カテゴリ:短歌
「本の住処」/柴田 香
鍵あけて窓あけパソコン立ち上げて司書とふスイッチ入れて開館 窓ぎはの席に座りて日経をひらく人あり今朝も定時に アカゾメをアガワの横に排架してととのへてゆく本の住処を 左から右に視線を動かして若きらが読む『人間失格』 くち巧き男のやうな新刊の帯の文句に口説かれ手にす 電子書籍の是非を問ひたる『ダ・ヴィンチ』※を斜め読みしてゐる昼休み ※『ダ・ヴィンチ』・・・月刊の総合文芸雑誌 鞄ごと暑き車内に置かれしか返却の本ほのかに温し それぞれの気息で頁捲る音ときに重なる図書館の午後 夕刊の配達人を追ふごとくゲリラ豪雨となる坂のみち また来ると手を振る幼の小さき背を見送り夏のひと日暮れゆく *** 過日、『第32回熊本県民文芸賞』の発表があり、 今年の短歌部門で第3席にえらんでいただきました。 「この夏の宿題」として詠みためておいた、 職業詠10首の連作です。 今日の地方紙に作品と選評が掲載されたこともあり、 思いがけない方々から「おめでとう」の電話やメールを頂戴し、 それもまた、嬉しくありがたく。 いましか詠めない題材、というものが 絶対にあって、 それは不器用ながらもいま、カタチにすることが たぶんたいせつで。 自分なりの歌の在りよう、というものを 少しずつ模索しながら 成長していけたらと思います。 そしてもっと、 大きなひとになんなきゃなのですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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