Zero-Alpha/永澤 護のブログ

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Dogen3



2005.2.20.Workshop分科会レジュメ 
 
*Part.one:「汎優生主義(Pan-eugenics)」というテーマ研究の方法論
1.テーマ設定:「普遍化された優生主義仮説」の妥当性検証
2.研究の背景と目的
*今後、予防を目的とした予測医療の潮流が、社会福祉政策の実践をどの程度方向づけていく可能性があるのか? ⇒生存/生活の質を階層化するQOL尺度によるリスクグループの選別の可能性
*医療保険福祉のグローバルな政策レベルにおいては、「個々人のQOLは一元的な尺度により階層序列化可能である」という信念がパラダイムとなっている。
3.検証する仮説
* 普遍化された優生主義仮説:ある個人Aが、「この私の(または誰かの)生存(+)が、他の誰かの生存(-)よりも一層生きるに値する」という言説形態において明示化し得る意識的または無意識的信念を持つ。
⇒「個々人のQOLは一元的な尺度により階層序列化可能である」⇒「テクノロジーの介入による個々人のQOL向上は正当化され得る」
*会話文のサンプル:
下記のそれぞれのa欄の発話文を読んで、最初に頭に浮かんだ言葉をb欄に記述して、会話文
<a>-<b>を完成させて下さい。
(1).<a:子どもが生まれてくる前に遺伝子を治療して、今まで治らなかった病気をあらかじめ治すことができるかもしれない>
<b:                                          >
4.分析方法
各回答の点数及び各回答者の点数の合計点を「仮説肯定度スケール」により3段階に区分した結果の統計分析及び会話文の言説分析を行う。

*Part.two:『ヒミズ』の少年の言葉の分析
1.「オレは「自分も特別」などと思い込んでいる「普通」の連中のずーずーしいふるまいがどうしても許せん ぶっ殺してやりたくなる」
:物語全体を包み込む「普通」というテーマ
2.「情けない奴だ 実に情けない お前 超弱い遺伝子」
:「普通」の持つ自己矛盾的性格。強/弱という階層序列の存在。
3.「…オレと正造は高校へは行かない…… 中学出たらすぐに働くんだ(中略)オレはここでのんびりボートを貸す たぶん一生… ここには大きな幸福はないがきっと大きな災いもないだろう オレはそれで大満足だ どうだ? お前からしたらクソのような人生か?」
:階層序列化の眼差しへの囚われ
4.「正確に言うと元とーちゃん オレの中で「死んだら笑える人」No.1の男だ 世の中にはよ…
いるんだよ 本当に死んだ方がいい人間が 生きてると人に迷惑ばかりかけるどーしようもないクズが」
:「遺伝的つながりとしての親子関係」を受容できないが否定もできないという袋小路
5.「…たまたまクズのオスとメスの間に生まれただけだ… だがオレはクズじゃない オレの未来は誰にも変えられない 見てろよ オレは必ず立派な大人になる!!」
:他者の欲望を欠いた(同時に自己の欲望を失った)オレの自滅
6.「…… ……死ね みんな死ね」
:オレ=みんな=他者一般が攻撃対象。「オレ」の攻撃/自殺か「みんな」の攻撃/抹消かという選択。
7.「クソォ!!! 全部あいつだ! 全部あいつのせいだ!! お前のせいでオレの人生はガタガタだ!! いつもみじめな気持ちでいっぱいだ!! わかるか!! お前はオレの悪の権化だ!! 死ね!! 死んで責任をとれ!!(中略)もう…ダメだ! もうダメだ!!」
:父=法=象徴的秩序の空無化と「宿命」
8.「世の中には頭の悪い奴がたくさんいるんだ…そういう連中はいくら考えたってどうにもならない…じゃあどうする? …すべての答を行動で出していくしかないだろう?」
:「頭の悪い奴」=<我々自身の無意識>によって乗っ取られ空無化した者たち。「行動」のみが「すべての答」となる。
9.「わかってる そんな事は分かってるんだ…… …………バカがバカを殺す…それでいいじゃないか……」
:無際限の階層序列化のプロセスに組み込まれる個々人の生存は、同時に、完璧に対象化されてしまうという意味において、我々の生活世界における居場所を失う。このような状況における個々人の生存は、お互いの存在を抹消し合うことで自滅に向かう。
少年の最後の言葉
「………やっぱり………ダメなのか?… ……どうしても…無理か? (……決まってるんだ)…そうか……決まってるのか……」
:「普通」とは、声=幻聴となった<我々自身の無意識>が、すでに決定済みの「宿命」として告げる自滅=死を意味する。


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