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テーマ:がんとつきあう(104)
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抗がん剤投与の「さじ加減」を重視し、あきらめない治療を実践する外科医・平岩正樹氏の「抗癌剤 知らずに亡くなる年間30万人」紹介します。
この本は、「がん相談室」を主宰し、主として抗がん剤治療で多くの進行がん患者を救ってきた著者が、日々の実践を取りまとめ、抗がん剤治療の真髄を語る示唆に満ちた好著。考えること、工夫することの大切さを改めて認識させられる。 がんは200種類以上あり、進行速度ひとつをとっても大きな差があるから、手術、抗がん剤、放射線のうちこれがベストと一概には言えないが、いずれにしろ早期に取り組むことが鉄則。 通常抗がん剤治療には、 1 手術後の安全のための補助治療 2 手術で取りきれなかったがんを抑えるための治療 3 進行がんでこれ以上すべがないときに行う決死の治療 の3つがある。 その効果として、治癒、延命、症状緩和が求められる。具体的にはがんが縮小することは言うに及ばず、がんの成長がとまり、いわゆる休眠状態になるのも評価すべき。 抗がん剤の機序は一部の分子標的治療薬以外はよくわからない。 分子標的薬にしても、機序についての理論に裏打ちされているはずのイレッサが大きな副作用をもたらしたように、標的分子以外のところでどう作用するかは不明。 患者にとっては、効く薬なら何でもよいわけで、副作用を抑えながら効く薬を組み合わせ、適量を投与するためには、医師も相応の技術が必要である。 抗がん剤の適量は患者によってまったく違い、効果的な治療のための抗がん剤の組み合わせやその量には無数の選択肢がある。副作用も、量を調節することによって押さえることが可能であり、医師の「さじ加減」が重要な要素になる。 有名な医学雑誌「ランセット」でも、さじ加減の重要性についての報告があるし、また、夜間に重点的に抗がん剤を投与する「クロノテラピー」なども、重要なさじ加減の一つとして報告されており、著者も実践している。 最近、混合治療について若干緩和の方向が出、新薬承認でも前向きの例が出るなど、日本の抗がん剤環境も少しは国際社会に近づいたと評価するが、それでも日本の抗がん剤を取り巻く環境は厳しい。 新薬がなかなか承認されないし、日本にあっても抗がん剤として使えない薬があるのに加え、承認されていても、全国の病院で用意されているとは限らない。 また、組み合わせや量を考える医師の技術料が無料で、病院にとっても利益の上がらない治療になってしまっている。 著者は、『あきらめの悪い医師』で、ぎりぎりまで抗がん剤による治療を追及する。また、「副作用で嘔吐させない」と公言し、副作用を出すのは医師の技術の問題だと言う。 肝臓に8cmを筆頭に無数の転移がん抱えた胆嚢がん患者に対し、工夫を重ねた抗がん剤治療で快方に向かわせた例など、その「優れぶり」を随所にうかがわせる実践例が多数出ており、患者に希望を与えてくれる。 著者紹介: 平岩正樹(ひらいわまさき) 1953年広島県生まれ。 東大物理工学科を経て84年医学部卒。東大病院第一外科、国立がんセンター勤務、共立蒲原総合病院外科部長等歴任、現在、都内の病院でがん診療にあたる。 診療情報の完全公開実践。『がんの相談室』開設。 主著に「がんで死ぬのはもったいない」、「チャートでわかるがん治療マニュアル」など。 『がんのweb相談室』:http://2nd-opinion.eec.ne.jp 減胃庵では、がんに関する情報を集めたホームページ「cancerwatch」を開設しました。ご関心のある方は一度ご覧ください。 「がん・ガン・癌スーパーリンク」では、あらゆる臓器のがん情報を提供しています。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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