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テーマ:がんとつきあう(104)
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6月15日、大和書房から近藤誠医師の対談集が出た。題して「名医の『有害な治療』『死を早める治療』」
内容は、近藤医師がこれまで行ってきた対談、鼎談、インタビュー、論争の集大成。 同じ慶応の阿川佐和子さんとのホンワカインタビューから、近藤医師の「検診無用説」や「がんもどき説」に鋭い批判を浴びせてきた元国立がんセンター名誉総長の市川氏、自治医科大学の斉藤教授などとの手に汗握る論争まで、12編が収められている。 がんもどき説は近藤医師を一躍日本のメディカルスターにしたアイデア。 早期発見を標榜して実施されるがん検診で見つかる微小ながんのなかには、本来のがんではないそのままの大きさでとどまるものや、消えてなくなるものも多くあり、発見即手術という日本の治療法はいたずらに人の寿命を縮めているというもの。 また、仮に治療するとしても、手術以外に放射線という選択肢があるのに、日本では手術偏重になっていることも批判され、さらに手術と合わせて抗がん剤を投与してその副作用のために亡くなる人も多いから、効かない抗がん剤を投与するのは間違っているという主張もなされる。 近藤説は手術を恐れ、抗がん剤の副作用の苦しみから逃れたい患者には大歓迎され、がんを発見して手術が必要だと診断しても、近藤先生の『がんもどき』ではないかといって手術に応じない患者がいるのは困ると、ほかの医師たちは苦々しげにコメントする。 自治医大の斎藤氏は、15例の早期がんが、時間的には長くかかってもほとんどが5年程度で粘膜内から粘膜下に浸潤、やがて5年後には命を奪うという事例を厳密に示して、『がん』が『がんもどき』であるはずがないという。 しかし、別の資料では43例のうち29例はがんが進行したが、14例は発見された当時の大きさのままとどまったという報告もあるようで、結局どっちが正しいかはわからない。 近藤医師の言いたいことは、発見されたがんすべてをすぐに手術するのではなく、ケースバイケースで様子を見ながら進めるべきで、さらに選択肢として手術以外の放射線をもっと優先的に使用すべきだということだろう。 最近は、乳がんでもできるだけ乳房温存術を取り入れているし、胃がんでも内視鏡でとってしまう例も増え、患者の負担は大幅に減少している。 これまで医師は患者の負担をあまり考慮せず、がんだけを対象に取り組んできたが、やはり、患者が生活していくうえでの快適性を重視し、無駄なことはしないという姿勢がだんだん明瞭になってきていることは確か。 近藤医師の主張は、医学界だけでなく、日本全体で大きな反響を呼んだが、これからのがん対策の方向性のひとつを示し、がんに取り組む医師が判断する際の留意事項になったのではないかとおもう。 減胃庵では、がんに関する情報を集めたホームページ「cancerwatch」を開設しています。ご関心のある方は一度ご覧ください。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.06.23 13:10:57
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