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マスP文庫

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全10件 (10件中 1-10件目)

1

三猫珍道中

2020.07.30
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カテゴリ:三猫珍道中
益比の八人の仲間も揃い、いやそろったはいいが一向に益比の言う四百年前の計画が何だったのか分からずじまいだった。
仙人にしてはあまりにも頼りない益比(ますぴ)がこの八人の仲間探しの発端で、その仲間が悉く益比の大昔の計画の事は覚えていないようだ。

山に住み鍋料理大好きの土鍋焦玖斎(どなべこげくさい)は、益比の言う計画についてはおぼろげながら、何かしたような気はするらしいのだが、分からなかった。
分からないどころか山の仙人のくせに笑い茸を見分けられずに、五人で朝まで別におかしくもない夜を笑い通してしまった。

次に会った鬼首山に住む身の丈一間七寸(2メートル)の平来栖(ひらくるす)は伝説の勇者と呼ばれた男のくせに、まるっきり意気地なしで鬼首山の名の所以となった一間二尺(2メートル40センチ)の鬼退治に選ばれたが、怖くて逃げだしたとき、転んだはずみに握っていた刀が飛んで行き鬼の首を切り落としたのだ。
道中で襲われている村娘を助けようと飛び出したが、彼が真っ先に逃げ出し結局娘たちの代わりに捕まってしまいひどい目になった。

次に会ったのは何でもぺらぺら思ったことは正直に話してしまう渡宵子(わたしよいこ)という、仙人と言っても若い娘のようだった。
町で雷が強盗が今や店を襲おうとしているところを見破り、逃げ足の速い平来栖が番所に知らせに言ったが、その前に彼女が強盗たちにそのことをペラペラ話してしまったために強盗たちは逃げ出し、三猫が間違ってつかまりそうになってしまった。

その次は世紀の大天才と言われた嵯菅野典斎(さすがのてんさい)という男は、天空の動き、はるか彼方の星のこと、光の屈折で生まれる夕焼けの現象や、動植物の生態までなんでも知っているのに、昼に何を食べたか、食べたかどうかさえも覚えていないという、世間の事にはまったく疎く、当然益比の言う計画の事はとんと覚えていなかった。

次は馬爺さん(マジーサン)と呼ばれる中国から来た男だが、魔法使いと自称するわりに見せるものはタネも仕掛けもある手品ばかり。
益比の四百年前の計画の事を訊かれるとしどろもどろになるくせに、全員思い出せないと聞いた途端、安心して自分も知らないと言い出す始末。
そもそも十年前に会っただけなのに四百年前の事を知っている訳がないのだが、益比が計画の事を彼に話したかも知れないというだけで仲間になった怪しい男。

次は柿野タネ(かきのたね)という魔法役作りでは名の通った婆さんだが、三猫たちが途中で出会った父五里姉妹の次女喜利の腹痛を治すのに腰痛の薬を飲ませてしまった。
益比が何度も彼女に喜利は食あたりだというのに、次の瞬間それを忘れてしまう婆さんで、とても四百年も前のことなど覚えているはずがなかった。

最後に会ったのは一度覚えたら永遠に決して忘れない茂野覚江(ものおぼえ)という知的な美人の女性だった。
八人が会ったのは四百十三年二か月と3日前に伊豆の旅籠屋湯園屋『踵腓の間』で、その時食べた料理の献立を詳細に覚えており、仲間の目じりの皺の数まで覚えており大いに期待させた。
だが実は彼女、物覚えが悪くなかなか覚えられないらしい。
だが一旦覚えると永遠に決して忘れないという事で、益比の計画の事はとんと記憶になかった。

そんなこんなで里見八犬士とは雲泥の差の益比八仙人が一堂に介したものの、結局その計画の事は分からずじまい。

益比八仙人は、これから百年の歳月をかけて、四百年前の計画が何だったのか話し合うことになった。

こうして四百足す百の五百年にわたる、壮大なる計画が話し合われることになった。

なんとも暇仙人だと三猫は思いながら、目的の地鈴茂林へと去って行った。

「兄さんたち、早く早く。」
連は急勾配の山道を一気に駆け上がり、頂上で振り向くなりどうだとばかり腰に両手を当てて、胸を大きく張って背中をのけ反らせた。
黒猫の彼の胸には白い毛でハートの模様が大きく描かれていた。
「おい、連。お前ちょっと元気ありすぎだぞ。」
連よりわずか三歳上の後ろ頭にハートの模様を持つ千代でさえ、息を切らし、喘ぎながら坂道を登り、こう言うのがやっとだった。
「まったくだ。千代坊、こいつを連れてきたのは間違いだったかなあ?この分じゃこっちの身が持たない。」

一番上の兄貴分の顔にハートの模様を持つ雷はそう言って、二人に続いて頂上に達し、両ひざに手を突きゼエゼエと荒い息をした。

彼らはようやく鈴茂林にたどり着いた。

                                - 完 -






最終更新日  2020.07.30 22:27:10
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2020.07.27
カテゴリ:三猫珍道中
三猫は七人までそろった益比の仙人仲間(馬ジーサンだけは怪しいが)ともに、最後の仲間の茂野覚江(ものおぼえ)というやり手の女性の所へ向かっていた。
この女性、一度覚えたことは二度と忘れないという人物らしく、遂にこの旅(三猫にとっては寄り道だが)の目的である四百年前の約束について、分かることになるだろう。
思えば最初にこの女性を訪ねればよかったのだ。
目元すっきり鼻筋も通り、引き締まった唇、少し出た額が知的な印象を与えるなかなかの美人だった。
これは益々期待できそうだ。
さっそく益比が本題に入ると、彼女はそれを制してこんなことを言い出した。
「四百年前に八人で会った?そうね正確に言えば四百十三年二か月と3日前のあの日ね?」
これは益々期待できそうだ。
「あの日ちょうど、平将門が関東に独立勢力を築き、自らを王と名乗ろうした承平天慶の乱、俗にいう平将門の乱が起きたの。私と役行者様は、その乱を収めよう東奔西走したものよ。」
そんなことまで知っているのか?これは絶対に覚えているに違いない。
雷も千代も連も大いに希望を持った。
「私たちはその頃、伊豆の旅籠屋湯園屋の二階に上がった三番目の間である踵腓の間で話していたの。食事をしながらね。献立は海老と鯛と鯖、蛸の刺身と、藻づくに鳥のから揚げ、芋の煮転がしが付いていた。噂にたがわぬ飛び切りのおいしさだったわ。」
そんなことまで覚えているのか?しかも四百十三年二か月と3日前の事なのに。
「土鍋焦玖斎さんはあの時の服と同じね?嵯菅野典斎さんは左目の横に皺が一本増えたわね。でもその時、馬さんいなかった。」
馬ジーサンは出自がばれるかと顔が青ざめた。
「そうじゃったかの?その時からいたような気がしていたが。」
呑気で寝ぼけた益比はそんなことも忘れていた。
「渡宵子ちゃんはその頃まだ若い娘で、仙人見習いをしていた。平来栖さんは、鬼が怖いからどうやって逃げ出そうかみんなに相談していた。」
「そんなあなたなら、仲間で約束したことを思い出すなど大したことはないですね?」
雷が訊くと、
「それが覚えていないのよ。」
「えつ、一度覚えたことは決して忘れないんでしょ?」
千代が訊くと、
「そう、一度覚えたらね。」
「じゃ、覚えていないの?」
連が訊くと、
「私、一度覚えるまでがものすごく時間がかかるの。でも何度も何度も繰り返して覚え直すと、それからは全体に忘れないの。」
「何じゃそりゃ?」
三猫いや全員の共通の思いだった。
こうして最後の頼みの綱の茂野覚江も単なるしょうもない奴だったのだった。






最終更新日  2020.07.27 05:02:14
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2020.07.26
カテゴリ:三猫珍道中
三猫は七人までそろった益比の仙人仲間(馬ジーサンだけは怪しいが)ともに、最後の仲間の茂野覚江(ものおぼえ)というやり手の女性の所へ向かっていた。
この女性、一度覚えたことは二度と忘れないという人物らしく、遂にこの旅(三猫にとっては寄り道だが)の目的である四百年前の約束について、分かることになるだろう。
思えば最初にこの女性を訪ねればよかったのだ。
目元すっきり鼻筋も通り、引き締まった唇、少し出た額が知的な印象を与えるなかなかの美人だった。
これは益々期待できそうだ。
さっそく益比が本題に入ると、彼女はそれを制してこんなことを言い出した。
「四百年前に八人で会った?そうね正確に言えば四百十三年二か月と3日前のあの日ね?」
これは益々期待できそうだ。
「あの日ちょうど、平将門が関東に独立勢力を築き、自らを王と名乗ろうした承平天慶の乱、俗にいう平将門の乱が起きたの。私と役行者様は、その乱を収めよう東奔西走したものよ。」
そんなことまで知っているのか?これは絶対に覚えているに違いない。
雷も千代も連も大いに希望を持った。
「私たちはその頃、伊豆の旅籠屋湯園屋の二階に上がった三番目の間である踵腓の間で話していたの。食事をしながらね。献立は海老と鯛と鯖、蛸の刺身と、藻づくに鳥のから揚げ、芋の煮転がしが付いていた。噂にたがわぬ飛び切りのおいしさだったわ。」
そんなことまで覚えているのか?しかも四百十三年二か月と3日前の事なのに。
「土鍋焦玖斎さんはあの時の服と同じね?嵯菅野典斎さんは左目の横に皺が一本増えたわね。でもその時、馬さんいなかった。」
馬ジーサンは出自がばれるかと顔が青ざめた。
「そうじゃったかの?その時からいたような気がしていたが。」
呑気で寝ぼけた益比はそんなことも忘れていた。
「渡宵子ちゃんはその頃まだ若い娘で、仙人見習いをしていた。平来栖さんは、鬼が怖いからどうやって逃げ出そうかみんなに相談していた。」
「そんなあなたなら、仲間で約束したことを思い出すなど大したことはないですね?」
雷が訊くと、
「それが覚えていないのよ。」
「えつ、一度覚えたことは決して忘れないんでしょ?」
千代が訊くと、
「そう、一度覚えたらね。」
「じゃ、覚えていないの?」
連が訊くと、
「私、一度覚えるまでがものすごく時間がかかるの。でも何度も何度も繰り返して覚え直すと、それからは全体に忘れないの。」
「何じゃそりゃ?」
三猫いや全員の共通の思いだった。
こうして最後の頼みの綱の茂野覚江も単なるしょうもない奴だったのだった。






最終更新日  2020.07.26 22:27:34
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2020.07.23
カテゴリ:三猫珍道中
今や団体ご一行様となった三猫珍道中。
三猫に仙人の益比の仲間と称する全六人の仲間は七人目の仲間のもとに向かっていた。
目的は、四百年前に益比の仲間八人で何かをしようと約束したのが何だったのかを究明するためだ。
鎌倉街道沿いを歩いていると、先方の三猫と同じ猫族の女性二人がうずくまっているのに出くわした。
「どうされましたか?」
雷が振り向いた黒ぶちの白猫である猫族の女性の顔を覗き込んで驚いた。
「喜利姐さん!?」
そう、彼女はかつて山賊たちにさらわれてそのままそこに住み着き、山賊に捕らえられた人々をこっそり救い出す手伝いをしていたのが雷だったのだ。
犬塚信乃を案内して姉の蘭のもとに案内したのも雷だ。
「どうしてこんなところに二人そろって?」
雷が訊くと蘭が答えた。
「私たち、父の心の臓に効く蝦蟇の油を求めて筑波山に行く途中なの。」
「でどうしてここにうずくまっておられたのですか?」
まだ初対面の千代が尋ねると、
「さっき、途中の茶屋で食事をしたのだけれど、食あたりのようなの。」
腹痛に顔をしかめながら喜利が答えた。
「おおそれはいかんのお。ちょうどいい、これから行くわしらの仲間は柿野タネという婆さんで、魔法の薬を作らせたら天下一品。たちどころに治してくれるじゃろうて。」
そう言って、土鍋焦玖斎は鼻高々に言った。
一人にさせると道草ばかりする嵯菅野典斎を負ぶっている力持ちの大男平来栖が喜利も負ぶってくれた。
小柄な猫族のため何の苦もなかったが。
「おーい、柿野タネおるか~?」
すると粗末なあばら家から柿野タネなる女性が姿を現した。
「なんじゃい、誰じゃ、何の用じゃい。」
中から現れたのは少なくとも四百年は生きている、いかにも仙人と思えるよぼよぼの婆さんだった。
「おおタネ。お主すまんがこの女性が食あたりで苦しんでおる。薬を煎じてやってくれんか?」
益比が頼むとタネという老婆は顔をしかめて言った。
「なに?腰痛じゃと?」
「違う、違う、『しょ・く・あ・た・り』。」
益比はタネの耳元に口を近づけ大声で怒鳴った。
「ああ、食あたりか?それを早くいわんかい。」
「食あたりと腰痛じゃ全然違うじゃないか。」
連はつぶやいた。
魔法の薬を作れば天下一品なら、耳の聞こえるようになる薬を作ればいいのにとも思った。
「待っちょれ。」と言い残すと奥に引っ込んでやがて紫色の液体が入った器を持って戻って来た。
「ほれ、これを飲みなされ。」
彼女の勧めに応じて、喜利は度胸を決めて呑んでみた。
なんとも苦く、鼻を突くような匂いだったが、ようやくその不快さも薄れてきた。
が.....
一向に腹痛は治まらない。
「何?効かんとな?お前さん腰痛じゃろ?腰痛ならこの薬が一番じゃ。」
益比は目を白黒させてもう一度タネの耳元で怒鳴った。
「あのなあ、『しょ・く・あ・た・り』。」
「なんじゃ、食あたりか、なんでそれを先に言わん。」
彼女は澄ましてまた奥へと引っ込んだ。
そんなこんなで、食あたりによる喜利の腹痛は治まった。
あれほどキリキリと喜利を苦しめていた腹痛が、それっきりすっきりと治ったのだ。
キリっと微笑む喜利。
効き目だけはすごいとしか言いようがない。
こんなことがあり、さすがに父五里姉妹の父親の心の臓に効く薬は頼む気にもならず、彼女たちは筑波山へと向かって行った。






最終更新日  2020.07.23 18:12:06
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2020.07.19
カテゴリ:三猫珍道中
大天才と期待した嵯菅野典斎も、科学の分野では大天才のようだが、こと現世の暮らしにおいては凡人、いや凡人以下というと事で益比の記憶を蘇らせる助けには何もならなかった。
科学のこと以外何も興味もない彼だが、なぜか七人に加わり、次なる仲間を求めて旅に出ることになった。
今や八人の旅連れとなった三猫たちの珍道中はまだまだ続く。
「ねえ、典斎さ~ん、遅れちゃうよ~!」
連の呼びかけにも重い腰は上がらず、相変わらず動植物の観察に余念がなかった。
これでは埒が明かないので、気が弱くても力持ちの平来栖が負ぶって行くことになった。
「次の仲間はだな、遠く唐の国から来て偉大なる魔術師と呼ばれた馬(ま)という爺さんで、仲間内では馬爺さん(マジーサン)と呼ばれておる。」
益比は得意そうにそう言って鼻をピクピクさせた。
「今度は大丈夫なんでしょうね?」
千代が訊くと彼は何とも頼りないことを言った。
「ううん、そうだなあ。初めて会ったのは十年前じゃ。」
「ちょっと待ってくださいよ。十年前に会っただけの人が何で四百年前のあなた方の話を知っているんです?」
雷が食って掛かると益比は澄まして言った。
「いや何かの拍子にその話をしたかもしれんではないか。いや言ったような気がする。いや絶対に言った気がする。」
そもそも「絶対に言った気がする。」とは何なんだ?
確信があるなら「絶対に言った。」という断定形で言うところではないか?
このおっさん、まったく当てにならない。
「おお、見えた見えた。あそこじゃ。あそこが馬爺さんの家じゃ。」
土鍋焦玖斎の指さす先を見ると遠くからでも中華風と分かる建物が見えた。
「馬爺さんの小籠包すっごく美味しいのよね~。」
渡宵子は過去の記憶の話よりも現在の空腹の方が気になるようだ。
馬爺さんなる人物に会うと、いかにも唐から来ましたという風情で、細い髭を鼻の下に這わせ、チャイナ服にチャイナ帽。腰まで届く辮髪を垂らしていた。
「アヤ―よく来たあるね。さあ入って入って。今ちょうど小籠包を蒸かしたところだ。宵ちゃん好きあるね?」
こうして馬爺さんの家ではたらふく中華料理を堪能することが出来た。
偉大なる魔術師にしては気さくなただの爺さんに見える。
だが料理は美味く、全員満足顔で椅子に寄りかかっていると、馬爺さんが魔術を見せてくれるということになった。
三猫は手も触れずに物が宙に浮いたり、鼠が豚に変わったりする魔術をみられるものと期待の眼差しで見つめた。
馬爺さんはシャカシャカとみんなの前に立つと一度深々とお辞儀をして言った。
「種も仕掛けもないあるね。」
待てよ、それは手品の時の決まり口上だろ?
三猫が思う間もなく魔術の披露が始まった。
布を一振りすると赤から白に瞬時に変わる。
切ったはずの紐がつながっている。
伏せた茶碗の底を一文銭が通り抜ける。
もぞもぞ揉んだ布の中から鳩が現れる。
観客の言った数字の札が初めて開ける箱の中に入っている。
どれもこれも種も仕掛けもありそうな手品であった。
だが三猫を除く五人は無邪気に喜んでいた。
科学の冷徹な目を持っていそうな典斎さえも。
馬爺さんの魔術?の披露が終わった後、益比が例の話を持ち掛けると、驚いたことに馬爺さんの表情が、それまでのニコニコからオロオロに変わった。
「馬爺さんお願いです。思い出してください。この五人みんな忘れたって言うんです。」
雷の言葉に馬爺さんの表情はウキウキになり、申し訳なさそうだが嬉しそうに言った。
「私も記憶にないあるよ。」






最終更新日  2020.07.19 01:37:19
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2020.07.16
カテゴリ:三猫珍道中
あまりにも正直すぎる渡宵子が強盗犯にべらべらしゃべってしまったためにえらい目にあってしまった雷、千代、連の三猫は、これに懲りず相変わらず益比の言う四百年前に八人の仲間と何かをしようと話したことを思い出す旅を続けていた。
いつになったら、道節と毛野への伝言が果たせるのやら。
結局益比の他に集まった、土鍋焦玖斎(どなべこげくさい)、平来栖(ひらくるす)、渡宵子(わたしよいこ)の三人も思い出せず次なる仲間を訪ねることにした。
次なる人物は世紀の大天才と呼ばれた男なので、これは大いに期待できる。
その男の名は、嵯菅野典斎(さすがのてんさい)といい、三里ばかり歩いたところで孤高の生活をしていた。
朝は朝陽の登る様を見てその日一日の天候を読み取り。
昼は野山に動植物を探し求めて、進化の過程を解き明かし。
夕は沈みゆく夕陽を見ながら、光スペクトルの反射率により生まれる分光効果から生まれる赤から深い紺に変化する夕空に涙しながら、和歌をたしなむ。
真夜中になると、地球から8.6光年の先のおおいぬ座の恒星としてひと際輝くシリウスに思いを馳せる
そんな彼だからきっと・・・・
典斎の所に七人がやって来ると彼は化石発掘の真っ最中で、横から声を掛けてもまるで気が付かない状態だった。
試しに益比が指先でちょんちょんと突いても、彼自身が岩の様に微動だにしない。
この大天才、何かに集中すると一切なにも受け付けなくなるらしい。
仕方なく七人は彼の傍にござを広げて腰掛けて、町で買って来た弁当を食べ、あぶり烏賊を肴にひとしきり歓談しながら待つことにした。
ふた時も経った頃だろうか、やっと典斎が七人に気づき声を掛けてきた。
「おや、お前さんたちそこで何をしていなさる?いつからそこに?声でもかけてくれればいいものを。」
さすがの益比も面食らいながら典斎に事の次第を話した。
「それはさておき、この化石をみてもらえんか?これはハドロサウルス科エドモントサウルス類の第六脊柱骨でな、蝦夷の地で発見されたという知らせは伝え聞いて居るが、ここ武蔵の国でも発見された貴重な化石なのじゃよ。」
「あの~、典斎さん。そんなことより僕たち、益比仙人の四百年前に何かをしようと話したことは何だったのか知りたいんですけど。」
雷が促すと典斎は怪訝な顔をして言った。
「何じゃそんなことか?」
「覚えておられるんですね?さすが大天才!」
千代も感心して喜んだ。
「ちょっと待て、今思い出すから。」
連がしびれを切らして言った。
「典斎さん、早く思い出してよ。僕たちこのために三日間かかっているんだから。早くしないとお天道様が西に沈んでしまうよ。」
それを聞き典斎はさっと顔色を変え声高に言った。
「それは天動説の悪しき考え。天体の動きは我らの住む地球が自転をすることにより、空の星が動いているように見えるのじゃ。地球は太陽を回る公転軸より自転軸が約23.4度傾いており、これが一年の公転の中で様々な四季をもたらすのじゃ。」
「あのそんな訳の分からないことより、益比さんのいう四百年前の私たちの約束がなんだったのか知りたいんだけど。」
なんでもずけずけ言ってしまう宵子が言った。
典斎は目を白黒させようやくつぶやいた。
「待て、そうだなあ。あれ?わし今日昼めし何を食ったのじゃろうか?いやそもそも昼めし食ったかのう?」
どうやら庶民の暮らしの中では、典斎は大天災のようだ。






最終更新日  2020.07.16 07:09:40
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2020.07.12
カテゴリ:三猫珍道中

人さらいの隠れ家を抜け出した六人は、益比の4人目の仲間である渡宵子(わたしよいこ)を訪ねることにした。

名前からして何やらとても良い人で、唯一まともな人のような気がする。

彼女は平来栖の住んでいる鬼首山から2里の所に住んでいた。

 

「あらーっ、益比仙人お久しぶり百年振りくらいかしらね?」

前からやって来た女性が若い女性が益比に声を掛けてきた。

百年振りとは、やはり彼女は益比の仙人仲間のだろう。

 

だがしかし若い。

若いっていうもんじゃない。

まだ十八くらいにしか見えない。

そんな彼女も百年以上を生きている仙人の一人としたら相当な年寄りということだ。

だからこそ仙人なのかもしれないが。

 

それになかなかの美人だ。

 

彼女は気さくな笑顔を浮かべながら六人に近づいてい来た。

「おお、宵子。わしじゃわしじゃ。」

 

またこのおっさんのわしじゃが始まった。

 

「お前さんどこに行きなさる?」

焦玖斎が尋ねると、彼女は味噌を買いに麓の町まで行く途中だという事だった。

仙人なら霞を食べて生きていそうなものだが、仙人仲間でもやはり霞は味気なくて不評なのだそうだ。

そもそも、がぶっという歯ごたえも、食感も何もない。

 

町までの道すがら、益比が四百年前に八人の仙人仲間と何かやろうと話したのは何だったか聞いてみたが、彼女も心当たりがないという。

 

やっぱり、益比がおかしいのだろう。

 

そうこうするうちに町に着いたが、高利貸しの店先の前を通ったとき雷がふと橋を止めた。

 

「どうしたんだ?雷。」

千代が訊くと雷は言った。

「高利貸し屋の前で荷下ろしをしている男の荷の中で何や光る物が見えた。あの荷馬車はどう見てもお百姓さんが炭を運ぶ荷車だけど。」

見るとその荷車の男は傍に立っていた花売り娘と目配せして、彼女にそっと荷の中から光る物を渡した。

 

短刀だ。

 

二人は横を通り過ぎる百姓姿の男が辺りをキョロキョロしながら通り過ぎるのを、じっと目で追った。

「どうしたの雷兄さん。」

連が訊くと雷は連に言った。

「連、お前番所へ行って高利貸し屋を襲おうとしている三人組の強盗がいると伝えてくれ。」

その言葉に来栖がすぐさま請け合った。

「おお、それなら足の速いわしが行こう。」

雲を突くような筋肉隆々の体のくせに、役立たずの臆病な来栖はすぐさま走り去って行った。

 

さすがに逃げ同様、足は速いようだ。

 

その時、宵子が花売り娘に近づいて花を買おうと言った。

「花売り娘さん。お花をいくつかくださいな?」

今から押し込み強盗をしようとしている娘は困った顔をして宵子を睨んだ。

「今お忙しいのかしら。だって今からこのお店に押し入るのでしょ?」

雷は思わず目に手の平を押し当ててうめいた。

「今ね、私のお友達が番所に届けに行っているところよ。もう少し待っててくださいな。」

「宵子さん。」

千代も目を皿のようにひん剥いた。

 

そんなことを言われてハイそうですかと、役人が押し寄せるのを待っている強盗などいるわけがない。

当然、三人の強盗は一目散に逃げ出した。

「ああ、ちょっとちょっと、強盗さ~ん。まだお役人さんいらしてないわよ~。」

強盗が逃げ去ったあとすぐ役人がやって来た。

「三人組はお前達だな。」

役人はそういうと三猫をひっ捕らえたが、さすがに騒ぎを聞きつけ面に出てきた高利貸し屋の主人がとりなしてくれたので、事なきを得た。

 

どうやら渡宵子さんは、何でも正直に言ってしまう、頭に馬と鹿が乗っている正直者のようだ。






最終更新日  2020.07.12 01:46:56
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2020.07.09
カテゴリ:三猫珍道中

益比が見つけたきのこをワライダケとも分からず皆に食べさせてしまった土鍋焦玖斎も山に住んでいながらいったいどういう事だとは思うが、その焦玖斎も益比のいう四〇〇年前に八人の仲間で何かしようと話した内容は思い出せなく、三人目の仲間の所へ行って確かめることにした。

その名を平来栖(ひらくるす)という伝説の勇者と呼ばれた男だ。

その男は鍋伏山の二つ向こうの鬼首山に住んでいる。

焦玖斎とはちょくちょく会っているが、そのような話は今までしたことがなかった。

もしかすると四〇〇年ぶりの話しかもしれない。

 

鬼首山はかつてそこに一間二尺(2メートル40センチ)の巨大な鬼が住んでおり、来栖がその鬼の首を刎ねて退治したことから名づけられたものだ。

 

焦玖斎を加えた五人は来栖に会い、益比のいう四〇〇年前の八人で話した内容を確かめようとしたが、来栖も覚えがないという。

来栖もその鬼とまでは行かないが一間七寸(2メートル)の巨体で、肩の筋肉は盛り上がり。胸は鎧の上に皮をはったようであり、両足は巨木のような強靭な体つきだった。

来栖も覚えがないので、ここから二里ばかり行ったところに住む渡宵子(わたしよいこ)という女神と称えられる女性を訪ねることにした。

来栖を加えた六人が街道を進むと、遠くで何やら悲鳴を上げている女の声が聞こえてきた。

六人が駆けつけると、五人ばかり男たちが村の娘をさらおうとしていた。

来栖がいるので勇気百倍でそこへ駆けつけたが、どうしたわけか来栖は尻込みをしてしまった。

一間七寸の巨体ながら怖気づいている来栖を見て、男たちはひるむことなく三猫たちに襲いかかって来た。

なんと最初に逃げ出したのは、こともあろうに来栖本人だった。

六人が男たちに追われることになったおかげで、村の娘たちは救われたが。

 

ここは男たちの隠れ家。

 

太さ二寸(6センチ)の太い縄でぐるぐる巻きにされた三猫たちは無造作に床に転がされていた。

どうやら臆病だが怪力の来栖もさすがにこの縄は引きちぎることはできないようだ。

「来栖さん、あなた伝説の勇者でしょ。このくらいの縄、あなたの怪力で引きちぎること出来るんじゃないですか?」

雷が訊くと来栖は済まなさそうに答えた。

「申し訳ない。腕と胸を大きく膨らませて縄を引きちぎる時に、縄が肌に食い込むのが痛くてできないのでござる。」

「一間二尺の鬼の首を取ったくらいのおじさんなのに?」

連が言うと来栖は、

「あれはわしの体を見込んで帝が申しつけられたことなのじゃが、元来わしは臆病な性質でいやいやでござったのだ。いざ鬼を見ると案の定腰が抜け、それでもどうにか逃げ出そうとして立ち上がったのじゃが、石に躓いた拍子に手に持っていた太刀が手元から飛び出しなんと鬼の首を断ち切ってしまったのでござる。だがそれを知らぬ京の者はわしの手柄だと思い、わしを伝説の勇者と称えるようになり、恥ずかしくて鬼首山から降りられなくなって早五〇〇年。」

来栖の言葉に千代は舌打ちしながら言った。

「しょうがないなあ。じゃあ俺の特技を見せてやるよ。」

螺良猫団でも随一のわざ者である千代は体をもぞもぞと揺らし、彼の体は風船がしぼむようにひょひょろと細くなったかと思うと縄をするりと抜けてしまった。

 

こうして六人は人さらいたちの隠れ家からどうにか逃げ出すことが出来た。

 

どうも益比の仲間たちはろくでもない者たちばかりのような気がする。

次に訪ねる渡宵子なる女性がまともであることを願うばかりである。

 

三猫はろくでもない者たちばかりの中でも、実は益比が一番ろくでもない者のような気がして来た。






最終更新日  2020.07.09 02:19:04
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2020.07.05
カテゴリ:三猫珍道中
おなじみ三猫たちは道中であった仙人と称するおかしな益比とともに、彼の仲間だという土鍋焦玖斎を訪ねて鍋伏山までやって来た。
奥深い山に分け入ると、いかにも仙人の住みそうなうっそうとした木々が立ち並ぶ薄暗い森は秋とは言え肌寒さを感ずるほどだった。

四人は歩を進めすえた匂いの立ち込める山道を行くといきなり脇道から一人の老人がぬっと現れた。
三猫は思わず身構えたが、益比はすぐに気が付いてその老人につかつかと近づいて声を掛けた。
「おお焦玖斎、久しぶりじゃのう。わしじゃよ。」
このおっさんいつも自分のことをわしじゃよとしか言わない。
その老人も懐かしそうに益比を見つめて答えた。
「おお、これは誰かと思えばどなたじゃったかの?」
またまたおかしな人間が現れたものだ。
「わしじゃよ、わし。」
益比はまたいつものわしじゃよを繰り返すばかり。
「おお、そうだそうだ。わしさんだ、わしさんだ。」
老人もいい加減なもので分かっているようで全然わかっていない返答を繰り返した。
「益比仙人、自分の名前を名前を言わなきゃ。」
連に促されてようやく、わしとばかりで自分が名前を言い忘れていることに気づいたおとぼけ仙人は名乗った。
「わしじゃよ、わし。益比じゃ。」
「おお、益比、益比。お主は益比。今まで会うたことはあったかの?」

ううん、どこまで行っても訳の分からぬ爺さんだ。

さすがの益比もあきれたものの、話を進めた。
「焦玖斎、わしら八人の仲間でいつぞや何かしようと話したではないか?だが、その何かが何か忘れてしもうてな、お主に聞こうとこの猫さんたちについてやって来たのじゃ。」
「はて何をしようと話したのじゃったかな?」
そもそもこの老人に思い出してもらうことも怪しいものだが。
「ほら、四百年くらい前の事じゃ。」
うん、さすがに四百年も前のことならこの会話、あながちとぼけているとも言えないかも知れぬ。
いくら仙人と言えども、ひとのなれの果て。
あっ、仙人さん失礼。
「ところで焦玖斎ここで何をしちょる?」
焦玖斎は首を傾げてこう言った。
「今日はわしの好きな鍋料理にしようと思ってな、鍋にはやっぱりきのこが欠かせん。だがさっきから見つからんのでひと山超えて普段来ないこんなところまで来たという訳じゃ。」
それを聞き益比は辺りをきょろきょろ見回し、目ざとく群生しているきのこに目を留め言った。
「焦玖斎、お前もボケたのか?ほらそこにたくさん生えておるじゃないか?」
焦玖斎もそれに気づき嬉しそうな目で言った。
「おお、誠にまことに。あまり見かけんきのこじゃがこれで今日の鍋料理の材料はそろった。鍋にはきのこが一番じゃ。」

焦玖斎の庵で早速鍋料理の仕込みが始まった。
「焦玖斎さん、おいしそうなエノキタケですね?」
千代は先ほどから腹を空かせて焦玖斎に言った。
「エノキタケ?ちょっと違うような気もするがまあそうじゃの。一つ食べてみなされ。」
千代は促されきのこをひとつ手に取るとぱくりと食べた。
千代はきのこ特有の少しかび臭いながらも柔らかくほのかに甘いその味に目を丸くした。
「これはうまい。」

その晩、五人は秋の夜長にはなんともうれしい山菜鍋料理に舌鼓を打った。

しかし、

「おい千代坊、お前そんなにこの料理がうれしいのか?さっきからけらけら笑ってばかりじゃないか?」
雷は千代が笑い転げる千代を見て声を掛けた。

こうして五人は別におかしなこともないのに秋の夜長を虫たちとともに、朝まで笑い通した。






最終更新日  2020.07.05 12:49:42
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2020.07.02
カテゴリ:三猫珍道中

「千代坊、ちょっとここらで一休みしないか?」

雷は千代にそう話しかけた。

「そうだな、おいらもそろそろ休みたいと思っていたところだ。」

そう言って千代もうなずいた。

二人は今、道節と毛野を追って武蔵の国の鈴茂林に向かっていた。

小文吾と信乃が浜路と共に穂北荘へ向かったことを伝えるために。

鈴茂林には扇谷定正の家臣である竜山免太夫(たつやま めんだゆう)がおり、これは毛野が父の仇と狙う籠山逸東太(こみやま いっとうた)が名を騙っていたのだ。

雷と千代はさっそく火をおこし、川で獲った魚を焼いて食べ、少し横になることにした。

二人がうとうとし始めたとき、何かがさっと走り去るのに気付いた。

千代は自分たちが食べ残していた川魚が一匹なくなっているのに気付いた。

雷は数間先の藪が揺れて、何かがかき分けて行った後を見つけた。

二人がその藪の向こうを覗くと、一人の黒い猫の少年が魚をむさぼり食っていた。

「おいお前、おいらたちから魚を盗んだな?」

千代が言うと少年はハッと振り向き、両手に握った歯形の残る魚を背中の後ろに慌てて隠した。

「お、お、俺・・・」

少年は震えていた。

その時千代は、その少年の胸に白いハートの模様があるのに気付いた。

 

その少年の名は連といい、武蔵の国のある村の秋祭りの夜、姉とともに人さらいにさらわれて、売り飛ばされてひと月前まできつい、汚い、危険の悪徳代官の屋敷で働かされていたが、余りの酷使につい厠で居眠りをしてしまい、着る物と一日分の食料を与えられて追い出されてしまったまだ六歳と幼いともいえる猫族の黒猫の男の子だ。

 

雷と千代は信乃から犬坂毛野と犬山道節に伝言を頼まれて鈴茂林に行く途中で、犬坂毛野が仇とねらうのがその悪代官であったことから、屋敷まで道案内を頼むことにした。

 

こうして十日間の三猫珍道中が始まったのだ。

 

三人は鎌倉街道から東にそれて一路鈴茂林をめざすことになった。

しばらく歩くと前から妙ななりの男がよたよたと歩いて来た。

まだ老人とは言えないが若いとはとても言えない、ようするにおっさんだった。

男は三人に近づくと何かわけのわからないことを口走った。

「わしは仙人じゃが仲間を探しとる。お前ら知らんか?」

男はいきなりこんなことを言ったが、仲間と言って名前を言わなきゃ誰だか分かるはずもない。

そもそもこの男、自らを仙人と呼ぶとは余程ほら吹きか、身の程知らずか、ただの間抜けか?

「おじさん名前はなんていうんだ?」

一番年下のまだ物怖じを知らない連が男に聞いた。

「お前、わしを知らんのか?わしじゃよ。」

「おじさん、わしさんって言うの?」

連が更に聞くと男は今ごろ気づいたのか、ウォッホッホと笑いながらこう言った。

「おお、まだわしの名前を言っていなかったかの?わしの名前は益比(ますぴ)という者で仙人をしておる。」

仙人が職業か何かの様にこの男は言うが、果たして仙人とはどんな者のことをいうのかわかっているのだろうか?

それはさておき、一番年長の雷が益比に尋ねた。

「おじさん、仲間を探しているって言ったけどどんな仲間なの。そもそもその仲間どこに住んでいるの?」

「こりゃ、わしは仙人だ!益比仙人と呼べ!」

いい加減業を煮やした千代が手っ取り早く尋ねた。

「はいはい、益比仙人様、あなたのお仲間は何というお名前でどこに住んでおられるのですか?」

「よしよし、それでよい。仲間?おおそうじゃった仲間じゃ仲間じゃ。わしの仲間は八人おる。一番近くに住んでいるのはええと、なんという名前じゃったかな?」

名前を忘れてしまうなど本当に仲間なのだろうか?

雷は思ったが口には出さなかった。

それにしても変なおっさんだ。

益比仙人はしばらく考えた挙句、ようやく名前を思い出し答えた。

「この先の鍋伏山に住んでおる土鍋焦玖斎(どなべこげくさい)という者じゃ。わしの方が良い男じゃがの。」

誰もそんなことは訊いていないと思いつつ、雷は言った。

「俺たちは鈴茂林に行く途中です。そこはその途中のようだからしばらくご一緒しましょうか?」

それはあまりにも申し訳ないから結構という言葉が返ってくることを、期待してのことだが益比仙人はあっさり言った。

「そじゃの、いっしょについて行ってやってもいいぞ。」






最終更新日  2021.02.18 11:04:06
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