6.TWINKLE BROTHERS / BITE ME '80 「COUNTRYMEN (VIRGIN RECORDS CDFL29)」収録 P.58掲載
これは私の周りでは当時大騒ぎされていたアルバムで菅野和彦さんも「実にショッキングなアルバム。」と取り上げられている。彼はサウンド面での革新性に衝撃を受けたようだが私はむしろメロディの情感深い部分に感銘を受けた。1.I DON'T WANT TO BE LONELY ANY MORE 2.PATOO 3. NEVER GET BURN 4.FREE US (凄い!A面全部だ)と続く暗いけど温かく深く味わい深いメロディは当時のレゲエグループにはかなり珍しかったように思う。
5.FREE US DUBのオルガン、ホーン、ギター、ドラムなどに適度にエコーをかけた各種ダブ処理などは実に絶妙で、必要最小限まで差し引いた中にそれらを見事に散りばめた音世界は日本のわびさびの世界に通じる素晴らしいものだ。
9.BITE ME で聴けるメロディもA面同様素晴らしく奥深く味わい深いものなのだが、サウンドが少し明るめで、まるでヴァイブのようにポップに転がるギター?の音色、やわらかくリズムを刻むオルガン、幻想的に鳴り響くふにゃふにゃギターなどどれも優しく心地よい。途中明るく転調するメロディはこのアルバムで唯一明るい光が差し込む部分だが、その僅かな光源に希望を見出すように歌い上げる様子には胸を締め付けられる。
この時代のルーツレゲエは聴く人を選んでしまうほど個性的で一般性、大衆性をほとんど持たない。例えばこのTWINKLE BROTHERSのアルバムなどは同時代同レベルのソウルグループのそれと比べるとその知名度は圧倒的に不当に絶対的に低い。個人的には「SOUL GENERATION / BEYOND BODY AND SOUL」や「TERRY HUFF AND SPECIAL DELIVERY / THE LONELY ONE」クラスの黒人音楽ファンには『絶対』なアルバムだと思っているのだけれども、このアルバムはいつまでたってもそれらの10分の1ほども評価されることはないだろう。因みにこれだけ素晴らしいアルバムを作っておきながら彼らは観光客相手の営業音楽をやらねば食べていけなかったそうな。(アマゾンで試聴出来るようですので、どうかよろしく。)