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ザ・スーパー・ポップ宣言

私の好きな甘茶4

私の好きな甘茶ソウル(4)
MY FAVORITE SWEET SOUL (4)



スウィート・ソウル・ベスト10 集計一覧

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湯村輝彦 GANGSTA LUV

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マニアック甘茶ソウル@YOU TUBE



【 甘茶偏差値 70

AL HUDSON & THE SOUL PARTNERS / MY NUMBER ONE NEED (ATCO 7011)'75

AL HUDSON  MY NUMBER ONE NEED.jpg

75年製ということなので、1stアルバム「ESPECIALLY FOR YOU」より以前に発表されたもののようです。ねっちょり甘いというタイプの曲ではなく、爽やかで明るく、ちょっぴり酸っぱさを兼ね揃えた可愛らしい作品。後のONE WAY時代の「WHO'S FOOLIN' WHO」にも通じる、高度に熟成した、他に類をみない味わい深い素ん晴らしーいメロディを持った曲。ミディアムタイプでどこか切ない雰囲気が漂うところも一緒です。更にヤング甘茶グループ、PRESIDENTSなどにも通じる、若さゆえの弾力性、青臭さ、緊迫感を加えた感じの、より素晴らしい内容と言っちゃいましょう。ヴォーカルは切なく一本気なぐらいの真摯さを感じさせますが、時折入る明るくひょうきんなコーラスにより、更に感情が増幅されて伝わってきます。明るい笑顔で泣きながら歌う、みたいな感じネ。「WHO'S FOOLIN' WHO」やPRESIDENTS好きならオススメです。

DELEGATION / OH HONEY LP(SHADY BROOK 010)

DELEGATION

やっぱり私は宇宙の無限的広がり、浮遊感等を感じさせるこの原曲が一番好き。初めて雑音混じり、しかも途絶え途絶えしながら微かにラジオから聞いた時の感激ってなかった。今にして思えば、かえってそんな状態で聞いたからこそなおさら味わい深かったのかも。 ピコピコ、 ピコピコ、 ピコピコ、 ピコピコ。無重力、真空の宇宙空間に漂う電子音って感じがいいなあ。

DR.YORK / LOVE WON'T LET ME WAIT LP(TIMELESS 400406)'87

dr york renew

甘茶ソウルファンには、その特異なスウィート・センスで一目置かれているドクター・ヨークですが、WIKIPEDIAによると、現在彼は多くの児童に対する性的いたづらの罪で懲役135年の刑に処されているようです。おそらくはそれ故にアルバムは全て廃盤状態のようで、何とも残念な状況。中古市場で彼のレコードが高騰しているという話は特に聞きませんが、数十年単位で考えたとき、彼の諸作品がどのような形でソウル・ファンに聴き継がれていくのだろうか、、、と不安でなりません。

75年のMAJOR HARRIS (ATLANTIC 3248)のヒットが原曲と思われるこの曲は、オリジナルを更にエロチックに耽美的にアレンジした名カバー。サウンドは87年ということで機械臭がキツイんだけど、70年代的甘さを損なわずにシンセなどの冷ややかな触感を生かした洗練された内容は流石のセンス。元々セクシーなあえぎ声を大胆に挿れるなど直接的に「大人の愛の営み」を表現した曲なのだけれども、それをより官能的に、ムーディーに増幅させ幻想的とさえ言える内容に仕立て上げています。

特にワイヤーが軋むような音はSMなどの変態的行為を連想させ、甘茶ソウル界でも異彩を放つ名アレンジ。さすが本物の変態大人、我らが首領ドクター・ヨーク様であります。こういうのは、なかなかお目にかかれない特異な内容で個人的には大好きなんですが、逆に拒否反応を示す人も多いんでしょうかねえ、、、。

こうした官能的とさえ言える超凄甘茶センスの持ち主ならば、性犯罪の2桁や3桁起こして当たり前、、、というか、そうした特異性癖・性嗜好を持つ人間だからこそ表現できる音世界があるということでしょう。

EBONYS / IT'S FOREVER (PHILEDELPHIA INTERNATIONAL 2363)'73

EBONYS  ITS FOREVER.jpg ebonys

ARRANGE:BOBBY MARTIN COMPOSE:L.HUFF PRODUCE:GAMBLE HUFF U.S.BDG、甘茶ソウル百科事典双方に掲載。ギャンブル&ハフプロデュースによるフィリーの傑作アルバムから。「永遠」という大仰なタイトルに負けない稀にみる大作バラード。悠久の時の流れのようなゆったりとしたテンポとファルセットコーラスをベースに、バリトンの絶唱が素晴らしいネ。何よりもそうしたヴォーカルワークよりも全体に漂うムードこそが特段に素晴らしいと思う。出だししばらくの鉄琴系の音、「パパパパパー」と煌めくコーラス、そして甘くやさしいストリングスはこの世以外のどこか他の世界へと誘ってくれる。涅槃とか彼岸とかそういった俗世な言葉が似合う世界ね。個人的には「萩尾望都/光瀬龍の百億の昼と千億の夜」のエンディングテーマとして最適なのではないかと思っている。アルバムバージョンは7分15秒ほどと長いのだが後半のバリトン中心の展開はちょっと飽きる。シングルやコンピなどに収録される4分30秒程度の短いバージョンの方が余韻を残してていい。

FREDDIE WATERS / I'M AFRAID TO LET YOU INTO MY LIFE (OCTOBER 1011)'77

FREDDIE WATERS.jpg FREDDIE WATERS  SINGING A NEW SONG.jpg

フレディ・ウォーターズはテネシー州ナッシュビルのディープ系歌手で、曲もいわゆるファルセット甘茶ではなく、南部フレイバー漂う甘めのサザン・バラードといった趣き。ただストリングスを前面に押し出したサウンドは格調の高さを感じさせ、蜂蜜のようにトロリとした甘めのギターは、そこに南部っぽい熱気と甘さを加えています。これは甘さに徹底的にこだわり特化した幾多の甘茶サウンドにも負けず劣らずの素晴らしい出来と言えますね。

そんなバック・サウンドだけを聴いてても十分楽しめる内容なんですけど、複雑に展開するメロディも凝っているし、更にどのメロディ・パートも感動的で味わい深い。特にサビに向けてストリングスを伴って徐々に盛り上げていく箇所など「こみ上げ感」抜群です。こんな感動的なサザン/ディープ風味の甘茶曲をもっと知りたいものです。甘茶ソウル百科事典 BILLY'S 091でセレクト。「SINGING A NEW SONG」というCDにも収録されているようです。

GIRLS / THE HURT'S STILL HERE (MEMPHIS 102)'70

THE GIRLS THE HURT'S STILL HERE.jpg

1970年と少し古めの女性サザンソウル。甘茶ソウルというには少し無理があるかも。ザ・ガールズとグループ名義だけどコーラスが入ることは無く、ほとんど女性シンガーのソロ作といった感じ。調べてみると彼女達は「OVATIONS / HAVING A PARTY」でバッキング・ヴォーカルとして歌ったユーラ・ブフォード、マキシン・ジョーンズ、マリー・デイヴィスがメンバーのようです。

曲はウォーキング・テンポの明るい曲調で如何にも南部っぽい暖かみを感じさせる雰囲気。一番の聴き所はストリングスとピアノを導入したサウンドで、かなりポップで洗練された味わい。高気圧に覆われた暖かく乾いた青空を思わせるストリングスは品性があり、要所要所で軽快に鳴り渡るピアノの響きも歯切れがいい。更に少し牧歌的で多幸感に満ちたメロディも秀逸。「心の痛みはまだ残ってるの」と歌う甘酸っぱい感触と、どことなく懐かしい純朴で平和な時の流れを感じさせてくれ、そこが私がこの曲を甘茶と感じる最大のポイントです。

リードはちょっとディープがかってるけど、力の入れ・抜き加減も適度だし声質も暗くもなく特に絶唱タイプという程でもない。これならサザン/ディープ/レディ・ソウルが苦手な人でも聴き易いんじゃないかな。

GOD'S GIFT TO WOMEN / IF THIS IS REALITY (I WANT FANTASY) (A-I 4001)

God's Gift To Women-If This Is Reality (I Want Fantasy).jpg

フラミンゴスタジオによる傑作甘茶ソウルコンピシリーズ第一弾「SUPER SWEET SOUL VOL.1 / LET'S MAKE LOVE」の冒頭を飾った甘茶ソウル。(そちらでは波の音を被せた編集版が楽しめこれまたグッド。)また「THE RARE NEW JERSEY'S A COLLECTION OF EXCEPTIONAL GROUPS」にも収録されていて、ここのライナーでは鈴木啓志氏が「GOD'S GIFT TO WOMENとPERSIANSが合体したのがSTREET PEOPLEではないか」と推測を書かれています。

「神様から貴婦人への贈り物」なんていう洒落た名前のグループの曲で、ご存知ニュージャージーのジョージカーPによる作品。上品で控えめなサウンドをバックに切なく物悲しいコーラス、柔と剛を巧みに使い分けたリードが静かに歌い上げる内容。ヴォーカルは声量も不足気味で伸びやかという訳ではないので、どこかぎこちない感じ。しかし、だからこそ弱弱しさ、物悲しさがヒシヒシと伝わってくるのです。このヴォーカル・スタイルは将にGEORGE KERRのそれに似てますね。派手さは無く、非常に淡白な内容だけど、それだけに味わい深さのある飽きの来ない作品だと思います。「YOU TUBE」で聴けます。

PHILLIP MITCHELL / THERE'S ANOTHER IN MY LIFE (EVENT 223)'75

PHILLIP MITCHELL 4.jpg

甘茶ソウル百科事典未掲載でU.S.BDG #761のフィリップ・ミッチェルのNOT ON LP曲。U.S.BDGでもほとんどこの曲について触れられていないけど、甘茶ファンにとっては彼のアルバムよりも遥かに重要な作品と言えるでしょう。彼のインタビューが掲載されているこちらのページによるとビルボードのR&Bチャートで58位を記録したらしいです。海賊コンピ「SOUL FROM THE VAULT RARE SWEET DYNAMITE VOL.5」にも収録されており、マニアにも昔から人気だったようですね。

この曲はクレジットに(P.MITCHELL-B.CLEMENTS)とある彼の自作曲。表情を微妙に変化させながら展開されるメロディは、最初から最後までどこを切ってもなだらかで味わい深いライン。特にサビのメロディは情感豊かで日本人の心を鷲掴みですね。ヴォーカルも押し引き、強弱の加減が程よく時にファルセットや語りを交えながらしっとり丁寧に歌いこまれて好印象。ちょっと淡白で悲しげな女性コーラスや控えめに鳴り響くエレキシタールなどの細かな演出もニクイ。全体のムードも申し分ないけれど、何と言っても彼の作曲センスの良さがキラリと光る作品です。

* ところで、作詞作曲の英語のクレジットって前に書いてある方が作曲者ってことですよね?

SMITH CONNECTION / YOU AIN'T LIVIN' UNLESS YOU'RE LOVIN' LP(MUSIC MERCHANT 105)'72

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「スミス家の親戚縁者たち」の72年の大傑作アルバム「UNDER MY WINGS」収録曲。U.S.BDG、甘茶ソウル百科事典ともにこの曲に関する記述は無いけど、こういう甘茶ソウル代表曲をアルバムの中の流れの一つぐらいに捉えられては困りますネ。

70年代初期の澄んだ青空がどこまでも天高ければ、弦の優雅な調べも負けずに格調高い。人々が純真無垢に愛や世の中、明るい未来を信じていた、その輝く心のようにグロッケンは煌めきます。それら古き良き時代の空気をいっぱいに詰め込んだサウンドをバックに、スミス兄弟達のハーモニーも幾重にも優しく重なりあう。大空に描かれた甘いメロディラインは見事なまでに完璧で美しくきれいな弧を描いて、、、。ああ、70年代の古臭い匂い最高!

SMOKE / I'M SO LONELY LP(J-BRIDGE 7544)'76

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甘茶ソウル百科事典 MOONY'S SELLECT 085。約8分にもおよぶ大作。出だしの心洗われるような清いハープの音色と全編に流れる澄んだシンセとオルガン?の取り合わせは、この世でないどこか遠い世界を彷徨っているかのような錯覚に陥る。涅槃とか彼岸とか、そういった俗世間離れした空間。リードはちょいDEEPだからソウルファン以外にはチト辛いかも知れないですね。THE MIGHTY PASSIONS '84(BRIDGEBR-200)のカバーあり。(画像2は「スージィ甘金/ださいぜ木村くん」より)

TRUTH / COME BACK HOME (SOUNDS OF CLEVELAND 11711)

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U.S.BDG #684のTRUTH。「究極の、、、」で有名なLARRY HANCOCKが在籍したことでも有名。甘茶ソウル百科事典での記載はないし、「THE DEEPEST SOUL VOL.2 (GOLDMINE GSCD41)」に収録されているから一般的にはディープ扱い?でも、このムードなら甘茶ソウルだよねえ。U.S.BDGの久保田泰広氏によると、この「COME BACK HOME」が彼等の初レコードでここで聴けるツインリードはラリーハンコックとリオグリーン。「ソウルトレインでの映像は脳裏に焼き付いて離れない人が多い」とのことなので、もしやと思い「YOU TUBE」検索してみると、なんとその伝説の映像がありました。で、出来の方がこれまたグレイト。鳥肌ものですね、興奮しました。私、個人的に初めてソウル関連の映像を保存しました。これを見ると確かに途中でリードは交代していますねえ。ここでの映像は2分弱ですが、シングルでは延々7分も金太郎飴的にこの調子です。「IF YOU COME BACK HOME」という甘いコーラス、エレキシタール、ハープ?グロッケンなどの煌びやかな甘ーいバックに二人のリードの実に素晴らしい絶唱合戦。甘いメロディも最高ですね。



【 甘茶偏差値 69

ANTHONY WATSON / SOLID LOVE AFFAIR LP(AMHERST 3301)'85

ANTHONY WATSON.jpg REGGAE HITS VOL.19

甘百で選出されていたので初めて聴くに至ったこの曲、ねちっこくてくどいほどの歌いまわしだけどもそこがおおいに魅力なのですが、初めて聴いたはずなのにどうも聞き覚えがある。で、それがどこで聴いたものだったのかというと、、、。

REGGAE HITS VOL.19 / V.A. (英JETSTAR 1019) 95年?

そう、レゲエのコンピなのです。ここではこの曲のレゲエバージョンを聴かせてくれてます。これがまた実にレゲエのリズムに良くあうんです。私はレゲエでも特にラヴァーズロックが好きなので、一粒で二度美味しい曲であります。私はこちらの95年レゲエバージョンの方が断然好きです。曲にメリハリが付いたのはもちろん表情もより生き生きしているように感じる。何より甘茶ソウルのミディアムテンポものは大好きなのだ。

暴論かもしれないが、一部ダンサーを除いて言うと、ソウルよりもレゲエの方が「より優れた形態に進化した」リズムを持っていると思ってるからね。レゲエ、特にラヴァーズ好きな方なら100%レゲエ版の方に軍配をあげると思うけど、ソウルファンの方はどう思うのだろう。是非聞き比べて感想をお聞きしたい。

しかし何故この95年という時期にこのレゲエバージョンが製作されたのかは謎です。あるいは彼の過去の作品のレゲエバージョンがもっと製作されているのでしょうか?

ANTHONY WATSON / SOLID LOVE AFFAIR

Chi-lites / SOLID LOVE AFFAIR

APOLLO BROTHERS / SHACKING UP PT. ONE (RAY-LEN 4557)'75



ディープソウルの有名個人サイト「Sir Shambling」さんでも紹介しているディープ風味の甘茶名曲。「Sir Shambling」さんが取り上げてるんだからマニアにはディープソウル名曲ってことで通っているのかも知れません。ワシントンDCの兄弟グループみたいですね。75年産。

「同棲」というタイトルの曲で、おそらくそれ風のことについての長く甘めの語りから入る曲。バックは、どんよりとした曇り空、はたまた、つかみどころのない混沌とした夢の中を漂っているかのような幻想的なムードを持つサウンドで実に印象的。甘いコーラスを交えてリードが交互に歌うスタイルで、少しディープがかった唱法がなかなか味わい深いですね。サビのコーラスは同棲という甘い愛の生活を夢見る若者というよりも、山あり谷ありの激動の人生を長く一緒に暮らしてきた熟年夫婦の落ち着きと達観を感じさせる。シングルの裏はこの曲のPT.TWOなんだけど、もう少しコンパクトにまとめてA面に入れた方が良かったかも。

「YOU TUBE」で聴けます。

COALITIONS / INSTEAD...HOW ARE YOU (RE DUN 7475)'74

coalitoins

甘茶ソウル百科事典P.36掲載曲でコーリションズと表記されてます。連合とか連立とかいう意味みたい。曲名は「そんなことより、、、元気かい?」って感じかな。曲はちょっとディープ風味のバリトンが丁寧に、こってりと歌いあげるスロウ。声質に透明感は無いけど、この歌声には実に清々しさを感じさせられます。コーラスやシンセの奏でる柔らかく温かみのあるサウンドも同様で、全編に渡り荘厳で聖なる空気に満ち溢れています。甘い語りなんかも入りますが、一種ゴスペルに近い雰囲気とでもいいましょうか、思わず真摯に聴き入ってしまいますね。

海賊盤コンピのSOUL FROM THE VAULT RARE SWEET DYNAMITE VOL.7にも収録されてました。アドヒスタさんのところで聴けます。

CISSY HOUSTON / YOUR SONG LP(PRIVATE STOCK 2031)'77

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元Sweet Inspirations(U.S.BDG #90)のメンバーでWHITNEY HOUSTONの母としても知られるシシー・ヒューストンの77年のソロ・アルバム収録曲。曲自体は白人シンガーELTON JOHNの世界的大ヒット曲のカバーですが、ゴスペル仕込みの非常にソウルフルな歌いこみにより一聴すると違う曲に聴こえてしまうほどの変貌ぶり。

基本アレンジは大仰なソウル・バラード。全体として淡白で当たり障りの無いアレンジであるエルトンジョン版と比べ、こちらは静と動の対比がくっきりとしたダイナミックなアレンジ。ピアノやストリングスを使っている点は同じだけど、かなり奥行きがありますね。それは彼女の唱法にも同様に言えて、基本的に絶唱タイプながら静の部分までも実に鮮やかにきめ細かく表現されています。更に自由度の高い独創的な解釈によりこのメロディの持つ新しい側面を引き出したと言っていいでしょう。

加えてゴスペル風味たっぷりの厚めの女性コーラス陣も重要な活躍をみせています。情感ぶちまけのシシーのリードを優しく穏やかに見守るかのような、体温低め、感情抑制型のコーラスは、その対比により深く心に染み入ります。元々のメロディの良さもあるけど、ポピュラー・ヒットのソウル・カバーものとしては最高峰に位置するカバーと言えるんじゃないかな。有名なメロディなのでレディソウルの入門編としてもお勧め出来そう。

DELPHONICS / DON'T THROW IT ALL AWAY (ARISTA 0308)'78

delpho dont throw

甘茶の王様グループ、DELFONICSが晩年にDELPHONICSと若干文字をいじって出したシングルオンリー曲。あまりの出来の良さと嵌り具合からオリジナル曲と思っていたんだけど実はカバー作品。オリジナルはクリフ・リチャードのバックを務めていたことで有名なSHADOWSの75年のもので、他には76年にOlivia Newton-Johnなどもカバーしています。上記2曲を聴くと白人歌手によるポピュラーヒットという感じで個人的にはいまいち魅かれない。然しながらソウル界屈指の甘さをもつウイリアム・ハートによるファルセット・ヴォーカルのこのバージョンは甘さ、切なさが大幅に増幅され元々のメロディの良さも手伝ってとても心に響きます。バックのサウンドやコーラスも派手さは無いけれど上手く曲を盛り上げてますね。多くのスウィート名曲を残した彼らだけど晩年になってもその輝きは失われていなかった感じがします。B級ポピュラーヒットもデルフォニクスにかかれば超A級甘茶に大変貌ってことで、彼らにはもっともっとこうしたカバーを残して欲しかったですねえ。

「YOU TUBE」で聴けます。

DYNAMIC FIVE / LOVER'S LULLABYE (UA 1096)'77

DYNAMIC FIVE LOVER'S LULLABYE.jpg KAWABATASI.jpg

ラララーラララーという単純明快だけど甘いコーラスが妙に懐かしい何かを思い起こさせる。ララバイ、つまり子守唄ということだけどまさにそんな原始的で直接DNAを刺激するかのような響き、輝きを持った甘茶ソウル。グロッケンのキラキラ感もいい。甘茶ソウル百科事典P.16「私の甘茶自慢」でソウルバーオーナーの川畑満男さんが紹介されているのが、この曲収録のレアアルバム「DYNAMIC FIVE / LOVE IS THE KEY (MR-LA899-H)」。かなり珍しいようでWEB検索してみましたがどこにも見つかりませんでした。その川畑さんによると「BEAUTIFUL LADY」もバラードで最高とのことなので是非とも聴いてみたいものです。(その後FM番組出演時にリクエストにこたえて頂けました。)

FIVE SATINS FEATURING FREDDIE PARRIS / SUMMER IN NEW YORK (VICTOR 74-0478)

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BILLY'S SELLECT 021。古き良き時代の香りのする、ゆったりとした、いい意味で脱力系の名曲で、恋人とのニューヨークで過ごした夏の思い出を歌っている感じです。甘く郷愁を誘うメロディにDOO-WOPの香りのするコーラスが非常に味のあるムードを作り上げています。明るく乾いた、少し埃と汗にまみれたセピア色の空気感、素晴らし過ぎ!クレジットが無いので分からないのですが、一体この曲はいつ頃リリースされたのでしょう?曲のムード、コーラスの入れ方などはかなりDOO-WOPの香りを残しながらもサウンドは70年代に入ってからのもののように聴こえますが、、、。

GEORGE KERR / HOW CAN I GET AWAY LP(FROM ME FOR A WHILE)'70



「IF THIS WORLD WERE MINE」収録曲。73年にDEREK MARTINがカバー。

J.B.BINGHAM / ALL ALONE BY THE TELEPHONE (UNITED ARTISTS 816)'76

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GOLDMINEのモダンソウルコンピ「MODERN SOUL VOLUME 6 (GSCD82)」にも収録されていた泣きのソウル。確かに幾分洗練された雰囲気はあるけれどモダンというよりは、かなり甘茶よりな内容。メロディは如何にも日本人の琴線に触れそうな泣きのラインで日本語カバーがあっても受けそうですね。更に全体としてどこもムラ無く金太郎飴的に良く出来た内容なのが特筆もの。きれいで起伏に富んで甘味もあり、しかも実にキャッチー。特にサビメロの込み上げっぷりは一種完成された様式美と言っていい。

ヴォーカルの声質も魅力的で男ながらに色っぽくてイイのです。終始泣きを入れ、体をクネクネとくねらせ甘えながら歌うのを聴くと思わず食べちゃくなっちゃいますねえ。同じ76年にCHECKMATES,LTD.もやってますが、いまひとつヴォーカルに甘味の足りないバージョン。どっちがオリジナルなんでしょうか、、、。画像のものは再発盤です。「YOU TUBE」で聴けます。

MARVA KING / ISLE OF CASTAWAYS LP「FEELS RIGHT」(PLANET P-16)'81

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タイトルの意味は「漂流者たちの島」って感じでしょうか。その割には悲壮感など微塵も感じさせない、暖かくまぶしい太陽の光で一杯の多幸感に満ちた南国の小島を彷彿させます。ゆったりとしたトラックをベースに、ふわふわっとした浮遊感一杯のトラックは、あるいは「ひょっこりひょうたん島」よろしく漂流している島そのものをイメージしてるんじゃないかとも思わせますね。

ヴォーカルはソウルフルというよりはむしろアニソン・声優ソング的で、過剰なまでに可愛らしい女性を演出しています。快活な子猫のようにいたづらっぽく、ツンやデレを適度にまぶしながら表情豊な女の子をチャーミングに表現していますね。甘い声質そのものの魅力も相まって実に萌えるヴォーカルですなー。甘酸っぱく爽やかなメロディも秀逸ですが、こういうのは甘茶ソウルとは言わないんでしょうかねえ。

「YOU TUBE」で聴けます。

MIKI HONEYCUTT / MAKE UP FOR LOST TIME (PAULA 422)'76

MIKI HONEYCUTT.jpg MIKI HONEYCUTT SOUL.jpg

甘茶ソウル百科事典BILLY'S SELLECT 035で、74年のMONTCLAIRESの曲のカバー。(テッド・テイラーという人のカバーもあるようです。)甘茶においては女性よりも男性シンガーが好まれる傾向にありますが、私はこの曲では女性のミキ嬢の方により魅力を感じます。

モンクレールズ版はただでさえ暗い曲調を重たいコーラスが全体をより暗い雰囲気に包んでしまい、PHIL PERRYの声質含めていまいち魅力に乏しい。出来は悪くはないですが、ここでの彼の唱法はどうも技巧的な感じがして、少し鼻に付くんですよね。対して、このミキ嬢版は甘みを帯びた声質が魅力的。唱法も実直で、丁寧に、そして等身大に歌っている感じ。病弱っぽそうな線の細さを含めて、思わず優しく守って上げたくなりますね。見事に男性のツボを突いた声質・唱法と言っていいでしょう。こういう曲を聴くと「甘茶ソウルはテクニックじゃない」ということを再認識させられます。

「YOU TUBE」で聴けます。ところで、89年に「SOUL DEEP」というアルバムを出している同姓同名の白人風女性シンガーがいますが、果たして同一人物なのでしょうか。この女性があと13歳若かったら、と考えると結構いい感じかも。

PS:その後、同一人物と判明。 A-Train / River of Peopleで歌ってるのが彼女のようです。実はブルーアイドソウルだったってことになりますね。病弱な少女というイメージでしたが、実は乳揺れマンセーな健康ギャルだった訳ですね(笑)。

MOMENTS / GOTTA FIND A WAY LP(STANG 1022)'72

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甘茶ソウルを代表するグループ、モーメンツの72年のアルバム「MY THING」収録曲で、後の73年になってからSTANG 5050としてシングルカットされた模様。この曲は空港での擬音やナレーション、飛行機の飛び立つ音などが盛り込まれた、いわゆる擬音ソウルの代表的作品として人気の曲です。空港ロビーをハイヒールで急ぎ足でコツコツと歩く女性の足音は、それだけで強烈なフェチを放っていて堪りませんね。(主人公が想いを寄せる女性は、願わくば、ピッチリとしたタイトスカート制服の似合うスチュワーデスであって欲しい。)アメリカ各都市名のアナウンスも未知なる都市への憧憬を感じさせていいムード。

物悲しく湿っぽいメロディはキャッチーなうえに品もあります。淡白で透明感のあるコーラスをバックに歌われるファルセットリードも、力の入れ加減が絶妙で適度に泣きの入った所もグッド。臨場感のあるバックに負けない魅力ある内容ですね。なお、「THREE FOR LOVE」というグループによる5分超えとちょっと長いカバーがあり、そちらも同様のナレーション入りでなかなかの出来。

SPECIAL EDITION BAND/ YESTERDAY'S DREAM LP(GSP/UNIVERSAL 3700)

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シンセの透明感や遠くに鳴り響くエレピが心地よい80年代的洗練されたムードのバックサウンド。「昨日の夢」というタイトルが示す通り、夢見心地かつ切なくノスタルジックな雰囲気を持つメロディが素晴らしい。個人的に甘茶ソウルの大事な要素と思っている『非日常感』がとっぷりと味わえるところも高ポイント。5分40秒にも及ぶ大河バラードですが、80年代後半でこんなこってりと甘いムードの作品があるとはね。

STEPHAN / AFTER THE STORM (4-SIGHT 9-86-15)'86

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この曲は「甘茶ソウル歴代トップ10入り確実保証付き」てな感じでテリーさんが長年あちこちで書きまくったので甘茶ソウルファン以外にも相当知名度が浸透しているでしょう。但しその知名度とは裏腹に全く甘茶ソウルらしくないし、全然初心者に易しくない、至極難易度の高い曲と言えます。リードはファルセットじゃないし、男性コーラスも付かないし、何より曲調が全然甘くないね。

元歌はORAN"JUICE"JONES / THE RAINで、86年のヒット曲。ヒットしただけあってこちらは分かりやすいんだけど、STEPHAN版を聴いた後ではなんとも薄くヌルくて煮え切らない出来。一応TERRY'S 054ということで選曲されている訳だけど、私はORAN"JUICE"JONES版はちっともイイと思わないなあ。特にバックの打ち込みサウンドのチープ感はナサケナイ、、、。

それに対し、STEPHAN版のバックの臨場感、緊迫感は素晴らしく、かなりグレイドは高い。どしゃ降りの雨音や雷の擬音もグッド。リードの唱法も甘さは無いもののグイグイと歌いこんでいく様は迫力満点ネ。後半の語りもカッコイイー。

「テリー氏はイイと言うけど、全然良く(甘く)ないじゃん。」という感想をたまに目にするけど、それに対しては「曲の難易度が高い」との答えがしっくりくるかなあ。かくいう私もこの曲の良さが分かるまで数年かかりました(笑)。


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