ゲニウス・ロキ

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NOVEL

Sep 27, 2009
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カテゴリ:NOVEL




ぼくは車のフロントガラスにこびり付いた、
鳥の糞を、ギュッと絞った雑巾で拭いてい
た。

タバコに火を点けると、真夏の焼け付く様
な太陽が、ジリジリと音を立て、ボンネッ
トを焦がしていくような気がした。

この上に卵を落とせば、たちまちのうちに、
目玉焼きができるに違いない。

そいつをハムとサラダで挟んで、サンドイ
ッチを作れば、結構いけるかもしれない。

そんなことをフト思ったとき、

玄関先でヘンドリックが何かをわめいた。

何だって?

ケータイが鳴ってるよ!

誰からだい?

知るもんか!
どうやって見るんだよ。

それもその筈だ。
ヘンドリックはケータイの扱い方を知ら
ない。

メールじゃないのか?

メールって何だよ!
難しい言葉使うな!(><*)/

ぼくらはこれから出掛けようとしていた
のだ。
電話の相手に心当たりはなかった。

ほっといていいよ!

音がやかましいんだよ!о(><+)о

そのうち止むさ・・

ヘンドリックはカンカンに怒って、
ケータイを握り締め、表へ出てきた。

車なんか洗ってる場合かよ!

見てくれ、
鳥の糞さ。
なかなか落ちないんだよ。

俺がとってやるよ!

本当か?

ケータイの音を何とかしてくれ!

彼にしては珍しい。
家の手伝いは何一つやらない。
唯一すすんでするのは、Yシャツの
アイロン掛けくらいのもんだ。

ぼくはヘンドリックの手からケータ
イをひったくって、
電話に出た。

はい。

あたし。

女の子の声だった。

えっと・・。

覚えてないの?
ほら、一年前の夏。
バスの中で一緒になったノゾミだよ。

あぁ、ノゾミちゃん・・。
どうしてるって、相変わらずだよ。
ヘンドリックも元気だよ。

あっ、あの変なクマさんね。

「変」とか言うと、彼、怒るよ。

わかってる。ほら、電話だから・・。

ま、聞こえはしないけど。

そう、応じながら、
ぼくはヘンドリックの方を見た。

車によじ登り、
懸命にフロントガラスに雑巾をかけ
ているヘンドリックが目に飛び込ん
できた。

おい!何してるんだよ!

何?

いや、コッチの話し。
ヘンドリックが車によじ登ってるん
だよ。

大変!

こら!何してるんだよ!(`Э´*)

見りゃーわかるだろ!
キレイにしてるんだよ!(><*)

アホか!
車に登るな!

大変そうね。
電話、ちょっと切るね。

ノゾミちゃんとの通話が途切れたのを
確かめて、
ぼくはヘンドリックの腰を引っつかん
で、車から引きずり降ろした。

何するんだよ!
せっかくキレイにしてやってるのに。

わかった。
いいから、車に登るな。
お前の体重を考えろ。

バカ言え。
先週計ったら、
3キロも減ってたよ。

お前の3キロは、
普通の人の5グラムなんだよ!

屁理屈言うな!
感謝しろよ。
せっかく人がキレイにしてやってるの
に・・。

ほら、もうケータイの音。消えたよ。


     (つづく)







Last updated  Sep 27, 2009 10:06:38 PM


Jun 29, 2009
カテゴリ:NOVEL






こんばんは、皆さん如何お過ごしでしょうか。ぼくの方は、今日はですね、仕事帰りにジムに寄ってサクっと汗を流してきました。

まー、何でしょう。炎天下の元、ジメジメした汗を流すのと、ガンガンに体を動かして。スプライトの様な汗を流すのと、同じ汗でも、何故にこうも違うものかなのか?

軋むベットの上で~♪優しさ持ちより~♪きつーく・・。←この種のベットの上の愛の営みにおける、恋人同士の心に通い合う汗も、また、この例外ではありませんね。

一体人間には、何種類の汗があるというのでしょうか!(><;)


閑話休題。

ちょっと某所でアップしたNOVELを、以下に貼りつけておきたいと思います。
(´ー`;)yー゜

    * *



「さっちゃんの卵」

その街に着いたとき、ぼくらは人々の言葉が全く理解できないことに気づいた。微妙なイントネーションからしてどこか違うのだ。

ロートアイアンで装飾された看板のショールームに入ると、陽気な笑い声をあげる人々で込み合い。シェード付きのランプが取り付けられた入り口で立ち止まっていると、コニーさんの方から話しかけてきた。

彼は面長の七面鳥で、鳩の卵を売っている。

コニーさんは作業用の白手袋を脱ぎ捨てると、ぼくらに近づいてきた。顔は笑っているが目は笑っていない。

「やあ!」

コニーさんはぼくらを見つけると手を振った。何しろ室内はおそろしく込み合っている。5メートル進むのに3分もかかる有様だ。

「すごい盛況ですね!」

ぼくは思わず声を張り上げた。

       ∞

「紹介しますよ」

ぼくは連れてきた鳩の手を引っ張って、コニーさんの前に押し出した。

「名前はなんていうの?」
「この子ね、少し知恵が遅れてるんですよ」
「卵は産めるのかい?」
「バンバン産みますよ!」
「そりゃー良かった。うちは実力主義だからね」
「さっちゃん。これから世話になるオーナーのコニーさんだ。挨拶しなさい」

ぼくは唇を尖らし、さっちゃんに厳しい調子で言った・

「サチコです。よろしく」

さっちゃんはペコリと頭を90度に下げて、そのまま30秒ほど固まってしまった。

「さっちゃん、もういいよ。頭を上げなさい」
「さっちゃんもういいよ、頭を上げなさい」

彼女は90度に折り曲げた体を戻すと、ぼくの言葉をそのまま反復した。

「おいおい、大丈夫かね?」

コニーさんは上着のポケットからハンカチを取り出し、額に浮き上がった汗をぬぐった。
さっちゃんは、大きなクリクリとした目でコニーさんを見つめると。

「おいおい、大丈夫かね」と。

また例のごとく、彼の言葉を繰り返した。
コニーさんとぼくは目を合わせ、思わず苦笑した。

       ∞

「ここがこれから君が働くことになる仕事場だ。いいね」

コニーさんはさっちゃんの肩を抱き。指先であちこちを指し示しながら工場の中のことを、丁寧に説明していった。どうせ、さっちゃんにはその言葉の意味や、難しいことは理解できないだろうが、コニーさんは必死だった。

何しろ需要に供給が追いつかず、猫の手も借りたいほど忙しいのだ。
そして従業員の鳩たちは、色んな地方から集められ、会社が用意した寮から通うものが殆どだ。

中には外国から来ている鳩もたくさんいて、そこで飛び交う言葉はさながら国際色豊かな交易都市の様相を呈していた。そしてバイヤーの中には、地球の裏側から出張して来るものも少なくない。そのコストを差し引いても、引く手あまたなのが、コニーさんの商品なのだ。

成るほどここで話されている言葉の意味がわからないわけだ。むろん従業員同士のコミュニケーションも、きっとままならないだろう。この職場に紛れ込めば、知恵遅れのさっちゃんも、彼らと同等の扱いを受けられる筈だ。

仕事は至って簡単。卵を産めば良いだけの話しなのだから。

ぼくはコニーさんがさっちゃんに工場の説明をしている間。表へ出て煙草を一服吹かした。煙ばかりが空へ抜けていき。あまり味がしなかった。

このままコニーさんとさっちゃんに挨拶しないで帰ろうかと思った。さっちゃんはどう思うだろう?

ぼくがさっちゃんに「バイバイ」って言うと、彼女はいつもの様に「バイバイ」とぼくの言葉を反復するに違いない。
「お別れだよ」と言うと、彼女はいつもの笑顔で「お別れだよ」と、ぼくの言葉を繰り返すに違いない。

そのままぼくがさっちゃんに背を向け、遠ざかって行けば、彼女はいつもと違う何かを察知して、ぼくの背中を追いかけてくるだろうか?

煙草の火をもみ消し、振り返ると工場の入り口で”談笑”するさっちゃんとコニーさんの姿が、ぼくの目頭から不意に溢れ出した熱いものの中で滲んで。歪んで見えたんだ。






Last updated  Jun 29, 2009 11:55:44 PM
Jun 19, 2009
カテゴリ:NOVEL




夜が明けると、廊下の窓ガラスに雨粒が弾けていた。
その廊下の真ん中で、アロハシャツにトレパン姿のブタが倒れこんでいる。

近づくと、ブタは小さく胸で呼吸しているのがわかった。
マチコはハンマーを構えた。
ブタの頭に、止めを刺すためだ。

この村では、ブタが出ると”古いものが出た”と言い習わされてきた。
そして村の娘が一人選ばれ”彼”と一夜を共にすることになっているのだ。

マチコにその話が回ってきた時。彼女は両親と共に、一晩中泣いた。

母親は「私が身代わりになるから」と、きつくマチコを抱きしめて、慰めた
が、村の掟は絶対だ。
その夜。家族は、マチコを挟んで畳の上で川の字になって眠った。
彼女が成人してから、そんな風に家族3人で眠るのは、初めてのことだった。

       ∞

マチコがハンマーを構え、ブタに近づくと。呼び鈴が鳴った。
「誰?・・。」

窓ガラス越しに外を覗くと、傘を差した数名の役場の男たちが、喪服で立っ
ているのが見えた。

ブタを引き取りにきたのだ。

そういえば。ブタはこの後どうなるのだろう?
マチコも、そこまでは聴かされてはいなかった。

ブタは昨晩あった事を全部。村中にふれまわるのだろうか?
そう考えると身が震えた。マチコはハンマーを構えた。呼び鈴がまた鳴る。
そして何度もマチコの頬を汗が伝ったその時だ。

ブタがむっくりと上体を起こした。彼女が放った一発目のハンマーの後が、
ブタの顔を激しく傷つけていた。

その顔の傷を、手触りで何度も確かめるとブタは言った。

「殺す気かっ!ボケーっ。(`Э´゛)/」
「ゴメンなさい。そんなつもりじゃ・・(><:)」

マチコはうろたえた。

ブタはトレパンのポケットからハンカチを取り出すと、額に滲んだ血を拭っ
た。

「俺も今まで色んなオネーチャンをコマシテきたけどさ。ハンマーで叩かれ
 んのは初めてだよ!モグラじゃないんだからな」
「ゴメンなさい。痛かった?」

マチコの気持ちに、急にブタに同情する感情が沸いてきた。

「痛いとかじゃないだろっ!血ィーとか出てんだろ!о(><;)о」
「生きてる、証拠だよ・・」

マチコは。恐る恐るブタの顔色を伺うように言った。

「今なんか言ったか?」
「・・生きてる証拠だよ」
「お前ハンマーで叩いといて!その言い方は何だよ!(`Э´*)/」

「ゴメンなさい。о(><;)о」

また呼び鈴が鳴った。外では怒声のようなものまで聴こえた。

「誰だよ?」
「役場の人みたい」

マチコのその言葉を聴いた途端に、ブタの表情に急に暗い陰が差したのがわ
かった。

「気分でも悪いの?」
「アホかーっ!お前がハンマーとかで叩いたんだろ!」
「でも役場の人来てるよ(´・ω・)/」

ブタは思いつめたように言った。
「・・・・。ワルい。助けてくれないか?」

「何?(・ω・;)」
「俺と一緒に逃げてくれないか?」
「何で?(・ω・`)」

ブタはマチコの手をキュッと引っ張って家の裏口に向かってズンズン歩いて
いった。
ブタのその横顔は何かを思わし気にキッと一点を見つめ、マチコはブタの手
を払いのけることができなかった。

                      (つづく)






Last updated  Jun 19, 2009 07:46:53 PM
May 9, 2009
カテゴリ:NOVEL

彼の名は、ポリスコララママンダロルッコジナミシシッピーポンチョポンチョ・・・・。
・・・とにかく。この上もなく長ったらしい名前なのだ。

なので、頭の3文字を取って、ポリスと呼ぶことにする。

ポリスの職業は”密告屋”だ。
彼に密告されたくなければ、とにかく、規則正しい模範的な生活をおくることだ。

もし君がどこかの街角で、タバコの吸い殻をポイ捨てしたとする。
するとポリスがどこからともなく、ロールスロイスでキュッと乗りつけ、パシン!っとドアを叩きつけると、黄ばんだ歯をニヤリと見せて君にこう告げるだろう。

「見たぜ」

一度ポリスに睨まれたら君の一生は台無しになってしまう。
何故なら”コクられて”しまうからだ。
誰に?
あまりナイーブな質問をしてはいけない。

しかるべき公的機関の当局のお偉いさんと、ポリスがツーツーだということを、知らぬものはいるまい。
新聞の社会面の一番目立つところに、3段抜きで彼の記事が毎日載っていることくらい、マトモな社会人なら常識だ。

例えば今日の彼の言葉を拾ってみよう。

記 者「ポリスさん。今日は何をコクられましたか?」
ポリス「今日は一日、植物の世話をしておった」
記 者「またご冗談を、オフレコです、喋って下さいよ。ポリスさん!」

などと食い下がる記者にポリスはこう言った。

ポリス「今日は世界中の誰もが正しく生きた。この上もなく平和な一日だったよ」
記 者「マジですか!ポリスさん!」

気色ばんだ記者が大声を張り上げると、ポリスは上着の内ポケットからケータイ電話を素早く取り出しこう言った。

「報道の自由をはき違えた新聞記者が今わたしの目の前に一人いる。すぐに収監してくれ給え」






Last updated  May 10, 2009 12:33:57 AM
Apr 26, 2009
カテゴリ:NOVEL


カモノハシとブタは
2人して押し黙ったまま
川べりのテトラポットに腰を掛け
肩を並べて
両足をぶらぶらさせていた

ブタはポケットからキノコを取り出し
カモノハシに差し出した

「ナンだよ」

不機嫌そうに
カモノハシがブタに口を尖らせて言うと

「お腹すいてると思ってさ」
「空いてねーよ別に!」
「じゃ、ボク一人で食べても ホントにいいんだね?」

ブタはカモノハシの瞳の奥を窺う様に言った

「勝手にしろよ!ボケっ!」

     ∞

30分くらいして
赤い靴を履いた女の子がやってきた

「待った!?」
「ううん!!」

カモノハシとブタは千切れそうなくらいに
首を横に振り
上ずった声を震わせながら同時に叫んだ

女の子はノリちゃんといい
この先の森の奥に建つ
お屋敷に住んでいた

「これからどこへ行く?」

ノリちゃんがそう訊くと
ブタはポケットからキノコを取り出して

「食べる?」と言った

カモノハシはブチ切れて

「そんなブッそーなモン 仕舞え!」と怒鳴った
「美味しいよ」

そうツブラな瞳でブタが言うと
さらにブチ切れたカモノハシは

「お前な 毒キノコかもしんないだろ!ボケが!о(><;)о」
「ボクは毎日3食これだよ」と言うブタ君
「お前な 女の子に生キノコって 俺まで誤解受けんだろ!」

「2人で何の話?」
「いやー コッチの話・・・
 とにかくキノコは仕舞え!ブタっ!!」

カモノハシがブタに厳しい調子で言うと
ブタはやるせなさそうに
キノコを上着のポケットに仕舞った

     ∞

「ねぇ あたしん家にこない?」
「賛成!大賛成だよな おいブタ!」

カモノハシはブタの背中をパツンと叩いた

「ブタとか言わないでよ」
「だってお前どっから見てもブタだろ!
 動物図鑑でよくチェックしとけ!ボケがっ!」
「・・・」
「決まりね」

そういう言うとノリちゃんは
ドコモのケイタイを取り出し電話した

「島崎 いい肉が2つ入ったの
 すぐにコック長の吉岡に段取りさせて」

そういう言うとノリちゃんは
カモノハシとブタの引き締まった腿に目を走らせた

「スイマセン 肉とかって何ですか?」
「気にしなくていいのよ」
「おー 気にしなくていい (><)
 ノー・プロブレムだよな ブタ! о(><;)о」
「うん ボクは全然気にしないよ」

いいわね

「少し遠いけど歩く?」
「ハイヤーとかないんですか?ホラ 白い手袋とか
 嵌めた運転手さん付きの・・」
「ないわね」
「おー!ないっ!無いに決まってる
 俺たちはいつも歩きだ!」

「ボクは原チャの免許持ってるよ」
「アホかーっ!ブタ!
 こういう時は都合よく話を合わせとけばいいんだよ!ボケがっ!!」






Last updated  Apr 26, 2009 03:45:45 PM
Apr 25, 2009
カテゴリ:NOVEL


3学期の始めのこと
その転校生は
背中にランドセルを背負う代わりに
石油ストーブを担いでいた

黒板の前に立った少女は

「マチコと申します、冬の間どうぞ
 宜しく」と言って

ペコリと丁寧に頭を下げた
教室中がどっと笑いに包まれた

「先生、トイレに行っていいですか?」
また唐突にマチコが手をあげてそう言ったので
教室は爆笑の渦になった

「構わないから行ってきなさい!」
黒ブチ眼鏡の先生は
直角に立てた中指で
メガネのブリッジを何度も押し上げながら
変に強張らせた顔で言った

20分経って マチコが教室に戻ってきた頃
算数の授業は随分とすすんでいた

「おい、何だ!ウンコかよ!」
クラスで一番目立つ存在のゲンタが
声を張り上げると
教室はまた
ガラスが割れんばかりの喧騒に包まれた

ウンコ!とか
  
  ストーブ!だとか

誰彼かまわずに声を張り上げたので
全く収拾がつかなくなってしまった

黒ブチ眼鏡の先生は
弱りきった顔をマチコに向けて
そこの席に座りなさいと
ゲンタの隣の席を指さした

「近寄るなウンコ!」

ゲンタはマチコに悪態をついたが
マチコはゆっくりと石油ストーブを下ろし
まだ真新しい算数の教科書を取り出して

「何ページを開けばよいのかしら?」

ゲンタの目を真っ直ぐに見つめながら言った
黒ブチ眼鏡の先生は

「ゲンタは今日は教科書を忘れたんだよな
 マチコちゃんに見せてもらいなさい
 マチコちゃん 35ページだよ」

「35ページよ ゲンちゃん」

マチコはゲンタにキュッとウインクして
ギュッと椅子をゲンタの方へ引き寄せた

 よく見ると
   
    マチコってかわいい・・

急にゲンタは胸がドキドキして
頬が炎のように赤くなった
周りに勘づかれちゃマズい・・
ゲンタの頭の中はグルグルと回って
今にも席から落っこちそうになっていた

胸のドキドキがたまらなくなったゲンタは
テンパッて思わず叫んだ

「先生!とっ トイレ行っていいですか?」
「おいナンだ!今度はゲンタがウンコかよっ!」

   ウンコ!

      ウンコ!!

          ウンコ!!!

教室中がウンコの大合唱と笑いの渦に包まれた

「ゲンちゃんがウンコしている間に
 授業がすすんだ分
 わたしがノオトを取っといてあげるから
 大丈夫よ ゲンちゃん」

マチコはまたキュッとウインクして言った

「俺っち チビっちまいそう!」

悲鳴に似た声を上げて
ゲンタは教室の後ろの扉から
ガチン!と 飛び出して行った






Last updated  Apr 25, 2009 05:23:26 PM
Apr 16, 2009
カテゴリ:NOVEL
子供は無邪気な目をしている
バックギアに入れ
駐車場に車を止めると
枯葉が靴のまわりに纏わりついた11月

子供の手を引っ張って
ぼくらはレストランに入った
青い氷のビー玉のような
海の見えるレストランだ
快適な日々の中で
生じる雪解けの水が
ぼくらの足元で
じゅくじゅくと
あふれ出していくような気がした晩秋

製紙工場の従業員だった
妻の父親が亡くなった

子供は無邪気な目をしている
おじいちゃんは何でも与えてくれる存在だった
ユウタは言った
「天国ってどこにあるの?お空のずっと上?」

考えてみれば
ぼくの祖父が亡くなったのは
15の時だった
たくさんの思い出だって
今でも鮮明に思い出すことができる

まだ4つでしかないユウタの記憶に
とてつもない大きな
空白を作ってしまったような気がした
晩秋の11月

妻は前菜をフォークで口元に運びながら
青い氷のビー玉のような海に
何かを映し出すような目をして
淡いルージュを引いた唇に
そっと右手でナプキンを当てている






Last updated  Apr 16, 2009 10:04:02 PM
カテゴリ:NOVEL

クリスマスにはまだ
三週間の間があった
ユリから届いた個展への招待状には
クリスマスカードが使われていた

夜の7時半に
ユリがぼくのマンションを訪れたとき
前日から降りそそいでいた雨が
まだ残されていて
ぼくは左手をポケットを突っ込んで
彼女から借りたままにしていた
赤い傘をさして立っていた

ふたりは腰を屈めてタクシーに乗った
昨夜も浅い眠りの中で考えていた
雨が窓ガラスを
激しく叩くんだ

月明かりをかき消す星屑の
うんと暗い闇に沈んで輝き続ける
この街の中心部にさしかかると
ぼくらはタクシーの運転手に
支払いを済ませ
ユリの肩を強く抱き
赤い傘の下に入った

バスタオルを体に巻いた彼女が
ホテルのバスルームの暗い闇から
裸足で現れて
そっと肩に近づくと
甘い吐息が
ぼくの耳に届くんだ

この街で一番高級なホテルの
最上階の特別な部屋で
シャンパンを開けることそれがマリの夢だった

夜空の星屑たちが
深く膝を抱えてうずくまった様な
街の夜景が綺麗だと
少し小止みなった空の
窓ガラスを流れる雨粒のすじに
人差し指を当てて彼女は言った

テーブルに置かれたシャンパングラスを
グッと息を詰めた様に飲み干したユリは
マニュキアの指をぼくの二の腕に絡ませて
うんと無理な姿勢から
唇をかさねてきた彼女

世界で一番かわいい
ぼくの恋人






Last updated  Apr 16, 2009 10:02:37 PM
Mar 19, 2009
カテゴリ:NOVEL

むかし深夜まで仕事をしていて、金曜日の晩になる度に、
夜行バスに乗り込み、都会に住む彼女に会いに行ってい
たことがあった。

その頃ぼくが住んでいた町は、麦わら帽子という牧歌的
な名称の通りのある、随分と田舎の町だった。

町の住人は殆んどが農業で生計を立てていて、若い人は
市内へ通勤するサラリーマンが殆んどだった。
海が近くにあり、夜になると潮騒と虫の音が美しかった。

ぼくらはいずれ結婚することを約束していた。そんな生
活を3年ほど続けていたある日。
深夜に一本の電話が入った。

「どうしてる?」

むかし付き合っていたナオミの声だった。

「ああ、元気だよ。君の方は?」
「もの凄~く元気よ」

そんな声と裏腹に、ナオミのしゃがれた声の底には、疲れ
が滲んでいた。

「大丈夫かい?」
「優しいんだ」
「なんだ、からかってるのか?」
「そうじゃないよ、今週末、会えない?」
「予定があるからさ、大事な用件ならキチンと会おうよ」
「そう、無理しないでいいのよ、あたし、一人でちゃんと
 やってるから」

そういい終えると彼女は、パチンっと電話を切ってしまっ
た。

”テキーラ・サンライズ”

イーグルスが同名の曲を作ったことでも有名なカクテルだ。

サワー・グラスにテキーラを入れ、オレンジ・ジュースで
ステアし、グレナディン・シロップをグラスの内側に滑ら
すと、プース・カフェのように分離する。

ぼくらは毎週末、行きつけのバーへ行くと、必ずこのカク
テルを頼んだ。

「明日はどうする?」
「あなた、行きたいとこあるの?」
「そうだね、季節がいいから、海に出たい」
「ねえ、何かあったの?」
「どうして?」
「心、ここにあらずって感じだから」
「先週、むかしの彼女から電話があった。それがとても変
 な電話だったから、気になってるんだ」
「もう、むかしのことなんでしょ?」
「うん、もうむかしのことだよ」
「だったら忘れなさいよ」

彼女は、少し怒ったような顔で言った。
ぼくはバーの照明に分離したテキーラ・サンライズをかざ
した。
過去が現在からうまく「分離」した時、このカクテルのよ
うに、夜明けの暁が、未来を予兆してくれているような気
がして。







Last updated  Mar 26, 2009 10:37:51 PM
Feb 28, 2009
カテゴリ:NOVEL

おい!お前のところのマリが
うちの庭にウンチしてったぞ!

出かけに後ろから大声を張り上げたのは
家電メーカーに勤めるマモルだ

同級生である

おまえ今日仕事じゃなかったのか?

アホかっ!
これから2週間ばかし有給取って
嫁ハンとハワイに行くとこだ!

何だよ
自慢しにきたのか?


マモルはビニール袋に入ったブツを
ぼくの目の前に差し出した

そんなもん証拠になるかよ

アホかっ!
こうな 目の前でユリのやつが腰を屈めて
ウンチひねり出してるのをこの目で見たんだ!

幻覚でも見たんじゃねぇか?

あのメス猫いい根性してるよ!
俺の目の前でだぞっ

ユリがね
で?
それが証拠か?
とりあえず預かっとくよ

ぼくはマモルからブツの入った
ビニール袋を受け取った

気が済んだら
ハワイでもブラジルでも
フランクフルトでもインカ帝国でも
とっとと行ってこいよ

留守の間にユリのやつが
またうちの庭を便所代わりにするかもしれないからな
釘を刺しにきたんだ

少し落ち着いたマモルが
タバコに火をつけながらそう言った

そういや この間おまえ浮気がバレて
嫁ハンにまたグッチのバックとか
買わされたとか言ってたよな?

ナンだよ?
もう半年も前の話だろ

テンパったマモルは
タバコに火をつけ損なって地面に落とした

嫁ハンとハワイなんて
おまえらしくないよな
今度は何がバレたんだ?
言ってみろ?
場合によっちゃ相談にのってやる

マモルは落としたタバコを拾い上げると
火を付け直した

シュボっとダンヒルの炎が真っ直ぐ上にあがる
ジュッとタバコの先に火のついた音がすると
マモルは顔を上げて言った

この間 常務と飲んだんだ

ほうー

2人きりでだぞ

常務っていや
俺たちの大学の20年先輩の明石さんだろ?

ああ
近々辞令が出るが 君の昇進が決まった
そう言われたんだよ

ソラミミじゃないのか?

アホか!

昨年社長が代わって本社に一つポストが空いたんだよ

その穴埋めにお前が入るのか?
なんだお前の会社はパズルみたいなところだな

今度はやっかみかよ?
マモルは鼻の穴を大きく膨らましてぼくにそう言った

代わった社長ってリコールの責任とって辞めたんだろ?
テレビで見たよ
会社の不祥事がお前の昇進に繋がったって皮肉な話だな
仕事の方は大丈夫なのかよ?
ハワイどころじゃないだろ?

バン!とマモルの家のドアが閉まる音がして
マモルの嫁が出てきた
グッチのバックを抱え
背中を丸めながら門柱の扉を
固くロックしている

アンタ!準備はできたの!

マモルは急いでタバコの火をもみ消すと
とにかくだ!あのメス猫に
俺の家の庭は便所じゃないぞ!
そう言っとけ!

肩をいからせながら
嫁ハンと一緒に
バンっ!とタクシーに乗り込んでいくマモルを見ていると
ぼくの足元に
マリが体をすり寄せてきて
ぼくの顔を見上げながら

ニャーオーっと

ゴロリと喉をひとつ鳴らした

これ
お前のか?
出し抜けにマリの目の前に
マモルから預かったブツの入ったビニール袋を
ぶら下げてやると

マリはぼくの瞳の奥をじっと見つめて
そして肩を震わせながら泣き出してしまった

ゴメン
お前じゃないよな
疑って悪かった
そう言ってぼくはマリの体をそっと抱き寄せ
きつくきつく肩を
抱きしめた







Last updated  Feb 28, 2009 05:14:25 PM

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