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カテゴリ:お宿奇談(お宿の怖い話・不思議な話)
[怖い話 不思議な話 幽霊話] 2011年10月20日更新
[関東 廃ペンション] 大学生男女5人 夏休み、私たち女性3人、男子2人は、出るといううわさの廃ペンションへ肝だめしに行くことを計画しました。 聞くところによると、そこは12年前、結婚したての若い夫婦が建てたそうです。はじめの数年夢を持ち、いろいろ工夫もしてやっていましたが、何をしてもお客さんがあまり来てくれない。一ヶ月にお客は20人程度。土地建物のローン、水道光熱費、仕入れ費、その他雑費を引くと、手元に残るのは3万円前後、これではとても生きてゆくことができません。そのうち奥さんが失踪し、残った旦那さんは精神が不安定になり、ついに首を吊ってしまったのです。 そんな話を聞き私たちの心は準備万端、夕方6時、多少薄暗くなってからペンションの前に立ちました。さすがに廃屋らしく、周囲は草ぼうぼう、窓ガラスが全て割れ、ゾクゾクと私たちの好奇心が駆り立てられます。裏口の扉が壊れて開いておりましたので、そこから中へ入りました。床は、割れたガラス、ジュースの缶、コップ、雑誌が散乱。壁は薄黒く変色し、ところどころに先客の落書きが乱暴に書かれています。テーブルの上はホコリだらけ、そしてこの匂い、ホコリとカビの匂いでしょうね。すえた匂いが建物内に充満しています。 「ねえねえ、あのシミ、人の形に見えない? ご主人、ここで亡くなったのかも。」と私がユキに言うと、 「いやあ、やめてよ。こわい、こわい、こわい、こわい。」 ユキが私にしがみついてきました。 ユキは人一倍怖がりで叫びまわるくせに、こうした話にはすぐ乗ってくるんです。それが面白くて私はよくからかって楽しんでいました。 そうして1階と2階の探検も終わり、何も不審なものが見当たらず、ちょっと気抜けしていた頃でした。男子が1階の床に地下室入り口らしきものを見つけたんです。四角い床の一部を持ち上げると下へ降りる金属製のハシゴが有ります。懐中電灯で照らしたら8畳ほどの結構広い部屋が見えました。棚が見え、酒瓶が並んでいるようでした。その他床に大きな漬物樽のようなものが三つ見えます。 「どうも、貯蔵庫らしいな。今夜はあれで乾杯といくか。」と俊也が言います。 「きゃー、あそこに降りちゃうの。私、だめだめ。絶対なんかいる。」 ユキが叫びます。でもこのこはいつも叫ぶだけで、ついて来るに決まってるんです。 私たちは降りることに決め、床のフタを目いっぱいに開けました。しかし、フタは立ったところまでしか開きません。見るとフタの片側に取付金具が有りましたから、どうもこのフタは車のボンネットのように、途中まで開けて棒で立てかける仕組みらしいのです。でもその棒が見つからないので、了が壊れた窓枠の一部をあてがって、下へ降りていきました。 降りてゆくごとに強烈なカビの匂いが鼻についてきました。それに地下室だけに寒々としてきます。懐中電灯に描き出された様子では、ここは先客がいなかったようです。壁には落書きが無く、棚も、片隅に置かれた机らしきものも整然としています。棚の扉を開け酒を見ると中身が入っていました。 「おい、俺たち数年酒に困らないかも知れないぞ。」 了がそう言うとサチが、 「あら、こんなことって窃盗罪って言わないのかしら。」 「おまえ、かたいこと言うなよな。今は所有者がいないだろ。」 漬物樽のようなものをコンコンとたたいてみると中身が入っている感じでした。 「嫌だ、これは開けないでね。今夜の夢に出てきちゃうから。」と私。 そんなことを話しているうち、突然上からドンと大きい音がしました。びっくりして見上げると床のフタが閉まっています。私たちは閉じ込められた気がしてパニックになりました。 「うおおー」 「きゃあー」 我先にとハシゴを駆け上がりました。ユキが最後になったらしく、 「いやあー、お願い待って。私を連れてってー。」と私の上着のすそを引っ張ります。 「ユキ、やめてよ。」私は恐怖感で上へあがることしか頭に有りません。ついそう叫んでその手を振り払ってしまいました。 そして、ぜいぜいと息を切らして上へあがり、みんなの顔を見回すと、なんとユキの顔を見つけたんです。とっさに私は後ろを振り返りました。しかし、私の後には誰もいません。暗い地下室があるばかり。 「ねえ・・・今の、だれ? ねえ・・・ねえ・・・だれ?」 [お宿奇談 目次] ホームへ戻る お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2011.10.20 12:38:16
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