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2004年12月26日
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今さらながら、桃井かおり姐さんのエッセイ『賢いオッパイ』。古本屋さんの百円コーナーで見つけて、おぉ~とすかさず買った。

【最近、鏡の前の私の丸いオッパイは、知らぬ間に三センチほど下に位置を変えたが、お陰で外すボタンがふたつ増えて、すこぶるYシャツが綺麗に着こなせるようになった。
 首から胸へと、広がりを増した胸もとは、賢いオッパイを連想させて、どこか涼しげで気に入っている。
 こうしたオッパイなら、もう誰と恋したっていい気がしている。どんな恋をしても、かまわない気がして、いい歳をして、近頃、私はますます無邪気になった。】

なんて、ステキな文章。かおり姐さん独特の言い回しや言葉遣い。
私はすぐに夢中になって読みふけってしまった。

「歳をとるって、賢くなって、なんだかオッパイが膨れてくみたい!」と言う初井言栄さんや、「生まれて、生きて、生き慣れ、親しんで、生き長らえる。着物だってあなた、毎日着てりゃ、誰だって着れるようになるわけよ。十年着こなしてりゃ、そのうちいつかあぁたぁ、着崩してんだから」と、ただ丸いだけのオッパイを抱えたかおり姉さんの背中を、ポンポン勢いよく叩いて言った沢村貞子さんを、綺麗に人生を生き崩して、さっさと逝ってしまった、と書いている。

あー、そうだなぁ。着物だってきちんと基本通りに着られる技術を持っているから、だんだんに粋に着崩していくことが、身についていくんだ。やたらに衿をぬいたり、前をはだけたりしたら、ただだらしがないだけ。きちんと人生のルールで生きてきた人だけが、かっこよく生き崩すことができるんだ。

【若者とは未熟なのではなく、未経験なだけだ。つまらん痛手を受けて、牙を抜かれた男よりずっと質がいい】
かおり姐さんが三十才を過ぎてからは、恋人らしき相手はことごとく年下の少年だった。オカマのオネーサンに「淫行だ!」「幼児誘拐だ!」などとこづかれるのを承知で、せっかく生まれた恋を、機嫌よく迎えられる女になったそうだ。懲りることなく恋をして、汗臭い少女から、涼しい体になったおかげらしい。

少年と恋をするのって、どんな感じだろう? と少しでも思ったあなた! このエッセイを読んだら、あ~、こんなふうにステキなんだ♪ と、絶対に自分と年の違わない母親を持つ、まるまって眠る少年と、恋をしてみたくなること請け合いだ。
私は...オッパイが三センチどころではないし、バレエで鍛えた体もないし、かっこよくタバコも吸えないし...なにより、もう、無邪気に恋ができないような気がする。

そういえば、一つ思い出した。もう十五年くらい経つかもしれないけど、舞台で十六才だったキムタクと共演した時のこと。鬼の蜷川氏に怒鳴られ、思うように演技ができず、そのまま稽古をお開きされてしまったキムタクが、トイレに篭って悔し泣きをしたそうだ。一時間もたった頃、トイレのドアを開けたキムタクの目に入ったのは、誰もいなくなった稽古場に、一人かおり姐さんが座ってタバコを吸っている姿。「気がすんだぁ? じゃあ、ご飯でもいこうかぁ」って。何かのインタビューでキムタクが言ってた。蜷川さんと桃井さんがいてくれたから、今の自分がいるんだって。

松田優作の死んだ時。初七日に未亡人が言ったこと。
「優作は優秀だから、この世の修行が早く済んで、向こうで三段階くらい一遍に進んで、上のほうのランクにいるらしいの」
これを聞いてかおり姐さんは考えた。
【今はただこの体を使って、壊れるまで使いきると、何の未練もなく、「ああ、そういう事ですか」と、あんな写真のような笑顔で言えるのでしょうか】
そして、自分の葬式は、自分からの最後の奢りだからと、遺言状を用意し、それぞれの人への香典返しを記し、極上の寿司も注文済みなのだ。しっかり、遺言状も載せている。

家族とのつかず離れずの距離をもった、気持のいいつき合いを読んでいると、いい育ち方をしたかおり姐さんの、本質の部分が見えたような気がする。犬の「タマゴくん」とのことや、元彼との再会のし方や、車に対する愛情なんかが、とても繊細に語られている。
このエッセイの後半は、ユーラシア大陸一万キロのシベリア鉄道の旅と、「ネイチャリングスペシャル地球を歩く」という番組の、二カ月をかけてアフリカを横断した旅のお話。誰よりも都会が似合い、オンザロックの氷の音が似合い、誰よりもかっこよくタバコを吸う、ハンサムな大人の女であるかおり姐さんが、砂漠の中でシベリアの列車の中で、生きることだけに必死になって、それでも自分の世界を築き上げていく様子に、心を打たれた。

恋の斑な思いに染まりながらも、それを気持いいこととして受けとめ、ステキな友人や先輩の死に直面して、もう歳をとれなくなった先輩たちに、こうなったら、誰よりも長生きをして、生き崩してみせてやらねば! と思っている。

後書きには、私たち読者に向けたメッセージ。
【知り合いでもない、体の関係もない、血が繋がってもいないあなたと、こんな時間がもてるなら、こんな関係も悪くない。と、思って下さい】

私は、中学生の頃から「桃井かおり」に憧れていた。私にとって、大人の女の代名詞だった。『青春の蹉跌』『もう頬づえはつかない』『幸せの黄色いハンカチ』『夕暮れまで』などの若い頃の作品は、いつか私もあんなふうになりたいと思わせてくれた。『前略おふくろ様』では、かわいい海ちゃんのキャラクターが大好きだった。『疑惑』や『東京夜曲』では、熟した女性の個性的な魅力を披露してくれた。

ジャズシンガーとしてのかおり姐さんからも、目が離せない。ピアノに寄りかかり、けだるそうな雰囲気で、ハスキーな歌声を聞かせる。私が少年だったら、間違いなく彼女のペットにしてもらいたいと願う。ポケットに入れたドロップを、金にするのか銀にするのかわからないでいる少年と恋をする、大人になってもポケットにドロップをいれているハンサムな女性。
百歳を越えても、私を魅了し続けてほしい、永遠のあこがれの人だ。
≪旅をするように生きる≫≪まずはキスから始めよう≫かおり姐さんの口癖...ステキ♪


【追記】
楓ちゃんが教えてくれたステキな記事

 桃井かおりさんのお父様が、娘について語っている。こんな父と娘だったら...というお手本のようなもの。お父様のご冥福をお祈りします。

賢いオッパイ ( 著者: 桃井かおり | 出版社: 集英社 )


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

【賢人訓より】

 大弁は訥なるが如し...たいべんはとつなるがごとし

 本当に雄弁な人は、むだなことを言わないので、かえって口べたに見える。
 調子に乗ってしゃべりすぎると、相手に軽くみられてしまうもの。
 余計なことを言うよりも自分の思っていることをしっかり伝えていこう。

みんなのたあ坊の「賢人訓」 中国編





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最終更新日  2004年12月28日 17時28分18秒
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