「ザ・ポップ宣言(仮題)岩谷宏」
25.BEATLES / CARRY THAT WEIGHTに込められた真意 (核心を突いた翻訳)
岩谷宏さんの素晴らしい功績の一つとして
個体論を挙げたけど、訳詞集である「ビートルズ詩集」(1973年版の方)も素晴らしい。中でも「CARRY THAT WEIGHT」の訳は難解な英詩をきっちりと解明した見事なもの。然しながらネットで検索して出て来るのは、「pillow」や「invitations」が何を意味しているのか全く指摘出来ないまま直訳しているだけのものばかりなのでここに紹介することにしました。
「キャリー・ザット・ウェイト」はビートルズの事実上最後のアルバム「Abbey Road」のB面の9曲目に収録された曲。10曲目が「The End」なのでほぼ「ビートルズ最後の曲」とみなすことが出来ると思います。タイトルの「重荷を背負う」というのは、作詞したポール・マッカートニーによると「ビートルズのメンバーだったという重荷」ということなので、「我々4人はビートルズのメンバーだったという重荷を背負うことになるだろう」という内輪向けの表明ということになります。然しながら、実質最後の曲ということと、「Boy」、「you」と呼び掛けていること、また曲調などからも、これはファンに向けたBEATLESからの最後のメッセージと受け止める方がしっくりくるのではないでしょうか?
Boy, you're gonna carry that weight.
Carry that weight a long time.
岩谷宏さんの「ビートルズ詩集」(1973年版の方)では、『ビートルズを聞いたからといって君の気持が軽くなる訳ではないんだよ。君は君という重荷を背負い続けなくてはならないんだよ。』となっています。こちらの方が遥かにビートルズっぽいし最後の曲に相応しい歌詞なのではないでしょうか?また、次の箇所については以下の通り。
I never give you my pillow.
I only send you my invitations.
And in the middle of the celebrations,
I break down.
『ビートルズは君達に快適なだけの安眠枕をあげた訳じゃあない。
真剣にロックへの招待状を送ったんだ。
ビートルズのロックを単なるお祭り騒ぎとしか受け取ってくれなかったのなら
僕たちは失望だ。』
つまり、ここでいう「枕」というのはビートルズの楽曲のことで、それを単に耳障りのよい心地よいだけの音楽として使い捨てしてくれるな、という意味が込められていると解釈している訳ですね。もちろん歌詞ですので、他にもいろいろと解釈可能でしょうが、少なくともしっかりと意味の通る、ビートルズの最後のメッセージとして相応しいものとして訳せていたのは日本では50年前の岩谷宏さんだけなんじゃないのかな。流石ロッキングオン創刊メンバーだけあって、ビートルズやロックの本質を理解した者でしか出来ない素晴らしい翻訳だなと思い紹介した次第です。(なお、『』内は岩谷宏さんの訳を自分なりに再構築した状態で書き直しておりますのでご注意下さい。ロッキングオン本誌かどこかで上記のような訳も発表されていた気がするのですが。)
PS:もしかしてビートルズ本人たちや世界中のビートルズの研究家の誰かが別の説得力ある解釈、より相応しい解釈をしているようでしたらどうか教えて下さい。
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