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今日の一冊

今日の一冊
私が読んだ本を、アットランダムにご紹介!


私は、夜、布団の中で
本を読まないと眠れません。



受命Calling(帚木蓬生)
東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン(リリー・フランキー)
風花病棟(帚木蓬生)
静かな黄昏の国(篠田節子)
悪人(吉田修一)
日本からの世界史(鈴木亮著)
天唄歌い(坂東真砂子)
日本からの世界史(鈴木亮)
魂の虜囚~オウム事件はなぜ起きたか~(江川紹子)
できればムカつかずに生きたい (田口ランディ)
ドナウよ、静かにながれよ    (大崎善生)
ハルモニア    (篠田節子)
臓器農場       (帚木蓬生)
臓器農場についてのメール       (帚木蓬生)
ダ・ヴィンチ・コード       (ダン・ブラウン)
その日のまえに       (重松清)
アダルト・チルドレン完全理解    (信田さよ子)
母が重くてたまらない    (信田さよ子)
流しのしたの骨   (江國香織)
ゆるゆるふっくり      (横井久美子)
御直披(おんちょくひ)   (板谷利加子)
道祖土家の猿嫁    (坂東真砂子)
禁じられた愛(M・ルトゥルノー&V・ファラウ)
マザーテレサ    (沖 守弘)
いま特攻隊の死を考える(白井厚編)
薔薇窓        (帚木蓬生)
漂流家族    (信濃毎日新聞社編)
少年犯罪の風景       (佐木隆三)



 


受 命 Calling
 

帚木蓬生    


     おもしろく、一気に読んでしまった。
国際サスペンス!という売り言葉は納得するけど、超一級!ってのはどうかな?

北朝鮮が舞台で、そこにいろんな立場の人が偶然集まることになり、
お正月映画のようなサスペンスドラマが展開されるのですが…。

サスペンスの部分もそれなりに、ドキドキハラハラして面白かったのですが。
何よりも興味深く入り込んだのは、北朝鮮の様子の描写でした。

田舎の貧しさや、国の強烈な管理体制はニュース番組などでも見聞してましたが
ピョンヤンの観光シーンとか中国国境の不正入国の様子とか 脱北支援団体の様子とか、
そんなところがもうびっくりなリアルさでした。

この作家のすごいところは 取材力ではないかとあらためて思いました。

お正月映画を観たような感じ+北朝鮮に密入国したような感じ・・・かな?
おもしろかった。

2009.10月




ハルモニア
篠田節子 


八王子市役所に勤務していた篠田節子さんは、この作品で直木賞を受賞したことで退職し、作家として出発した。

脳の機能に何らかの障害のある女性由希の音楽的才能を伸ばすために、 東野はチェロの指導者として由希の施設に通いはじめる。

由希を取り巻く人々に何か秘密がある。
由希の障害に何か表に出せない理由がある。
と、感じながら読み進めた。

オカルトチックなところもあるサスペンスなんだけど、 音楽家や心理学者の仕事に対する葛藤が綴られる場面が興味深い。

芸術として、音楽をどうとらえるか。
人間が生きる意味をどうとらえるのか。

とても面白く読み終えたが、結局のところ、篠田氏の思いはどこにあるのか、 強烈な主張としては読み取れなかった。

各人に考えさせることが主張だったのかもしれないね。

音楽以外に表現方法を持たない由希の心の動きにも、 由希の生きる意味についての心理学者の見解の対比にも、 感じ入るところがあった。

古本屋の100円コーナーでなんとなく手に取ったんだけど、 いろいろな面でたっぷり味わうことのできた一冊でした。

2010.10月

               



題名
作者

感想

2010.月

               





風花病棟
帚木 蓬生



帚木 蓬生は、大好きな作家。 この人の短篇は初めて読んだが、短編はグーッと入り込む楽しさが得られずに、やはり物足りない感。
でも、10人のいろんな年齢、性別、立場の医師の語りからなるお話は、 どれも暖かくて、医療の原点を思わせるものだった。

中でも「チチジマ」は好きだった。

終戦間際のチチジマに不時着したアメリカ兵と軍医としてそこにいた日本人が 60年近い時を経て医学会の場で偶然出会う。

アメリカという国、日本という国、 戦争というもの、人が相手に思いを寄せるということ。

不時着をしたアメリカ兵をたくさんの爆撃機が助けに来るのを見て ずいぶん偉い身分の人かと思ったが、それが、一介の若年兵だと知り、 アメリカはたとえどんな身分の低いものであれ、 1人の自国人が死にそうになれば見捨てない風土がある。

日本はどうか、 上官の命令なら人を殺すことも残酷な扱いをすることも断ることはできない。
現在だって、拉致されたと分かった人がたくさんいても何もできない。

その助けられたアメリカ兵は60年ののち、 旅先で日本人に会うたびに戦争での被害・苦労話に真摯に耳を傾け、 一緒に悲しみ、心からわびる。

戦争なんだからお互いさま…などという言葉はかけられないほどに、 心から真摯に謝罪の言葉を述べる。

日米間だけでなく、今もくすぶる中国や朝鮮半島との 戦争のしこりを溶かしていくのに必要なものは何か…。

短編なのに、そんなことを深く深く感じてしまった。

どのお話にも、規則や効率に縛られない人間本位の医師が登場して
心が暖かくなるような短篇集だった。

2011.1月

               





日本からの世界史
鈴木亮

今まで習ってきた世界史が、強い立場の人からの視線しかなかったことに今更ながら気付く。
最初の30ページでさえ、すでに目から鱗が何枚も落ちた。

福沢諭吉は学問のすすめより前に「人種の論」という文章を書き、 肌の色によりその優劣の序列を説き、その性格にまで断定的に言及するという、 とんでもない世界観を論じていた。

英国は優れていて、日本が目標とする国である。
悪友と付き合っていると自分も悪人のそしりを受けるから 隣国といえども、悪友との付き合いは断つべきだ。
英国に代わって日本が、劣る人種のアジアを治めることが目標だ・・・とさ。

天は人の上に人を作らずって言ってるくらいだから てっきり平等博愛の人なんだと思っていたよ。

同じ頃、日本初の少年雑誌「少年園」には世界中の奴隷解放運動や革命が紹介され、 弱者・小国・反権力側からの世界の動きがたくさんの少年に読まれていた。
「人種により優劣があるなんて間違いもはなはだしい」と書いてある。
明治の少年、すごい!

ところが、その「少年園」の発行も、 白人が一番偉くて黄、赤、黒の序列があっては、 いくら頑張っても日本人は白人を凌げないことになってしまうから、 その序列を否定して白人を凌駕することに希望を持てるように・・・、 というのが狙いだったらしい。

こうなると誰が平等博愛なのか、目を凝らさないとだまされるね。おもしろい。

2010.12

               





ダヴィンチ・コード
ダン・ブラウン    



ダ・ヴィンチ・コードを読んだ。
おもしろ~い。

映画も観たかったけど観そびれていた。

外国の小説は登場人物の名前がわかりにくくてどうも苦手で、
読む気が起きなかった。
でも、これはそんな心配は無用だった。
というか、展開が上手で読むのをやめられなくなる。

あの人の場面?この人の場面?
そこがこことつながるのか?
え?
こいつは味方なの?
どいつが敵なの?

みたいに、頭がぐるぐる回転して、
寝る前に読むあたしには睡眠不足に悩まされる日々だった。

この小説に出てくるダビンチの作品の謎や、宗教の諸説が
事実に基づいてるなんて すごい~!

それを結びつけて、
ロマンスや旅情も加えちゃって、
その上、ハラハラドキドキのサスペンスだなんて。

欲張りすぎる面白さ。

ただねぇ、宗教のことが私には難しすぎた。
絶対、もう一度読んでみようと思う。

いつか借りてきて、映画も観てみることにしようか。

2010.8月




東京タワー~オカンとボクと、時々、オトン
リリー・フランキー    


オダギリジョー・樹木希林・内田也哉子の主演で映画化もされた
リリー・フランキーの作品。

強くやさしいオカンと、暴れん坊で身勝手なオトン


小さい頃のボクの記憶から話が始まる。

家族とは・・・、当たり前とは・・・、死とは・・・、恋とは・・・、
心にしみる文章がたくさん出てきて紹介しきれないから、
ぜひご一読を!と書いておこう。

日々の些細な出来事がユーモアたっぷりに綴られ、
リアルに見えてくる情景にクスッと笑ってしまう。

破天荒な身勝手オトンも、ボクには大事な存在だし、
世間から同情や非難を受ければオトンを守りたくなる。

根無し草のようなオカンとの暮らしも、
当たり前に受け入れひがむでもなく、
まわりの親戚や友人と関わりながら、日々楽しく生きるボク。

そんなボクの人生は、他人が勝手な解釈など持ち込む余地もなく
淡々と明るくやさしい。

大人になったボクは、なんとオトンに似たような自堕落な生活。
そんな中でも、面倒見の良い、明るいオカンの姿が暖かい。

ボクが老いたオカンを慈しみながら寄り添う場面には、
鼻の奥から熱いものがこみあげる。

相手のことを思う愛こそ暖かくやさしく、
そんな愛に包まれて育てば、 相手を思う愛をもった大人ができるんだな
なんて、ありきたりだけど、 あらためてそんなことを思った。

おすすめの一冊!

2010.6月




母が重くてたまらない~墓守娘の嘆き
信田さよ子    


『母から離れたい、でも母を捨てるのはしのびない、という葛藤にさいなまれる娘たち。
でも母親たちは、たぶん何も困っていないし娘の苦悩などに気付いていない。』

『無邪気を装った無神経ぶり、都合のいいときだけ老人ぶったわがまま放題、
身体的衰えを材料に娘を脅して言うことを聞かせる・・・。
これらは依存や甘えと紙一重の支配である。』

『人生の落としどころを娘に求めないでほしい。~中略~
母親の娘に対するお気楽な一体感にひびを入れるために、本書はある。』

母は子供に愛を無償に注ぐものという「母性愛幻想」。
我が子に愛を注ぐはずの母にさえ愛されない自分は、
存在根拠を失い自己否定する。

母からどれほど便利に使われ支配され尽くそうとも、
そういう私がいなければ母は生きていけないと思うことで
自分の存在価値を見いだすのが「かけがえのない私幻想」。
どちらも「幻想」。

『愛されなくても、必要とされる私にはなれる。』
という部分を読んだとき、私の人生が理解できた気がした。
カウンセリングで明らかにしてきたことはこれにつきる。

だけど、怒りを表出しなければ、やはりつぶれてしまう。

母に対して怒っていると自覚するだけでも罪悪感にさいなまれるのだから、
お腹に溜めていたら怒りと罪悪感に挟まれてつぶれてしまう。

「安心して怒りを出せる安全な場を作ろう。墓守娘同盟。」
これ、まさにイトコちゃんと私のランチタイムだね。

「母にNOといおう。それでもダメなら最終手段は絶縁。」
これ、まさに私だね。

最終章で希望が持てました。

2010.10月




できればムカつかずに生きたい
田口ランディ    



田口さんのインタビュー記事を新聞で読んだ。
なかなかうまく生きられない若者たちに送るメッセージみたいな記事。

明るく、友達が多く、何かに熱中してる青春じゃないと、
どこか問題児・認められないみたいな大人(世間)側の見方に
疑問を投げ掛けるような記事だったように記憶している。

その記事の最後に、
「もっと言いたいことがあるけど、
『できればムカつかずに生きたい』を読んでもらえたら…」と書いてあった。

この本は田口さんの生きてきた道や、
取材で出会った人や出来事をつづったエッセイ集。

本の紹介文には
「生きにくいこの時代を生き抜くために、
自分の頭で考えたヘヴィでリアルな「私」の意見」とある。

「17歳の頃、なにしてました?」から、
「悲しみのための装置」まで、みんなおもしろく読んだ。

田口さんはかなり変わった家庭で、
かなり人並みはずれた経験をしたんだな。

いつも、
「これじゃあダメなのか?」
「どうしてこうなんだろう?」と
自分と世間の相違に疑問を感じながら生きてるんだな。

いろんな事を知りたいんだな。
わかろうとするんだな。

だから、やさしいのかもしれないね。

電車で読むのにちょうどいいかも。
でも、ときどき泣きそうになるから注意のこと!

2010.9月




題名
 
作家    出版社


2011.月





いま特攻隊の死を考える
 
白井厚編    岩波ブックレット


きな臭いニュースが繰り返される毎日。
どうしても戦争が怖くて、何とかして回避させたい私は、戦争を賛美する方へと世論が流れていくのが怖くて、図書館で探して、これを読んでみた。

特攻隊は志願であり、日本の青年の愛国心が成しえた神鷲…というような言い方を聞くたびに、そんなことがあろうか?と考えていた。
映画や小説で、特攻隊の若者がかっこよく描かれているのを目にするたびに、どんなにか辛かったろうと思っていた。

特攻隊は、国を愛する若者の自発的な行動ではなかったと、この本を読む限り思えた。
特攻なんてモノは統率の外道だと当時の軍人も言っていたそうです。正直、ホッとした。

「兄は特攻隊員で、沖縄で突入して死んだのです。」
「アメリカの軍艦に命中したのですか?」
「いえ、海の中に落ちたそうです。」
「それは残念でしたね。」
「でも誰も殺さないで兄だけが死んだのだから、それでよかったと思います。」
 私は頭をガンと殴られたような気がして恥ずかしくなりました。私の頭の隅には軍国少年の残りかすがあって、一機一艦を沈めることを成功だとふと思ってしまったのです。
…略…
 特攻隊員だった兄は死の意義付けに苦しみ、兄の死を知った妹さんは半世紀の間さぞ煩悶したことでしょう。それを経て、適を殺さなかったことを良しとする境地に達するとは!
 日々戦争報道が続く世界は、軍事力が大きな意味を持ちます。しかし戦後半世紀以上、幸いにも日本は一人の兵も殺さず、戦死もありません。日本は、今後も敵兵を殺さない。ましてや特攻隊を編成することもありえない、そんな決意と実績を残せば、そしてそれが徐々に世界に広がれば、6000人近い特攻戦死者の慰霊になるのではないでしょうか。二度とテロも戦争も起こしてはならない社会に近づくことが、今、もっとも必要だと思います。(P.30より)

2003.3月





少年犯罪の風景
「親子の法廷」で考えたこと

佐木隆三    東京書籍


佐木氏は、数々の刑事裁判を傍聴取材し、ルポ・小説などを書いている。
この本には、永山則雄・宮崎勤・オウム事件の面々・神戸連続小学生殺傷事件の被告少年・トロイ・デューガー(ルイジアナ州で死刑判決宣告を受けた最年少14歳の少年)などの裁判をふりかえる。エッセイ・対談・講演などを集めたものである。

「あとがき」より
わたしの法廷取材を通じて、行きつくところは家庭であり、親子関係だ・・・略・・・刑事事件で浮かび上がるのは、その被告人の少年時代で、重要なポイントになってくる。・・・略・・・人は誰しもが少年時代をすごしているがそのことを忘れがちで、「今ごろの子どもたちはわからない」と、距離をおいてしまう・・・



例えば、少年法を厳しくし罰することを重視するべきなのか、更生させることに重きをおくべきなのか・・・?
マインドコントロール下における犯罪は、罪に問われるのか?
そんなことも、考えつつ、子どもの時代がどれほど人の一生に大きな影響を与えるのかを、親として考えさせられた一冊。

2002.12月

                



ゆるゆるふっくり
  
横井久美子    新日本出版社


横井さんは平和を願う歌を30年間歌い続けている歌手。
自分の住む地域に拠点を置いて小さなコンサートを展開する一方、世界へ目を向けベトナム・アフガニスタン・コスタリカなどでもコンサート活動をしてきた。
また自身が「燃え尽き症候群」になり、どうやって自分を再生しようかと考えた末に、アイルランドを自転車で旅し、そこに住みつく中で「ただの私」を取り戻していったという。

広い視野を持ちながら、自分の足元に心を砕く彼女の姿勢に共感した。

この本は、1999~2002の3年間の社会的な出来事について、一人の女性の目と通して綴ったコラム集。
東京新聞「本音のコラム」に掲載されたものを集めたもの。


一つだけ、抜粋でご紹介する。

勇気ある女性(P.102)

アメリカの連邦議会で武力行使決議にたった一人反対したのは、民主党のバーバラ・リー下院議員だった。
…略…
アメリカ初の女性国会議員ジャネット・ランキン…1973年に92歳で亡くなるまで、女性参政権や平和運動の先頭に立ち、二度にわたる世界大戦へのアメリカ参戦決議にたった一人反対したことで、米国史にその名を残している女性だ。
…略…
私は、ランキンからリー議員につながる勇気あるアメリカのの女性魂に拍手を送りたい。
さぁ、今度は日本の女性魂が問われる番だ。
私たちの国は、この半世紀、世界のどの国の、どの女性の夫や子供の命を、誰一人として戦場で奪ったことがない。戦後50年、世界に誇るべき平和憲法を守ってきたからだ。その日本女性の誇りを今こそ示したい。


新聞をほとんど読まない私は、世の中の出来事に疎い。
そんな私が、この本の中で知り、そうした歴史のひとコマひとコマへの思いを共感した一冊である。

2002.12月

                

  

御直披(おんちょくひ)
 
板谷利加子    角川書店


板谷さんは神奈川県警性犯罪捜査係長。
或る日、「御直披(おんちょくひ)」と書いた封書が彼女の元に届く。
御直披(おんちょくひ)とは、「親展」の意味。
つまり、あなた以外は読まないで下さい…と。

そこにはレイプの被害者の手により、セカンドレイプや精神的苦痛のことが書かれていた。
板谷さんと彼女の往復書簡を公表する形で、彼女の立ち直る過程を描いている。
日本の性犯罪被害者の現状、被害を受けたと声を上げることができない状況と苦痛…。
同じ女性として、胸がかきむしられる思いで読んだ。

2002.6月




漂流家族
子育て虐待の深層

信濃毎日新聞社    河出書房新社


現在子育て中の、井上裕子記者が、丹念にたくさんの子供や家族を取材したルポ。

最近、長野でも、こうした事件の報道が稀でなくなったという。
それぞれの事件に関する原因や事情を説明するだけでは、なぜこうした事件が増えているのかが解明できない。
もっと大きく、社会の変化を捉えなければ、追い詰められた親や子どもが見えてこない。

大家族だったころは良かった。
地域で子育てできたころは良かった。
母親がもっとしっかりしていた。
などなど、古き良き時代を思い、今を嘆く「大人」も多い。

しかし、今の時代をリアルタイムで生きている親や子どもにとって、現在の姿をあるがまま認めて、そこから、社会の問題として、捉えていかなければどうにもならないのである。

このルポは、乳幼児の虐待から、青年の摂食障害、母親自身の虐待の連鎖、中学生の非行など、かなり広い切り口で実態にせまっている。
そのため、ひとつひとつが消化不良の感がある。
ひとつひとつが一冊の本になるほどの問題性を含んでいると思うのであった。

2002.12月

  


道祖土家の猿嫁
さいどけのさるよめ

坂東真砂子    講談社



時は自由民権の士が赤襷に赤はちまきで勢いを示していたころ、高知のお話です。
地元名士の道祖土家に、猿のような顔をした嫁が嫁いで来た。
道祖土家の祖先が昔、白い猿に介抱されて生き延びたという言い伝えがある。
まだ読んでないので、続きはまた後で…。

心に残ったセリフを抜書きします。

「おまんが憲法いうがは、あのお上から押しつけられた大日本帝国憲法とかいうもんかえ。大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス、邪気ねえ。我国国土は我国人民の国土なり、ゆうた植木枝盛先生が泣きゆうわ。藩閥政府は天皇を押し立てて、国を自分らのもんにしたいだけじゃ。だいたい天皇ハ神聖ニシテ侵スベカラス、の一文からして、万民平等の自由民主主義の原則から外れちゅう憲法じゃ。そんな憲法、変えてこそ意義があるゆうもんじゃないかえ」

「自由民権運動も、おまんらみたいな腑抜けを跡継ぎにしたばっかりに、ぱったり地に墜ちてしもうた。今じゃ社会主義者のいうことがよっぽど筋が通っちゅうで。今度の戦争じゃち、幸徳秋水は平民新聞で堂々非戦論を唱えちゅう。万民平等で自由じゃいう考えはのお、韓国人たちにじゃち、中国人にじゃち、ロシア人にじゃちあてはまるもんじゃ。自由民権運動の真の跡継ぎは社会主義者らよ。」

「曾祖母は家に縛りつけられていたかもしれない。しかし、その家は外の自然に向かって開かれていた。今の私は家からは解き放たれている。しかし社会という、かつての家にも似た窮屈な場所に閉じこめられている。」

「あんまし学校に行って頭ようなるこたないぞ。頭を使いすぎたら、足許忘れる。人間足許忘れたらおしまいぞ。」

2003.1月

    


禁じられた愛


メアリー・ルトゥルノー&ヴィリ・ファラウ    日本文芸社



小学校の女教師と教え子との21歳の年齢差を越えた愛。
この女教師は罪で逮捕され、現在7年半の懲役刑を受けている。
当事者と彼の母親の回想という形で綴られている。

男女の愛と、法律や倫理との関係は、私の中できっぱり割り切れないものをいくつも残している。
心の中の問題が、どんな基準で解釈され、裁かれるのか?
最近の若者がよく口にする言葉「誰にも迷惑はかけてない」
これは私にとって、多分、永遠の課題である。

2003.1月

   


マザーテレサ
かぎりない愛の奉仕

沖 守弘    くもん出版



図書館の子どものコーナーで見つけた。
字も大きいし、わかりやすかったし、写真もいっぱいなので 迷わず借りてきた。
 
マザーテレサって、知ってるつもりでいたけど、
あらためてすごい人だと思いました。

マザーテレサ自身はカトリックなのに、ヒンドゥー教の人にも、イスラム教の人にも、その人の宗教にあわせた最後のお祈りをして、その宗教のやり方で埋葬したという。

死にそうな老人を施設に連れてきて、たとえ1時間でも心を尽くしてお世話をする。
最後の死の瞬間にでも、自分は忘れられた、存在価値のない人ではなく、望まれてこの世に生まれてきた大切な人間なのだと思ってもらえたら…という言葉に胸を打たれた。

民族や宗派の違いを超え、すべての人々に等しく接するマザーテレサの姿勢は、誰もが同じ神の子であるという考え方に立脚している。
つまり、彼女は、社会事業化でも、慈善家でもなく、宗教家なのである。
自分の宗教の教えを広め、信者を増やすのが宗教家で、そのために布教や奉仕をするのだと思っていた、無宗教の私はマザーテレサの姿勢に驚いた。

人が人間らしく生きることとは、豊かな物質に囲まれて何不自由なく暮らすことではない。
私は必要とされている。私は愛されているという、心の安心。これこそが幸せの源なのだと、強く感じた一冊でした。

2003.2月

  


臓器農場

☆あんず☆より

帚木蓬生氏の「臓器農場」って読んだことありますか?
無脳症の子供を身ごもった妊婦に、極秘でその子を産ませて、病院が買い取り、そういう子ばかりを育てておいて、必要な時にすぐ臓器移植をする体制を極秘でとっている病院のお話(もちろんフィクションですよ)。

妊婦もお金をもらえる。堕胎されるはずだった子どもの命も活かされる。臓器が欲しい患者にも役に立つ。
いいことばかりじゃないですか?誰が困るというの?
…というような、それこそ「医の倫理」を考えさせられる作品です。

とても、とても、難しい大きな問題…「命」。
私自身もいろんな側面から考えていきたいと思います。

かたきんさんのHPへの書き込みより



☆あんず☆より

臓器農場、ぜひ読んでみてください。
文庫にもなっているし、図書館にもたいがいあると思います。
帚木蓬生さんというのはお医者さんでもあり、作家でもある人です。
「ヒトラーの防具」とか「三たびの海峡」など、どれも、社会派サスペンス仕立てですが、読み終わった後がさわやかなこと、そして、社会問題についてかなり考えさせられる作品ばかりです。

ザーラさんのHPへの書き込みより



ザーラさんより

かなり恥ずかしい話なんですが・・・。
著者名に振り仮名を振っていただけませんでしょうか?(笑)
アハハ~~~~!!
私の知能指数がバレバレ~~~~。

ザーラさんのHPからの書き込みより



☆あんず☆より

アハハ・・・わかる・わかる!
図書館や本屋では『は』の所にあると思うんだけど。
「ははきぎ ほうせい」だと思うんだけどね。
「ほうきぎ」かと思っていたんだけど違うみたい。

ザーラさん、大丈夫!
好きな作家の筆頭にあげてるのに確かな所は知らない私…。
だれか知ってたら教えてぇ~!
話は違うけど、今、学校の方針としては、
書けなくてもよい、読めれば…だって…。
私たち、ダメだわね…。(笑)

ザーラさんのHPへの書き込みより



かたきんさんより

  「臓器農場」ようやく読み終えましたよ。
先端医療をやってるところでは、いかにもありそうな話で、とても怖いですね。
 無脳症の胎児(新生児)は人間なのか?
僕には、作者の想いが正しいように感じました。その一線を越えると、人間の定義が崩れていくような気がします。
まだ消化不良ですが、考えさせられる内容の本を紹介いただいてありがとうございます。

それにしても、的場医師や天岸看護婦のような人は、現実にはなかなかいませんな~。(天岸さんのような看護婦がいたら、きっと惚れてしまうと思われ…)
 これからもう一度反芻してみます。

(2003年1月2日)  


併せて同氏の「受精」も読んでみてはいかがでしょうか?
読んだ方、ぜひ「命」についてお話しましょう!




帚木蓬生を読む

oideさんより

あんずさん 突然、こんにちわ
Kumiko Report
8月13日 帚木蓬生を読む 

横井久美子さんの、この記事が掲載されましたよ。

(8月13日20時49分)




☆あんず☆より

oideさん、ご無沙汰していました。
お元気そうで何よりです。
そうなんだ・・・久美子さんも帚木蓬生好きなんですね。
ちょっとうれしい気持ちだなぁ。 (^3^)-*
読んでる本のページが残り少なくなる時、さみしい気持ちになるという部分、とても共感しました。

帚木蓬生さんの本、わたしもほとんど読みましたが、どれも、読み応えのあるもので、考えさせられる重いテーマなのに、とてもさわやかで、明るい気持ちになって終わるところがまた魅力です。
読んだ方、是非是非お話したいです!ご意見聞かせてくださいね。

(8月18日21時29分)



oideさんより

あんずさん
私はまだ帚木蓬生の「三たびの海峡」「ヒトラーの防具」だけです。
「三たびの海峡」・・連行、生々しい歴史が迫ってきます。「筑豊」というと土門拳の「筑豊のこどもたち」、横井さんの「筑豊の子守唄」、そして「青春の門」なんてのも思い出します。しかし今、「筑豊」という言葉さえ消えていきそうな時代です。
「ヒトラーの防具」も史実とからんでいるので、あの時代のディティールが浮き彫り。
「アフリカの蹄」はNHKがTV50の記念番組でやっていましたね。こんなドラマ、スゴイ!と思っていたら、字幕に帚木蓬生の名があって、「やっぱり」と。

(8月26日22時53分)




☆あんず☆より

oideさん、
三たびの海峡…もう一度読み直そうかと思っているところでした。
戦争の傷跡、あの時代に生きている人の痛み・つらさを自分に引きつけてイメージできなくなっている人が増えているのかな…などと思うことがあります。
戦争にいたる経済や政治などの側面からの理解を深めることは当然ながら、戦争によって人の生き様にどんな状況がおきるのかを想像することも大事な気がしたりして…。
私は帚木蓬生氏の医療物から入ったので、社会物はさっと読みだったような感じです。また読んでみます。
医療物も考えさせられること満載で、お勧めですよ。

(8月27日9時4分)






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