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第7官界彷徨

第7官界彷徨

道長の日記

 望月のかけたることもなしと思へば、、、
 藤原道長の日記漢文でこまめに書かれた「御堂関白記」を倉本一宏先生が現代語訳になさいました。分かり易く読めるようになって、妻の倫子とともに一大事業を成し遂げた道長の生き様がリアルにわかってきます。

 藤原道長がこまめに書いた「御堂関白記」を読みました。倉本一宏氏が初めて「全現代語訳」されたものです。
 はじめに、に
「一般に平安時代の貴族たちに対する理解というのは、彼らが遊宴と恋愛のみに熱意を示し、毎日ぶらぶら過ごしていた、というものであろうと思われる。しかしながら、それは主に、女流文学作品に登場する男性貴族たち(象徴的には光源氏)の姿を、現実の平安貴族の生活のすべてと勘違いしてしまった誤解である。
 読者層も女性が多かったであろうから、政務や儀式の有様を述べたところで、喜ばれるはずもない。だいたい、男性貴族の活動する世界に、女性はほとんど立ち入ることはなかったのであるから、政務や儀式の詳細を記述できるはずもないのである。」
 と、書いていらっしゃいます。

 道長はこまめに毎日のように日記を書いています。短い日は「雨が降った」「月食なのに曇っていた」「物忌みで家から出なかった」などですが、長いのは、一条天皇の中宮となった彰子が、敦成親王を産んだときの、いろいろな行事の細かさ、全部漢文なのに、こまごまと喜びを書いています。
 
 びっくりしたのは、正妻の倫子との行動。三日にあげず倫子の記述があり、それも「同行した」「仁和寺へ行った」「長谷へ参った」その他いろいろ。
 倫子がお経をおさめたり、法要を営んだりするのも盛大にバックアップ、宮中へも一緒に参内したり一緒に帰ったりしています。
 1007年、道長42歳、娘の彰子20歳の年には、倫子が姫を産み、中宮彰子からいろいろな祝いの品が届き、
「今夜のことは、老後の我が身としては照れくさいことであったし、中宮からこのような贈り物があるなんて、希有な事である。」と、喜びを隠しません。

 紫式部が、道長の命により源氏物語を書いた、と言われますが、多分倫子の機転だろうと思われます。
 道長の日記には、相当位の高い女官しか出て来なくて、紫式部との接点はほとんど無いにひとしいです。まだ上、中、下のうちの上しか読んでないのですが、例の1008年には紫式部も源氏物語も出てきませんね。

 端的で面白い日記です。とくに、名前を知っている有名人がいっぱい出て来るノンフィクションだからです。
 安倍晴明、右大将道綱、いろんな親王、いろんな坊さん、いろんな藤原氏の兄弟の動向が、道長の目を通してリアルです。
 道長夫妻は、1000年後の11月22日にも、表彰されても良さそうな感じで、本当に面白い本でした!


道綱頑張る 引き続き、御堂関白記(中)を読みました。親孝行の彰子が次の皇子を産みます。
 1009年、11月25日、実家の土御門にて
「中宮の御産場から女方(倫子)が来て言うには、「中宮が産気づかれました」と。すぐに御産所に参入した。御産の気配が有るとはいっても、まだ大したことは無くいらっしゃった。暫くして、また御産の気配があった。そこで、陰陽師を召した。教通を天皇に遣わした。次に東宮ふの藤原道綱、中宮大夫、中宮権大夫のもとに人を遣わした。」

 と書いてあります。ここに出て来る道綱は、かの蜻蛉日記を書いた道綱の母のかわいいひとり息子であります。

 蜻蛉日記は、権力者兼家の息子道綱を産んだものの、夫は彼女のもとを訪れることが絶え、毎日毎日その恨みつらみを書き綴ったかわいそうな女性の日記、というのがイメージです。
 引用、紹介されているのもほとんどそういう部分です。ところが、そののち、道綱の母は方向を変えて、息子の出世のために奔走(主に婚姻関係)する強い母に変身するのだそうですね。読んでないけど。

 この御堂関白記には、上、中ともによく出て来ます。活躍しているみたいで母はほっと一安心だったのではないでしょうか。
 ところが、この本の人物紹介に道綱のさまざまな華やかな職が書かれたのち
「政治的な手腕や才能には乏しいとされ、公事の場でも失態が多かった。」
 なあんて書かれているのです。

 ところで、1010年12月1日の日記には
 道長は「人びとは中宮の御在所に伺候した。私は天皇の対面の場所に行った。ところが、天皇は私をお召しにならなかった。これは天皇の御忌月によるのであろうか。」
 とだけ書いています。
 思うに、一条天皇は道長夫妻と娘彰子のそれいけどんどんよりも、初恋の人定子のほうが好きだったんじゃないでしょうか?
「最終更新日 2009年07月25日 07時40分22秒





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