ゲニウス・ロキ

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POETRY

Oct 17, 2009
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カテゴリ:POETRY


あれは確か
8月の日の最後の日曜日のこと
海辺に打ち上がった
クジラの噂で
町中が持ちきりになった

青いクジラは
夏の太陽の光を反射し
焼けてグッタリと
眠っていた

ぼくらはまだ小学生で
親に買ってもらったばかりの
新品の自転車の後ろに
メイちゃんを乗せて
浜に急いでいた

彼女はぼくの背中に
ぎゅっとつかまり
固く目をつむっていた

クジラ
見たいだろ?

メイちゃんは
大きく頭を揺らして
恐いと言った
ぼくは彼女と一緒に
クジラを見たかった

恐くなんか
ないさ
浜にでっかいクジラが
打ち上がったんだ
こーんなに大っきい
クジラなんだ

ぼくは見たこともない
クジラの話を
メイちゃんに一所懸命に話した

浜辺へ通じる
なだらかなカーブを
ぼくらは
下って行った

綺麗な海と空
緑に輝く樹木たちが
ぼくの心を弾ませた

ねぇ!
引き返してよ!

メイちゃんは
ありったけの力で叫んだ

それがぼくには
聞こえなかった

もうすぐ
クジラの浜だ
ブレーキなんて
少しも

必要なかった

ぼくの青いクジラと
メイちゃんの
青いクジラは

あのカーブの入り口で

永遠の別れを

告げていった

あれは確か
8月の日の最後の
日曜日の
ことだった






Last updated  Oct 18, 2009 12:18:39 AM


Sep 8, 2009
カテゴリ:POETRY


サトウキビ畑のあいだを
女と歩いた思い出がある


二車線の道路に
茶や緑の葉っぱがせり出し
そよいでいる


陽光に放たれたその道は
とても荒れていた
一時間歩いても
車は通らなかった


サングラスを外したぼくは
女に言った

もう 戻ろうよ
待って もう少しだから
一時間だぜ

時計を見た

もうすぐ東シナ海だから・・

汗が 頬を伝う

女は
町で働いていた
いわゆるホステスだ
昔は農協で働いていたの
声をひそめるように
彼女は言った

あぁ 農協な
面倒なところだ

女は眉間にしわを寄せた
夜の女の
言葉は信用ならない


昼間食べたソーキそばが
腹にもたれはじめる
麺の上に乗っかってた
生焼けの肉のせいかもしれない


すべて嫌気がさしたころ

海が見えた


ほらね


女は子供のように
目をくるりとさせて言った


あぁ 海だ
間違いない
するりと腕を回した女が
ぼくの腕をぎゅっと引っ張った
海風より強く
確かな感触だった


放置されたユンボやブルドーザーが
浜の近くにあり
ぼくらは幾度か
植物の根っこに つまづきながら
浜へ出た


スニーカーを脱いだ
ホットパンツからするりと伸びた
女の白い足が
はじめて目に入った


ねえ 綺麗でしょ!
ここから見る眺めが一番すきなの!

ぼくはサングラスを掛けなおし
女に言った


確かにオジサンにも
悪くない景色だ

なんだ
ノリの悪い人!


そう言うと
ぼくにくるりと背を向け
女は
裸足のままで海に近づいて行った



排所に眠る
まだ陽の昇りきらない朝の
白いコーラルの道に



女といたあの日の夏の記憶が

まるで裸足の跡のように
残っている






Last updated  Sep 8, 2009 11:49:08 PM
Sep 4, 2009
カテゴリ:POETRY



ちょっと横にズレてくれるか?

ヘンドリックのゴワゴワした毛が
ぼくのTシャツから出た
二の腕の辺りをさっきから激しく摩擦し
暑苦しくって仕方なかった

ズレろって
こっちの端っこも いっぱいいっぱいだよ


ぼくらは路線バスに乗っていた
クーラーの効きが悪いのは
全部ヘンドリックのせいだと思った

こいつがいるせいで
周りの温度が5度は上がる
間違いない

ぼくはヘンドリックを見上げた
大粒の汗がポタポタと流れ
フェイスタオルでしきりに額をぬぐうヘンドリック

まだ着かないのか?

寝ぼけた目で
ぼんやりと車窓を眺めながらヘンドリックは言った

お前の体重が重いせいで
バスのスピードが上がらないんだよ!

ぼくはうんざりして
悪態をついた

そんなバカな話があるかよ!

大体ナンだよ!
そのボテっとした腹は
ダイエットする約束じゃなかったのか?

バカ言え
先週計ったら2キロも痩せてたよ

お前の2キロは
普通の人の3グラムなんだよ!

     ∞


これがぼくらの
いつ果てるともしれない
甘い夏の
始まりだった


バスはいつしか海沿いを走っていた

幾つものパラソルが立ち
賑やかな浜辺を
燦々と照らす陽光が

ぼくらの目をヒリヒリと焼いた

気がつくとぼくは2箱目のハイライトに
手をつけようとしていた

ヘンドリックはシートの上にひっくり返り
ぐぅーぐぅーといびきを立てて
寝入ってしまっている

2、3分置きに大きな寝言を言った

そいつは彼が野生から
人間の世界に下りてきた時に負った
何かの傷の証だと人は言うかもしれない

でもぼくには
彼が嫌な夢を見ているとは思えなかった

     ∞


ねぇ このコ
どこの動物園から出てきたコ?

マッチを擦り終わるか終わらないかのタイミングで
ぼくの後ろに座っていた
とてもチャーミングな女の子が話しかけてきた

ヘンドリックのことかい?

女の子は肩をすくめてみせた

話せば長いよ

じゃ
手短に披瀝してもらえる?

今度はぼくの方が
肩をすくめてみせる番だった

優しそうなクマさんね

寝てる間は空っぽになるからね

えっ?!

寝てる間は
人に危害を加えるってことはないってことさ

彼女はぼくの言葉に
怪しむような態度を見せた
それが何だか
彼女の様子を
ぼくに美しく見せた

ああ
ヘンドリックは夢中になって眠ってる
ひどく腹の立つこともあるが
いいやつさ

そしてぼく以外に
ヘンドリックの面倒をみるやつなんて
どこにも居やしないんだ

ぼくがそういうと 彼女は
妙に納得しや様子で
お腹をへっこめ
苦しげな体勢で眠るヘンドリック見つめて
微笑んだ

どこで降りるの?
君の名前は?

ぼくらはまるで堰を切ったように
二人だけの新しいおしゃべりに夢中になった


(つづく)






Last updated  Sep 4, 2009 11:26:19 PM
Sep 2, 2009
カテゴリ:POETRY



ニュータウンで大量発生したクジラの話を
ぼく以外の誰かから
君はもうすでに聴いたことがあるだろうか?


まだ小学校に入りたての小さな女の子が
クジラに手を噛まれただとか


中学生の男の子が
クジラをベットの下にこっそりと隠していて
母親をびっくりさせた話だとか


定年を間近に控えたキチンとした身なりの紳士が
盆栽と間違えて
クジラの髭をパチンっと切っちゃった話だとか


高校生の女の子が
3丁目のタバコ屋さんの角で
クジラと手を組んで歩いていただとか


郵便局の集荷のアルバイトの子が
定型封筒の中から
3頭ばかりクジラをくすねたっていう
信じられないような話まである


この話は
君の住む町の
すぐ隣にある町のことだと思って聴いて欲しい
他人事じゃないんだ


電車で一駅か二駅ばかり先の
小さな子供でさえ
お駄賃を握りしめていける
そんな身近な場所にある話であり


あなたがもしサラリーマンなら
会社帰りに酔っ払って
間違えて降りたかもしれない町の話なのだ


ひょっとすると
もう
クジラは君の家の縁先にもぐりこみ
この話にひそかに
きき耳を立て
聴いているかもしれないのだ!


クジラはもう
ぼくらの生活の一部に入り込み
明日
君が出会うかもしれない人や!


将来の恋人や伴侶となるかもしれない人たちの
バックやポケットの内側にもぐりこみ


隙間から隙間へとジャンプし!

トラブルや事件を巻き起こしてしまうんだ!(><;)


ぼくらはもう!クジラの氾濫から逃れられやしないんだ!


繰り返そう



ぼくらはもう!クジラの氾濫から  逃れられやしないのだ!
о(><;)о






Last updated  Sep 2, 2009 10:09:21 PM
Aug 29, 2009
カテゴリ:POETRY



3丁目のタバコ屋さんの角を曲がった
ラーメン屋の入り口で

クマのヘンドリックが
泣いていた

しかもガラスの自動扉に挟まって
動けないでいたのだ

ヘンドリックの太ったお腹が
ぎゅーっとヘッコンで

痛そうだった

何してしてるんだよ?
見ればわかるだろ!

ヘンドリックは声を張り上げた

ドアに挟まってんだよ!
お腹へっこめれば 出れんじゃねーのか?
ムリだよ!(><;)
ムリなことあるもんか
本人がムリだって言ってんだから
ムリなんだよ! о(><*)о

ぼくはヘンドリックの手をギューっと
引っ張った

痛いだろ!
ガマンしろ!男だろ!


夕方の
帰宅ラッシュの時間
夕日ヶ丘の駅の
改札口から
ダっと人の波が押し出される


ママ!クマさんがドアに挟まってるよ!

5歳くらいの女の子が
母親の手を引っ張った

見ちゃいけません・・

そりゃそうだ
刃物を振り回しながら
自動扉に挟まってるクマなんか見たらトラウマだ

よし もう少しだ!
・・んーん о(><+)о
スポンっ!!

ヘンドリックの大きなお腹が弾けた瞬間
ぼくらは歩道に投げ出された

彼はエビ反りになって
顔面からアスファルトにめり込む

手にしていた
包丁は右手にしっかりと握ったまま


ヘンドリックは
1ヶ月ほど前から
このラーメン屋さんでアルバイトを始めたのだ

怒られてばかりなので
定休日のこの日

こっそりと包丁さばきの練習に来たというわけだ
間が抜けているが
彼にしては感心なところもある


救急車呼んでくれ!
大袈裟だな
包丁なら俺が教えてやるのに
お前に教わるくらいなら
死んだほうがマシだ!

バカ言え

ぼくはハンカチで
ヘンドリックの血のついた顔を
拭ってやった

まったく
バカなやつさ






Last updated  Aug 29, 2009 09:53:07 PM
カテゴリ:POETRY




バラ線の下の コスモスには
誰もが揺れる 思いを抱えている

なぜ君であったのか?
なぜ僕であったのか?

Yシャツにアイロンをあてる
君の横顔

ボルヴィック・ミルクの
ケチャップのついたズボンを見ている僕

信じることと
疑うということの間にある
「信頼」という
終着駅のない列車

街の明かりを鈍色に変えていく涙も
夜の暗い闇を
笑いにかえるのも

君や僕の
心しだい

そうやって人たちは
壊れやすい心の窓を
ガタガタと

開けたり
閉じたり

えいえんと続くこの終着駅のない
鈍行列車に乗って走り続ける

それが愛
それが僕らの
暮らす街

それが僕らの
泊まる駅






Last updated  Aug 29, 2009 10:05:55 PM
Aug 6, 2009
カテゴリ:POETRY


魚は
海で暮らすことに
飽きてしまって

空を飛びたいと
女に相談した

ふたりは
昔なじみの店で
一杯やっていたのだ

女は
魚の目を見つめて
とても悲しいことだわと 言った

魚は大きな目をパチパチと
まばたきさせると

ぼくだって
空を飛びたいんだ!

海ばかりじゃね・・・

そういうと彼は
悔しそうに
下唇を噛んだ

女はタバコに火をつけると
海と
空の違いについて考えた

一度だけ見たことがある

青い青いさんご礁の海の彼方には
一つだけ
空とくっついている場所がある

そう
水平線だ

ねぇ
あなたのそのズングリとした体じゃ
空をとぶのは無理だわ
だって第一
翼がないじゃない

つばさ?

空を飛ぶために必要なものよ

そいつはどこへ行けば手に入るんだい?

あなた
水平線を知ってる?

ううん
知らない

そこはね
空と
海とが
一つに溶け合っている場所なの

あなたもきっと

そこに行けばいいのよ






Last updated  Aug 7, 2009 02:43:18 AM
Jul 23, 2009
カテゴリ:POETRY


海岸に沿って走る
車の中のふたりは
4月のまどろみの中にいた

訊きたいことや
言い出せないことが
ふたりの間には
たくさんあった

優しく
濃厚に
長い時間をかけて
育んだはずの愛が

まるで過ぎ去っていく
車窓の風景のように
ふたりの間を
駆け抜けていった

おかしなもので
ふたりがこうして
出逢ったいきさつを
誰かに説明することなど
できやしなかった

秘密

それは小さな
世界の隙間にできた
穴のようなもので

ぼくらはそれを
世間に恥じるように
きゅっと手を重ね合わせ
唇を重ね合わせ
抱擁で強く強く閉じるように

まぶたを閉じ

傷のような
小さな穴を埋めるための
愛を探した

そこから向こう側の世界へ
ふたりで行ける
そう信じるためのキスを

何度も重ねた合わせた夜

ぼくらの
小さな失敗






Last updated  Jul 26, 2009 01:08:34 AM
Jun 7, 2009
カテゴリ:POETRY

トイレに入ったマリコが出てこない

おい!もうスンんだだろ!
まだ!(><)

朝からこれだ

ぼくらは新婚1年目で
7年付き合って結ばれた

そう言えば
彼女は結婚する前
犬を飼いたいと言っていた

セントバーナードがいいの
どうして?
おっきくて
頼もしい感じがするから

マンションじゃ飼えないだろ?
一戸建てがいいっ
俺の仕事知てっんだろ?
いつ転勤って話になるかわかんない
セントバーナードがいいっ о(><)о

退屈はしない
悪い気もしない
でも

でも何?
それがわかれば
全部うまくいく
そんな気がする
何かだよ

その夜ぼくは
酔っ払って帰った挙句
同僚を部屋に入れ
寝巻きのマリコに怒られた

何時だと思ってるのよ!\(`э´*)/
固いこと言うなよ

同僚はネクタイを緩めると
下駄箱に肩をあずけて
グゥーグゥーと寝息をたてた

この変な人すぐに追い出してよ!
マリコは言った

ぼくはグルグルとアルコールの
回りきった頭で
考えてた

潰れたオレンジみたいな
すっぱい刺激と
甘い香りのする

あの

何かのことを・・






Last updated  Jun 8, 2009 01:02:11 AM
May 31, 2009
カテゴリ:POETRY




6月のある日
ガールフレンドが仔犬を抱いてぼくの家に来た

彼女はその仔犬を突き出して
あなたの子だよ・・・。(><)
と言った

市松模様の風呂敷に包まれて
顔だけチョンっと出したその仔犬は
ぼくの目を見つめるなり、こう言った
責任とれよ!ボケーーーェ! о(><*)о

ぼくは手に持っていたロールパンを
半分に割って彼に差し出し
食べるか?と訊いた

仔犬はマジっウザい!などと言いながら
ロールパンを一口齧ると
悪くない味だ!と言った
だけどオマエ!それとこれとは別個の話だぞ!о(><+)о
などと唇を尖らし
彼女は
もう目にいっぱいの涙をため

一人でも育てるからね!といって
赤い唇を強く噛んだ

ぼくは残りのロールパンを口の中に押し込み
海について考えていた

太平洋の真ん中に、沈む太陽
夜の浜辺にたたずむ
月の静けさ
岩礁に砕け散る
波の音

真昼の水面にキラめく
プリズムの輝き
浜辺に打上げられた
遠い昔の
人魚の話

南の小さな島を
津波が飲み込んだテレビのニュース
そしてガールフレンドが
ある6月の日
ぼくの子だと言って
胸の中にきゅーっと

仔犬を抱いている

素敵な女の子のハートは
まるでこの海のように 
いつも穏やかな奇跡に 満ち溢れている






Last updated  May 31, 2009 11:56:45 PM

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