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カテゴリ:石川県の民話 伝説
石川県の昔話18 魚のおんがえし
[魚のおんがえし] [参考:金沢の民話と伝説より] むかしむかし、金沢の八田町というところに地頭職(その地域の管理者)鈴木家が有りましたが、この鈴木家五代目新九郎という若者のお話です。新九郎はなかなかいい男で、よく働き、人にはやさしく、村人にとても人気がありました。釣りが好きで、とれた魚はよく年寄りのところへ持って行って分けてあげました。 ある日、釣りをしていて一匹のスズキを釣り上げ、ビクに入れようとすると、そのスズキの胸が傷ついているのに気づき、かわいそうに思い、 「おまえさん、はやく傷を治して元気でやれよ。」と再び川へ逃がしてやりました。 逃したスズキは新九郎の前を二度、三度円を描いて泳いで、そのまま川下の方へ消えてゆきました。 その二週間後の夜のこと。新九郎の家に若い女の人が訪ねて恥ずかしそうにこう言うのです。 「私はみよと申します。あなた様をお見かけした時からお慕いしておりました。どうかしばらく私をこの家に置いてください。」 見るとじつに美しい女の人です。身のこなしも品がよく、新九郎は一目で気に入り、家に来てもらうことにしました。 新九郎も働き者でしたが、みよもまたそれ以上に働きものでした。村人たちは、いつの間にか現れた新九郎のお嫁さんを不思議がっていましたが、次第に二人を応援するようになりました。 みよが現れてからというもの、不思議と釣りはほとんど大漁です。 「じゃ、仕事もかたがついたし、そろそろ釣りに行ってくるかな。」 「はい、あなた、行ってらっしゃい。」 そうして夕方ビクにいっぱいの魚を抱えて新九郎は帰ってきます。 ある時みよがこう言いました。 「たくさんの生き物を頂くのですもの。二人で弔ってあげましょうよ。」 「それもそうだな。いいことを言う。」 それで二人はそれから毎日念仏をあげることにしました。 ところがそれから数年過ぎた夕方のこと、新九郎が釣りから帰ってくると、みよが部屋で涙を流しているのです。 「みよ、どうしたんだ。」と新九郎はかけ寄りました。 「あなた、私はそろそろ身を捨てて、違う世界へ行かねばなりません。これは仕方のないことと分かりつつ、あなたを思うと身が引きさかれる思いです。」 「みよ、何を言うんだ!」 新九郎が驚いていると、 「私はいつかあなたに助けられた魚のスズキです。魚はあなたよりも先に身を捨てなくてはなりません。私が元いた竜宮へ渡っても、あなたのことは決して忘れません。」 みよは一体のぼさつ像を新九郎に手渡し、 「これは私が子供の時から肌身離さず持っていたぼさつ像です。あなたのもとに置いて念仏をあげてください。その時は必ずあなたのことを偲んでいます。」 みよはそう言うと、玄関から外へかけ出して行きました。 「みよ、みよ、お願いだ、待ってくれ。」 新九郎はそのあとを追いましたが、追うごとにみよの姿は次第に薄くなってゆき、やがて赤い夕陽の景色の中へ溶けこんでいってしまいました。 新九郎の悲しみは大変なものでした。 「みよー、みよー」と村じゅうを探しまわり、真夜中に深い森へ分け入りました。しかし、みよの姿はもうどこにもみつかりません。 そうして明け方になり、いつも釣りに来る川べりをとぼとぼと歩いていた時のことです。川べりのよどみで一匹の魚が仰向けに死んでいるのを見つけました。それを手ですくい上げてよく見ると、胸に傷が治ったあとがありました。まさにいつか離してあげたスズキに間違いありません。 「おおお、みよ・・・」 新九郎は泣きながら、川岸の土を掘り、みよをねんごろに埋めて、お墓を作ってあげたのでした。 その後新九郎は、地頭職となり、村人たちの尊敬をうけつつ八田の村を長い間おさめておりました。やがて亡くなる寸前、みよのそばへ埋めてくれと遺言を残し、8月16日、惜しまれながら亡くなりました。村人たちは、みよの墓の横に新九郎と、新九郎が肌身離さず持っていた小さなぼさつ像を手厚く葬り、二人を忘れないため、鈴木家先祖が立て直したという八田町「須々幾神社(すすきじんじゃ)」で、今でも毎年8月16日にお祭りをしているそうです。(文責:津幡町 吉田恵一) [金沢市八田町 須々幾神社(すすきじんじゃ] [石川県昔話 目次] 八田町は金沢市街地からやや離れています。すぐ近くには宿泊施設は見当たりません。JR金沢駅から車で15分から20分程度です。 ☆☆☆ 石川県 旅館 ホテルご紹介☆☆☆ [金沢駅前] [金沢繁華街・中心街・郊外] [河北郡] [七尾市] [鳳珠郡能登町] [能登町 農家民宿] [珠洲市] [輪島市 (1) (2)] [羽咋郡] [羽咋市] [白山市] [小松市] [加賀市] どうぞ きまっし石川→ホームへ戻る お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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こんばんは。
純愛ですね。須々幾神社で二人は仲良く眠っているのでしょうね。 (2011.09.22 18:41:01)
恩返しのお話はいくつか聞いたことがありますがやっぱり途中でいなくなってしまうのですね・・・
そこがいつも残念でなりません「泣」最後まで添い遂げることはないのかな・・。 (2011.09.22 22:19:05) |