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ゲニウス・ロキ

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Apr 16, 2009
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カテゴリ:NOVEL

クリスマスにはまだ
三週間の間があった
ユリから届いた個展への招待状には
クリスマスカードが使われていた

夜の7時半に
ユリがぼくのマンションを訪れたとき
前日から降りそそいでいた雨が
まだ残されていて
ぼくは左手をポケットを突っ込んで
彼女から借りたままにしていた
赤い傘をさして立っていた

ふたりは腰を屈めてタクシーに乗った
昨夜も浅い眠りの中で考えていた
雨が窓ガラスを
激しく叩くんだ

月明かりをかき消す星屑の
うんと暗い闇に沈んで輝き続ける
この街の中心部にさしかかると
ぼくらはタクシーの運転手に
支払いを済ませ
ユリの肩を強く抱き
赤い傘の下に入った

バスタオルを体に巻いた彼女が
ホテルのバスルームの暗い闇から
裸足で現れて
そっと肩に近づくと
甘い吐息が
ぼくの耳に届くんだ

この街で一番高級なホテルの
最上階の特別な部屋で
シャンパンを開けることそれがマリの夢だった

夜空の星屑たちが
深く膝を抱えてうずくまった様な
街の夜景が綺麗だと
少し小止みなった空の
窓ガラスを流れる雨粒のすじに
人差し指を当てて彼女は言った

テーブルに置かれたシャンパングラスを
グッと息を詰めた様に飲み干したユリは
マニュキアの指をぼくの二の腕に絡ませて
うんと無理な姿勢から
唇をかさねてきた彼女

世界で一番かわいい
ぼくの恋人





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Last updated  Apr 16, 2009 10:02:37 PM
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