カテゴリ:証券業
松井道夫(松井証券(株)【東証1部:8628】社長) 米国のサブプライムローン問題の余波を受けた株式相場の低迷で、証券業界は苦しい戦いを強いられている。そんな中で、今こそ既存の枠組みを壊すチャンスと気を吐く松井氏に今後の取り組みを聞いた。 世界から置き去られ、ローカルとなった日本 ――このところの株価低迷をどう思いますか。 評論家の方々は、この水準が“岩盤”で、ここを突き抜けることは理論的にないはずといったことをよくおっしゃるが、株価というものは理屈で動くものではありません。森羅万象あらゆるものを内包して形成される。その中で大きなウエートを占めるのは確かに企業業績ですが、それと同じくらい大きいのが流動性、つまり需給関係です。昨年1年間で株の売り買いは、合わせて約1400兆円に上る。そのうちの約50%、700兆円ほどが外国人投資家によるものでした。現在はもう少し比率は大きいかな。それが今一斉に日本から逃げていこうとしている。証券自由化から10年の間に東京市場は間違いなく世界から置いてきぼりにされ、ローカル市場になってしまいました。 ――それはなぜですか。 簡単に言えば、資本主義についてきちんと議論してこなかったし、特殊な日本的資本主義の下で今後もずっとやっていけると勘違いしたからだと思います。頼みの外国人投資家を不透明で説得力のない理由で排除し、鎖国しようとしている。日本全体の国益という観点からの議論がない。日本には素晴らしい企業がたくさんありますが、このまま行けば彼らも日本から逃げ出すでしょう。収益の大半を海外で稼いでいるなら、本社も海外に移したほうがいい。政治家に理念がないのをいいことに官僚が余計な規制ばかりして、性懲りもなく社会主義ごっこをしているこの国に、何の未練がありますか。あのトヨタ自動車も日本に税率40%近くの法人税を納めなくなるのは、そう遠い日ではないかもしれない。年間1兆円近い税収減は痛いはずなのにね。 個人投資家の流動性は全体の15%を下回る水準になりました。今年も全体で1400兆円なら15%というと約200兆円。その大半百数十兆円がデイトレーダーです。どこかの次官のようにデイトレーダーが悪いと言うつもりは全くありませんが、彼らにとって企業業績云々は関係ない。日々のボラティリティー(変化率)に関心がある。これが高ければどんどん売買する。市場の流動性の厚みが薄くなれば、これが上昇するから彼らの売買は今より膨らむでしょうね。デイトレーダーの市場流動性に占める比率は、今後増しこそすれ、減じることはない。本来市場のメーンプレーヤーであるべき一般個人の流動性が枯渇している事態は極めて憂慮すべきことです。本来逆張りする主体であるべき個人投資家が消えつつある中での外人投資家の売り浴びせは相場にとっていいはずありません。メルトダウン寸前だと思います。 ――サブプライム問題の影響は、日本にも及んでいます。 市場関係者の間では、サブプライム問題は既に終わったものという認識で、これを引き金に世界的な信用収縮が起きているのが問題の本質です。今や世界中が、“崩壊”が来るかもしれないと身構えている。もしそれが起きたら、どこが一番影響を受けるかと言えば、投資家の層が薄く、もろい市場を持つ国。それが日本です。国内に目ぼしい投資家がいなくて、個人投資家も“塩漬け”状態になって鳴りを潜めている。外国人投資家は日本から逃げ始めている。何の防備もせず呆然と立ちつくしている時に大津波が押し寄せたら、流動性のない真空市場では株価はストーンと真っ逆さまに落ちていきます。もちろんどこかでコツンと止まりますが。その水準が前述の評論家先生たちの予測する水準でないことだけは確かでしょう。 破局時こそ力を発揮する日本人への期待 ――今の日本は官製不況の様相を呈しています。 政治に全くリーダーシップがありませんからね。何を考えどうしたいのか全く分からない。国会のねじれを理由にしていますが、言っていることは単なる不満にしか聞こえません。そうした政治の体たらくを一部の官僚はじっとうかがっているのでしょう。うかがっているどころか一部行動に移していますけどね。改革反対運動としてね。マーケット、市場競争に関係の薄い省庁の官僚ほどその傾向が強い。「改革なくして成長なし」は全く間違っていないと思いますよ。改革の対象になる連中は物すごい不満を持っていましたからね。リベンジなんでしょうか。今、それが大きなうねりとなっている。アンシャン・レジーム勢力が息を吹き返している。不況になるのは当然でしょう。 ――今の日本の仕組みを変えたほうがいいと? そうです。自虐的かもしれませんが、日本は一気に破局の一歩手前まで追い込まれたほうがいいのではないかとさえ思います。その後に現在の官僚制も含めてすべてを再構築するくらいの覚悟で臨まなければいけないのではないか。日本の歴史を遡って見ると、140年前の明治維新や63年前の第2次世界大戦敗戦の時など、破局からの復興時には目覚ましい力を発揮しています。戦後復興で言えば、官が先導して復興を遂げたのでは決してない。民の叡知と努力によって成し遂げたのです。松下幸之助さんであり、本田宗一郎さんであり、われわれ親の世代の世間では名も知られていない無数の企業人たちが成し遂げたのです。官はその黒子役に徹したからうまくいったのです。主役だったら失敗したでしょう。最近それを勘違いした連中が出てきたからおかしくなったのではないか。 1981年、経済的に苦しんでいた米国で共和党のレーガンが大統領に就任した。その就任演説で「現下の危機に際し、政府は問題解決の主体ではない。問題そのものである」として小さな政府構築の方針を明確に打ち出した。民主党のケネディの「国家が自分たちに何をしてくれるかではない。自分たちが国家に何ができるかを問うべきだ」という有名な演説と共に今の日本の政治家に聴かせたい演説です。政治はかくあるべきだと思いますね。政治の、特にリーダーの強い主義主張があれば、族議員だの、改革反対官僚などは尻尾をまいて逃げていくでしょう。 >>次へ バックナンバー 団塊世代に期待 - 2008年05月17日 関連サイト 松井証券 - ネット証券・オンライントレード 松井証券 - Wikipedia 株価 Yahoo!ファイナンス - 8628.t 株マップ.com 8628 松井証券(株) 松井 NIKKEI NET 株価サーチ 株価 8628:松井証券 - Infoseek マネー 株価ジャッジ | 松井証券 (8628) 8628松井証券|株式投資顧問会社|イーキャピタル お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年06月30日 19時10分49秒
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