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テーマ:DVD映画鑑賞(13988)
カテゴリ:何故か好きな映画
NUDO DI DONNA
Nino Manfredi ラストの暗い映画にも素晴らしいものや、好きなものもたくさんありますが、やはりハッピーエンドで、心があたたまるような作品はいいですね。でもなかなか好きになれる作品は少ない。そんな中で最も好きなのがこの『ヌードの女』です。84年のイタリア映画祭in東京で上映されたらしいですが、ボクはその頃テレビ東京で放映されたのを見ました。この映画はイタリアの人気コメディー俳優だったニーノ・マンフレディが監督・主演しています。最初Alberto Lattuadaという人が監督をしていたのですが、マンフレディと意見が合わず、マンフレディだけで監督をした作品です。何故かビデオとかDVDとかがない。やっとイタリア語に英語字幕のアメリカ盤中古VHSを見つけて買いました。ネットの「みんなのシネマレビュー」にもレビューはないし、海外のサイトにもほとんど情報が無いんですが、この作品が埋もれてしまうのはもったいないと思います。心温まる夫婦の愛の確認の物語が、カーニヴァルの幻想的なヴェネツィアの雰囲気を背景に、2人の女が同一なのか別人なのかという幻想的なストーリーの中で描かれた、美しい映画です。ちなみにミクシィの日記にちょっと書いたら、やはりテレビで見て印象に残っているという方がいらっしゃいました。 (以下ネタバレ) --- 不得手な英語字幕で見ているので誤りがあるかも知れません)--- サンドロ(ニーノ・マンフレディ)とラウラ(エレオノーラ・ジョルジ)の夫婦は、子供もかなり大きいし、結婚16~17年といったところでしょうか。ローマに住んでいたらしいけれど、最近妻ラウラの故郷ヴェネツィアに住むようになった。ラウラは老舗の古書店の娘。18世紀の希少本など扱う、伝統のある、文化でもある古書店だ。ラウラには友人・知人も多く、街の名士等との交際も広く、故郷ヴェネツィアで仕事も含め活々としている。そこに南部出身で古書には知識のないサンドロ。細かい路地と運河と橋の地理もまだ不確かだ。古書店の仕事をしようとするが、分からないことばかりで、父の代からの老番頭にもバカにされる始末。そんな環境の変化や妻に対する劣等感もあってか、妻ラウラとの関係も微妙。 そんなある日、妻と口論になってしまい、しばらく別居しようということになる。ラウラは夫をもう愛していないわけではなく、腑甲斐無いと感じているのだ。サンドロは芸術家達の集いの場となっている、知人の家に住うことになる。古ぼけて、雨漏りもする、壊れかかった屋敷だ。サンドロがトイレに行こうと家の中を歩いていると、大きな写真パネルの数々が置いてある一角に、脚を曲げてベッドにうつ伏せになった女のヌード写真を発見する。何とほぼ等身大のその女のヌード(この映画の原題は『女のヌード』)は、顔は伏せられて写っていないが、妻ラウラにそっくりなのだ。サンドロは家に戻り、寝ている妻の毛布を剥がすと、そこに寝ているラウラはちょうど脚を動かして曲げ、写真そっくりのポーズをし、ポーズからモデルの肉体の特徴まで、そこに写真そのままの光景が現出する。屋敷に戻ると、翌日その写真はもはや無くなっていて、家人に尋ねモデルのことを聞き出そうとするが、モデルのプライバシーということではっきりは教えてはくれない。 サンドロは似顔絵書きに似顔絵を描いてもらい、それを道行く人に尋ね回り、カフェで派手なカラフルな娼婦の衣装を身につけたラウラ、いやラウラそっくりのリリーを見つける。誘われるままに彼女の屋根裏部屋に入る。小魚のフライを揚げたりして、一緒に食べ、飾らない彼女と午後の愛のひとときを過ごす。 それからサンドロは家・古書店とリリーの部屋を何度か往復する。あるときは徒歩で、あるときは水上タクシーを飛ばして。それでも時計を確認するとかなりの時間を要するのだが、出る前には必ずラウラは居て、リリーに会って帰ってきてもそこにはラウラが既でにいる。リリーの部屋の近くのカフェで買ったお菓子を買って帰ると、ちょうど妻ラウラも同じものを買ってきたり。ラウラはリリーなのか、別人なのか。リリーがおでこをぶつけてケガをした後サンドロが古書店に戻ると、彼はを高い書棚から本を取ろうとして落としてしまい、下にいた妻ラウラのおでこにぶつけてしまう。妻ラウラにリリーと同じキズが。はたして妻のキズは今自分がつけたのか?。それともラウラはやはりリリーなのか?。そんなある日リリーの部屋を訪ねると部屋は空になっていて、彼女はもうそこにはいない。遠くへ旅立むねの置き手紙があった。 ときはヴェネツィアが一年で最大に盛り上がる祭り、謝肉祭。第二次大戦というテーマに合わせた飛行士の仮装をしてサンドロが遅れながらパーティー会場へ向かおうとすると、老番頭は屋根伝いの近道をサンドロに教える。屋根伝いにすぐ近くだった会場はリリーの部屋のあった建物だ。リリーはこの近道を利用したラウラだったのだろうか?。会場で娼婦の仮装をした妻ラウラがいる。サンドロは彼女を追うが、サン・マルコ広場の雑踏に見失ってしまう。祭りの熱狂の一夜が明け、早朝運河のほとりで焼きカボチャを食べるラウラ(リリー?)。ほのぼのと一緒にその焼きカボチャを食べるサンドロ。ラウラとリリー、そんな真相はもうどうでもいい。今目の前に愛する女がいるのだ。 もともとが喜劇役者のマンフレディが、きっと男の本性である腑甲斐無さをコミカルに演じ、ラウラとリリー二役のエレオノーラ・ジョルジはどちらの役でも美しく・可愛いらしい。本土から1本の道のみで結ばれ、車も走らない路地と運河の錯綜する不思議な孤島のヴェネツィア、歴史の過去にタイムスリップしたような町並み、そして仮装した人々が街を歩くカーニヴァル期の幻想的な雰囲気、その仮装といいリリーの部屋のモダン・カントリー調のカラフルな原色の美しさ、ちょっとフェリーニ張りの大きな人口のネズミも登場し、そういう美しく幻想的な中に、やはり幻想的な、ハートウォーミングなストーリーが展開される。本当に美しく、そしてちょっぴり生きることや愛することの哀しみをも感じさせる映画です。 マンフレディという男の描いた、ある意味では男にとって都合の良すぎる話かも知れません。最後までラウラとリリーが同一か別人かは明確にはされませんが、妻ラウラが愛する夫サンドロの迷いを解消して愛を再生するために仕組んだ物語と解釈してもいいし、カーニヴァルの幻想がもたらしてくれた夢の世界と解釈してもいい。いずれにせよ、愛の迷いや腑甲斐無さから自分が脱出するのを愛する女性が助けてくれるお話。都合良すぎるけれど、男冥利につきるとも言える。でもこういう関係って、女性の方々はダメですか?。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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