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ゴンの部屋

ゴンの部屋

創作小説

              一章
           知らされる現実
      目覚まし時計がうるさく鳴り始めたとき
      すでに信也は布団から起き上がり、呆然と
      窓の外の曇った空を見ていた 
      今日もまた平凡な一日が過ぎると思うと
      正直、嫌になっていた
      そんな事を考えていると、誠也と母さんが
      起きだして来ていた
     「おい、兄貴 何ボーっとしてんだよ」
     「そんなの俺の勝手だろ 口出して
      くんじゃねーよ」「ったく せっかく心配して
      声かけてやったのに」「何だ文句あんのか」
     「はいはい、そこまで もう朝飯の用意はできてんのよ
      さっさと食べないと学校遅れるわよ」
     「分かったよ」「へいへーい」そう言うとテーブルに
     座り、皿に乗っている程よく焦げ目の付いたパンを
     急いで食べると、バッグを背負ってドアを開けて
     家から出ようとすると、「行ってらっしゃい」
     「行ってきます」そう言うと玄関を出てドアを閉めていた
              ☆
     太陽が沈むころ、信也は自分のシューズをしまうと
     靴を履き、校門を出ようとすると「何だよ、  
     まだ1時間しかしてねーじゃんよ」「すまん ちょっと
     今日は何か気分がのらねーんだよ「何だよその理由」
     「まあ、いいじゃんかよ 何とか部長に適当な言い訳
      言っといてくれ」「でもよ~」「何とか頼むよ」
     「は~ ・・・分かったよ 適当に部長に言っとくから
      さっさと帰っちまいな」「あんがとよ」
     陽介との会話を手早く終わらして、校門を通ると
     家の方角に向かって歩いていた
     いつもと変わらない6時の鐘が鳴り出していた
     「今日こそは何かいつもと違う事が起こる」
     そう考えていた信也は正直がっかりしてしまった
     朝、起きると飯を食べ、急いで学校への道を歩き
     着いたら着いたで夕方までつまらない勉強をして
     6時ぐらいまで部活をし、そして家に帰り飯を食べ
    11時ぐらいまで漫画や本を読んだり、音楽を聴いたり
    そして布団に入り寝る こんな習慣のようなものになった
    生活がつまらなく、そして嫌でたまらなかった
    そんな事を考えていた次の瞬間、急に体の底から悪寒が
    噴出してきた
    だが、すぐに治まると今度は激しい頭痛が襲ってきた
    いきなりの頭痛に困惑しながらも家までの道を歩こうとしたが
    家までの距離、あるいは5分も歩けるかどうかが頭痛のせいで
    分からなくなりつつあった
    少し歩くのを止めて考えると、一つだけ5分もかからずに
    帰れる道があったのがようやく思い出していた
    ここから少し先にあるアパートとアパートの間にある
    道がたぶん5分もかからず通り過ぎられたはずだが
    そこは5時を過ぎるとほとんど日の光は差し込まず、
    不気味なまでの静けさに覆われ、ただ「通りたくない」
    その事だけしか考えられなかった
    だが、今はそんな事を考えていられる猶予はほとんど
    無かった 更に一層頭痛が強くなってきたのだ
    少し早足でアパートまで来ると、すぐに道に入り壁を
    手をかけながら必死で歩いていた 信也は一刻も早く
    この光がほとんど差さない路地から抜け出る為に、
    自分では意識せずともどんどん歩く速度が上がっている
    事には気がつかなかった
    だが次の瞬間「・・・ぐちゃ」何か柔らかい物が
    潰れるような鈍い音がすぐ先の路地から聞こえてきた
    「何が潰れたんだろう」そう思い、先にある路地を
    見てみると、そこにあったのは無残にも引き千切られた
    野良犬の姿と、たぶんその犬の肉を食らっている
    「何か」がいた
    その風貌はまるで映画のエイリアンのような体、
    狼などの犬の顔だが、その顔には普通に家で飼っている
    ような可愛らしさとは程遠く、犬の肉を食らうその姿は
    「何か」の凶暴さ、そして恐怖が滲み出ていた
    その「何か」の姿を見て思わず、不快感と恐怖が一遍に
    信也の体に襲いかかってきた 「見つかったら殺される」
    ただその事しか考えられなかった すぐさま激しい頭痛に
    犯されている体を動かし路地を曲がらず少し遠回りになるが
    真っ直ぐ道を進むことにした もし曲がったらあの「何か」に
    気づかれて、あの犬のように喰われるかもしれない    
    命を落とすかもしれないのだったら話は別だった
    あいにく、その「何か」は犬の肉を喰らっていて、こちらを
    見ようとはしていなかった 荷物を路地に寄せて置き    
    ゆっくりと路地の方を確認しながら、足音がなるべく
    しないようにして、歩いていった
    ゆっくりと、だが着実に前に進み、あと2歩、3歩で
    着く所で、ガラスが割れたようなかん高い音が辺り一面に
    響き渡った すぐにどこからその音が聞こえてきたかを
    調べると、その音の原因は自分の足元にあったビール瓶だった
    音の原因が分かると、すぐに横の路地を見た
    路地には「何か」がこちらを向いて、今にも襲い掛かろうとしていた
    本能的に「このままじゃ殺される」と思い、荷物を地面に置くと、
    急いで前に向かって走り出していた
    走り出すと、けたたましい泣き声と共に「っどん」という音が
    すると、走っている信也の目の前に「何か」がいきなり現れた
    あまりに一瞬の出来事で信也は状況を上手くのみこめず、
    今度は逆方向に向かって走り出していた
    だが今度もまた「っどん」という音と共に「何か」は目の前に
    立ち塞がり、いきなり鋭い爪の付いた手で殴りかかってきた
    ただ「当たったら死ぬ」と思い、本能が赴くまま必死で
    目の前にある手を避けた
    避けた瞬間、後ろにある鉄パイプを取るとその「何か」に
    向かって思い切り投げた が、「何か」は投げられた鉄パイプを
    見るとすぐさま、鋭い爪の付いた手で鉄パイプを軽々と
    真っ二つにすると、瞬く間に信也の近くに近づき、今度は
    強靭そうな足で蹴り飛ばしていた
    あまりに一瞬の出来事で自分が壁にぶつかるまで、何が起きたか
    分からなかった
    だが少しすると体中に強烈な痛みがして、ようやく自分が
    「何か」に蹴り飛ばされた事が分かっていた
    すでに激しい頭痛は気にならなくなり、代わりに全身に
    強烈な痛みが襲い掛かっていた
    だんだんと意識が朦朧となる中、ゆっくりとだが「何か」は
    近づいていた 「このまま死ぬのだろうか・・・」と思うと
    急に曇りかけていた目の前が鮮明と映し出されてきた
    すると激痛が走っていた体が、だんだんと楽になり
    動き出せるくらいまでになっていた
    だが、そんな時でも「何か」は近づき、もうほとんど目の前に
    迫りつつあった 
    信也はその光景を見て、なんとか体を起きあげると
    必死で目の前にいる「何か」を睨み続けた
    「何でこんなのに殺されなきゃいけねーんだよ 
    確かに平凡な日はもう嫌だと思ったけど、こんなのは嫌だよ
    こんな所で死ぬのは嫌だ!!!!!」
    そう思った瞬間、「あいつを殺せばいい」
    どこからともなくその一言が聞こえた気がした
    「そうしなきゃ俺が殺られる、それしか方法はねーんだよ
     俺がアイツを殺す力をお前にやるよ」
    「お前はいったい誰なんだ」「いずれ分かるさ」「何だよ、
    その曖昧な答えは」「ほら、そこまで来てるぞ」
    とっさに目の前を見ると、そこには腕を振りかざした
    「何か」がいた すぐに後ろに引き下がると、「何か」は
    腕を振り下ろしていた 鈍い音がすると地面が割れ
    またこちらを見ると「何か」は、ゆっくりと近づいてきた
    「ほら、見ろ 今にもアイツはお前を殺しそうだぜ さあ
     どうする、アイツを殺るか、殺らねーのか
     まあ、もし殺らなかったらお前は確実に死ぬけどな」
    「なんでだよ、もしかしたら誰かが助けてくれるかも
     しれないし、逃げれるかもしれねーじゃねーか!」
    「甘いぜ、その考え この「空間」は入ったら逃げることは
     絶対に出来ない ついでに言うと誰も助けには来ない
     どちらにしてもお前に残された選択肢は2つ
     殺るか、殺らねえかだけなんだよ!!」
    「そんなの出来ねーよ!」「じゃあ今ここで殺されるか」
    「・・・・・・どうしたらいい」「最初から素直にそう言えよ
     全ての意識を自分の手に集めろ そうしたらおのずと出てくる
     筈だぜ 「悪魔」を殺すための武器がな」「「悪魔」?」
     「とにかくやってみないと死ぬぜ」
    だが、その声の通りに「何か」はあと4から5メートル位しか
    自分との距離は空いてはいなかった
    信也は「何か」への恐怖から、死に物狂いで自分の手に
    全神経を集中していった
    すると、手のひらが熱くなったと思ったらいきなり刀が
    出てきていた
    ずしりと重い刀の感触に最初は何をすればいいかが
    まったく分からなかったが、その刀を見ると「何か」は
    急に怯えだし襲い掛かって来ていた
    「死ぬ」 たったその一言が頭を過ぎり、頭の中で何かが吹っ切れた
    すると「何か」に走り出し、無意識の内に持っていた刀で「何か」の
    腹をざっくり斬っていた するとふらつく「何か」に対して
    今度は渾身の力を込めて、頭を真っ二つに斬り裂いていた
    斬った瞬間に頭からは真っ赤な血が大量に飛び散り、
    信也のブレザーも例外なく血でびしゃびしゃになっていた
    初めて目の前で見る大量の血と、ブレザーにべっとりと付く
    血を見て思わず、信也は止めどない不快感と嗚咽間で刀を
    地面に落とすと、思い切り吐いてしまった
    吐きながら前を見ると、そこにあったのは紛れもなく
    自らの手で頭を真っ二つに斬られ、死んでいる「何か」だった
    だが見ていると、だんだん「何か」は弱い光を出し始め、しばらく
    するとその肉体は完全に目の前から消えていた
    そして力の抜けた体を起き上がらせると、血の付いたブレザーを
    無造作に脱ぎ捨てると、ゆっくりと路地に向かって歩いていき
    路地に寄せておいた荷物を背負うと、またゆっくりと路地を
    抜けて、家のすぐそばまで来ると、できるだけ普通の顔をして
    門を開き、ドアを開けた そして言った
              「ただいま」

     雲で隠れていた月が路地辺りに差し込み始めるころ
     信也が「何か」を殺した場所に1人の少年と男が立っていた
    「ありゃー 何で居ないの たしか「悪魔」の気配したの
     ここら辺だったはずだけどな」「確かにおかしいな
     ここに向かう途中までは気配は確実にしていた筈だ」
    「って事は、ひょっとしたら新しい「半悪魔」か」
    「いや、この近くに「半悪魔」の気配はしなかった
     もしかしたら13人目が目覚めたのかもしれない」
    「ふーん そうだったらさっさと探さないと結構、ヤバい
     じゃんか」「そうだな 至急本部に帰るぞ 新たなる
     目覚めの可能性を皆に報告する」「はいはい」
     そう言うと男は上を向き、「月の明かりも俺たちには
     眩しすぎるか・・」「・・・そうっすね」
     少しの会話をし終わった瞬間に二人の姿は路地から消えていた
   
     

     
   
    
    
    
    
    
    

    
     
     
    
 
    
     
    
    
    
    
    
    
    
    
    
  
    
        
     
     
     
      
      
       
      
      


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