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カテゴリ:風神の門
「風神の門」ドラマ終了後、すぐに原作を読もうと思いつつ、ケーブル・デジタル化により観られるCSが増えた騒ぎでTV三昧、半月近く経ってようやっと再読いたしました~。
(以下、ネタバレ有り感想でござりまする) いつもはサクサクと読める司馬小説、今回は少々もて余しました。 何回か読んで先が判っている物語だから…ということもござりまするが、ドラマ熱狂の余韻が、ノリのいい司馬小説の印象をも控えめにしてしまっているのでござりましょうか…。 ところどころ、ドラマと同じセリフが出て来たりするのですが、登場人物のキャラクターが違いまするゆえ、その同じセリフも微妙にニュアンスが違っているように思われます。 今回の再読で改めて気が付いたのは、原作の才蔵が、物語の始まりと終わりとで、人間的にあまり変わっていない…ということでござりまする。 物語の骨子としては『惚れた女を追いかけているうちに徳川Vs豊臣の戦に関わり、栄達等は得られなかったものの、かけがえのない恋人を得る…』というものでござりまするが、ドラマ版の才蔵は、その過程で大切な人とのつらい別れを幾たびか経験いたします。 己の才を恃み、自由気まま、無邪気で無鉄砲に世の中に飛び出したドラマ版・才蔵、いろいろな人々と関わるうち、人間的に『何か』が少しずつ変わっていくのが伝わって参りまする。 最終回では『その人々』を思い起こす才蔵の表情に、初回あたりでは感じられなかった人間的な深みのようなものが漂い、彼と共にその人々を涙ぐむ思いで懐かしんだものでござりまする…。 原作では、才蔵と関わった幾人かの登場人物が、『最後の見せ場』を与えられないまま、フェードアウトして行ってしまいます。 ドラマで視聴者をおおいに泣かせたシーン、獅子王院に見送られ悲壮な旅立ちをした青子姫、原作ではかな~りウヤムヤのまま退場させられております。 預け先の堺から、所司代の手に落ちた…と判っても、原作版・才蔵、「ま、しょうがないか~」という反応…。 俊岳さまもいつの間にか消えてしまっておりまするし、ドラマとはおおいに役どころが違い『才蔵ガール』の一人だった小若も、一応別れのシーンらしいのはあるものの、消息不明…。 その中では、お国との訣別や獅子王院の最期はきっちり描かれているほうでござりまするが、これらの『別れ』自体は原作版・才蔵の精神根幹を揺るがすほどのものではござりませぬ。 あるじは持たない…と言っていた才蔵の主義を変えさせた(かに見えた)幸村とは、最後の挨拶を交わすシーンも無し…。(又兵衛とのそれっぽいシーンはありまするのに…) 小幡勘兵衛のエピソードを入れるくらいなら、その辺をちゃんと書いて欲しかった気が…。 まぁ、情緒に流れず、独特の『軽ろみ』とドライ感があるのも司馬作品の特徴なので、ウェットなシーンはあえて省いているのやも知れませぬな。(第一、『成長物語』というつもりでお書きではないのでござりましょうし) たぶん原作では、佐助もどこかで生きていることでしょうし、孫八さんに至っては伊賀で悠々自適の余生を送っているのでは…と思えまする。 悲しい別れが無くてホッとはするものの、ドラマを堪能した後でござりますると、一抹の物足りなさも…。 技術のみを売り、クールで淡々としていて、世の中と正面から関わろうとしない原作版・才蔵は最初から『大人』でござりましたし、物語終幕後もきっとそのスタンスは変わらないままでござりましょう。 ただ、「恋なんか…」と言っていた彼が、一人の女性を大事に生きて行こう…と思うようになった事のみ大いなる変化だった、と申せましょうか…。 途中幾つかの恋はあるものの、原作では『最初に恋うた女(隠岐殿)』を最後に手に入れる、というところで一本の筋を通している印象がござりまする。(その点ドラマは『揺らぎ』が感じられます)(『初恋実らず』…。リアルと申さば、リアルな『揺らぎ』) ドラマ版の変更キャラクターを思い出さなければ、原作は原作で爽やかな終幕でござりましょう。 この原作に忠実な映画か、単発モノのドラマも観てみたい気がいたしまする。 25年前、ドラマ中盤で「この話は最後どうなるんだ~~!!」と気になりまくって原作を一気読みし、ラストで愕然と(しつつ大感動)した…のは、私めだけではござりますまい…。 ☆ ★ ☆ 蘭さまHP(BBS)で「風神の門」DVD-BOX発売決定の報が!!! 詳細はまた追ってUpさせていただきまする~~!!(動顛) 風神の門(上巻) 風神の門(下巻) (↑新潮文庫版) 風神の門新装版 (↑春陽堂文庫版) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005年07月13日 22時16分08秒
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