第108回 雷(いかずち) 後編
(前回からのつづき)旧江戸川の河川敷を上流方向へしばらく歩いた後、再びバス通りへと戻ると、目の前に雷不動こと真蔵院が見えてきます。真蔵院は、天文年間(1532~54)の創建と伝えられる古刹ですが、古く、葛西沖で時化にあった漁師をこの寺の松にいた竜が光を発して助けたという言い伝えがあり、そこから波切り不動の異名がある他、その不動が雷を退治したことから雷不動とも呼ばれるようになったといいます。波切り不動は、海難から漁師を守るお不動様として、古くからの漁師町に多く見られますが、そういえばこのあたりも旧江戸川河口の漁師町として発展した場所であり、周囲を見渡せば、住宅街の合い間にそうした歴史の匂いをかすかに残したような佇まいも見られ、海に近い立地であることを再認識させられます。真蔵寺境内には、力強く「雷不動明王」と刻まれた文政元年(1818)建立の大きな道標が保存されています。これは、東葛西1丁目の新川河口部にあったものを、平成3年に修復して移設したものとのことですが、こうした道標の存在も、雷不動が広く人々の信仰を集めていたことを物語っています。真蔵寺のそばには、雷バス停のひとつ先にあたる雷上組バス停があります。確か葛西駅からの途中にも、仲町西組、仲町東組というバス停がありました。「組」とは、かつてのその地域の小集落単位を指した呼称と思われますが、現在の街並みの中にこうしたバス停名があること自体、もはや文化財と同等の大切な街の財産といっても過言ではないでしょう。人気blogランキングへ