087.わたしの体に呪いをかけるな [ リンディ・ウェスト ]
本のタイトル・作者わたしの体に呪いをかけるな [ リンディ・ウェスト ]"Shrill"by Lindy West,2016本の目次・あらすじレディ・クラック骨になってゆく女たちわたしの体はわたしのものだ心を殺さないでよくなるための十八の簡単なステップ人生からレモンを与えられたとき鏡を見ても自分が嫌にならないなんて、勇敢だね!真っ赤なテント「ハロー、わたしは太ってます」トロールが現れた!精霊たちと戦う人々座席がわたしに小さすぎた日アメリカの笑いの街:主な住民はジョーク『狼よさらば』「これはミソジニーなんかじゃないんだ」倒れた大木人生の終わり新しい始まりトロールをやっつけろ!だからわたしはノーと言う(し、あんたの機嫌は取らない)引用それは、社会が女性のために作った境界―――従順になりなさい、人の世話をしなさい、静かにしなさい―――を蹴っ飛ばす方法だ。そして、わたし自身を作り上げるための方法である。わたしはこれをやる。わたしはそれをやらない。あなたはわたしが服従すると信じているだろう。でも、わたしはあなたの機嫌を取る必要はない。わたしは忙しい。わたしの時間は公共の商品ではない。あなたは退屈だ。消え失せろ。そういうことが、世界を築くものなのだ。感想2022年087冊目★★★2016年の選挙(ドナルド・トランプが当選した選挙)が始まる前に書かれた本。原題 "Shrill" は「甲高い声」の意味で、ヒラリー・クリントンが「彼女の甲高い声が嫌いだ」と性差に基づく侮辱を受けたことを敷いている。(「女たちは黙っておけ」というわけだ。)幼い頃から太っていたリンディは、ジェンダーとルッキズムの差別に絶えずさらされて成長する。ジャーナリストとなった彼女は、声をあげ始める。太っている自分には価値がない―――誰が決めたの?もしかして私は、その決断を自分でするだけなんじゃない?誰か知らない陰険な奴らではなく。私が、私には価値があるのだと決めるだけ。けれどそれは、途方もないインターネット・トロール(アンチたち)との戦いだった。アメリカらしいというか、スタンダップ・コメディの「定番ネタ」に「レイプ・ジョーク」というのがあるということに驚いた。はあああああ?おもしろいとでも思ってんの??????表現の自由との闘いにすり替えられる問題に、彼女は噛みつく。叩かれて叩かれて、コメディを心から愛していた彼女が、コメディを見られなくなるまで。私はBL(ボーイズラブ)を愛するのだけれど、それはBLの世界が「女性性」から自由だからだ、と前に何かで読んだ。男性に置き換えることで、自らのアイデンティティは被害を受けない。(けれどBLは代替少女漫画でもあるんだよな、というところに根深い「女性像」を見るのだが)この本は短いエッセイをまとめた感じ。自分を肯定し、声を上げ続ける著者はすごい。なんて勇敢なんだろう。後半には、パートナーとの同棲と破局の物語もあり、お姉さんの「大好きな小鳥に傍で歌っていてほしいなら、掴むんじゃなくて手を開いていなくてはだめ」という助言が素敵だった。亡くなったお父さんをネタにしたインターネット・トロール(彼は悔い改め名乗り出た、珍しいことに)との対話は、なんだか悲しくなった。彼女が「自分は自分でいいのだ」、と言ったから。だから、彼女を許せなくなったのだ、と彼は言う。女のくせに。太っているくせに。自分より劣っているくせに、自分を肯定して、幸せそうであることが許せない。なぜなら己は、彼女のように自分に自信がないから。結局のところ、リンディを抑えつけていたものは、このひとを抑えつけていたものでもある。彼女はその重荷を取り払い、課せられることを拒否した。甲高い声を上げた。だから社会は許せなくなるのだろう。彼女は戒律を破った。―――己は、黙っていたのに。「あとがき」によると、本書はアメリカでベストセラーになった後、Huluでドラマ化。シーズン3まで制作されているそう。彼女はその後 "The Witches Are Coming" に続き、 "Shit, Actually: The Definitive, 100% Objective Guide to Modern Cinema"の2作を刊行。これもどんな本なのか読んでみたい。(最近、「邦訳ないなら英語で読んでもいいな」と思えるようになってきた!)↓ 「見たよ」のクリック頂けると嬉しいです ↓