砂カエルとホタルと月
そこは真っ暗な世界・・・・地面は湿っている・・・・聞こえるのはどこから聞こえる雫の音そしてブツブツ聞こえる声「こんなはずじゃない・・・・」「俺が悪いんじゃない・・・・」「どうしてわかってくれない・・・」「なぜ 俺だけ・・・・」「死にたい・・・消えたい・・・」「・・・もう・・・・情けない・・・」そう言ってるのはゲコゲコと鳴かないカエルココは古井戸の底 どうしてカエルはここに落ちたかわからない落ちたときから孤独でいじける性格になった毎日地面の泥を指で集め見つめてそしてゲコゲコと鳴かずに愚痴を言っていた目が上にあるのに・・・上を見たことがなかった・・・毎日、毎晩、下を向き蔦の葉で覆われて光が届かない井戸の底そこで砂に不満という不満を砂に向かい指でなぞった『こうなったのは・・・そうだ あいつがいけないんだ』『こんな俺にしたのは・・・そうだ 社会がいけないんだ』そうやって 誰かのせいにして誰かを恨んで毎日暗い井戸の底でいじけていたそんなある日・・頭の上でぼんやり光るものがあったぼんやりと優しい光。それはホタルだったホタルはカエルに近づき話しかけた「どうしてカエルなのに歌わないの?」「歌っても誰も聞いてくれないよ」「そうか カエルの歌は素敵なのに それに雨も呼ぶのに」「雨を呼んでも 楽しいことなんてない・・・」「そうかな?」カエルはそれよりもホタルの光が羨ましかったホタルのようになりたかった「ホタルの方が素敵だよ そんなにきれいに光って」「そう? じゃあ おいでよ」「どこへ?」「上だよ」「上?」「そうだよ ココは真っ暗だけど上があるんだ 蔦の葉を 照らしてあげるから 登ってごらん」ホタルはカエルを井戸の上に誘いましたツタの葉を足場にどんどん上に上がって行きますホタルの光を手がかりに必死にすべる葉っぱをしがみつきながら泥で汚れた手は蔦の茎を持っても滑ります湿った蔦の葉はもっと足を滑らしますそれでもカエルは頑張ったホタルの光が希望の光に見えた光が見える方には新しいものがあるようなそんな気がしたから(そうだ・・・小さかった頃 こんな気持ち持ってた気がする)カエルは頑張った いつもならもう落ちているいつもならもうあきらめているでも・・・でも・・・もうだめだ・・・と思った瞬間「ほら 着いたよ」とホタルが言いましたカエルはハアハア言いながら目を開けると目の前には大きなきれいな満月が輝いていました「なんて 綺麗なんだ・・・・」「なんて 優しい光なんだ・・・・」ホタルが言いました「僕はこの満月の光になりたい だから毎日がんばって 光っているんだ そして今日の満月はいつもより綺麗なんだよ」「え?なんで?」「だってさっきまで雨が降って、空気を綺麗にしてくれたから」「カエルのおかげでね」「俺にも・・・できるかな?」「俺にも・・・月を綺麗にできるかな?」「できるよ その笑顔があればね」「すぐには無理でも ホタルの光から月の光に月の光から太陽の光に そんな笑顔ができるから」カエルは歌うことを思い出しました