削除申請と一緒に提出された判決文を見て愕然とした。 被告はなんと五人もの人を殺害して遺体を山中に埋め、普段は何食わぬ顔をして慈善活動家の仮面をかぶっていたのである。 チーフは困惑したがこれも通常の手続きとして、早速この死刑犯のキャラクターの依頼主に連絡する事にした。 トピアでは依頼主に断りもなしに削除される事もなければ、キャラクターが依頼者よりも先に不慮の死を遂げることもない仕様になっていたが、トピア裁判所からこの様な判決が下された以上、依頼者に承諾を以って削除せざるを得ない。 やがてこの知らせを聞いた60歳前後の夫婦がバーチャル・ブレイン社を訪れて、この苦渋の報告を聞いた。 その夫はしばらくうつむいていたが、やがて顔をあげ涙を浮かべてポツリポツリと話し始めた。 「あの子は私たち夫婦にとってかけがえのないひとり息子でした。でも10歳の誕生日を迎える前日に交通事故に会い不慮の死を遂げてしまいました。その子がこんなことをするとは信じがたい。もし、もし私たちがこの手で育てていたら、この様な事は決して起こらなかったはずなのに....」 その夫はそう言うと妻を見て絶句してしまった。 チーフはそんな男性の様子を見ながら、口を押し開いた。 「この様な場合、皆さんそうおっしゃいます。しかし逆の場合だってあるのです。実社会では極悪人となってしまっても、トピアのそのキャラクターはみんなの尊敬を集める人物であったりとか。トピアから削除申請が来た以上実施せざるを得ません。」 それを聞き妻は無念の気持ちを抑えながら最後の頼みを口にした。 「最後に面会はさせてくれるのですか?実はここ十年ばかり会っていなかったのですが、昔はよく息子のやっている活動の話を聞かせてくれてそんな様子は一切なかったのに、本人にあって直接確かめなければ気がおさまりません。」 こうして十数年ぶりの親子の再会を果たした夫婦は、面会室を出て来て静かに言った。 「間違いないそうです。私たちの知らない息子があの世界には生きていたんです。誰にも、親にでさえ素顔を見せない仮面をかぶった息子があの世界では生きていたのです。」 しばらくして夫は言った。 「私に削除させていただけますか?」 チーフはきっぱりと言った。 「それはできません。最初の契約の時にご説明していると思いますが、いくら虚構の世界の人間だからといって、それを削除した事実はそれをした者を一生苦しめる事になります。わが社ではただ単に申請に対して承認を行うのみで、実際の刑はトピア社会に一任される形になります。あくまでもそれはシステム上の表向きの仕組みではありますが。」 それを聞いてその夫婦は肩を落として朝から降り続く冷たい雨の中に消えて行った。 Copyright (C) 2014 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「削除 申請」で、193件ヒット。 今回は面白くもなんともないキーワードなので、目についたものだけ紹介。 「入学祝い 新社会人 引越祝いのギフトプレゼント」が分からない。
なんか今回のお話に関連するような本。
「店長ブログ★19」1円って何?だれこんなの楽天市場に出した人?
2014.03.21
カテゴリ:理想狂
メモリアル・ファームホテルの新サービスとして、簡易キャラクター養成システムが開始された。
正式なサービスは、コンピュータ内のシステムに現実社会の人間の複製を作成して、そのトピアと呼ばれる世界で、虚構の実体験とともに育成して行くシステムであり、複製される本人の容姿や体格、医学的なデータはもとより、性格、趣味嗜好、癖、思想などの個人属性、それにかかわる親や友人といったあらゆるデータが入力され、極力現実社会の本人に近いキャラクターを作りあげ、それを長年の間さまざまなイベントを通して育成して行くため、料金としても莫大な額となっていた。 しかし、もっと手軽にこのシステムを利用したいという要望にこたえてバーチャル・ブレイン社では簡易的な個人データと容姿、性別を入れて数日間のみ育成する低額サービスを開始した。 このサービスを利用する顧客もまたさまざまであった。 ある音楽学校の学生はトピアに広告を出し、自分のバイオリン演奏の聴衆として聴いてもらうことにより、実際の卒業演奏の準備を行った。 またある心理学者はたくさんの群衆を作成して、そこに未曽有の天変地異を起こし大衆心理のデータを取った。 ある調査会社では、依頼主のスポンサーから依頼された製品をトピアで販売して事前マーケティングやアンケート分析で実績をあげた。 そして今、ある一人の少年が彼の同級生の女の子とデートをしていた。この少年は明後日に迫った現実の彼女と本当の初デートに備えて、そして彼自身女性とデートをするなど初めての経験だったため、このサービスを利用してデートの予行練習をしようと考えたのだ。 ホテルの一室のテーブルを挟んで面談をすることも、仮想的に乗り物や遊園地、海などを作り、現実社会の人間は巨大ディスプレイの外側、トピア側の人間は内側で決してその間を行き来はできないが、バーチャルな環境を作り出すこともできた。 二人は遊園地の手漕ぎボートに仲良く座り、いろいろ他愛もない会話をしながら楽しいひと時を過ごした。趣味の話、好きな歌手の話、映画の話、学校の話、幼い頃の話。話は途切れることなく、彼のバーチャル初デートは順調に進み、帰りの電車を降りた後は、実際に握ることはできないものの、お互いに手を触れあって夕暮れの中を自宅に帰って行った。 「よし!いい雰囲気だ。今度のデートはこれでバッチリだ。」 彼はそう言うとウキウキしながら帰って行った。 その翌週、その少年はぽつんと家路の途中にある公園のベンチに座っていた。 「ふーっ」 大きなため息をつくと、それにも負けない大きな石を近くの池に思い切り投げ込んだ。 「くそーっ!」 今日の初デートがうまく行かなかったのだ。最初はバーチャルサービスの通りうまく進んでいたが、だんだん雲行きが怪しくなって行った。 最初は昼食の時に、口をクチャクチャ言わせながら食べる彼の癖を嫌がられた。 反対にハンカチを買う時の彼女のわがままにムッとした。 そんな些細なわだかまりがだんだん溜まって行き、帰りの電車ではお互いに口をきくこともなく、ぼんやり流れ去る窓の外の景色に目をさまよわせるだけだった。 やはりバーチャルな世界での理想的な作成物と現実の世界では大きな隔たりがあるようだ。 どうしてもそれに絡み合うお互いの感情は仮想化できるものではないし、人の心とはその時々にうつろうものなのだ。 何にも増して、女性の心を仮想現実の世界に再現する事は到底無理だというものだ。 なぜなら男から見ると、女性の心ほど非現実的な世界を形作っているものはないと思えるから。 Copyright (C) 2014 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「初デート」で、もう少しヒットするかと思ったが意外にも2,496件ヒット。 こんなに乙女チック行けばいいのだが・・・・・
まあせいぜい頑張ってもらおう。どちらにしろ私には無縁の世界だもの。
やたらとリンクが出て来るのだが、これ何?って興味もないが・・・・
初デートとは関係ないけど、「GPS電子コンパスと指タッチ式心拍計」はいちいち携帯開くより便利かも知れない。
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