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カテゴリ:エッセイ
またしばらくして本部を訪れた。 来訪すると奥様がおられて対応してくれた。 「こんにちは、また来ました。」 「あら、あなた熱心ね。でもこないだもっと熱心なかたが来てね。九州から見えられてね、どうしても教えてほしいって1週間泊りがけで来た人、いたわよ。」 「えっ?一週間ですか?」 「そうそう、あなたもがんばりなさい。」 当然私はそんなことできない。 会社クビになるのは目に見えている。 「あ~~はい~。」 適当に返事をした。 「今、おとうさん呼ぶわね。」 「すみません。」 「おとうさん、おとうさん、伊藤さんとこのお弟子さん来たわよ~。」 会長が奥から出てこられた。 「こんにちは。おじゃまします。」 「あ、君か。今は昔と違ってコース別にやってるからね。今日はなんのコースだったっけ?」 奥様が「それじゃ、コース別に何曜日が何って書いてあるプリントあげるわ」と言ってプリントを渡してくれた。 そこには曜日と時間帯ごとに「太極拳コース」とか「形意拳コース」とか書かれてあった。 えっと今日は何のコースか探してみた。 そこで会長が何か思い出したように言った。 「あ、今日はI君の陳式太極拳のコース、今やっているからそこを見学するといい。」 「あ、はい、ありがとうございます!」 「来た時にどのコースでも好きに見学していってください。」 なんだかやっと信用されたようでうれしかった。 「あ、I先生の教室は、今日2階ね。そこの階段からどうぞ。」 奥様が案内してくれた。 2階にも道場があると思わなかった。 道場にはいるとちょうど学校の教室くらいの広さだった。 奥様がI先生に紹介してくれた。 「あ、I先生、この人ね新潟の伊藤先生から習ってる人なの。今日、見学させてもらっていいかしら。」 「はい、では、まあ、ゆっくりと見ていってください。」 紹介されたI先生は絵に描いたようなイケメンだった。 端正な顔立ちというのはこうゆう顔を言うんだなと思った。 背は180センチ弱くらい。 やせ型だが筋肉質なのが拳法着の上からでもわかる。 どこにも隙が無い、端正なたたずまいだ。 T先生のゆったりとした感じとは対照的だ。 学者のような大人しい感じの人だ。 生徒さんは若い女性が5人、30代位の男性がひとり。 T先生のごつい男性ばかりのクラスとは大違いだ。 まあ、モデルのようなI先生なので、当然こうなるとは思うが・・・・。 陳式太極拳の套路をみなさんでやっている最中だった。 I先生が見本を見せてそれをみんなで真似るという感じだった。 女性たちはとても楽しそうだった。 私としてはカルチャー教室の太極拳を見学しに来たような気分だった。 正直、モテモテのI師範にやきもちをやいていたのかもしれないが、あまり面白くはなかった。 しばらく套路をやって、「それじゃ、少しこっちで・・・・」と言って男性の生徒さんを呼んだ。 すると道場の半分は女性たちが套路の稽古をして、道場のもう半分を使ってその男性とI先生で推手が始まった。 基本的な四正推手からはじまってしばらく繰り返されたあと、自由に攻防を繰り返す推手が始まった。 そうそう、私が見たかったのはこれだ。 I先生はその男性を相手に見事な技で何回も吹っ飛ばした。 そのたびに女性たちは「かっこいい~」「すご~い」と小さめの声で感動していた。 相手の男性はあまり背が高くないが結構がっしりした体格で力がありそうだったが、I先生にかかるとゴムまりのように跳ね上がったり吹っ飛ばされたりしていた。 顔に似合わず(すみません失礼なこと言って)すざまじいカンフーだと思った。 稽古が終わり、I先生にお礼を言った。 「今日は素晴らしいものを見せていただきました。ありがとうございました。」 I先生は、「これから新潟までお帰りですか?お疲れ様です」と微笑んで言ってくれた。 その微笑みを見た時、これは女性ならひとたまりもなく恋に落ちるなと思った。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
武術ではないのですがこの動画チャンネルをご存ですか?
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