ゲニウス・ロキ

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CINEMA CRITICSS

Feb 26, 2009
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カテゴリ:CINEMA CRITICSS



「4ヶ月、3週間と2日」2007年のカンヌ国際映画祭でパルムドール賞を受賞した作品で、監督がクリスティアン・ムンジウ。ルーマニアの映画です。

ストーリーは、違法行為としての「中絶」を扱った作品なんですけれど、シンプルで且つリアリズムに徹して描かれていて、この映画を観ていると、次第にルーム・メイトの中絶の”手助け”に奔走するオティリアに、自分を重ね合わせ、体験を共有するような感覚を生む。

そういう作り方がされていて、最後のカットでは、この映画を観る者を突き放し、考えさせるというショットで終わる。

この映画は徹底して問題を提起してくるタイプの映画だと思います。

例えば無知であったり、友人についてであったり、男女の違いやその付き合い方であったり、モラルについてであったり。

あるいは中絶に関して、自らの「実体験」を重ね合わせて観る向きあるんじゃなかろうか?などと思ったりするわけです。

一つの「体験」が、物事の見方を大きく変えてしまうことがあります。

例えばこの映画では、大学の寮のルームメイトであるガビツァの中絶を、”手助け”しなければいけないオティリア。

この日に限ってボーイフレンドの母親の誕生日で、オティリアは、誕生日パーティに来るよう誘われるわけです。
しかしオティリアにとっては、この日はそんな”どころ”じゃない。嘘や罪が、頭の中で錯綜し、一つ「体験」が彼女に色んなことを背負わせてしまうわけです。

違法である中絶を請け負う「医者」が、この映画の中で、不条理な存在の象徴の様な役割を帯びて登場します。

カビツァの中絶の「処置」が終わった後、オティリアはボーイフレンドの家を訪れ、彼と2人きりになった時、こう質問します。

「私が妊娠したらどうする?」

彼氏の方はテンパって、「するべきことはキチンとしてる(><;)」などと言うわけですが、今体験してきたばかりの現実にショックを受け、その重さを知ったオティリアにとって、この瞬間、恋人との間の「愛」も彼の発する言葉も、とても遠いものに感じられてくるわけです。

ルーマニア独裁政権下の当時の社会状況を知らなくとも、今の日本人の感覚で観ても、提起を含んで問いかけてくる、何かを語りかけてくる映画だと思います。











Last updated  Feb 26, 2009 06:02:57 PM


Feb 18, 2009
カテゴリ:CINEMA CRITICSS
「ハーフェズ ペルシャの詩」これはアボルファズル・ジャリリ監督の手になる、イラン映画(2008年)です。第2回ローマ国際映画祭で、審査員特別賞を受賞している映画ですが、少々忍耐を要する作品かもしれません。しかし非常に優れた観る価値のある映画です。

ストーリーは、ハーフェズと呼ばれるコーラン暗唱者に与えられる称号を持つ青年と、宗教指導者の娘の禁じられた恋を縦糸に紡がれていく愛の物語です。
宗教指導者の娘役で、麻生久美子さんが好演されています。

映画の中にこういった台詞がでてきます。

「真実とは鏡のようなもの、天から地面へ叩き落とされ、砕け散った破片。その割れた鏡の中に己を見たものは迷い、友を見たものは愛を知った」などと言うものです。

そしてその「鏡」が重要なモチーフとして役割を果たし、映画の中の登場人物たちの運命が左右されていきます。

「少々忍耐を要する」といったのは、台詞やカメラワークが抑制されていて、寡黙な仕上がりなっている為ですね。日本のドラマやハリウッド映画を見慣れた向きには退屈に映る映画かもしれません。そして一見、ストーリーとは関係なさそうなショットが差し挟まれていきます。

これは映画のテーマをシンボリックに表現するショットで、後半に成るほど映画のドラマトゥルギーを構成するエレメントととして、スタティックでありながらも、伏線の役割を果たしています。寡黙な映画にあって、やや主張している部分ですね。

この映画は愛についての一つの寓意として観るのが「正しい」のではないか?
ぼくなどそう思ったりするわけですが、なにもテーマは「愛」に限ったことではなく、イスラム法に於ける罪や秩序、刑罰といったイスラム世界固有の文化の問題も出てきます。

例えばこの映画では、ハーフェズと宗教指導者の娘の恋愛が「罪」とされたわけですが、しばしばこの映画に登場するバイクに乗ったアンちゃんたちはノーヘルですからね。
日本なら、間違いなくお巡りさんの検問でピッと引っかかるべきところです。

しかしこの映画で問われている「愛」は、そんな文化や文明を超えた普遍的なものの寓意として、なお一層、浮き彫りにされ、ぼくら日本人にも深いところで訴えかけてきます。






Last updated  Feb 18, 2009 06:40:28 PM

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