イスラムの変容とイスラム社会のビッグバンまたは液状化
THE AUTHOR 著者の窓辺朝日新聞GLOBE[第6回]イスラムの解釈を個人が再定義する「宗教改革」は、すでに始まっている『変わるイスラーム源流・進展・未来』No god but God:The Origins, Evolution, and Future of Islamレザー・アスラン Reza Aslan 作家、宗教学者 キリスト教では、キリストをめぐる人間的な物語があふれているのに、イスラムでは戒律や教義が強調されがちだ。この本は、イスラムの預言者ムハンマドを中心に、様々な人間の物語から始まり、イスラムを語るストーリーテリングの斬新さに驚かされる。「イスラムの宗教改革」という刺激的なテーマを提示する意欲作でもある。宗教は物語であって歴史ではない――イスラムを扱いながら、小説のような書き方をしていますね。例えば、ムハンマドが初めて神の啓示を受けた時の様子を、「人里離れた山中の洞窟に1人で座って瞑想していると、突然、目に見えない何ものかにきつく抱きしめられた」と書いています。レザー・アスラン氏アスラン それは、私がまず大学院の創作学科小説部門で訓練を受け、修士号をとった経歴からくるのでしょう。宗教学の博士号は、その後です。私は魅力的に書くためには、物語形式で語らねばならないと思いました。宗教の発展で重要なのは神話やたとえ話です。キリスト教ではキリストを巡る様々な逸話が宗教として語られます。私もそれにならって、人が信仰を抱く経験を物語として描いたのです。私にとって宗教は物語(story)であって、歴史(history)ではありません。 ――米国での反響はどうでしたか。アスラン 非常に好意的で、12万部出ました。米国の高校で1年生が読む本に推薦されているのを見たときは、誇らしい気がしました。イスラムを擁護したり、非難したりする立場ではなく、縛られないで議論する材料を与えることが評価されたのでしょう。欧米ではイスラム社会は、ユダヤ教やキリスト教の社会よりもずっと宗教的で、宗教が政治や社会などあらゆる領域で幅をきかせていると思われています。しかし、イスラムは他の宗教と同じように人々に価値観やモラルを与えるものです。イスラムを語るのに人間の物語として書くことを一番意識しました。――イスラムではコーランに勝手な解釈を加えると「逸脱」と批判されます。困難はありませんでしたか。アスラン 伝統的な宗教者や宗教を扱う著述家が、私を攻撃する材料を本の中から必死で探そうとするのは分かっていました。私は学問研究の成果を真剣につぎ込みました。すべての記述について細部まで正確に裏付けし、脚注は60ページに及びました。出版から4年たち、多くの言語に翻訳されましたが、強い批判は出ていません。――後半で、「イスラムの宗教改革は始まっている」と論を進めますね。アスラン イスラムでは「ウラマー」と呼ばれる伝統的な宗教者がイスラムやコーランの解釈を独占してきました。しかし、19世紀末から20世紀初めに、西洋がイスラム世界を政治的、経済的に支配し、植民地化した時代に、宗教改革者たちが登場してきました。彼らはイスラムがひどい状況に陥ったのはウラマーの過ちだと唱え、イスラムとイスラム世界を刷新するためには、宗教者を排除して、古い教義や解釈を再解釈し、イスラムが現代世界に対応できるように再定義する必要があると訴えました。「変わるイスラーム 源流・進展・未来」 レザー・アスラン著 白須英子 訳(藤原書店)Reza Aslan, No god but God: The Origins, Evolution, and Future of Islam(Random House, 2005) ――アルカイダを率いるビンラディンもその流れの中にあるのですか。アスラン そうです。ビンラディンは宗教者ではありませんが、「イスラムを解釈するのはウラマーではない。私であり、あなただ」とインターネットで若者に呼びかけます。彼はイスラム共同体の義務だったジハード(聖戦)を「個人の義務である」と訴えます。それは暴力的で危険なものですが、革命的でもあるのです。宗教改革の動きは、伝統的な宗教界の外でイスラム解釈を個人に還元する試みなのです。 ――エジプトでイスラムの復興を掲げた社会改革者、ハサン・アルバンナーが創設したエジプトの「ムスリム同胞団」をどう評価しますか。アスラン これからの中東の民主化は同胞団が担うでしょう。同胞団は選挙に参加して民衆の支持を得ようとします。同胞団がイスラムの価値に基づいた社会の建設をめざすのは、米国の共和党保守派が、キリスト教の価値に基づいた社会建設を唱えるのと差はありません。彼らの主張に反対でも、政治目的を達成するのに暴力ではなく、民主主義を道具として使うことは尊重されるべきです。だれもが独自のイスラム解釈を唱え始める――あなたはイラン生まれですね。アスラン 79年のイラン革命の時は7歳でした。本の中でこんな記憶を書きました。「ホメイニがイランに帰国した日、危ないから外出してはだめという母の警告を無視して、私は妹を連れ、テヘランの下町にあるアパートを出て、街頭で喜びに浮かれる人たちの群れに仲間入りした」。直後に私は両親に連れられて国を離れ、米国で育ちました。――イランと米国の関係について、どのように見ていますか。アスラン 米国ではイランに民主主義があるなどという議論は全く出ません。しかし、イランは革命以来、中東で最も民主的な大統領選挙や議会選挙を実施してきました。ただし、私はイランの民主主義は失敗していると思っています。●制度は民主的なのに、イスラム聖職者が拒否権を持って支配しているのです。●だから専制的な体制になっているのです。その上に、米国が断交したために、米国はイランの民主化を促進するような影響力を全く持てなくなっています。オバマ大統領がイランとの対話を始めようとするのは、米国の利益でもあるわけです。――イスラムはこれからどのようになっていくのでしょうか。アスラン シーア派のイランは事情が異なりますが、(イスラム世界の多数派の)スンニ派では、宗教改革が進行中です。宗教者の独占が崩れて、誰もが独自のイスラム解釈を始めています。民主主義を唱える者、暴力を唱える者、専制を唱える者、フェミニズムを唱える者など、どのような解釈も可能です。その先にあるのは「民主的なムスリム同胞団か、過激なアルカイダか」というような、どの流れが主流になるのかという問題ではなく、宗教が分裂し、いくつもの小さな運動に分岐するということです。そのようなプロセスはすでに始まっているのです。(聞き手 編集委員 川上泰徳)レザー・アスラン氏の略歴1972年、テヘラン生まれ。米サンタクララ大で宗教学を学び、アイオワ大創作学科小説部門で修士号、カリフォルニア大サンタバーバラ校で宗教史の博士号を取得した。現在、カリフォルニア大リバーサイド校創作学科准教授。TV番組の中東アナリストもつとめる。 ―――― 私の感想 ――――>欧米ではイスラム社会は、ユダヤ教やキリスト教の社会よりもずっと宗教的で、宗教が政治や社会などあらゆる領域で幅をきかせていると思われています。しかし、イスラムは他の宗教と同じように人々に価値観やモラルを与えるものです。ーーーーこの説明は、フェアでは無いなイスラム社会は、極めて宗教的、と言う事は、紛れもない事実それを否定しては、出発点から、誤りになるスンニ派では特に、宗教が分裂し、いくつもの小さな運動に分岐していると言うがイスラムは、すでに、シーア派とスンニ派の抗争が激化している状況でさらに、その上に、スンニ派内部での分裂さらにさらに、伝統的保守的学術的立場から、過激で暴力的な集団まで宗教が衰退するかと思われる現代でイスラムだけは、ビッグバン的な爆発的な分裂拡散と言えるみなが、イスラム・アッラーと唱和するが思うところ、考える所は、異なっている拡大解釈が出来るところは、憲法第九条と同じか?(笑)スンニ派王室を抱える湾岸諸国もいつまでも安泰ではないここが崩れれば、恐ろしいオイルショックが到来する自称イスラムの過激派の拡大拡散は将来、核の拡散にもつながってコントロール不能な時代になりそうイランの核に関しては一応、玉虫色の妥結となってはいるが本当の解決にはほど遠いイランの最高宗教指導者達が承認しないだろうから従って、イスラエルのイラン攻撃も、まだ、可能性を残す独裁者とスンニ派王室の君臨で火種を抑えていた中東・アラブだがここに来て、一気に液状化先は、見え無い