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カテゴリ:お買い物
もう去年のことになるが、所要で東京に行った折時間が余ったので、銀座をうろついた。並木通りのとあるビルに、画廊の表示があり、その日の展示ポスターが貼ってあった。そのポスターになんとなく心惹かれるものがあったわたしは、画廊に入ってみた。 なかでも心惹かれたのが指揮棒を持った、バロック調のすてきな男性の絵であった。普段のわたしなら、ひとわたり見回して、「ふーーん」と言って立ち去ったであろう。が、その時期、わたしは、この年度末での早期退職を考えていて、通常の気持ちではなかったのである。ふと、画廊の店主氏に尋ねてみた。「今はおカネがないのですが、来年の5月ころならお支払いできるのですが、それまでこの絵を取り置いていただくことができるでしょうか?」この条件が整えば、この絵を買うことができる、そうだ!退職の記念になるではないか!自分の勤めた歳月に何か形を与えることを無意識下で考えていたのが、こんな形で口に出たのだった。 すると、驚いたことに、店主氏、OKだという。しかも内金を払ってくれれば、絵は翌日がその作家の個展の終わりの日なので、その片付けが済みしだい自宅に送ってくれるというのだ。えっ、見も知らない飛び込みの一見さんですよ、とこちらのほうがあせってしまう。店主氏「いやいや、絵の好きな人はわかります。そんな人は約束を違えることはありませんよ」これで交渉成立である。 「もののはずみ」というものは、恐ろしいものである。かくして、吉岡正人氏作の「指揮者」という作品はわたしのものとなり、今、改築なった我が居住所の居間の壁をかざっているしだいである。ロマン溢れるご商売をしているアトリエ鈴木のご店主に、甚大なる感謝を申し上げるしだいである。
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