1535805 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

石川県 旅館 ホテル 心に残る旅の宿

石川県 旅館 ホテル 心に残る旅の宿

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Profile

yosshi1019

yosshi1019

Comments

マイコ3703@ 巡り巡ってたどり着きました♪ 普段はコメントしないのですが惹かれてコ…
HANG ZERO@ Re:舳倉島探検(08/26) 日本海に浮かぶ島なのですね。 全く存在を…
HANG ZERO@ Re:金沢散歩(4) 兼六園2(05/29) 季節によって全然違う表情を見せるのでし…
HANG ZERO@ Re:金沢散歩(3) 兼六園1(05/24) 兼六園ってそういういわれからなのですね…
HANG ZERO@ Re:金沢散歩(2) 尾山神社(05/16) 金沢では由緒ある。。。なのですね。 利家…

Favorite Blog

バラの初開花4品種~… New! 萌芽月さん

寂しい土曜日 New! mogurax000さん

今日から大型連休です New! 女将 けい子さん

お弁当 さぁちゅん☆さん

2025年の桜行脚(2… リュウちゃん6796さん

Category

2010.06.03
XML
[お宿の 怖い話 不思議な話 幽霊話]  2011年10月20日更新

[北海道 某ペション]
 ある30過ぎの男の人の話。

 当時は僕は26、独身の会社員、彼女もいないので気楽でした。旅と釣り好きで、給料のほとんどをそれにつぎ込んでいました。身が軽いので寒い時は暑いところへ、暑いときは涼しいところへと年に数回旅をしました。
 
 あれは七月下旬、北海道のあるペンションへ泊まった時のこと。そのペンションは古びているけど白塗りの瀟洒な建物、部屋数は四つ、安くて、海のそばで、近くに見晴らしの良い断崖も有って、僕のような1人でも受け入れてくれるから気に入っていました。この5、6年、年に一回はたずねているので女将さんやだんなさんとはもう顔見知り。あまりはやっている様子も無いから、「いつもの部屋空いてる?」と電話するとすぐ予約できました。

 その日は朝から断崖を降りて釣り。大物を釣って女将さんに料理をしてもらうのが楽しみでした。結構その日は釣れましたよ。女将さんも旦那さんも大喜びで腕を振るってくれました。夜は料理とお酒でもう一組のお客さんと盛り上がっちゃって、明日は早いからと床に付いたのは10時ぐらいかなあ。2階へ上がるともう床はきれいにとってありました。

 静かな旅館で1人で寝るのはやっぱり寂しいもんです。豆球一つの薄暗い部屋。時計の秒針が、かすかにチャッ、チャッ、チャッと音を立てる。耳の奥にシーンとするような静けさの音も聞こえる。でもそんな感じには慣れているので、たいていはそれを子守唄にしてすぐ眠ってしまいます。

 ところがその日はちょっと違っていました。いままでほとんど気付かなかったはるか遠くの波の音がいつもより鮮明に聞こえてなかなか寝付けません。でも波の音? うーん? 何といったらいいんでしょうね? ざーっと寄せてまた引いてゆく。その一定のリズムに耳を傾けていると、その波とともにはるか遠くへ行ってしまいたいような、本当に懐かしい気がするんです。またその波の音に混じって何か悲しい、呼び声のような、歌っているような気持ちも伝わってきて・・・恥ずかしい話、思わず涙がこぼれてきたんです。こんな感傷的になるのは初めてのことでした。

 そんな波の音を聞きながら布団を被ってウトウトし始めたころです。僕は妙な気分になりました。部屋の様子がなんとなく変わってきたような気がしたんです。なにか重苦しいような、寂しいような、湿っぽく薄いもやがどこからか漂ってくるような感じ。体がゾクゾクとおぞ気を振るい、息苦しくなって顔の布団をそっとどけました。

 そのとき、僕はふと誰かに見られているような気がして周りを見回しました。豆球の薄暗い中でも目が慣れているので隅々まで良く見えました。まず窓の方、それから天井、部屋の隅まで何度も目をやりましたよ。でも何も見つかりません。僕には霊感なんてありませんから。ただ時計の秒針の音と、かすかに階下の人の話し声が聞こえるばかりです。

 でもそのうち、妙に甘い香水のような、いやあれはお化粧の匂いなのかな、そんな匂いがどこからともなくしてきたんです。それと同時に僕の右頬のそばに生あったかい、体温のようなぬくみがゆっくり、ゆっくりと近づいてくるような気がするんです。それに、右耳元に息を吸ったり吐いたりするような微妙な空気のゆれも感じる。

誰かいる !・・・

 あれは確かに人の匂い。人がそばにいる時の匂いですよ。私はとっさにぬくみの方へ目を向けました。やはり何も見えません。ただ、これは雰囲気だけですが、私の顔のすぐ前に、目が二つ有るような気がして・・・あれは怖かった。身の毛が総立って、すぐにそのぬくみを避け立ち上がろうとしました。ところが、あれが腰が抜けたというんでしょうか、体が重くていうことをきかないんです。手足が針金のように硬くてあがきました。畳をずるずるとはいつくばり、階段の手摺りを力の限り握りしめ、落ちるように階下へと向かいました。

「あの部屋、どうしたんです。何かあったんですか!」

 僕の血相を見て、女将は、「ああ~ん・・」と泣くように顔をしかめて目を伏せるんです。テーブルに座っていた旦那さんも下を向いて顔をしかめています。女将さんはすぐに1階の部屋へ僕を案内して、「ごめんなさいね。今日はここにしてください。明日はとびっきりのご馳走を用意しますからね。」そう言って布団の準備を始めました。

 そうは言われても、原因を知らないと僕の恐怖は収まりそうに有りません。食い下がって聞き出したところ、こういう話でした。

 4カ月ほど前、宿泊客の26、7の若い男女が崖から飛び降りたそうです。男の方は助かりましたが、女性は亡くなりました。その二人が泊まったのは、やはり僕が泊まった部屋だったのです。

 男性は目鼻立ちが整った線の細い感じ、女性は色白細身で髪が長く結構美人だったとのこと。宿にいた時は、今時の恋人同士とは違って口数は少なく静かな面持ちでした。男の方は女性を気遣っている様子もあり、きっと素敵な夫婦になるんだろうなと思ったそうです。午後に二人が一緒に宿を出てから、二人を気に入った女将さん旦那さんは普段より腕をふるい、おかずを何品も余計に付けて帰りを待っていました。ところが夜の8時を過ぎても、11時になっても帰ってこない。女将さんは嫌な胸騒ぎがしたといいます。

 次の朝、釣り人が二人を見つけました。女性は黒い髪だけが水面に見え、海藻のように漂っていたそうです。男の方は、腰まで水につかり岩にはりついていました。春の寒い海でしたから、体は冷え切り意識も無く、もう少し発見が遅かったらだめだったでしょう。

 その女性は、年が似ている僕を、男が戻ってきたと勘違いしたのでしょうか。そうだとしたら、可愛そうに、何とか成仏してほしいです。

 ちなみにあれからも年に一回そのペンションを訪れてあの部屋に泊まらせて頂いています。あの部屋に出てきた女の方、その後どうしているか気になったものですから。



[お宿奇談 目次]

ホームへ戻る









お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2011.10.20 12:44:40
コメント(0) | コメントを書く
[お宿奇談(お宿の怖い話・不思議な話)] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.
X