有坂放浪記

愛してみることにした。
かつて思考停止に陥るような暑さと、喧騒と、圧倒的カオスに負けて、
戦い抜いたつもりのこの国で。

敵を自分自身に内包する、
『認めると宣言しつつも、どっかで勝ちたがる気持ち』に絞って。

インド人。
悪い奴じゃなかった。
すごい必死に生きてて、でも人生単位では安直に生きてて。

ガンガーの牛は優しい。
犬を抱いて寝る。

その牛を物乞いが抱いて寝る。

指がなくて
足がなくて
目が見えなくて
寒いのに裸で寝てて
物乞いなどせずに堂々と言う。

「10ルピーよこせ。」と。
「じゃあ、5ルピーでもいい。」と。

俺はあげないけど、
憶えてることにする。
で、愛してみることにする。

彼らに見えている来世と、
僕自身がうっすら感じている転生の可能性が、
同じ輪廻の産物でありますように。

ここで感じた何かが、
10億人に見えている何かの一部でありますように。

愛してみることにする。
去年大嫌いと言い切った君らを。
この国を。

ってか実際、愛してるし。


簡単だな。
愛すればいい。