第14話 真意
話が来た時からレイトは別の狙いがあるのではないかと感じていて、「わざわざ呼び出すくらいですから、それ相応の事柄なのでしょうか」バフタール王は「イヤなガキだ」とつぶやいたあと、「イグリスとの交易について教えてもらおうか」と聞いてくる。フューリッドにとっては、交易というより決められたやり取りでしかない。取引している物をメモ書きしているバフタール王は、「この単価なら出せる、この場で即決しろ」指を差している輸入品は元々、バフタールからイグリスに流れている物だという。単価についてもイグリスよりも高い設定だと。つまりはバフタールからイグリス、イグリスからフューリッドへと、単価が割り増しされている、ということだ。輸出品についてもまた然り、割高で買い取るという。「ですが、勝手に決めてしまうというのは・・・」「互いに利益が増えてるんだ、何の問題がある?」今回の狙いはイグリスとの収益格差を縮めることにあるようだ。レイトは内容が内容だけに、慎重に考慮する。ただ、この交易が結ばれれば、課せられた目標値に届くことができる。イグリスにのみ生じる不利益は、イグリスとバフタールの問題であるため、説得できるやり方が見いだせる気がする。全体的な利益で考えれば、イグリスにとっても損な話ではないはずだ・・・。「いつまで考えてやがる。なげぇぞ」バフタール王に急かされ、レイトはついに交易を結ぶことを選ぶ。それから一案が思い浮かぶ。「これはゼリクトアにも同様に提案できるかと」「へぇ、交渉できんのか?」ゼリクトアも加われば、言うまでもなく効果は上がる。ゼリクトアにとっても目標値に頭を悩ませているはず。バフタール王も満足したようで、不意に語り始める。「お前の親父は頭が固過ぎた。人が交われば優劣がつく、これは必然だ。 比べることで個人の価値が生まれる。違うことが人を生かしてる。そうだろ? 国だって同じだ。ってこんな話はいらねぇな」話を打ち切って部屋を出ていく。ひとりになったレイトはあとを続ける。(確かに他人との競争が自分を高めることにつながってはいる。 けど、憎悪や嫉妬が生まれるのも他人と比べるからこそ、だよな。 ・・・あの王は、アルケデニックに似てる気がする)