およそ遠しとされしもの。下等で奇怪、見慣れた動植物とはまるで違うとおぼしきモノ達。
それら異形の一群をヒトは古くから畏れを含み、いつしか総じて蟲と呼んだ。
★2014年4月より放送の「蟲師 続章」→
蟲師 続章 あらすじまとめ
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蟲師 あらすじまとめ
蟲師 第11話 やまねむる
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第11話「やまねむる」画像あり
山に穴があいていた。と思ったら消えた。山の異変を感じたギンコが麓の里を訪ねると、人々が集まって山の話をしていた。山の様子がおかしいようだ。自分は蟲師だが何か役に立てるかと思ってとギンコが言うと長老が蟲師ならぜひ頼みたいことがあると言う。
この山深くに住む、ムジカという蟲師を探してほしいと長老は言った。この山には代々すべてを知る「主様」がいてムジカはその意向を唯一知る人で事あるごとに指示を仰いでいた。ムジカの教えで収穫期のこの季節に山深くまで入ることは禁忌となっているが、ムジカが姿を見せないので数人が山に探しに行って熱病になり命を落としかけた。
ギンコが山に入ってみると物凄い精気だった。甘いような苦いような、むせ返り皮膚にまとわりつく匂い。ここは光脈筋。生命の川の流れる所の上に実りの時期。不用意に入れば精気に当てられ気が惑う。光脈筋なら統制をとる「ヌシ」がいるはずだ。山の異変はヌシの変調だろうとギンコは思った。となれば件の蟲師が知っているはずだ。
少年がギンコの後をつけて山に入っていて、精気に当たって倒れた。ギンコは気付け薬を渡した。コダマという少年はムジカの弟子で、ムジカを探しに行くんだと言った。今から見つけてやるからじっとしていろとギンコは言うと光酒を並べる。ムグラノリ。ムグラという山の神経のような蟲に意識を潜らせて草木の中を走る。
ムジカを見つけた。こっちを見たと思ったらギンコはムグラを引きはがされた。ムジカのところへ向かう。遠くで鐘のような音がした。あっちに鐘なんてあったっけとコダマ。崖の下にムジカを見つけて助けて庵に運ぶ。足を滑らせてケガをしてまわりの実や草を食べていたとムジカは言った。
里の皆には主様の意向を伝えられずに迷惑をかけたとムジカ。助けてくれたギンコに礼を言った。あんなところで足を滑らせるとはさすがに年をとった。そろそろ任を離れるべきなのかもなとムジカ。山のヌシのですかとギンコは言った。
侵入者からムグラを引きはがしたりできるのは本物のヌシかヌシの術を張っているヒトくらいだろう。この山の異変はヌシであるあなたが崖下から動けず、術の更新ができなかったせいだとギンコ。ムジカはだが明日からはこの足でもなんとかヌシを続けられるから、山は元に戻ると言った。
ヒトがヌシをやるのは辛いと聞いているが、よほどのわけでもとギンコ。ここは光脈筋で正統なヌシはちゃんといたが里の者が誤って殺してしまった。自分も旅の蟲師だったが、よく立ち寄るようになったこの里の者達が困り果てているのを見てヌシになる決意をしたとムジカ。妻は山の精気のせいか長く生きられなかった。コダマを次のヌシにするつもりだと言った。
コダマは山から生まれて山に育てられたとムジカは言った。里の女たちは山から流れ出る水で次々と子を授かるが皆は育てられず山に捨てていく。獣に食われずに生き延びたのはコダマくらいなもの。だが里に残った兄弟はみな薄命で生存を知った両親が1年前に里に引き取った。
蟲を寄せるので流しで蟲師をしているとギンコ。ムジカの目が光った。この山から一歩も出られない身からすれば、ちょいと羨ましくもあるなとムジカ。良かれ悪しかれ骨を埋めるのはこの山以外にはありえんからなと言った。夜中にも鐘のような音が聞こえた。
翌朝ギンコとコダマは里に戻ることに。僕は今もムジカの弟子だよねと聞くコダマにムジカは勿論だと答えた。里からここまで通うのも鍛錬になる。お前は今に立派な蟲師になるぞ。里に戻ってムジカの無事と指示を伝える。宴が開かれたが夜中にギンコは異変を感じ外に出る。近づいてきている。
コダマもやって来てあの音は変だよと言う。近くに鐘なんかないし父さんたちは何も聴こえないと言うし。何かの蟲なのかなと言うコダマにギンコはお前はヌシの術を習ったかと聞く。ムグラを体内に飼うヒトがヌシになるための術。まだだとコダマが答えるとギンコは鐘の音の原因は心配するほどじゃないから家に帰って寝なおせと言った。そして散歩の途中だからと言って出て行った。
あれがそこまで来ている。ムジカの姿がない。音の進路の山頂へ行くとムジカがいた。ギンコはあんたは足にケガなんかしてないな、人目につかないあの場所で「クチナワ」を呼んでいたんだと言った。近づいてくる鐘のような音はクチナの鳴き声だ。クチナワはヌシ喰いの蟲、山のヌシや沼のヌシを喰って取って代わる。
そしてその場所に安定をもたらす蟲。こうするのは俺の使命だ、邪魔せんでくれとムジカは言った。あれは巨大な老猪の姿をした立派な美しいヌシだった。俺が悪かったと言うムジカに早くこの山を出るんだとギンコ。ムジカはクチナワが自分を見つけたからもう遅いと言った。ヌシの座にはあのようなものが在るべきなのだと。
ギンコは光酒をまきムグラを引きはがそうとする。無駄だ、他に術もないとムジカは言うが、何かあんだろう、こんなのよりはよと言った。里の連中はムジカを慕って必要としている。俺もあんたが少し羨ましかった。なのにひとりで勝手にこんな死に方、決めてんなよ。ギンコはムグラを呼ぶ。お前まで巻き込まれるぞ、よせとムジカ。クチナワが現れた。ギンコを追って来たコダマも巨大な姿を見た。ムジカは姿を消した。
ギンコは夢を見た。
ムジカを歓迎する人々。宴の席で朔(さく)の兄にこの里に住んで朔と所帯を持ってくれないかと言われる。ここにはお前が必要だ。朔はずっと待っていると。蟲を寄せる体質だから無理だと言ったムジカだが、許されないことだが山のヌシを殺して喰って自分がヌシになればここに住めると話してしまう。
翌朝、ヌシの通り路の地図と毒薬がないことに気づくムジカ。血だらけの朔が戻って来た。牡丹を分けてもらったんだと肉を抱えた朔は言った。すぐ鍋にするから待っててな。うんとうまいの作るから、だからずっと、ここにいてくれな......ギンコの記憶にはない夢だった。
ギンコを助けたのはコダマだった。山頂に着くとギンコが倒れていてムジカの姿はなく庵も消えていたと言う。そして里の誰もムジカのことを覚えていなかった。クチナワに喰われる、ヌシの交代というのはそういうことなんだとギンコ。そのとき山にいたものにだけ記憶が残るようだが。
ギンコのまわりに蟲払いの薬が置いてあった。コダマが調合したのだという。ムジカはコダマには生きていくための知恵だけを教えたと言っていた。大したもんだと言うと、俺はムジカの弟子だから、これくらいできらあとコダマは言って涙を拭った。里の人がコダマをたずねてくる。どうしても伐れない木があるから見てほしいと。すぐに戻るからとコダマは出て行った。
旅立つギンコ。ムジカに何かあんだろうと言ったが、やはりなかったなあと思う。山にクチナワの姿があった。見事なもんだ、人の気など知りはしない。まるで欠伸でもするように、クチナワはひと声あげるとあとはもう静かに腹を波打たせるばかりだった。
★原作では第2巻にあります。
蟲師(2)