全司法労働組合近畿地区連合会

第38回地連司研集会(講演の質疑応答)

                        2002.6.22
講演の内容に対する質疑応答
(K)
 ADRの内容について説明してほしいと思います。
(本部:I)
 ADRというのは,裁判所の外にある例えば民間型といわれるものは東京弁護士会がやっている交通事件の示談関係,建築業務関係,労働委員会関係等がありますが,これらがADRなんだと,私もそういうものだと思っていたのです。しかし,ADRはひとつの独立したものとして司法制度改革推進会議の10の委員会の一つなのです。そうすると,司法制度改革推進会議のADR感と私たちのADR感が少し違うのではないかと考えざるをえません。国公労連のインターネットを見てみると,民事調停をADRと位置づけているという審議会の姿勢が出ているのです。そうすると,ADRというのは行政や民間だけにおかれるものではなくて,どうも司法の中にもあるということのようです。つまり,裁判以外のものをADRと呼ぶということですが,そうなると調停も全部入ってしまうことになります。
 しかし,ADRと裁判所は違うではないかという批判があります。日弁連の文献によれば,司法イコール裁判所プラスADRということを言っています。これは裁判所以外の人がADRというのでは成立しないのです。つまり,私たちのADR感と彼らのADR感との間には乖離があるように思えます。また,日本でも英米型の制度をつくることになるのですが,アメリカの場合,法的拘束力を持ったADRがあります。例えば株式会社形式でADRを作られていますが日本でも株式会社住専機構があり,裁判官が参加しています。またJRの清算事業団にも裁判官が出向しており,現在のADRが法の支配を受けるとなれば,裁判官の参加できるところはあらゆるところに裁判官を配置できることになります 裁判所を含む形でのADRの形の論議を今,なされていると考えます。例えば離婚調停を手数料を取って株式会社でやるという法律が仮に通った場合,現在の裁判官の構成上,問題はないことになります。
 ただ言えるのは,法律上,離婚問題を株式会社の離婚調停に持っていくというような観点はないと思われるので裁判所の側に近づいた形でのADRのあり方を考えることになります。ADRの範囲がどうなるのかまだ不明ですが,そこをきちんとみていく必要があります。
 簡裁の目標が何人かということは全部財務省がやっているわけですが,今後は財務省は予算しかやらない,予算の中で司法予算を作ってそれを裁判所に丸渡しして裁判所で勝手に配分できる制度になっていくことになります。そして将来,財務省との復活折衝等の折衝が極端に少なくなると思われます。しかし予算の縛りは厳然とあります。4000億円という予算の中で今の人員を維持せざるを得ない,もしくは裁判官を増やすにはその他の職種を減らさざるを得ないということになります 裁判所外に設置されるADRというのは手数料を取る予算外のものであり,そういったADRをつくったとすると,手数料収入を前提にした場合儲かることになります。また国民にとっては簡便であり,裁判所のような煩雑な手続きがいらないから使いやすくなるわけです。裁判所で扱っている分野を裁判所外のADRに出す場合,裁判所本体をどうするのかという問題を考える必要があります。 一時期,司法制度改革は追い風だと言われましたが,それはADRを想定していなかったからです。ADRと裁判所の関係はパラレルの問題と思われます。だからそういった意味では私たちはあまりADRは便利だからそれを大きくすべきだという議論がいいのかということを考える必要があります。
(K)
 組合員の中で司法制度改革によって裁判所職員の待遇がドイツやフランスと比べてどうなるのか誰も答えられなかったわけですが,どうでしょうか。
(本部:I)
 根本として今の日本の司法制度がドイツやフランスの司法制度改革と比較しうるのかという問題があります。私は今の司法制度改革の流れは比較するとすればアジア圏と比較すべきだと思います。法の支配を英米型に変えようというものですから,ドイツやフランスは英米型ではないわけです。日本やドイツはキャリア裁判官の体系の中で発達してきた組織なのです。例えば,日独裁判官物語という本に出てくる裁判官は一生裁判官なのです。ただ,ドイツの裁判官は転勤がないのです。だから身分保障や裁判官のあり方は転勤の有無や司法行政の部分を除けばドイツと日本はほとんど変わらないのです。本来,日本はドイツの裁判所の影響を受けています。最高裁の色々な意見を聞いているとドイツ型やフランス型を意識していると思われます。したがって,我々が違和感なく司法制度改革をしようとするとドイツをモデルにするというのが一つの考え方だと思います。
 英米型の裁判所の制度にしようとすると,全ての提案が英米型の提案になります。例えば,三審制において専門三審はだめだと議論の中で最初から切ってしまうわけですね。それで出てきたのが陪審制なわけですが,この陪審制は自民党が反対したのです。だから日本独自の三審制にしようということになったのです。 また,書記官の立場をどうとらえるかですが,職員制度の中で2つの側面があります。一つは従来の書記官業務で,もう一つは書記官は司法補助官の方向にもっていこうという動きがあります。司法補助官としての役割を付加して書記官の職務評価を高めようとする発想です。例えばコートマネージャーの面としては少額訴訟手続による書記官の役割があります。そして職務権限を明確にしてその範囲をきちんと設定するという必要があるわけです。司法制度改革は書記官の権限強化に直接,つながるのかという問題が出てきます。この一番わかりやすい例としては,事前争点整理があります。裁判員制度というのがありますが,その場合は法曹三者による論点整理が行われ,裁判員の論点を拘束するのです。そうすると書記官は法曹三者の論点整理を使うということになるのです。しかも刑事司法
だけではなく民事司法にもこの裁判員制度を導入すべきだという意見もあります。




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