Editor's Whisper [全413件 ]
電子書籍への取り組みや新しいプロジェクトの立ち上げなど、紙の本の編集以外の仕事を同時並行で進めることになって、自分のブログとゆっくり向き合うことが難しくなってしまいました。 もちろん、このことは残念なのですが、新しいことに取り組むことは本当に楽しいものです。
これからのスケジュールを考えると、今後も思うように時間がとれそうもありませんが、本ブログがアーカイブ的にでも何んらかの形でお役に立てればと思い、しばらく、このまま残していこうと思っています。
著者から頂いた原稿を紙の書籍と電子書籍の両方で出版しようとする場合には、
・ それぞれの価格をいくらにするか
・ 著者の印税率をどうするか
・ 電子書籍を販売するプラットフォームをどこにするか
など、いろいろと考えなくてはならないことがあります。
出版社によっては、(同じ紙の書籍ですが) まずは単行本を出版し、その後、それを文庫化して出版といった展開の経験はあるにしても、1つのコンテンツから紙以外の異なるアウトプット・異なる価格・販路で出版するといった経験はほとんどなかったと思います。 もちろん、時代の流れがワンソース・マルチユースに向かっていることを感じていた編集者 (出版社) は多かったと思いますが、それが現実のものとなり、その課題に悩んでいるのではないかと思います。
上の3点について書き始めると膨大な量になりそうなので、今回は価格のことについて。でも、これが本当に悩むところです。例えば、単行本として刊行したものを、後に文庫本として刊行するといった場合も、より読者層の幅を広げることを狙った展開であり、ワンソース・マルチユースの一つと言えると思いますが、この両者には、例えば1年や2年といったように、それぞれの発売時期に開きがあるのが一般的です。
電子書籍の場合にも、紙の書籍との発売時期に開きがある場合には、ある程度思い切った価格設定に踏み切れるかもしれません。 しかし、紙の書籍と電子書籍をほぼ同時期に発売するとなると、それぞれの価格をいったいいくらにするかといったことに悩まされることになります。
電子書籍には印刷代や用紙代、流通コストなど、紙の本の出版でかかるコストがかかっていない分、価格を低く設定できるのではないかということは確かです。 ただ、そうだからといって、両者の価格差をあまり大きくし過ぎてしまうと、紙の書籍が売れずに在庫として残ってしまうことのリスクも課題となります。
もちろん、 両者の売り上げの合計 > 両者のコストの合計 となってくれればよいのですが、 このコストというのが問題です。 紙の書籍の場合には電子書籍とは異なり、売れない場合には社内 (あるいは借りている社外) の倉庫に在庫として残ることになるので、在庫として抱えている限り、それがいつまでもコストを生み出す (膨らませる) 要因になってきます。
つまり、紙の書籍が売れなくても、その分、電子書籍が売れてくれればよいと単純に考えるわけにはいかないところが悩ましいところです。 また、紙の書籍が早く完売できるように最初から印刷部数を抑えれば単価が上がってしまいますし、刊行したばかりの本を品切れにすることはできませんから、やはり印刷をして在庫を持つことが必要となります。 その印刷部数は、紙の書籍と電子書籍の両方の売り上げ動向を見ながら検討する、ということになるのでしょう。
それならば、最初から紙の書籍は作らずに電子書籍だけで発売すればいいのでは?と考えたいところですが、現在の国内の電子書籍市場、読者の読書形態の状況では、電子書籍にすることでその魅力が存分に発揮できるという内容のものでない限り、すべてを電子書籍でというのは現実には難しいのではないかと思います。
ということで、紙の書籍と電子書籍の同時発売を考えるときには、価格や印刷部数を決めるために考慮しなくてはならない要素も多くなり、未経験の出版社を悩ませることになります。 ある程度経験を積むことで、経験則から判断するということになるのかもしれませんが、それがうまくいくかどうかは、いまはまだわかりません。
大きな出版社では毎年のように新入社員を募集するかと思いますが、 (これまで何度か書いてきたように) 出版社というのはほとんどが中小企業であり、欠員が出ると募集するというのが一般的です。 また、その欠員による募集というのも、必ずしも編集職とは限らないのと、(即戦力となることを期待して) 経験者を募集という場合も多く、そういったことも、出版業界を狭き門と言われる状態にしている一つの要因かもしれません。
今年もそろそろ (私が勤める出版社では) 入社面接の時期となりました。 面接にのぞむ学生さんたちはきっと緊張するでしょうが、面接する側も緊張するものです。 (緊張して硬くなっているからといって、面接でマイナスの印象になることはありません。 大切なのは、そうした中でも、どのくらい自分というものを出せるかだと思います。)
私などは普段は人事を担当しているわけではなく、編集者として仕事をしている身。 そんなこともあって、限られた面接時間を、面接される側・面接する側の双方にとって価値あるものとすべく、いつも頭を悩ませてしまいます。
これはどんな職業でも同じだと思いますが、 短い時間内で、 その人がその仕事に向いているかどうかを判断するのはできないことですし、本人自身も、そこは未知の部分が大きいと思います。 そのため、何度か面接を重ねたり、本採用までのある一定期間を仮採用という形にしたり、あるいは、インターンシップ制度を導入している企業も増えてきているようです。
もちろん、ある短い期間だけ仕事 (の一部分) を体験しただけで、自分がその仕事に合っているかどうかまで見極めることは現実には難しいでしょう。 また、最初から自分に合った (と感じられる) 仕事に出会える人はごく一部であって、その仕事にやりがいを見出し、楽しいものとできるかどうかは自分次第、という見方もあると思います。
ただそれでも、自分が憧れている仕事を体験することができるというのはとても貴重な機会だと思いますし、 職場の雰囲気を感じることができたり、 社会人の先輩方にいろいろと話を聞くことができるという点で、本を読んだり机で勉強するだけでは得られないメリットがインターンシップ制度にはあると思います。
現在、インターンシップ制度を導入している出版社がどのくらいあるのかはわからないのですが (残念ながら、自分が勤めている出版社では導入していません) 、自分が就職を希望している ・ 関心を持っている会社や業種がこうした制度を導入しているのであれば、活用してみるのもよいのではないかと思います。
今日は、録りためたTV番組やDVDの映画を見たりして、久しぶりにのんびりとした一日を過ごすことができました。 ここのところ、復刊書の刊行に向けての手続き、連日の責了作業で根を詰める日が続いてバテ気味だったので、やっとエネルギーの充電ができてよかったです。
復刊書というのは、すでに多くの方がご存じのように、昔に発売された本で、発売当時はそれなりの話題や売上げ部数を誇っていたものの、次第に部数が伸び悩んで重版 (増し刷り) が難しくなり、その後、品切れに至ってしまった本を、装丁を変えたり (場合によっては、組み直しもして) 新たに刊行した書、というものです。
一度に何千、何万部と刷るのではなく、1冊単位で印刷・製本ができるオンデマンド印刷・製本が可能となってから、従来の印刷・製本では採算が難しくて出版を断念していた本を復刊する出版社が増えてきました。どの本を復刊するかということについては、読者の方々から寄せられる復刊のリクエストや営業部が過去の販売動向に基づいて選び出す、というのが一般的なのではないかと思います。
復刊する本が決まると、まず最初に、その本の著者 (相当に古い本もあるので、すでに著者の方が亡くなられている場合も多く、そのときには著作権の継承者) に復刊に関する許可願い書をお送りします。
著者がお一人の場合には復刊の可否のご返事も比較的スムーズに得ることができるのですが、著者が複数名の本になると許可願い書をお送りする先も多くなり、また、お一人でも同意頂けない場合には復刊を断念せざるをえないこともあって、復刊にはハードルもあります。私自身の経験では、 著者の方々が復刊に同意できない理由として一番多く挙げて下さるものは、 いまと比べると内容 (記述) が古くなっているために、読者の方々に誤解を与えかねない、というものです。
「若いときに読んだ、あの本をもう一度」 という思いを持つご年配の方、「当時の本を見たことはないけれど、うわさを聞いて」 など、リクエストを下さる読者の方々は内容的な古さは問わないことがほとんどなのですが、その本に対する著者の思いもあり、難しいところです。
今後は、復刊もオンデマンドから電子書籍へという方向に次第にシフトしてくると思いますが、最初から電子書籍で刊行した場合には品切れになるということもなくなるでしょうから、未来には復刊書という言い方も消えてしまうのかもしれません。
Google が提供しているフリーの電子書籍製作ソフト Sigil 。 英語表記なので最初は戸惑ったのですが、ボタン操作や機能がシンプルなので、いろいろと触っているうちに、(まだ使い始めてから1ヶ月も経っていないのですが) 少しずつ慣れてきました。
実は、Sigil をダウンロードするまではよかったのですが、肝心の、電子書籍化する原稿 (素材) をどうしたらよいだろうかと、結構悩んでしまいました。 Sigil は text はもちろんですが、 html 形式も読み込めるので、単に自分のパソコンで試作品を作るだけなら、ネット上に山ほど素材があるのですが、折角取り組むなら、やっぱり自分が書いたものにしようと思い直し、今は院生のときに書いた修士論文を電子書籍化してみることに取り組んでいます。
本文は言うまでもなく、 (一部の図を除いては) 図や表も著作権は私にあるので、どう調理してもいいやと、電子書籍化の良い実験素材となっています。 それなりにボリュームもあるので、論文の電子書籍が完成する頃には、Sigil の操作も習得できるかなぁと思っています。
毎回作業を終えるときに、(とても他人には見せられない) 自分の顔写真をカバーデザインにした作りかけの電子書籍を Adobe Digital Editions を使ってライブラリに入れてブックシェルフに並べ、それを開いて仕上り具合いをチェックしています。 これもちょっとした楽しみの一つです。
何でもそうだと思いますが、周囲から強制されて仕方なくといった感じで取り組むとモチベーションも維持できにくいものですが、帰宅してから自分のペースでコツコツと取り組んでいるので、とても楽しいです。
少し慣れと知識が必要ですが、 Sigil はフリーで使えるソフトなので、 自分で電子書籍を作ることにトライしてみたい方はお試し下さい。