バス停地名学のすすめ

2009/09/06(日)23:32

第365回 【都電の残像編(19)】 古川橋(ふるかわばし)

港区(40)

バス停データ ◆所在地:港区 ◆路線:都営バス[都06]系統他 みなさん、こんにちは。 五反田駅前を発車した都電4系統は、国道1号(桜田通り)を北上し、清正公前で目黒駅前からの5系統と合流、さらに魚籃坂下で品川駅前からの7系統と合流すると、間もなく古川橋電停に到着しました。ここでは中目黒からの8系統、渋谷駅前からの34系統も顔を揃えましたので、終日電車の姿が絶えることのない繁華な交差点だったことが想像できます。現在も、かつての都電34系統のルートを辿る都営バス[都06]系統を中心に、4本の路線が通過する古川橋バス停がありますが、地下鉄の駅から少し離れているせいもあり、よほどの用事がない限り訪ねるチャンスの少ない場所でもあります。 古川橋については、私の好きな永井荷風の随筆『日和下駄』にこんな記述があります。 溝川が貧民窟に調和する光景の中(うち)、その最も悲惨なる一例を挙げれば麻布の古川橋から三之橋(さんのはし)に至る間の川筋であろう 「貧民窟」というとストレートな表現ですが、この古川橋付近の川沿いには明治から大正期にかけて小さな町工場がぎっしりと建ち並び、大雨のたびに氾濫を繰り返す古川の水に悩まされながらも、一日一日を懸命に暮らす人々の姿が見られました。 橋そのものは、昭和初年頃に鋼橋に架け替えられていますから、スラム的な周囲の景観もその頃から次第に変り始めたのではないでしょうか。現在の橋は昭和43年改架のものですが、せっかく橋が新しくなったのも束の間、その翌年の10月をもって、古川橋を渡った都電路線はすべて廃止となりました。 (次回へつづく) ↑↑↑ブログランキング参加中です。

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