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マスP文庫

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太っちょポッポのトットさん

2021.12.02
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グーとタラの手作り宇宙船『俺たちゃ一番号』は最初に地球に不時着した時のようなエンジントラブルもなく順調に惑星アレ=デ・ランに向かって航行していた。

そこに住む宇宙国家きっての大物政治家ベイロ・オッカナの孫が描いた彼の似顔絵を届けるためだ。

「グー、後どのくらいかかるの?」

ジョンピーが尋ねるとグーは航行制御モニターを見て答えた。

「あと3標準時間かな?」

ジョンピーは目を丸くして言った。

「さっきも3時間って言っていなかった?」

それを聞きグーはもう一度モニターを確認したが、やはり到着残り時間3標準時間と表示されていた。

「おかしいな?またタラの奴、宇宙船の整備に手を抜きやがったかな?」

「何だと?俺が手を抜いた?グーじゃあるまいし。」

ビリノン星の兄弟がにらみ合っていると、ジョンピーが気が付いて言った。

「速度がゼロになっているよ!?」

そんな馬鹿なと二人がモニターを見るとジョンピーが言った通り速度はゼロになっていた。

しかも今度はマイナスになって行くではないか。

「どうした?どうした?」

そこに彼の行くところトラブルの嵐のトットさんがやって来た。

 

だが3人は青ざめてトットさんの顔を見つめて同じく叫んだ。

 

「速度がマイナスになっているんだ。」

 

そのとき船体に激しい揺れが起こり始めて、最後にガクンと大きな揺れとともにおさまった。

 

タラはその時、宇宙船の窓から外の景色を見て気づいた。

「宇宙海賊だ!奴らに宇宙船がけん引されて捕まったんだ。」

「なに!」

グーはそう言ったまましばらく黙っていたが、おもむろに口を開くとトットさんたちに言った。

「君たちは宇宙国家の者ではないから、宇宙国家の法律で守られていない。だから脱出ポッドで逃げるんだ。さもないと命の保証はないからね。」

宇宙国家の者はその法律で守られており、それを侵すと宇宙国家全体を敵に回すことになるのだった。

 

「グーさんたちは大丈夫なの?」

ジョンピーは不安げにグーを見上げながら言った。

「なあに、俺たちは大丈夫さ。」

グーの言葉にタラも怪訝な顔で頷きながら、

「それにこの絵を託した人が、もし難しそうなら惑星タートルインに住むベンケイ・ノービという人に頼んでくれと言ったんだ。その時、たかが子供の絵に大そうなことだとは思ったんだけど。だからこれをその人に届けてくれるかい?」

そう言ってタラはベイロ・オーガナ議員に届ける絵のチップをジョンピーに渡した。

 

急がねばならない。

 

トットさんとジョンピーは脱出ポッドに入れられ、すぐさま惑星タートルインへ向けて発射された。

 

「ボス、宇宙船から脱出ポッドが1機飛び出しました。しかし、中には知的生物は乗っていません。」

ボスと呼ばれた男は乗組員の言葉にフンと鼻をこすって言った。

「放っておけ。どうせあのオンボロ宇宙船のことだ、機器が故障でもしたんだろう。」

 

そのボスの名はベーダ。

宇宙では悪漢ベーダと呼ばれていた。

 

一方、惑星タートルインに着くなりポッドの扉を開き、周りの景色を見た途端途方に暮れるのだった。

 

そこは見渡す限り砂漠の世界だった。

「なんか、とんでもないことになっちゃったね?」

ジョンピーの言葉にトットさんは黙ってうなずいたがやがて怒鳴った。

「こらマスP!また俺を大変な目に遭わせやがって!」







最終更新日  2021.12.02 00:00:14
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2021.11.28

「地球に行く前にアレ=デ・ランって星に寄ってみようと思うんだ。」

グーはトットさんたちに言った。

「アレ=デ・ラン?どんな星なんですか?」

ジョンピーが尋ねるとタラが答えた。

「アレ=デ・ランは平和な星で、そこにある物を届けて欲しいと友達に頼まれたんだ。」

 

ビリノン星にはエントランス・センターがあり、そこをくぐるだけで星のどこへでも行けるのだが、さすがに5千7百光年離れた星間でのエントランス・システムは開通していなかった。

それにはまさにブラックホール級のエネルギーが必要になるからだ。

 

タラが言った。

「アレ=デ・ランにはベイロという爺さんが住んでいて、その孫が自分で描いた爺さんの似顔絵の実物をそのまま送りたいそうなんだ。今度俺たちが地球へ行くって言ったら、その途中にこの絵を届けてくれないかと頼まれたんだ。ほらこれだよ。」

そう言ってタラは小さなチップを見せた。

「何だいこのかけらは?どこが絵なんだ?」

トットさんの目の前でタラがそのチップをちょっと捻るとたちまち広がってちょうど画用紙くらいの平らな白い板に変形した。

グーがその板を指先でトントンと軽く3回たたくと、瞬く間に絵が現れた。

それはそれはいかにも子供の絵らしい一人の人物だった。

「これがベイロってお爺さん?」

ジョンピーが尋ねた。

シロネトヤマコ・スペース・ロジスティックスに配達してもらえばいいのに。」

 

「二人はいつも何かトラブルに巻き込まれるみたいだけど大丈夫なんだろうな?」

トラブルそのもののトットさんが言った。
「何?」
トットさんはそう言ってじろっとマスPを睨んだ。

グーとタラは自信ありげに大きく頷きながら、

「絶対、必ず、誰が何と言おうと、正真正銘、神に誓って、100%大丈夫だ。」

きっぱりと言ったが、最後にぼそっと付け加えた。

「・・・・多分。」

 

「ん?」

最後の言葉にトットさんは一抹の不安を感じたが、宇宙発展レベル2の地球になんか誰も行こうともせず、唯一グーとタラたちが送ってくれるというのだからそれ以上は何も言えなかった。







最終更新日  2021.11.28 10:45:31
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2021.11.25

カナイドに向かう途中ワームホールで黄色いデブリバトに出会い、彼についてなんと170万光年に離れたビリノン星にやって来たトットさんとジョンピーはビリノン星でグーとタラに再会し、ビリノン観光を終え、さあ地球に帰ろうとしたところ、あろうことかワームホールの入り口は消滅してしまっていた。

いくら気まぐれなワームホールといっても、さあ帰ろうかというときに消滅してしまうとは。

「でも中にいるときでなくて良かったじゃないか。そんなことになったら永遠にワームホールの中に閉じ込められてしまうことになるんだよ。」

タラの言葉にトットさんもジョンピーも鳥肌が立つ思いだった。

 

もっとも元々鳥なのだから鳥肌なのは当たり前だ。

 

今までそんなことなど露にも思わず気楽に中を行き来していたとは・・・・

 

「トットさん、僕たちどうしよう?」

ややあって、気を取り直したジョンピーはトットさんに尋ねた。

「どうするかって、どうもこうもねえだろう。帰る道が亡くなっちまったんだ。」

「トットさんはいいよ、仲間のデブリンバトがいるから・・・」

ジョンピーの言葉にトットさんはブヨブヨのやかんのような体を震わせて、

「お、お、俺は地球のドバトのトットさん・・・・」

やかんが沸騰して、今まさに弾けようとしたところににグーが割って入った。

「まあ、まあ君たちそんなに揉めないで。地球までのワームホールが亡くなってしまったけど、宇宙船組み立てキットで俺たちが組み立てた『俺たちゃ一番号』でも15標準日ほどでつけるんだぜ。何なら送って行ってやろうか?」

グーの言葉にトットさんとジョンピーは目の色を輝かせてうなずいた。

「でも俺たちは宇宙国家の色々な所で行われるイベントに乗り込むためにこの宇宙船を作ったんだ。だから悪いけど所々寄り道させてもらうけどいいかい?」

このタラの言葉にも二人は、いつか故郷の地球に戻れるのならこの際、宇宙旅行ができることを喜んだ。

 

だが思い出して欲しい。

 

そもそもグーとタラの宇宙船は故障して地球に不時着し、そこで出会った宇宙国家のオノ星のジョンジさんの助けで地球を飛び出せたものの、今度はボチコレオ星という最低レベルの宇宙国家加盟星でぼったくりにあいながら、どうにかビリノン星までたどり着いたのだ。

彼らの行くところトラブル続き、果たして無事二人は地球にたどり着くことはできるのだろうか?

 

「『果たして無事二人は地球にたどり着くことはできるのだろうか?』ってマスPお前が書くんだろうが?くだらん話に俺たちを巻き込むんじゃねぇ!!」

またまたトットさんは哀れなマスPに食ってかかった。

「それはそうなんですが、そうしないとこのお話進まないじゃないですか?」

「トットさんとジョンピーはグーとタラに地球まで送ってもらったとさ、ジャンジャン!

これでいいんだよ。」

マスPの言葉には耳も貸さずトットさんは喚いた。







最終更新日  2021.11.25 00:00:16
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2021.11.21

「なんだか可哀そうな気がするね、解剖されちゃってさあ。」

ジョンピーはつぶやいた。

 

ビリノン星でグーが言った作戦とは・・・・・

生物を細胞レベルまで丸々コピーして脳細胞に行動をプログラムして本物と同じような動きをするおもちゃを作るのが最近ビリノン星で流行っていた。コピーとは言っても有機組織を組み合わせるだけで、組み合わされたコピーには感情や意志はなく単なる人造肉にすぎないのだ。それに行動プログラムを埋め込むとあたかも本物の生物の様に動くのだった。

 

「お前、俺の方が解剖されればよかったのにって思ってんじゃないだろうなあ?」

トットさんはジョンピーを睨んで憎々し気に言った。

「でもトットさん。地球で起きた未知の生物騒動も単なるデブのハトだったという事が分かって、これで晴れて大手を振って街を歩けるんだよ。」

ジョンピーの励ましとも侮辱とも取れる言葉にトットさんは顎をわなわな震わせた。

おまけにお腹のお肉もわなわなと波打った。

 

そんな二人にタラが割り込んだ。

「君の複製を作ったときについでに調べたんだけど、DNAは確かに地球のハトだったよ。だから君は単なるデブのハト!」

またもやおちょくられたトットさんだが、怒るのも忘れて安堵の表情を浮かべた。

 

折角地球から170万光年離れたビリノン星に来たので、トットさんとジョンピーは星を見て回ることにした。

宇宙標準発展レベル8のビリノン星は見るもの、聞くものすべて驚異に満ちており、人々のちょっとした生活が地球ならSF映画でしか見ることのできない光景だった。

 

星の各地にある名所や施設に行くには、エントランスゾーンという場所に行けば、そこにある入り口を通って星の反対側にも一歩踏み出すだけで行くことが出来る。
飛行機なんていらないのだ。

まあ人工的なワームホールみたいなものだが、今回の地球とビリノン星を結ぶ天然のワームホールには、高度な科学知識を持つ宇宙国家にとっても驚くべきことであり、早速、関係機関の調査が始ったほどだ。

 

それはさておき、ビリノン星の驚異の世界を一通り見終わったトットさんたちはそろそろ地球に戻るために、ワームホールのあるオキ・ラ・クー島に戻って来た。

 

グーさん、タラさん色々案内してもらってありがとう。

地球に戻ったら自動翻訳機がないから人間に教えることはできないけれど、遠い将来地球も宇宙国家に加盟できるほど発展すればいいなあと思います。

ジョンピーの言葉が翻訳機を通してグーとタラに届いた。

「君たちの地球のレベルはまだ2だけど、一旦壁を超えると結構早いもんだよ。レベル7に達したら宇宙国家に間違いなく入れるさ。ただし、発展レベル7以上であることの他に平和であることが絶対条件だけどね。」

タラが手を差し出すとジョンピーは翼を差し出し握手をした。

「トットさん、地球に戻っても単なるデブのハトで通るからもう安心だよ。」

グーの言葉にトットさんはむくれて言い返した。

「デブのハト、デブのハトってうるせえなあ。」

 

トットさんはまだ何かブツブツ言いながら、デブリンバトが転げまわっている原っぱの中に押し進んで行った。

「こら!どけ!どけ!」

トットさんがデブリンバトを蹴飛ばすと、それが面白い、自分も蹴飛ばして欲しいと後から後から押し寄せて埒が明かなかったが、どうにか最後のデブリンバトを蹴飛ばして、さあワームホールの入り口だと思った途端。

 

「じゃあ地球に帰ろうか・・・あれ?」

 

みんなは一斉に叫んだ。

 

「あれ?あれ?あれ~?ワームホールの入り口がな~い!!」

 







最終更新日  2021.11.21 00:00:18
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2021.11.07
「トットさん!無事でよかった!」
思わず叫んでネコのマリリンさんはハトのトットさんに飛びついた。別に食べようという訳ではない。第一こんな物食べたくもなければ、食べれば食あたりは免れない。それに脂肪ばかりで美容にも悪いだろうし・・・・・
「なんだとマスP。ここは感動の再会の場面だぞ、感動的に書かなきゃならない時じゃねえか?しかも今度の事はお前が作り出したことだろう?だからお前は作家としては五流なんだ。お蔭でこっちはいい迷惑、危うく解剖されるところだったんだぞ。」
(二流、三流、四流飛び越えて五流ですか?ちょっとそれはあまりにも・・・・・)
「ジョニーさんもマリリンさんも、二人の子供たちもありがとうよ。無事にここまでたどり着けたのもマリリン一家のお蔭だぜ。ネコ牧場一家にも、セキセインコのはなにも何てお礼を言えばいいか分からないぞ。」
トットさんは自分を救い出してくれた仲間たちに感謝してもし切れないくらいの言葉をはち切れんばかりの体にあふれさせた、
「・・・・マスP、分かってるな!」
(あっ、はい、調子に乗るとつい書き過ぎちゃいます。)
マスPは悲しい目をパソコンに向けるとキーボードを打つ手をためらった・・・
「お前の事など書く必要はねえ!!!!」
トットさんはついに切れた。
「トットさ~ん!!」
その時遠くからたった四日ぶりだが妙に懐かしい気もする呼び声が聞こえた。トットさんの無二の相棒ジョンピーがトットさんの子供たちの連絡網からの知らせで駆けつけたのだ。
「トットさん、けがはない?大丈夫?」
「ああジョンピー、この通りピンピンしてるぞ。途中脱走に気付いた職員たちが追いかけて来たけどジョニーさんがうまく囮になって巻いてくれたし、マリリンさんの子供たちが俺を担いで運んでくれたし、本当に感謝している。ところで隊長さん?俺はこれからどこに行けばいいんだ?」
ジョンピーは計画を話した。
「これから総武線の電車の屋根に飛び乗ってトットさんの家まで帰るんだけど、そのままいたんじゃまた捕まってしまう。ここはしばらく姿を消すために公園の超ミニワームホールを抜けてほとぼりが冷めるまでカナイドで暮らしてもらおうと思うんだけどいいかな?」
トットさんは渋い顔をして言った。
「えええ?このデブリンバトの奴らと一緒にカナイドに住むのか?」
そう言って彼はデブリンバトを見たが、生来楽天的なデブリンバトは大喜びだった。
「トットの兄さんと一緒、一緒。ワ~イ、ワ~イ。」
トットさんは仕方がないかとあきらめつつふと不安な事に気付き尋ねた。
「でもあの入り口にどうやって近づくんだ。公園は警戒されてるんだぞ?」
ジョンピーはニコリとして言った。
「そこは大丈夫さ。レオとさくらが監視しながら、通り道を探してくれてるよ。こっそり行けるようにね?」
「何?レオとさくら?あいつらも俺のために来てくれたのか?」
トットさんは柄にもなく涙ぐみそうになった。大体トットさんに涙なんて・・・・・、
「涙なんて何だって言うんだマスP?ほんとにお前ってやつは。ここはしんみり感動的なシーンなんだぞ。下らねえ文章書くんじゃねえ!」
それなら自分で書けばいいじゃないかとマスPは思うのだった。
それはさておきマリリンさんたちに電車の屋根まで担ぎあげられたトットさんはようやく東京の自宅近くの公園までやって来た。そこには彼の超美人の奥さんと息子三人と、娘がやって来ていた。
「あなたどこに行ってたの?また皆さんにご迷惑をかけてまったく。」
超美人の奥さんはいつもの口調でトットさんに言った。
「急いで。捜索隊がやって来たわ。」
上空で監視していたナンキーさんが舞い降りて来て言った。
「俺がしばらくいなくなっても悲しまないでくれよな。」
トットさんは奥さんに言ったが、奥さんはいつもの事なので別段気にもしない様に素っ気なく頷いた。
「トットさんこっち、こっち。」
「私たちが案内するわ。」
「おお、レオとさくらじゃねえか?お前たちもありがとうよ。」
レオとさくらが事前に調べ上げた秘密の経路を通ってどうにかワームホールの入り口までやって来た。
その時近くを捜索隊の投げかける電灯の明かりがかすめて行った。すかさずレオが飛び出して捜索隊員たち股の間を潜ると反対方面の藪に飛び込んで行った。捜索隊員たちがそちらに気を取られている隙に、トットさんとデブリンバトたちは入り口の中に放り込まれるように落ちて行った。
「トットさん無事でよかった。デブリンバト君たちも。」
中で待っていたツノムクドリのビッキーがホッとしたように言った。
「ここからは僕が案内するよ。」
ビッキーに案内された一行はカナイドに向かって進んで行ったが、ビッキーはふとデブリンバトに振り向きおかしな事に気付くのだった。






最終更新日  2021.11.07 00:00:20
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2021.11.04
晩夏の夕暮れもさすがにおさまり辺りが闇に包まれる頃、六つの光る目が一点を見つめていた。その視線の先には薄暗い蛍光灯がちかちかと断末魔の最後の光を裏門に投げかけていた。やがて六つの目は小さな羽ばたく点を見定め、頃合いは今と藪の中から一目散に駆け出した。
「あら時間通りね?さすがだわ。途中危ない事はなかった?」
そう言ったのはまめっちの同居人でトットさん救出作戦の情報収集の役を買って出たセキセインコのはなさんだった。
「全然問題なしさ。うちの活きのいい奴を二人連れて来たから大丈夫うまく行くさ。」
そう言いながらニヤリと笑って後のふたりと頷きあったのはネコ牧場さんのリーダーミッシェルだった。活きのいい奴らとは元祖暴れん坊将軍クロちゃん、暴れん坊将軍跡継ぎのトート君である事は疑いようもない。
「トットさんの危機だものネコ牧場のママに『脱走しちゃダメでしょっ!』って叱られても構わないよ。」
そう言ったのはキジトラ猫のクロちゃん。
「トットさんって会ったことないけど、思う存分暴れられるなんて滅多にないから、来るなって言われても来ちゃうよ僕。」
クロちゃん同様外猫の経験があるトート君は端正な顔に腕白小僧の表情をベッタリ貼り付けて言った。
「三人ともよろしくね。守衛たちはNHKの大河ドラマ「青天を衝け」に見入っているから大丈夫。さ、こっちよ。」
はなさんの案内でほどなく三人はトットさんが捕えられている外来生物保管室の扉までまでやって来た。しかし扉には錠がかかっておりすんなり入れそうもない。困ったミッシェルははなに尋ねた。
「はなさん、お前さんはどこから出て来たんだい?」
はなさんはニコリと笑い上を羽でさした。
扉の上には小窓があり、内側にかたむけて外との換気を取る様になっていた。
「トート、早速お前の出番だぞ。」
ミッシェルは目くばせした。
トート君は早速やって来た大暴れのチャンスと、ネコ牧場家のキャットタワーで鍛えた技の見せどころと目を輝かせた。彼は周りを見回すと3メートル離れた所に良い頃合いの棚が目についた。すぐに10メートルばかり向こうまで走ると振り向き、息を整えおもむろに走りだし一気に加速すると突然ジャンプし、その棚の上に跳びあがり、更にジャンプして見事はなさんが出て来た小窓に飛びつく事に成功した。爪をいっぱいに伸ばし窓枠にしがみつくと後ろ脚でがりがり壁を引っ掻きながら窓枠の隙間に前足をひっかけ頭を突っ込んだかと思うと、二、三度足をばたつかせながら小窓の向こうに姿を消した。
ミッシェルとクロちゃんはこの末弟の離れ業にはさすがに驚きながら目を見合わせたが、まもなくカチャッと内側から錠の開く音を聞き扉に向かった。
「クロ兄ちゃん、僕が中からドアを押すからドアのノブを回してくれないか?」
トート君の言葉に今度は自分にも大暴れのチャンスが巡って来たクロちゃんはニンマリとした。彼は腰を沈めると狙いを定めてドアのノブに飛びつくと、滑るノブに前足をひっかけ、捕まる足場もないドアの上をカシャカシャと後ろ足で引っ掻いて体を支えながらノブを徐々に回して行き、内側からトート君に押されたドアは徐々に開き始めた。
ドアが開くとクロちゃんはノブから飛び降り、すぐさま中に飛び込んで行った。
その後をこの二人の弟たちの離れ業にあきれた様に首を振りながらミッシェルが続いた。
部屋に入った三人と一羽はずらっと並ぶ檻を見渡した。
はなさんは直ぐにカギ掛け用のボードからトットさんの閉じ込められている檻のカギを下に落とした。ミッシェルはすかさず受け取るとクロちゃんに託した。ミッシェルは役目を終えたはなさんに叫んだ。
「はなさん、他のカギも頼む。トットさんが逃げ出した後、他の奴らも逃がしてここを大騒ぎにするんだ。俺たちの逃げる時間が稼げるからな。」
はなさんはセキセインコが豆鉄砲を食らったようなポカンとした表情をしていたが、いたずらっぽい目でニコリと笑い、今年九歳になるミッシェル君の知恵に感心した。
「おおミッシェル久しぶり、この度は助かった。ありがとう。」
そう言ってノシノシ現れたのは太っちょポッポのトットさん。
「おお、すまんすまん。ありがと、ありがと。」
そう言って現れたのはいつも能天気なデブリンバトたちだ。
「トートお前ははなさんといっしょに、トットさんたちを息子3号が待つ連絡地点に行き、マリリンさんのご主人のジョニーさんに駅まで送ってもらうんだ。」
ミッシェルの指示にトート君は頷くとトットさんたちを連れて部屋から抜け出して行った。
「さあクロ、これからもう一仕事だ。」
そう言ってミッシェルはクロと手分けをして他の檻の扉を開き始めた。






最終更新日  2021.11.04 00:00:20
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2021.10.31
デブリンバトとともに人間に捕まったトットさんを救出するために状況確認と情報収集のために、彼が捕らえられている場所を知るテレビ局に忍び込む役を買って出たセキセインコのはなさんは早速まめっちの住む埼玉から飛び立った。
はなさんからの報告はテレビ放送の中で、動物にしかわからない言葉で伝える事になった。
その放送がいつあるかは分からないためフジコとソロたちのCIA(Cat Inteligence Agency)で全局のニュースをモニター監視する事になった。
半日後・・・
そのCIAから録画映像がメールで届いた。
皆さん今からはなさんからの情報をお聞かせします。どうか冷静にお聞きください。
まめっちはそう言ってCIAから送られてきたニュースを再生した。
その内容を聞き進むにつれ全員の表情が険しくなるのが分かった。
*―――――――*
7時のニュースです。
先日東京の公園で発見された今までに知られていなかった生物に関する新たな情報が入りました。現在世界から希少動物に関する専門家を中心に遺伝学、生物学、生理学などの権威が世界中から集まり今後の調査方針について検討されています。
まずはこの東京新生物解明プロジェクトのリーダーの武来見(ぶきみ)さんのお話をお聞きください。
「今回の東京新生物解明プロジェクトでは東京の真ん中で今まで知られていなかった生物が突然発見されたことについて別の場所から連れてこられた可能性が高いという結論に達し、場合によっては宇宙から運ばれた可能性まで念頭に入れて慎重に調査を進める方向です。
CTスキャンによる調査結果では今まで地球では確認されていない生体構造を持つらしいことが分かっています。個体は7体。生理学専門分科会では実際に一体ほど徹底的に解剖してその未知の器官の詳細を確かめようという意見があがり、他の6体は我々の存在にも至って無頓着でじゃれ合っていますが、残ったやたら騒がしい個体がおりそれが候補に挙がっています。それがその候補です。」
*―――――――*
映像は武来見リーダーの顔から新生物の映像に切り替わった。
映像は逃げ出したペットが野生化した外来動物が集めれている保管所の内部が写し出された。カメラは部屋の中を移動し、オオハシやインコなど極彩色の中南米に生息する鳥の入れられたカゴのそばにある問題の生物たちのカゴへと移った。
カゴの真ん前では仁王立ちするその問題のやたらやかましい個体が動物にだけ分かる言葉で叫んでいた。
「おいこら、俺はデブリンバトなんかじゃねえ。ドバトのトットさんだ。いい加減にここから出せと言っているんだ。分からねえのか?」
やたらやかましい個体が誰だか誰もが判っていたが、いざその対象が映し出されると、トットさん救出部隊の全員から動揺のうめき声が漏れた。
「トットさん、どうか静かにしていておくれ。」
マリリンさんは画像に向かって必死に訴えていた。
そのとき映像のなかからこれまた動物にしかわからない言葉で音声が流れた。
「ここは千葉県にある外来生物保管所よ。解剖は2日後の13時からの予定よ、明日のよる8時にここの裏門まで来て頂戴。私が案内するからみんな急いで。」
それは隣のカゴにいるはなさんの声だった。
「案内するったって、はなさんもカゴに捕らわれているんだろう?」
ネコ牧場さんペット会代表のミシェルが言った。
「大丈夫、彼女はカゴ抜けが得意だから。恐らく自分からそのカゴに忍び込んだんだわ。」
まめっちが言った。
「千葉なら、ミシェルさんの仲間に協力してもらえないかしら?私とレオはカナイドへ続く超ミニワームホールの入り口に誰も近寄らない様に見張っているから、トットさんを連れて来たらそこからカナイドに逃げましょう。」
simoさんのペットのさくらが言った。
「うん、それが一番いい逃げ場所だね?」
レオも同意した。
「入り口からカナイドまでは僕が案内するよ。一度通っただけじゃ分かりにくからね。」
ツノムクドリのビッキー・ポーも言った。
「それじゃ私たちは皆さんの連絡係をします。」
トットさんの子供の娘1号が兄たちと目くばせしながら言った。
「私と旦那と子供たちは途中の補給、支援係を担当するわ。」
マリリンさんはトットさんにやっと恩返しができると喜びながら言った。
「わかった、救出は任せろ。ソロとフジコはマイロ長老がCIA幹部の時の元部下だし、何せ内にはトートっていう新入りで生きのいい奴がいるから、クロの奴とうまくやってくれるさ。」
ミシェルは早速千葉へと戻っていた。
いよいよトットさん救出作戦の幕が切って落とされた。
しかし、これが思わぬ展開、思わぬ世界に進む事になるのだった・・・・・・・・






最終更新日  2021.10.31 00:00:21
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2021.10.28
「そう、それ僕なんです。」
そう言ってあらわれたのはカナイドに住む角のあるムクドリのビッキー・ポーだった。
同じくカナイドの住人のデブリンバトと共に人間に捕まったこれまた同じくカナイドの住人トットさん・・・あっ?彼は違いました。彼は単なるデブのハトでした。
とにかく彼を救うために集まった仲間たちはビッキーを見て唖然として。
「ビッキー?どうしてやって来たの?」
救助隊長のジョンピーが尋ねた。
ビッキーは言った。
「どうやらマリリンさん達を超ミニワームホールを通って東京に案内した時、デブリンバト達がこっそり後をついて来たみたいなんだ。おまけにネビ(超ミニブラックホールが作った空間のねじれでネズミとヘビが合体し、人間の世界ではツチノコと呼ばれている)達まで来ちゃったみたいなんだ。」
それで超ミニワームホールの出口の超ミニホワイトホールがあるあの公園を歩いていたトットさんが、デブリンバトと間違えられて一緒に捕まってしまったという事のようだ。
「カナイドから逃げ出したのはデブリンバトとネビだけか?」
それまで黙って聞いていたCIAの敏腕エージェントの黒猫ソロが聞いた。
「うん。あれからすぐに超ミニワームホールの入り口の超ミニブラックホールは監視が見張っているよ。」
ビッキーは頷いて言った。
「グーとタラさんの話じゃデブリンバトは彼らの出身惑星ビリノン星の生き物らしいから、地球外の生物と分かったら世界は大騒動になってしまう。どうにか早くトットさん達を救い出し、人間の手から取り戻す必要があるな。」
ジョンピーはそう言うとみんなを見つめた。
しかし、なかなか名案は浮かばなかった。
その時声がした。
「ちょっとちょっとあなた達。それには現状調査と情報でしょ。私が行って調べて来るわ。」
そう言ったのはなすこの親分さんの所にまめっちはと一緒に住むセキセインコのはなさんだった。






最終更新日  2021.10.28 00:00:21
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2021.10.24
テレビのニュース映像でトットさんが「こら!何度言ったら分かるんだ?俺はデブリンバトじゃねえ!ドバトのトットさんだ!」と叫んでいるのを見たまめっちは衝撃を受けた。
行方不明になったトットさんは人間に捕まっていたのだ。
マリリンさんの歓迎会の時に耳にしたデブリンバトというねじれ空間に挟まった様なカナイドという六甲山の秘密の谷の向こうにある町に住んでいる生物たちと一緒に。
このデブリンバトは宇宙人のグーやタラの生まれたビリノン星に生息する生物なのだが、なぜか地球のカナイド国に住みついているのだ。元来能天気で物事にこだわらずマイペースなデブリンバトたちは、なぜここにいるのかと聞かれても「さあ自分の親がここにいたからだろう。」くらいにしか気にも留めない調子だった。
トットさん発見の一報はマリリンさんを通じて菜食猫の会東京支部からトットさんの家族やジョンピーたちに連絡された。また千葉支部よりCIA(Cat Inteligence Agency)の元大物幹部マイロ君より秘密エージェントの黒猫ソロとペルシャ猫フジコにも情報が届いた。レオとサクラにはマリリンさんのご主人ジョニーさんが足を運んで伝えた。
こうしてトットさんを知る者たちへの連絡が終わり、まめっちさんのご主人なすこの親分さんのお宅をお借りしてトットさん救出作戦会議が催される事になった。
リーダーとなったのはトットさんの相棒ジョンピーである。
「皆さん、遠い所トットさん救出作戦会議にお集まりいただきましてありがとうございます。四日前に行方不明になったトットさんはまめっちさんが見ていたニュース番組より人間に捕まっている事が分かりました。しかもなぜかカナイドに住んでいるデブリンバトと一緒に捕まっていました。そのニュースでは他にもツチノコが目撃されたと言っていたそうです。これらの事から総合的に判断するとどうやら例の超ミニワームホールを抜けてマリリンさんたちを東京に案内したツノムクドリのビッキーの後を着いてやって来たものと思われます。」
ここでジョンピーはカナイド国カナイド町長のグレゴリーさんの言葉を紹介した。
「ううん、時々引っ越してくる人はいるけど、出て行く人はほとんどいないねえ。外に出てみたまえ、外の人たちは彼らを『ツチノコ』とか『カッパ』とか『カラス天狗』とか呼んで追いかけまわすもんだから、出て行きたがらないんだ。」
ジョンピーは続けた。
「平安時代に超ミニブラックホールが六甲山にやって来た時、空間がよじれカナイドが出来上がりました。その時そこにいた別々の生物が合体して新しい生物となり、カラスとサルでカラス天狗、カメとサルでカッパ、ネズミとヘビでツチノコが生まれたのです。このカナイドにある超ミニブラックホールは微妙なバランスの上に存在しており、大正11年に日本を訪れたアインシュタイン博士とカナイドの代表が秘かに話し合い、この超ミニブラックホールの事は秘密にしようと取り決めたのです。」
そこでジョンピーはゴクリと唾を飲み込み言った。
「人類がこの超ミニブラックホールの事を知ると、研究するうちに必ずそのバランスを壊してしまい、地球いや太陽系全体が増殖したブラックホールに一瞬の内に飲み込まれる事態に陥る可能性が高いからです。だからカナイドの存在を知られる事無くトットさんとデブリンバトを取り戻さないといけないのです。」
会議に集まった者たちはしんとして聞き入っていた。
テレビから新しいニュースが聞こえて来た。
「今度は東京の公園で角のあるムクドリが目撃されました。なんと今度は鳥に角が生えているのです。」
一同の耳はそのニュースにくぎ付けとなった。
「ツノムクドリ?」
マリリンさんが囁いた。
「そう、それ僕なんです。」
その時家の外から声がした。
それはツノムクドリのビッキーだった。






最終更新日  2021.10.24 00:34:44
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2021.10.21
トットさんが行方不明になって二日後、日本中に一大ニュースが流れた。
「東京のど真ん中で今まで知られていなかった新種生物発見!!」
びっくりマークが二つもついたこの大ニュースは日本だけでなく海外でも大ニュースとなった。
ここは東京、アマゾンの秘境やボルネオの山奥ではない。
菜食ネコの会関東支部長のまめっちは好物のオクラをくわえてテレビを見ているとたまたまこのニュースをやっていた。
映像が切り替わりその生物が映し出された。
くちばしがあるが、羽はほとんど退化。体はふやけたサッカーボールのようにぶよぶよ。飛ぶことは出来ない。そんな生物がなぜ今まで発見されなかったのか?
どこから来たのか?
その生物は6羽(一応鳥に分類されたから)。自分たちが騒ぎの中心であることは気にもかけずじゃれ合いふざけ合いもつれ合って遊んでいた。
ニュースを伝えるアナウンサーは更に言った。
「先ほど入った未確認情報ですが、この生物が発見された都内の公園(人が押し寄せるのを防ぐために伏せられていたが所詮無駄なこと、情報社会にすぐに嗅ぎつけられてしまった)で今度はツチノコが目撃されたとのことです。
まめっちは次の映像を見てくわえていたオクラをポトリと床に落とした。他の5羽の生物と違い羽はまだ退化していない生物がおり叫んでいた。
「こら!何度言ったら分かるんだ?俺はデブリンバトじゃねえ!ドバトのトットさんだ!」






最終更新日  2021.10.21 00:00:19
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