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石川県 旅館 ホテル 心に残る旅の宿

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yosshi1019

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2010.06.11
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[お宿の 怖い話 不思議な話 幽霊話]  2011年10月20日更新

[北信越地方 某民宿]
 20代男性3人

 僕たちは大学のサークル仲間。夏休みに気の合った3人で、ある漁港の町の民宿へ1泊しました。その民宿は結構古く、部屋数が3つしかない小さなところ。でもご主人と女将さんがとても優しく、漁港の町だけに、とりわけ魚料理が新鮮でうまいと聞いていました。

 僕たちは宿に荷物を置くとすぐ釣竿を持ち出して、漁港の先っぽにある細長い防波堤の先端付近でサビキ釣りをしました。結構大漁でワイワイやっていますと、もう夕方5時半。食事は6時からだし、そろそろ帰ろうかなと思っていた頃です。

 ふと防波堤の先端、僕たちから20メートルほどの距離に、制服を着た小学校低学年くらいの女の子を見つけたんです。
「おい、俺ら来た時、あんな子いたか?」
「いやぁ、いなかったと思うけどな・・・」
 僕たちはそこへ行ってから3時間ほどいました。もしあの子がずっとそこにいたのなら、その間にいくらなんでも見かけないはずはないでしょう。僕たちに分からないうちにそこへ行ったのか。でも防波堤はせいぜい幅3、4メートル。僕たちはその幅いっぱいに釣り道具を広げて騒いでいました。その釣り道具をまたいで誰かが通り、誰も気付かないなんてとても考えられません。ひどく不審に思って釣り道具を片付けながらチラチラとその子の様子を窺がっていました。

 その子は1人遊びをしているようです。誰かとじゃんけんしたり、防波堤の表面に何かで字を書いたり。そのうち左手にしっかり持っていたクシャクシャの紙をコンクリートの上にそっと広げて、じっと見つめています。

 その時僕たちはあれっと思いました。その紙が、びしょびしょに濡れているような気がしたんです。そう思って、もっとよく見ると女の子もそうです。髪も制服もぐっしょり、水が制服の袖口から滴っているようです。それに立ち上がった姿、胸から上は明確ですが、その下の方がなんとなく薄ぼんやりとしているんです。僕たちの体は総毛立ちました。

「おい、帰るぞ。」
 僕はすぐさま釣り道具を放り投げ、早足で防波堤入り口へ向かいました。走って逃げると追っかけてきそうで怖かったんです。みんなも無言でついてきます。背筋に悪寒が走り足がもつれて倒れそうでした。そして、やっと防波堤の入り口まで来た時、いっせいに振り返りました。その時、女の子はもうどこかへ消えているんです。

 急いで宿へ戻り、ガクガク震えながら宿の主人へ伝えましたよ。ところが宿の主人、
「ああ、みいちゃんですよ。何度も供養したんですが、まだ出ますかい、可愛そうに。」
 と、こともなげに言うんです。
「あの、いつも出るんですか。」
「いやこの頃はほとんど見なくなったんですがね。みいちゃんがいなくなってしばらくの頃はよく見ました。夕方親父が帰ってくる頃になると、ああしてあそこで遊んでるんです。」
 そう言ってご主人はみいちゃんについて詳しく話してくれました。

『今から12年前。みいちゃんは少し知恵遅れの小学2年生。お母さんは、みいちゃんを生んですぐ亡くなり、お父さんと二人暮らしだった。お父さんは漁師。小麦色の肌、立派な体格、少し頑固な顔つきをしていたが、根はとても優しかった。
 漁師は漁に出ると2、3か月は家に帰ってこない。そこでその間、みいちゃんは叔母さんの家に預けられることになっていた。
 叔母さん夫婦は不憫に思ってみいちゃんを大事にしていたつもりだった。叱ったことなど一度もない。しかし、みいちゃんは叔母さん夫婦にあまりなつこうとしなかった。学校から帰るとすぐ、お父さんのいる海に最も近い防波堤で1人遊びするのが常だったという。
 お父さんが帰ってくると、それはそれはうれしそうで、学校のこと、同級生のこと、先生のこと、つらかったこと、悲しかったことを、何もかも、尽きずに話すのだった。お父さんはニコニコして聞き、いい事したら頭をなぜてくれる。つらかったことは、機嫌が直るまで抱っこしてくれる。だから、つらいことも悲しいことも、みんなうれしいことになってしまうのだ。お父さんがみいちゃんを肩ぼんぼして町をうれしそうに歩く姿は、はたから見ていてうらやましいほどの光景だったそうだ。
 そしてその日、ちょうどお父さんが帰ってくる日、みいちゃんは学校から帰るとすぐ、ランドセルを置いて例の防波堤へ走って行った。左手にはみいちゃんが学校で描いた絵を握っていた。今日学校で、とても上手ねえ、と先生に褒められたのだ。一番にお父さんに見せてあげたかった。
 おとうちゃん、なんて言うかな。頭をなぜてくれるかな。たかいたかいしてくれるかな。おとうちゃんの顔を思い浮かべると、話すことが次々と胸に湧き上がってくる。
 ところがその日、暴風波浪警報が出て漁船はみな港に入れず遠くで待機していた。叔母さんもみいちゃんに注意したはずだった。しかし、みいちゃんはお父さんが帰ってくることばかり気になって、とっくに忘れていたのだ。
 みいちゃんが怒涛の音に気付き1人遊びから目を上げると、波が防波堤を乗り越え、水が目の前を荒れ狂っていた。みいちゃんはすぐ海の方を振り向き、
「おとうちゃーん!」
「おとうちゃーん!」
 何度か泣き叫んだという。
 波は、そんなみいちゃんを一気にさらって行った。
 漁港の人たちが声に気付きすぐに駆けつけたが、あの波ではもう探すのはとても無理だった。波が収まった頃、漁港の人々総出でみいちゃんを探した。しかし、みいちゃんは今でもまだ見つかっていない。』

 僕たちはその話を聞き、みいちゃんの気持ちを感じてつい涙を流してしまいました。次の日、町で花束とりんごとみかん何個か、それと真新しい画用紙とクレヨンを買い、防波堤の先端へ向かいました。


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Last updated  2011.10.20 12:41:09
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