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石川県 旅館 ホテル 心に残る旅の宿

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yosshi1019

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2010.07.10
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[お宿の怖い話 不思議な話 幽霊]

[中部地方 某民宿]
 40代の男性

 私はある山岳地帯のふもとで民宿を経営しています。山岳ガイドの資格が有り、時々お客さんとともに山に登ります。ガイドの途中、一度だけ死を覚悟したほどの事故にあい、大事に育てていたシベリアンハスキー犬のマサゴロを亡くしてしまいました。その時に不思議なことが有りましたのでそれをお話しします。
 
 マサゴロがまだ生まれたばかりの頃、あるブリーダーの方から安価に譲って頂きました。名前は尊敬する亡き祖父の名前から取りました。小さい頃は実にやんちゃであちこちひっくり返してばかりいましたが、私たちには全く面倒なんて思えないほど可愛い犬でした。

 大きくなるにつれ落ち着いてきて精悍な風貌に変わってきました。それに大変頭がいい犬でした。私は山登りの時たいてい一緒に連れて行ったんですが、数度歩いただけでその道を覚え、危険な場所を回避できます。私がいなくても山岳ガイドができたんではないでしょうか。

 6年前の2月10日、私は50代のご夫婦を冬山登山ガイドする予定になっていました。冬山の登山は大変危険、念には念を入れた準備が必要です。その日は高気圧に覆われて快晴、山の様子も穏やかです。私は地元警察へ通知し、午前9時出発、山頂に至るのは午後12時半頃、山頂でしばらく写真を撮ったりして、午後1時に山頂出発、午後4時半ふもと着という予定を立てました。

 外へ出て「マサゴロ」と呼ぶと「うおん」と答えて走ってきます。
「わあ、可愛いワンちゃん。」と奥さん。
「シベリアンハスキーのマサゴロ、7歳です。人間で言うと50歳位かな。今日はご一緒させて頂きます。充分頼りになりますよ。もしかしたら私よりガイドが上手かもしれません。」
「それは心強い。うーむ、きれいな銀の毛並みですね。私たちもこんな犬がほしいな。」と旦那さん。
 お二人ともマサゴロが気に入ってくれたようです。

 私たちは定刻に出発しました。山頂までは何事も無く到着。しかし帰途につくと、次第に風が出てきました。山の風は大変危険です。足元をすくわれると一瞬のうちに谷底へ転落してしまいます。しばらくの間注意しながら歩くことができましたが、午後2時頃からますます強風になり、歩くのを断念、体温低下を防ぐためテントを張り一休みすることにしました。

 山側の雪を掘り上げ、二人分のテント用穴を空け、雪を積み風除けにします。しかし、そうしているうちにも風はさらに強まってきます。方向の無い縦横無尽な強風が設営中のテントを襲い、容赦なく引き剥がそうとする。頬を張り倒すほどの力が私たちを襲う。テントの目前は谷底、舞い上がった粉雪が斜面で渦を巻いて荒れ狂っている。風にさらわれあそこへ落ち込んでしまったら、途中の段差で体は宙を舞い、ただ死有るのみです。

 ようやくテントを張り終え、私とマサゴロ、ご夫婦お二人がテントに入り込みました。強風は衰える気配がありません。私は過去およそ30回冬山へ登っています。しかし、このような強風に出会ったは初めてです。テントは揺れかしぎ、谷底からヒョオー、ヒョオーと魔物の遠吠えのような激しい音が聞こえます。

 それからおよそ1時間後、隣からご夫婦の叫び声が聞こえました。私はテントから顔を出すと、ご夫婦のテントがゆがんでいるのが見えました。テントを支えていた紐が切れたようです。あのままでは二人とも飛ばされる。私は急いでテントを出て紐をつかみました。
「長谷川さん、いったんテントを出てください!」
 二人とも装備を持って出てきた直後、強烈な突風がテントをもぎ取っていきました。と同時に私のテントもぐにゃりとゆがみました。そして雪面から離れようとした瞬間、マサゴロが私のテントに噛み付いたのです。
「マサゴロ、やめろ!」
 まだその言葉も言い終わらないうち、マサゴロとテントは宙高く舞い上がり、谷底へ滑り落ちてゆきました。

 しかし私たちにはマサゴロをゆっくり悼む余裕もありません。ご夫婦が持ってきたテントは一張り、これで私たちのテントは無くなった訳です。このままの状態が長く続けば体温が奪われ凍死の可能性があります。それに私は先ほどの騒動で足をくじいたようです。足首が見る間に腫れ上がり、動かすと激痛が襲います。これでは私の下山は無理、一刻も早く救助隊を呼ばねばなりません。雪洞を掘ろうとしましたが、この強風では危険です。私たちは穴の壁に身を寄せてひたすら風がやむのを待っていました。

 そうして午後4時頃、風が幾分おさまってきた時、ご夫婦だけ下山してもらうことにしました。私は、ご夫婦にこう伝えました。ふもとで救助隊へ連絡し、すぐに助けに来てもらえば大丈夫、日頃それくらいのことは鍛えてあるからと。しかし、これはご夫婦にあわてず最も安全に降りて頂くための方便です。ここからふもとまで普通に歩けば2時間半くらい、だがこの風の中、これから次第に薄暗くなる。おそらく3時間以上かかるだろう。救助隊がすぐに出発しても、真っ暗な中を登ってくることになる。およそ4時間はかかるだろう。その7時間以上の間、テントも無く夜の寒さで体が持つはずが無い。私はすでに死を覚悟していたんです。

 ご夫婦からありったけの毛布を頂き、体中に巻きました。しかし夕刻が迫っており、気温が次第に下がってきます。氷点下20度以下、立ち上がって雪洞を掘ろうとしました。しかし、片足ではどうしても思うように掘れません。私は体温を上げようと、ごろごろ転がり体を動かしました。そのうち体の感覚が無くなってきます。顔をたたいても痛くありません。猛烈な眠気も襲ってきます。眠ったらおしまい、そのまま目が覚めないのです。そうやって三時間以上頑張りましたか。しかし、私の戦いもそこまで。体を動かすことに疲れてちょっと一呼吸した時、そのまま意識が無くなりました。

 私は夢を見ていました。妻の祥子と出会ったこと、子供たちが生まれたこと、その時の祥子の満足そうな顔、そんな私が辿ってきた人生がフィルムの映像のように目の前に現れます。ああ、こちらへ走ってくるのはマサゴロだ。尻尾を振って私へ飛びついてきて甘えます。マサゴロにはずいぶんお世話になったなあ。ご褒美に体中をなぜてやりました・・・

 ところが、私は人の声で目を覚ましたのです。担架へ乗せられ運ばれてゆく途中でした。救助隊が間に合ったのです。
「おお、気がつきましたか。よくあんなところで体が持ちましたな。」
 私は感謝の言葉を出そうとしましたが口が動きません。
「ところで、日高さん、あなた、犬をお連れでしたか。われわれが明かりの中にあなたを見つけた時、大きい犬があなたの上に寝そべっていたように見えたんですがね。でも不思議なんですよ。周りの状況を調べるため明かりを一瞬はずし、もう一度照らした時もういなくなっていたんです。」
『マサゴロ!・・・お前か・・・・』
 私は運ばれていく途中、涙ばかり流していました。

[お宿奇談 目次] 

 





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Last updated  2014.04.19 23:01:24
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