映画「ミッション・インポッシブル ゴーストプロトコル」を見た
のっけから派手な逃走アクションに、「スパイ大作戦」のテイストを取り戻したかのような、主要シーンを織り込む導火線のオープニングシーケンス。本編も最初から最後までアクションは盛り沢山だし、カメラになるコンタクトレンズや、光学迷彩装置などなど奇想天外なスパイ道具満載。その上、ドバイやインドなど、いつかは訪れてみたい場所を次々と紹介してくれる楽しさ。まあ、面白いには間違いない映画なんだが、自分的には、後にはなーんにも残らなかった。「敵のおっさん、年寄りなのに体力ありすぎ」とか「潜水艦がミサイル撃った瞬間に、世界中から報復ミサイルが飛ぶんじゃないの?」なんてヤボは言わない。「核戦争回避のためにIMFのたった1チームだけがまともに活動してた」なんて、じゃあCIAやKGBやMI6は、どいつもこいつもボンクラ揃いなんかい?なんてことも言う気はない。しかし、なにせなにも残らなかったのだ。面白いけど空虚という感じしかなかったのだ。いろいろ張り巡らした点と線も、きっちりどこがどう繋がってたのか、どうも歳のせいか理解しにくくかったし、「プレシャス」で教師を好演したポーラ・パットンも、今回ばかりは気合が入りすぎて、あんな怖い顔してたらいくらなんでもマハラジャ(「スラムドッグ・ミリオネア」の、"みのもんた")も惹きつけられないだろうとか、スパイ同士がなんでこんな友達付き合いなんだよとか(これはMI3の時にも思った)、どうにも腑に落ちないところがあって、総合的にはなにも心に残らなかったのだ。理由をいろいろと考えてみたんだけど、「007シリーズ」なんかは、ヨーロッパ文化の深みみたいなものをすごく感じるわけだ。例えばカクテルだとかシャンパンだとか、酒の取り扱いひとつとっても、ニヤッとするような面白さがあるわけだ。トム・クルーズも一生懸命走りぬくんだけれど、なんかそれだけというか、脳が筋肉というのか、よく冷えたボランジェやシェイクしたウォッカマティーニなんか間違っても出てきそうにないさみしさが底に、そしてそこにある。Aチームとかスパイ大作戦って、一種そういう王朝文化的深みに欠けるんだなと実感する次第だ。まあもちろん、階上と階下を挟んで偽物と本物がすれ違う同時取引なんて、いかにも「スパイ大作戦」らしい作戦は出てくるんだけど、それがなんか活きてこないような、最後の駐車場での戦いなんか、ただひたすら尺を伸ばしてるだけのようなイライラを感じてしまったのだ。まあ、文句ばっかりだけど、普通におもしろいとは思うので、スカッとさわやかコカコーラ的なものを求めたい時にはオススメ。