移植外科専門医から
移植外科専門医から
1型糖尿病を治します!
1型糖尿病は、2型糖尿病(生活習慣病)と違って小児期に発症することが多いため、小児・若年型糖尿病とも呼ばれます。1型糖尿病の患者さんは1日数回のインスリン注射を毎日続けて打たないと死んでしまいますし、やっかいなことに、体調などの変化でインスリンの効果が異なり、効き過ぎると血液中の糖分がほとんど無くなってしまいます。この状態は低血糖とよばれ、特に脳が糖分を唯一のエネルギー源としていることから、低血糖状態になると、意識消失や痙攣を起こします。低血糖をおそれて、インスリンを少なめに打っていると高血糖状態となり、それが長期間続くと恐ろしい慢性合併症に(腎臓の機能が低下したり、視力が無くなったり、足先が腐ったりします)が現れます。
今までは、1型糖尿病にかかった患者さんは、日々の低血糖と戦いながら、慢性合併症におびえる生活を強いられていて、インスリン注射以外の治療方法はないとされていました。
ところが、2000年にカナダのグループが、膵臓からインスリンを分泌する膵ランゲルハンス島(膵島)を分離移植することで、1型糖尿病が治ることを発表しました。我が国では、2004年に京都大学の移植外科膵島移植チームにより、この治療が開始され、これまで9名の患者さんが移植を受けています。
京都大学膵島移植チームは、この度Diabetes Research Institute FederationにDRI Kyotoとして参加して、世界の1型糖尿
病治療研究のリーダーグループの仲間入りをしました。日本でも世界最先端の治療を提供できるのです。
移植を受けた患者さんは低血糖発作や慢性合併症の恐怖から逃れ、元気に過ごすことが出来ています。
ところが、日本では、新しい医療を開始そして維持するためには、従来の枠組みの予算が使えず、金銭的に苦戦を強いられ
ます。たとえば、移植された膵島細胞を拒絶反応から防ぐために免疫抑制剤を内服する必要がありますが、膵島移植のための
免疫抑制剤は「ラパミューン」という薬で、世界のほとんどの国で承認されているにもかかわらず日本では未承認です。膵島移植を受けられた患者さんは1錠1000円以上もするラパミューンを米国から輸入し毎日数錠飲んでいますが、経済的に非常に苦労されています。
せっかく、移植を受けたのに日々の生活が出来ないという事態が起こり始めました。自分で何の責任もないのに1型糖尿病にかかり、やっと治ったと思ったら次には高額の医療費が降りかかり今度は生活が出来ないのです。
このような状況を何とか解決できないかと、今回寄付活動を開始することになりました。この寄付活動は、1型糖尿病の全
国の患者・家族会の連携組織である特定非営利活動法人日本IDDMネットワーク、膵島移植患者会、京都大学膵島移植チームの 共同の活動です。いただいた寄付金は、膵島移植の研究費として患者さんの医療費負担軽減のためにも活用いたします。
難病は、皆さんのご家族に何時降りかかるかも知れず、国の制度にだけに頼っていては解決されないことも多々あります。
多くの人々の善意で治る難病は、是非治したいと切に願っていますので、なにとぞご協力よろしくお願いします。
2005年8月
京都大学医学部附属病院 助手 膵島移植チームリーダー 松本慎一