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2018.10.09
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太宰治『富嶽百景』を読む 二十回

 帰りに、娘さんは、バスの発着所まで送ってきてくれた。
歩きながら、「どうです。もう少し交際してみますか?」
きざなことを言ったものである。
「いいえ。もう、たくさん。」娘さんは、笑っていた。
「なにか、質問ありませんか?」いよいよ、ばかである。
「ございます。」
私は何を聞かれても、ありのまま答えようと思っていた。
「富士山には、もう雪が降ったのでしょうか。」
私は、その質問には拍子抜けがした。「降りました。いただきのほうに、_。」
と言い掛けて、ふと前方を見ると、富士が見える。へんな気がした。
「なあんだ。甲府からでも、富士が見えるじゃないか。ばかにしていやがる。」
やくざな口調になってしまって、「いまのは、愚問です。ばかにしていやがる。」
娘さんは、うつむいて、くすくす笑って、
「だって、御坂峠にいらっしゃるのですし、富士のことでもお聞きしなければ、悪いと思って。」
おかしな娘さんだと思った。
 甲府から帰ってくると、やはり、呼吸ができないくらいひどく肩が凝っているのを覚えた。






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最終更新日  2018.10.09 18:57:13
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