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黒色花

黒色花

第四十七話「蒼い眼と紅い目」

「さあ!かかってきな!」
雷牙は背中の忍刀を構えた。
「・・・、フウ・・・。」
大きくため息を一つしたバシャーモ。
次に彼はこういった。
「めんどくせぇが、さっさと片付けるぞ・・・。」
「ザレゴトを・・・!」
「後悔するぞ・・・!」
ゴッ!
バシャーモから相当なプレッシャーが放たれた。
「うおっ!」
「うわ・・・!」
紅蓮はプレッシャーに耐え切れず、吹っ飛んで木に激突してしまった。
「うぐっ・・・、くそっ・・・!」
紅蓮はそのまま気を失ってしまった。
「うおおお・・・!一体何が・・・!」
「形態α(スタイルアルファ)・・・。」
するとバシャーモの右手に、紅いスジのようなものが出てきた。
「何するかしらねぇが、一発で決めてやるよ!」
二人が身構えたとき・・・。
「待ちなよ・・・。」
ドコからともなく声がする。
「勝てるわけないでしょ、キミなんかがさ。」
「しっ・・・、しかし・・・。」
「いいから・・・、撤退だよ。」
「チッ・・・、今日はコレくらいにしてやる!」
雷牙は去っていった。
「・・・、逃げたか・・・。」
バシャーモは、横たわる紅蓮に近付いた。
そして手からポッと小さな炎をだした。
「治炎(ちえん)・・・。」
小さな炎は優しく紅蓮を包んだ。
「しばらくしたら治るだろ・・・、一つ言っておく・・・、俺は未来のお前だ・・・。」
そういうと、未来の紅蓮はスウッと消えていった・・・。
そのころ蓬は・・・。
ズガガガ!
「うわっ!」
二頭の氷の龍から必死に逃げていた。
しかしこのあまりにも気温が低い状況が、体力を奪うのはたやすいことだった。
あっという間に蓬は息をあげ、手足がふるえ、目の前もかすみ始めた。
「う・・・。」
ドサッ・・・、蓬はその場に倒れた。
少しずつ、氷が蓬の体を侵食し始めた。
パキパキッと侵食されるにつれ、蓬の意識がなくなっていく・・・。
「あーあ、なっさけねぇ・・・、全然駄目だ・・・。」
薄れゆく意識の中、蓬はグッ、と体にチカラを入れた。
しかし、氷は割れるどころか侵食されていく。
「こうなったら・・・。」
蓬の両手がポウ、と少しの光を出した。
すると、ポンッと一輪のバラができた。
「なぁにする気だ・・・?どうせ死ぬんだからよぉ・・・。」
「さあ・・・、それはどうかな・・・?」
スババババ!
バラから一気に根が生え、氷の地面に突き刺さった。
少したった後、氷を突き破りバラが一つ、一つと増えていく・・・。
最終的には、森の中が一つのバラ園と化した。
「な、なんだ・・・?コレは・・・。」
蓬を覆っていた氷も溶け、体が動けるようになった。
「コレは自分の心器、ラヴローズ(愛の薔薇)・・・、薔薇の花言葉は愛・・・、美しいでしょ・・・。」
「チッ、あんたがこんな心器を持っているとはな・・・。」
「さあ、遊んでおいで・・・、ラヴローズ・・・。」
ザザザ・・・!
薔薇が勢いよく、地面を侵食し始めた。
同時に氷を突き破り、薔薇が生えてきて、またツルを伸ばす。
棘のついたツルが麗の動きをどんどん制限していく。
「負けるわけにはいかない・・・、氷波(ひょうは)!」
麗は大きく、刀を振りかぶった・・・。
「ハア!」
大きく、刀を振る動作をすると冷気が固まったような衝撃波が繰り出された。
まっすぐに蓬へと飛んでくる。
「甘いですよ・・・、薔薇の壁(ローズウォール)・・・。」
蓬の前に薔薇の蔓が束ねられ、大きな壁のようになった。
冷気の衝撃波はその壁の前にむなしく散った。
「な・・・。」
「薔薇は世界一、美しく、気高い植物・・・、そのような冷気、どうってことありません・・・。」
「なら・・・、これならどうだ!氷龍(ひょうりゅう)!」
麗の周りに、3匹の氷の龍が現れた。
「さっきと同じ技じゃないですか・・・、こっちはコレ一匹で十分です。」
ゾゾゾゾ・・・、薔薇が一点に集中するように集まってきた。
「薔薇龍(ローズドラゴン)。」
薔薇の一本一本が束ねられ、一つの棘(いばら)のドラゴンへと変わった。
「さあ、来なさい・・・。」
挑発しているように、話す蓬。
カチンときた麗は、思わず・・・。
「ええい!いけ!氷の龍たちよ!」
氷の龍たちをけしかけてしまった。
3匹の龍が蓬に襲い掛かる!
しかし・・・。
「さあ、暴れなさい・・・、薔薇龍よ・・・。」
グアアアアと棘のドラゴンが一つ唸ると、あっという間に、氷の龍達を蹴散らした。
「嘘・・・?」
ヘタッと座り込む麗・・・。
「そ、そんな・・・、氷の龍が・・・。」
逃げようとする麗の前に、薔薇龍が立ちふさがる。
「ヒッ・・・。」
「棘の口に生き物が入るとどうなるのやら・・・、さあ、食べてしまいなさい・・・。」
クパァと大きく口を開ける薔薇龍・・・。
「う・・・、うわあああああ!」
麗に食いつこうとしたその時・・・!
パキィィィン・・・。
薔薇龍がカチコチに凍りついた・・・。
みたところ、麗は何もしていない・・・。
「え・・・?」
麗はきょとんとしている。
目の前の状況を整理しきれていないようだ・・・。
「誰が・・・、!」
蓬は、茂みから何かの気配を感じた。
「はあ、まったく駄目な人ですね、こんな雑魚にどれだけ手間取ってんだか・・・。」
茂みの中からユキメノコがあらわれた。
「あなたは・・・?」
「名乗るほどのものではありません、しかし部下が相当お世話になったようですね、お礼に、こうして差し上げますわ・・・。」
「何を・・・。」
ユキメノコが手を空にかかげるモーションをした瞬間・・・。
バキィン!
蓬の右腕が瞬時に凍った・・・。
「は・・・?」
「さあさあさあ・・・、どんどん凍りなさい・・・。」
バキィン!バキィン!バキィン!
蓬の手足は完全に凍ってしまった。
「う・・・、うわあああああ!」
力なくその場に倒れる蓬。
「や・・・、やったわ!ついにコイツを・・・!」
「お黙りなさい、黙らないとあなたもこのようにしますわよ・・・。」
「す、すいません・・・。」
あの気が強い麗が一言で黙ってしまった。
やはり、あのユキメノコは相当な戦闘能力を秘めているようだ。
「うく・・・、くそ・・・。」
「さあ、凍りなさい・・・、静かにしていれば、できるだけ美しく凍らしてあげる。」
パキパキ・・・。
「くそ・・・、くそっ・・・!」
氷が蓬の体をどんどん侵食していく・・・。
「まって!」
声が響いた。
「その声は・・・、湊・・・?」
「うん・・・、きちゃった・・・。」
「ば・・・、早く戻れ!死んじゃうぞ!」
「ごめん・・・、いや、一回じゃ足らないな、ごめん・・・。」
なぜか、二回謝った湊。
その行動に意味が分からない蓬。
「・・・、どういうこと・・・?」
「実はね・・・、僕ね・・・、目が見えたんだ・・・。」
湊が、ハラリと眼帯を取った、右目は紅色でうつくしく、左目は蒼く淡い色だった。
「え・・・?」
「ごめんね、僕、本当は見えたんだ、みんなを不幸にしないように・・・。」
「・・・、どういうことだい?湊。」
「僕の目は、最初から見えなかったわけじゃなかった、終戦管理局の連中に襲われて、足が動かなくなったのは事実だけど、その時、僕の心器、命眼(めいがん)が目覚めた、能力は・・・、右目は見た無機質の物体に任意で命を与えること。」
湊は、左目を閉じ、地面をじっと見つめた。
すると、モコモコと地面がもり上がり、腕のような形になった。
「ゴーレム・アーム・・・。」
ドガガ!
ゴーレム・アームは、ユキメノコと麗を攻撃し始めた。
すさまじい攻撃速度に、圧倒される二人。
「森よ、ごめんね。」
今にもあたりそうな麗に対し、ユキメノコはヒョイヒョイと攻撃をよける。
「強力な攻撃ですが、当たらなければ意味がない、しかしコレは厄介ですね・・・。」
前方迫りくるゴーレム・アームに手をむけた、また凍らせる気だ。
「そうはさせない!ゴーレム・キューブ!」
地面からでてきた土のハコは、ユキメノコのホカクした!
「こんな能力もあるなんて・・・!」
「僕の大事な人を傷つけた罪は重いよ・・・、これからは本気で行くぞ!」
続く・・・。


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