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合成物とは、2種以上の異なる素材から成り、通常であればそれぞれの素材の性質は異なる。そのため、それぞれを合わせることによってより高い性能を発揮することが可能となる。材料科学界の『キャプテン・プラネット』のようなものです。例えばコンクリートであれば、セメント、礫、砂から成り、これらが力を合わせると強固で堅牢な建築素材となります。
このたび新たに開発された合成物であるプロテウスは、アルミニウム、鉄、チタン合金、セラミックを合わせた、ユニークな混合物だという。その密度は鉄の6分の1ですが、著しく切断が困難です。 まずアルミニウムの粉末を、発泡剤として使われる水素化チタンと混ぜます。発泡剤の役割は、加熱により気体を発生させ、アルミニウムの内部に極小のポケットを作ることです。この場合、発生する気体は水素ガスです。 次に、このアルミニウムの混合物を棒状に圧縮します。この棒は、直径13ミリメートルのセラミックの球体と、互い違いの列に重ねられます。この列は、横から見るとチェッカーボードのような状態で積まれます。 これら全部を760℃に熱すると、アルミニウムが溶解し、チタン合金からは水素ガスが放出されます。この泡により、アルミニウムは膨張してセラミック球体を覆います。 全体を冷却すれば、アルミニウムの泡の鋳型跡にセラミックの球体が封じ込められた、新合成物の誕生です。科学者たちはこの合成物を、姿を変化させるギリシア神話の神にちなんで「プロテウス」と名付けられました。 さて、残るはその性質のテストです。まず科学者たちは、厚さ4センチメートルのプロテウス板を、アングルグラインダーで切り付けてみました。 あっさりネタばらしをしますが、刃はほとんど通りませんでした。アングルグラインダーは、わずか5分の1まで切り付けたところで、1分少々で使い物にならなくなったのです。プロテウスの頑健さが、これでおわかりでしょう。 アングルグラインダーのディスクが回転を始めると、ディスク中心部から振動波が発生します。今回のケースの場合は、アングルグラインダーがプロテウスと接触すると、振動波はプロテウス内部に伝播し、セラミック球体を震わせます。 振動するディスクが切り付けて、振動する球体に一つでも接触すると、その球体が「集中荷重」、つまりある一点のみに加わる荷重をディスクにかけます。この場合は、集中荷重はアングルグラインダーのディスクの刃先にかかります。 するとその振動は跳ね返り、ディスクそのものに負荷されます。これは、ニュートンの「運動の第3法則」の「作用と反作用」です。 研究者たちは、こういった前後への振動波が、刃先を鈍らせたと考えています。ディスクに戻る振動が、ディスクから発せられる振動と振動数が同じだった場合、刃の振動は「共振」を起こして大きくなります。こうなると、刃が起こす振動はすべて、ますますディスクの刃先を鈍らせてしまうのです。 これが本当にこのような仕組みなのかを決定付けるには、まだ研究が必要です。いずれにせよ、刃はプロテウスに1センチメートル以上切り付けることは不可能でした。研究者たちは、パワードリルやウォータージェットカッターも試してみましたが、結果は同じでした。切断装置はセラミック球体に到達した途端に、行く手を阻まれてしまったのです。 研究者たちは、プロテウスの強度をさらに上げるために、短いニクロムワイヤーを混入してみました。それによって、アルミニウムが延ばされたり引っぱられたりすることに耐えられる「抗張力」が増強されました。すると、いかなる道具でもプロテウスを数ミリメートル以上傷つけることはできなくなったのです。 プロテウスのような未来型の「切れない物質」は、多種多様にカスタマイズできることから、材料科学者を興奮させています。アルミニウムの泡立ち具合や大きさ、セラミック球体の数などを調整することにより、あらゆる利用法ができると彼らは考えているのです。 自転車の鍵はもちろん、装甲扉や、『ブラックパンサー』に登場するような貫通不能な靴底などが考えられます。プロテウスは「アダマンチウム」や「ヴィブラニウム」そのものではありませんが、極めてすばらしいシールドになりうる。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2023.03.02 15:43:09
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