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2004年09月03日
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テーマ:お勧めの本(7216)
カテゴリ:カテゴリ未分類


【西洋文明の常識】森川 明 (著)(1997/12)


■第一章 資本主義の常識

●どうしてこれほど豊かなのか

いまの日本には、ものがあふれている。世界中の安い産物が輸入され、ありとあらゆるものが手に入るようになったからだ。それと比例するかように、海外への援助も頻繁におこなわれるようになった。
貧しい国の人々へ手を差しのべることは、高く評価されるべきである。貧富の差は、どこでも生まれる問題だからだ。だが、いま世界が抱える貧困は、西洋文明の常識が生み出したものだった。間違っても、世界の文明が生み出した問題ではなかった。
「世界の富の量は、一定であり、決まっている」のを知っているだろうか。もはやこれ以上、増え続ける見込みはなくなった。富の量が決まっているなら、世界中の人々が、先進国と同じ豊かさを得るなどあり得ないことがわかる。

たとえば、ここにパンが三十あり、それを十人で分け合うとしよう。単純に均等分すれば、一人当たり三つずつもらえるはずである。それが現実の世界では、力の弱い七人は、一つでももらえればいい方で、力の強い三人が二十三ものパンを分け合っている。世界の貧困は、このように一部の人間があまりに富を集めすぎることに原因があった。
力の強い三人とは、アメリカ、ヨーロッパ、そして日本である。いまの世界は、この三人にパンが集まる仕組みになっている。西洋文明が誇る豊かさとは、あまりに不公平すぎる富の配分があるからこそ存在していた。
三人の分け前は、ぼう大な量である。かりに均等分したとしても、最低七つは受け取っていることになるからだ。それだけの量が、毎日欠かさず送られてくれば、とてもすべてのパンを食べきれないのはいうまでもないだろう。
だから残ったパンは、まだ新しくても捨ててしまうのだ。各工場や家庭などから、毎日山のような残飯が、ゴミとして捨てられている。食べ物だけではない。まだ使える電気製品も自動車も、型が少し古くなっただけで捨てられ、ほとんどが再利用されずゴミとして埋められている。
どんどん捨ててしまうのは、新しいパン(富)が次から次へと送られてくるので、いくら無駄にしても心配ないからだ。そして無駄をさせるのは、無駄をした方が安くなる仕組みになっていたからだ。捨てるくらいなら、よそへ回してもよさそうなものだが、システムがそれを許してくれないのである。
いま世界でおきている現象は、どれも偶然の産物ではない。西洋文明の常識が幾重にも積み重なっておきたことである。それがたまたまおきた不幸な出来事だと見なされるのは、『西洋文明の常識』が無視されているせいだった。

目には見えなくても、世界はつながっている。いまや世界がより一体化しつつあるため、地球の裏側でおこった事件でさえ他人事ではなくなっている。そしてこの常識に従う日本も、世界中に多くの問題をばらまいてきた。
近年でいえば、コメの緊急輸入がそのいい例である。コメが足りなくなったから、外国から買うという実に単純な論理である。あくまで資本主義の常識に従っているわけだが、世界に与える影響まで考えると、そうもいっていられなくなる。
なぜなら、他国からコメを買わなかった日本が、ある日突然大量のコメを買い占めたせいで、コメの国際価格が上昇してしまい、貧しい人々が買えなくなってしまったからだ。
貧しい国々への援助とは、富の再分配を意味している。富を独り占めにせずにみんなで分け合う行為である。日本は世界一の援助額を誇りながら、それとはまったく正反対の行為をしていた。
世界には、八億もの極度の栄養不良に苦しむ人々がいる。それでも資本主義では、金のあるところにものが流れる。日本が欲しがれば、意図しなくてもそうなるのである。世界がおかれている現状は、あまりに過酷といえた。

日本人は、非常に謙虚である。コメ問題の話をすれば、すべての問題を日本の責任と考え、真面目に反省するに違いないからだ。しかしそれでは何ひとつ解決しない。なぜなら問題を生みだした本質が、農産物の国際分業とかいう奇妙な法則にあったからだ。主要作物を他国に頼るせいで、世界中が食べ物を取り合う問題を生じていた。
国際分業とはいっても、決して難しい話しではない。農産物の自由化のこと、つまり市場開放をすることで、結果的に分業になる現象をいっている。どうして分業にさせるのかといえば、単に欧米が自国の農産物を売りつけるために必要だったからだ。
当然、他国に押しつけても、自国でやる国などない。欧米の食糧自給率を見れば、それは明白だろう。自国は閉鎖市場でも、他国には開かせる。そのわけは農産物の確保が、国家の安全保障にも関わる重要課題だったからだ。
外国と自由競争をすれば、安価に作れる条件のいい国が市場を占有し、自国の自給率が下がるのは当然である。その結果、国際分業という形が生まれる。少しでも安い産物を輸入した方が、合理的なのは事実である。問題は世界的な天候不順や紛争などで輸入できなくなったとき、どう対処するのかである。
農産物と工業製品を同列に並べさせられた日本は、穀物自給率を二十%台にまで下げられた。そして、最後に残ったのがコメだった。このコメもついには押し切られた。これは何も日本だけでなく、世界中の国々が日本とまったく同じ目にあっている。農産物の自由化問題は、日本の問題だけではないのだ。
日本に見られる農業の衰退は、世界の農業を反映している。コメの輸入で生じた問題、ひとつをとっても、本質を探れば偶然ではなく必然の産物だった。どう考えても、日本の問題ではないことは、明白だろう。
一方、世界の人口は、爆発的に増えている。このままでいけば、そう遠くない将来、食糧の絶対量が不足し、世界的な食糧危機に見舞われるのは確実である。たとえどんな国でも、自分が食べる分まで売ってくれる国はない。となれば、わずかの食糧をみんなで取り合う醜い争いを生じるだろう。

資本主義経済は、世界の国々を目に見えない糸で結びつけている。「風が吹けば、桶屋が儲かる」ようなことが現実におこり、よその国の問題が、世界に飛び火していた。
自分自身の問題と思っていたことが、世界の問題と密接な関係がある。『西洋文明の常識』は、確実に世界を取り巻いていたのである。


●資本主義の弱者は悲惨である

資本主義の強者は、昔から常に批判されてきた。資本主義が発展する段階で、かならずその国の弱者を搾取したからだ。西洋文明では、かつて自国の民衆を飢餓に陥れ、子供すら半奴隷状態にして酷使したほどだ。
それが時代と共に減っていくのは、国内の搾取で財力をつけた資本家が、搾取の比重を海外へと移していくからだ。それであたかも搾取の問題が解決して、なくなってしまったかのように思えるのである。
資本主義は、かならず弱者を生む。絶対に、弱者がなくなることはない。国家でも民衆でも、弱者であれば、みな搾取にさらされる運命にある。その中でも、ごく一般的な例として、いまの発展途上国がどのような搾取にさらされているのか、その現状を見ていくことにしよう。

ここにA国という、発展途上国があったとする。もちろんA国は、日本のような産業発展を遂げたいと思っている。しかし、A国には、産業と呼べるものが何もなかった。そこでそれほどお金がかからない農業からはじめることにした。
試行錯誤をくり返し、農産物を作ったまではよかったが、輸出をする段階になって困った問題が発生した。ものには何でも相場というものがあるが、農産物の国際価格が非常に安かったからだ。
このからくりを解くためには、欧米先進国が、工業だけでなく農業でも大国であることを知る必要がある。
一般に先進国の産業は、機械化で人件費を削減して、徹底的に合理化しているため、元々生産性が高い。そのうえ各国政府が補助金を出して、安くして輸出しているのだから、鬼に金棒である。輸出品に補助金を出すのなら、完全にダンピングのはずだが、弱小国が文句をいっても聞いてくれる国はない。
もし輸出ができないのであれば、自給に回す手もあるが、発展途上国が作る農産物は、単価は高いが価格変動も激しい商品作物(サトウキビ、ゴム、コーヒーなど)である場合が多い。植民地時代のプランテーションのなごりだが、食糧の自給を放棄した上でひとつの商品作物だけを作らせるため、一度相場の暴落や天候不順があると、すぐに飢饉に見舞われ、大きなダメージを受けるのである。
世界的に見ても、いまや農業では儲からなくなっているため、農産物を自給していた国や輸出していた国でさえ、自給を捨てて高値のつく商品作物に頼ったり工業化の道を歩んでいる。皮肉なことに、世界の人口は急増しているのに、肥沃な農地は減少する危機に見舞われていた。
結局、先のA国は、農産物を売って儲けるどころか、かかった費用より安く買い叩かれてしまった。援助に頼らず、何とか自立を試みたA国だったが、努力の甲斐も空しく借金だけが残った。もちろん、お金を貸してくれたのは先進国である。
工業の場合も、農業と同じかもっと深刻だろう。ハイテク関連の技術格差は、開く一方であり、とてもゼロから追いつける状況にない。先進国の競争相手が減った軽工業でも、一歩も二歩も先んじた他の発展途上国があり、安くて、品質の高い製品で競い合っている市場で太刀打ちできるはずもない。
八方ふさがりの中で、唯一残された道が、自国の資源を売って儲けることである。豊富な資源を持った国なら、いずれは自立して、発展できそうに思える。だが、発展途上国には、自国で資源を採掘したり、輸出するための技術もお金もない。
そこで仕方なく外国資本(外国企業)に任せるわけだが、それを引き受けるのは大抵、自国を植民地にして搾取していた旧宗主国である。そのため折角独立したのに、昔と同じような搾取にさらされてしまうのだ。
さらに発展途上国には、それまでした借金という大きな足かせがある。借りたお金は返さなければならないが、元々お金がない国が借金したのだから、できることは限られている。たとえば、自国で使うための資源を売ったり、少ない国家財政をさらに切り詰めることである。公務員の給料未払いがいい例だが、そうすれば行政全般が混乱し、民衆の生活がますます苦しくなるのはいうまでもないだろう。
当然、人々の怒りは政府に向けられ、暴動や内乱が頻発するようになる。内乱で政治が不安定になると、それでなくても良くない経済がさらに悪化し、経済の悪化が政治をさらに不安定にする。これが世界各地でおきている現象である。
発展途上国が経済発展するなど、夢のまた夢である。いくら経済的な自立を望んでも、ほとんどの国は、発展どころか借金を雪だるま式に増やしてしまい、巨額な負債を抱え込んでしまう。
目には見えなくても、弱者はみな搾取の対象、すなわち植民地状態だった。残念ながら第二次大戦後の植民地独立でも、状況はほとんど変わらなかったのである。








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最終更新日  2004年09月03日 15時28分45秒
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