2014/04/16(水)20:11
石川県の昔話51 普光院地獄 白山の伝説より
石川県の昔話51 普光院地獄 2014年4月9日更新
[普光院地獄]
[参考:白山の伝説より]
むかしむかし、越前(福井県)の国に伏魔道士普光院(ふくまどうし ふこういん)という大変悪い山伏がいました。この普光院、山伏の作法もお祈りもほとんど知りませんでした。それもそのはず、生まれた村であまりに乱暴、誤魔化しをするので追い出され、山伏になろうと修行場へ入りましたがそこでもすぐ破門され、各地を放浪していたのです。そして二人の仲間と一緒に村々を訪れて、魔を払ってやると村人たちをおどし、金をふんだくって生きていました。
ある時、加賀の白山近くにやってきたので、俺達も山伏らしくちょっと拝んでくるかと白山へ登ることにしました。やがて頂上に至ると青く輝く素晴らしい池を見つけました。火口湖「翠ヶ池(みどりがいけ)」です。その水の美しさにひかれて池のほとりへ降りて行き、手を浸してみたらじつに気持ちがいい。ところがどうしたことか、その手を上げると、まるでヤケドをしたように赤くなりひどく痛むのです。
「あつつつつっ。」
普光院は急いでまた水につけました。すると一瞬で痛みがとまり、気持ちが良くなります。普光院は手を上げられないで、これはどうしたらいいんだと考えていると、次第に痛みが腕を上がってきました。普光院はそのつど手をさらに深く入れて行きました。やがて痛みが腕だけでなく、胸にも腰にも足にも広がっていきます。ついに普光院は水の中に飛び込んで仲間を呼びました。
「おおい、たすけてくれー。」
仲間がやってきて普光院の体を水から上げようとしましたが、
「おおお、上げるな、痛い、痛いぞ。」
水から出た体の部分が火に焼かれるほど痛むのです。そうして水から赤くただれた顔だけ出した普光院は、
「ちくしょう、一体なんだこれはー!」
と叫び、仲間の手を振り払い水の中に沈んで行きました。
仲間たちはただただ震えて見ているしか無かったといいます。
こんなことが有ってから、この翠ヶ池は別名「普光院地獄」と呼ばれるようになりました。なぜこんなことが起こったかは分かっていません。普光院が神の怒りに触れたのか、それともその時代にたまたま悪い水が溜まっていたのか。今でも白山の地元の人たちは、この翠ヶ池の水に触れてはいけないと語り合っているそうです。
(文責:津幡町 吉田恵一)
[石川県昔話 目次]
白山の火口湖「翠ヶ池」と白山のふもと地区の地図をご紹介します。リンクするのは失礼だと思いますので、矢印のあとをコピーし、検索窓に貼り付けトップをご覧ください。
(写真)→ 霊峰白山(2011年8月14日)翠ヶ池
(グーグルマップ)→ 白山市 一里野
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