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ゲニウス・ロキ

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Sep 4, 2009
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カテゴリ:POETRY



ちょっと横にズレてくれるか?

ヘンドリックのゴワゴワした毛が
ぼくのTシャツから出た
二の腕の辺りをさっきから激しく摩擦し
暑苦しくって仕方なかった

ズレろって
こっちの端っこも いっぱいいっぱいだよ


ぼくらは路線バスに乗っていた
クーラーの効きが悪いのは
全部ヘンドリックのせいだと思った

こいつがいるせいで
周りの温度が5度は上がる
間違いない

ぼくはヘンドリックを見上げた
大粒の汗がポタポタと流れ
フェイスタオルでしきりに額をぬぐうヘンドリック

まだ着かないのか?

寝ぼけた目で
ぼんやりと車窓を眺めながらヘンドリックは言った

お前の体重が重いせいで
バスのスピードが上がらないんだよ!

ぼくはうんざりして
悪態をついた

そんなバカな話があるかよ!

大体ナンだよ!
そのボテっとした腹は
ダイエットする約束じゃなかったのか?

バカ言え
先週計ったら2キロも痩せてたよ

お前の2キロは
普通の人の3グラムなんだよ!

     ∞


これがぼくらの
いつ果てるともしれない
甘い夏の
始まりだった


バスはいつしか海沿いを走っていた

幾つものパラソルが立ち
賑やかな浜辺を
燦々と照らす陽光が

ぼくらの目をヒリヒリと焼いた

気がつくとぼくは2箱目のハイライトに
手をつけようとしていた

ヘンドリックはシートの上にひっくり返り
ぐぅーぐぅーといびきを立てて
寝入ってしまっている

2、3分置きに大きな寝言を言った

そいつは彼が野生から
人間の世界に下りてきた時に負った
何かの傷の証だと人は言うかもしれない

でもぼくには
彼が嫌な夢を見ているとは思えなかった

     ∞


ねぇ このコ
どこの動物園から出てきたコ?

マッチを擦り終わるか終わらないかのタイミングで
ぼくの後ろに座っていた
とてもチャーミングな女の子が話しかけてきた

ヘンドリックのことかい?

女の子は肩をすくめてみせた

話せば長いよ

じゃ
手短に披瀝してもらえる?

今度はぼくの方が
肩をすくめてみせる番だった

優しそうなクマさんね

寝てる間は空っぽになるからね

えっ?!

寝てる間は
人に危害を加えるってことはないってことさ

彼女はぼくの言葉に
怪しむような態度を見せた
それが何だか
彼女の様子を
ぼくに美しく見せた

ああ
ヘンドリックは夢中になって眠ってる
ひどく腹の立つこともあるが
いいやつさ

そしてぼく以外に
ヘンドリックの面倒をみるやつなんて
どこにも居やしないんだ

ぼくがそういうと 彼女は
妙に納得しや様子で
お腹をへっこめ
苦しげな体勢で眠るヘンドリック見つめて
微笑んだ

どこで降りるの?
君の名前は?

ぼくらはまるで堰を切ったように
二人だけの新しいおしゃべりに夢中になった


(つづく)





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Last updated  Sep 4, 2009 11:26:19 PM
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