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[遊女aosmeの「映画とドラマ」] カテゴリの記事

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  「朱蒙（チュモン）」韓国ドラマ

  「朱蒙（チュモン）」を見終えました。2006年韓国で放映され、一大旋風を巻き起こしたドラマです。全81話の歴史大長編。とにかく、おもしろかったのです！一話見終わると、はやく、次の回が見たいという逸る気持ちのため、81話という長編もあっという間に見終わってしまいました。朱蒙といえば、高句麗の初代王東明王のことですね。高句麗は、紀元前1世紀から約800年間、東アジアで栄えた大強国。最盛期は西のローマ帝国、東の高句麗と比肩されたほどです。「天の理想を地に実現する」ために建国された国という言い伝えがあります。高句麗の王は代々シャーマンで天の意がわかり、民の気持ちがわかり、民が一人でも不幸であれば自ら王座を降りるとされました。とても、高邁で崇高な精神をもった民族で、日本の文化にも影響を与えたとされています。その耀かしい歴史故、彼らが民族の誇りとする高句麗建国の父、朱蒙を描いたドラマ「朱蒙（チュモン）」。最高視聴率52％という驚異的記録を出し、多くの韓国人が熱狂したということですが、頷けます。このドラマでのストーリーは扶余の王でチュモンの義父クムワ（金蛙）と母ユファ（柳花）に甘やかされて育ったダメダメ王子の朱蒙（チュモン）が、人間的に成長して、高句麗を建国するまでの過程が感動的に描かれています。最初は軟派で軟弱な「ドラ息子」ですが、朱蒙の実の父であり、多勿軍の英雄ヘモス（解慕漱）将軍との出会いから、見事に武芸の達人になっていき、どんどん真の英雄に成っていく様は本当に見ごたえがあります。様々な困難が朱蒙に襲いかかってきますが、「天が自分に何かを気づかせるために与えた試練」だと、暗闇の中でも、常に先を切り開いていきます。そして、朱蒙を取り囲む女性達の存在は見逃せません。朱蒙が愛した3人の女性達は素敵に描かれています。朱蒙の生母ユファ（柳花）、朱蒙の正妻のイェソヤ（禮素雅/礼少椰）そして、朝鮮民族史上初の女王とされるソソノ（召西奴）。3人とも、朱蒙が大業を成すために、己の私心を捨て去り、常に朱蒙を影から支えています。その中でも、ソソノ（召西奴）は、大商団率いる才媛であり、朱蒙の同志として、運命を共にします。ソソノは、今まで自分が造りあげた全てを手放して、何も無い状態から最初から造りあげていくという、強くしなやかで、アッパレな女性です。私心を捨て、先を見据え、己にとって、最も過酷で、最善の選択肢を自分に課し、その試練を乗り越えていくのです。そして、そのソソノの胸中を察する朱蒙の選択は・・・。ソソノも朱蒙も流石というよりほかありません。最終回は涙無くして見られません！チュモン(朱蒙)　/　ソン・イルグクソソノ(召西奴)　/　ハン・ヘジンテソ(帯素)　/　キム・スンスユファ(柳花)［チュモンの母］　/　オ・ヨンスクムワ(金蛙)　/　チョン・グァンリョルヘモス(解慕漱)　/　ホ・ジュノ＜スタッフ＞脚本　：チェ・ワンギュ「オールイン 運命の愛」、チョン・ヒョンス「チェオクの剣」演出　：イ・ジュファン、キム・グンホン

  2008.02.18

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  恋空

  伝説のケータイ小説が映画化されました。11月3日からの公開ですが、この映画、なんとも初々しく新鮮な映画なのです。大人の私たちには、忘れていた思春期の恋する気持ち、人を想う気持ちがさわやかに蘇ってくる、そんな映画です。この作品の原作であるケータイ小説はａｍａｚｏｎの書評では散々ですが、なにせ、実際に読んでいる子供たちはａｍａｚｏｎのレビューなどほとんど書きませんし、反論もしませんから、かなり一方的に偏った見方のレビューのみになってしまっています。本当にケータイからこのケータイ小説を読んでいる子供たちの声はパソコンインターネット上ではあまり読むことはできません。小説と同じように、映画のレビューも、この映画を見て感動している子供たちは、実際には映画のレビューを映画専門ページに書き込んだりしないので、みんな、なぜこんなにこの映画がヒットしているか全く理解ができないんですね。「大人の知らない携帯サイト」にもありましたが、携帯文化とパソコン文化は、いまや大きな溝があり、パソコン文化の人たちは、携帯文化をどうしても下に見てしまっているので、そのような立ち位置では本当のことは見えるはずもなく、文化の溝は深まるばかりです。しかし、考えてみてください。今までに、このように思春期の女の子たちに愛された物語があったでしょうか。この年代のとくに女子中高生が夢中になって見に行くジャンルは、今までなかったように思います。そういう意味で言ったら、本当にありそうでなかった分野の物語なのではないかと思うのです。この映画は原作も女性、脚本家も、監督も女性です。主演の新垣結衣ちゃんは圧倒的に女の子たちからも支持され、みんなが彼女の行動や表情に魅了されてしまうのです。どちらかというとまだまだ男性文化圏であるパソコンインターネット上では、この女性たちが育んだコンテンツ『恋空』は、全くと言っていいほど評価されないのは当たり前なのかもしれません。まったく理解不可能なんでしょうね。いや悲しいかな、もしかしたら永遠に理解されないかもしれません。この物語はプロの作家が書いたものではなく全くの一般人である美嘉さんが自分の体験を元に書いた物語をケータイのサイト上に公開し、更新していたものです。しかしこの物語が口コミで圧倒的な人気を呼び、ケータイから自由に読めていたにもかかわらず、本として出版され、あっという間に100万部以上のベストセラーになりました。インターネットから生まれたラブストーリーという点では日本版、「猟奇的な彼女」ですね。しかし韓国での成り立ちと違って、日本ではこのラブストーリーはケータイサイトで広まり、ケータイインターネット上で、しかも、ユーザー参加型のサービスの中ではぐくまれてきたものなのです。この物語は多くの女子中高生にとって非常に身近な、彼女たちのケータイの中に実在した恋物語であったのです。だからとても感情移入しやすいのだと思います。そして携帯から本やスクリーンへ飛び出した「恋空」は彼女たちに熱狂的に迎え入れられました。新垣結衣ちゃん、三浦春馬君は、本当にまだ、何色にも染まっていない初々しさがあり、見ていて心が澄んできます。ａｓｏｍｅは、不覚にも女子中高生と一緒に号泣してしまいましたが、一度でも心から誰かを好きになったことのある人は、この映画、きっと心に響くはずです。何故か、もう一度見たくなる、そんな不思議な魅力の映画なのです。男性の方々、どうぞ騙されたと思ってご覧になってみてください。もしも少しでも共感することができたら、貴方はきっと女心を理解する能力があるのかもしれませんよ。

  2007.11.13

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  愛の流刑地

  話題となった渡辺淳一の新聞小説の映画化です。失楽園では、黒木瞳と役所広司が演じてくれましたが、今回は豊川悦司と寺島しのぶコンビです。寺島しのぶは非常に色っぽく演じてくれました。女性の喜びを表現するときの艶っぽさは黒木瞳よりも、もしかしたら彼女のほうがずっと艶っぽかったかもしれません。相当にいい女ですね。それに比べると、若手の長谷川京子はちょっといきがり過ぎでしょうか。役柄が知的な検事役ということなのですが、どうもいまいち演技が素人っぽい感じです。しかし、豊悦は相変わらずいい男でした。この人も今が男として一番艶のあるときでしょうね。この映画は、不倫の情事の絶頂の最中に首を絞めてと求められ、その思いを遂げて殺された女とその殺人の罪を背負う男の話なのです。まさに阿部定と反対のバージョンですね。失楽園のときには、二人で死を選んだのですが、今回は愛する女を殺してしまった男の物語なのです。彼の罪は、殺人か、自殺幇助か。この映画の中に「女には二種類ある、それを知っている女と知らない女だ」という台詞が語られます。まさに本当の女の喜びを知ったとき、女はもう、後には戻れなくなってしまうのです。そしてこれまでのこの社会体制の中で生きていくことは許されないことだと本能的に悟ってしまうのでしょう。裁判の最中に「だれも本当の冬香を知らないんだ、あなた方は死にたくなるほど誰かを愛したことがあるんですか」と問う男（豊悦）の問いは、現代の資本主義の世界に生きている中性化してしまったすべての男と女に問うべきテーマなのだと実感しました。快楽は罪とされ、女たちがつらい性を生きなければならなくなって、はや何千年の歴史が流れました。今、ターニングポイントに立つ女と男は、今後どのように進むでしょうか。皆様はどうお考えですか？監督　鶴橋康夫　　　原作　渡辺淳一出演　寺島しのぶ　豊川悦司　長谷川京子　佐藤浩市　仲村トオル

  2007.08.21

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  さくらん

  楽しみにしていた「おいらん」の映画を見ました。椎名林檎が音楽を担当し、その色彩の豊かさ、モダンなデザインは、さすがに蜷川幸雄さんの血を引いた蜷川実花監督だと思いました。今までの日本的な情緒からすると、違和感のある土屋アンナの花魁。最初は慣れずにちょっと困ったなと思いましたが、映画が進んでいくうちにだんだん魅力的に見えるようになってきました。また椎名林檎のイケてるロックがなんともいえぬ味わいです。さすがに女性の監督、女の気持ち、女の心意気が充分表現されていて、とても共感できる作品となりました。本当の恋をしてはいけない遊女たち。でも正直にしか生きられない切なくも優しい女心。途中、不覚にも泣けてしまう場面がいくつかありました。女だったら誰しもが分る感情だと思います。今までの湿った花魁物語と違って、現代風にドライに描きながら、急所はしっかり押さえているという、とても素敵な映画となりました。とにかく、目に鮮やか。しかし、以前に北斎の枕絵を見たときの艶やかさと迫力におどろいたのですが、吉原の世界は、まさしくこのような極彩色に満ちていたのかもしれないと思います。とにかく、衣装、背景、小道具、そして音楽、すべてが新しい新鮮な花魁映画、「さくらん」。土屋アンナの新たな代表作となるでしょう。半衿のあわせ方、様々な襦袢の美しさ、簪、帯の豪華さ、とにかく、着物好きな方にも楽しめますよ！男たちもなかなか素敵です。ぜひぜひごらんになってみてください。監督　蜷川実花　　原作　安野モヨコ　音楽　椎名林檎出演　土屋アンナ　木村佳乃　管野美穂　成宮寛貴　　椎名桔平　石橋連司　夏木マリ

  2007.08.14

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  映画　『太陽』

  昭和天皇を一人の人間として描いたこの映画、日本では上映が不可能かもしれないといわれていたそうです。ほとんど日本人俳優が主なので日本映画のように見えますが、実はロシアの映画なんですね。ですからどうしても日本人の私たちからすると、違和感のある部分が多い内容となりますが、映画自体は良く出来ていました。昭和天皇が亡くなられてから早くも20年がたとうとしています。早いような、長いようなそんな年月ですが、昭和天皇は、昭和という激動の時代、何を考えどのように生きてこられたのでしょうか。多くの苦悩と孤独のうちにあった昭和天皇を、一人の人間として描こうとしたこの映画は、海外からはきっとこのように見られて感じられているということが理解できます。私たちからすると違和感を感じる「ラスト・サムライ」「ＳＡＹＵＲＩ」などと共通の「外国人の目から見て描かれた日本」の感覚なのです。このアレクサンドル・ソクーロフ監督は、ロシア人ということですが、外国人であるという立場でなければ、描けない映画といえるでしょう。でも私たち日本人が昭和天皇のこと、皇室のことをよく知っているかというと、これもまた、知っているとも言えません。私自身が皇室とは何か、第二次世界大戦とは何かというその真実をまだ解らないまま見ているので、見終わった後に複雑な心境になってしまいました。さて皆様はどのような感想をもたれるのでしょう。監督　アレクサンドル・ソクーロフ出演　イッセー尾形　桃井かおり　佐野史郎

  2007.06.28

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  たそがれ清兵衛　　山田洋次監督

  山田洋次監督、藤沢周平原作の三部作　たそがれ清兵衛、隠し剣鬼の爪、武士の一分、のトップを切った作品なんですね。山田監督初の時代劇ということで、注目された一作、アカデミー賞の候補にもなった作品です。幕末、真田広之扮する井口清兵衛は、海坂藩の平侍、妻に死なれ、二人の幼い娘を抱え、痴呆の母親の世話をするために、夕方になると、同僚の誘いにも乗らずにまっすぐに家に帰る。そんな清兵衛を同僚はたそがれ清兵衛と呼んでいた。貧しいながら、可愛い娘たちのため、日々の暮らしを営み、娘たちが育つのを見守ることを喜びとしていた。清兵衛は、身なりが薄汚れていても気にもせずにいたのだが、藩主に注意をされ、本家の叔父には嫁を取れと脅される。しかし清兵衛の胸には、昔から好きだった幼馴染の朋江がいた。朋江は、酒乱の夫と離縁し、家に戻っていたのだった。朋江も清兵衛の二人の娘たちを可愛がり、面倒を見てくれていた。あるとき朋江の夫が酒を飲んで朋江の家で暴れたときに、朋江を助けるために、夫と果し合いをすることになった。清兵衛は剣の達人に教えを受けていたのだった。その剣の腕を見込まれ、ご家老からの理不尽な命令が下された・・・時代考証に一年を費やしたということです。やたらと華やかな町人ものや遊郭の話と違い、質素な藩の侍たちの衣装や武家の妻たちの衣装は、華やかさが一つもないのですが、その中にも慎ましやかな朋江の着物はとても粋で、素敵です。粋は、侍たちの文化から出てきたものだと田中優子さんが書かれていましたが、そうなのかもしれませんね。武家の娘らしい装いは、現代にも通じ、とてもお洒落です。粋な着物を学ぼうと思ったら、やはり侍物の映画を研究すべきですね。なかなかグッと来る結末、ぜひ皆様ご覧になってみてください。衣装は時代劇の第一人者、黒沢和子さんです。監督　山田洋次出演　真田広之　宮沢リエ　田中泯　丹波哲郎　岸恵子

  2007.06.25

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  着物の美しい映画　花よりもなほ

  なかなか可愛いらしいサムライ物映画です。「誰も知らない」の監督是枝裕和さんの時代物。どんな映画になったかというと、ほのぼのとして、優しく楽しい映画となりました。父親の敵を討つため、松本から江戸に出てきた青木宗左衛門（岡田准一）は、貧乏長屋に住み、敵を探していたが、なかなか見つからないでいた。時は赤穂浪士の討ち入りの前、生類憐みの令が発せられていた。里からの送金も途絶えがちの宗左は、読み書きを教える寺子屋を初め、生計をたてはじめる。様々な人間模様、武士も町人も庶民も、子供も大人も助け合い寄り添って生きていた。笑いと悲しみ、人への深い思いやり、すべての人たちが温かく優しい。そんなサムライ映画が出来上がりました。宮沢りえ扮する子持ちの美しい未亡人おさえ。おさえの着物姿は、とても清楚で、渋くて素敵です。衣装は黒沢和子さん。あの黒澤監督の娘さんなんですね。「座頭市」や「海はみていた」の衣装を担当しています。なかなか男物の着物はとてもうらぶれて雰囲気がありますが、女ものの着物はさわやかで、ちょっと粋なんです。もと遊女のお良の着物姿は艶があって美しいです！なかなか味わいのあるいい映画でした。新しいサムライ映画、ぜひご覧ください。監督　是枝裕和出演　岡田准一　宮沢りえ　古田新太　浅野忠信衣装　黒澤和子　

  2007.06.22

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• 着物の美しい映画　　「武士の一分」

  木村拓也主演で話題となった山田洋二監督のこの映画、なかなかの出来栄えです。キムタク渾身の演技ですね。また、相手役の壇れいも、非常に密度の濃い演技をしています。地下鉄の駅のポスターを見てからというもの、見るのが楽しみでした。下級武士で毒見役の三村新之丞（木村拓也）は、美しい妻加世（壇れい）と慎ましいながらも幸せに暮らしていたが、あるとき、役目のお毒見で、貝の毒にあたり失明をしてしまう。失明した三村の行く末を案じ、力になりたいと、番頭島田の罠とも知らずに、一人島田の家に会いに行った加世は、島田に手篭めにされてしまう。そのことを知った三村は加世を離縁し、目が見えないながらも剣術を習い始める。加世欲しさに嘘を言ってだました島田に三村は果し合いを挑む。甲斐甲斐しい新妻の加世が、とてもけなげで美しく可愛いく、心に響いてきます。壇れいは、宝塚の出身だそうですが、舞台で演技している人はやはり迫力がちがいますね。着ている着物は質素でありながら、はっとするような美しさがあります。格子柄の着物や、絣調の普段の着物も初々しさがあり好感がもてます。またおせっかいな叔母役の桃井かおりの小紋の着物も、なかなか渋くて素敵です。センスのいい、新鮮な味わいの着物たちは、私たちの普段着の着こなしに役に立ちそうです。ぜひじっくりみてくださいね。キムタクのファンの方も、また時代劇のファンの方にも楽しめる、娯楽作品です。山田監督、藤沢周平の時代劇三部作、は「たそがれ清兵衛」「隠し剣鬼の爪」そして「武士の一分」で完成だそうです。どの作品もとてもシンプルでよかったです。監督　山田洋二　原作　藤沢周平出演　木村拓也　壇れい　緒方拳　桃井かおり

  2007.06.16

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  着物の美しい映画　はなれ瞽女おりん

  昔からみたいと思っていた映画ですが、やっと見ることができました。瞽女とは目の見えない芸人で、親方とともに、生涯を神に仕えて芸のみに生きていれば、芸能集団のような形で、一緒に回って生活をしていく。一方、はなれ瞽女とは、男と交わってしまった女たちのことをいう。男を知った瞽女は、追放されてしまうので、一人で旅をしながら三味線を弾き、歌い、暮らしていく。そんなはなれ瞽女のおりんは、あるとき、平太郎という大男に出会う。平太郎はおりんには指一本ふれず一緒に旅をして、優しくおりんの世話をする。平太郎は下駄を直すことができたので、下駄屋をしながら、二人は旅を続ける。当然二人の間に愛が生まれるが、どんなにおりんが抱いてくれと頼んでも、平太郎は抱くことを拒んだ。平太郎は実は、憲兵に追われていたのだった。悲しい運命の二人、世間から追われている二人の間に生まれた真実の愛、美しい日本海と山々の自然、おりんの着物は、貧しい身の上でありながらも、芸人なので、なかなか美しい着物姿です。庶民の着物の組み合わせはともてセンスよく、着物を見ているのも楽しいですよ。三味線の音は、日本の自然の風景と溶け込むように流れ、またその歌声がなんとも言えず、いいのです。目の見えない子供が、芸を身につけることで生きていく、芸人が回ってくるのを楽しみにしていた庶民、100年前には、日本では、まだまだこのような風景が繰り広げられていたのでしょう。女性の悲しい歴史ということもありますが、庶民の着物の感覚などを感じることが出来る映画でもあります。監督　篠田正浩出演　岩下志麻　原田芳雄　奈良岡朋子　樹木希林　小林薫

  2007.06.06

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• 着物の美しい映画　近松物語　　監督溝口健二　

  近松門左衛門の「大経師昔暦」を基にかかれた川口松太郎の「おさん茂兵衛」からヒントを得て作られた作品だそうです。溝口健二監督の心中ものですが、当時の絶世の美男、長谷川一夫と、香川京子がとても美しいです。香川京子は商家の若い後妻役ですが、まるで武家の妻のような気気品があり、着物や髪型などが、とても新鮮です。浮世絵に出てくるようなちょっと変形した髪はなるほどと、なんども見てしまいました。白黒の画面なんですが、豪華な着物が目に浮かぶようです。一番の番頭だった茂兵衛はひそかに後家であるおさんを好いていたが、江戸時代では、不義密通は磔となってしまう、重罪。物語は、成り行き上、二人の道行きとなってしまうのだが、実は本当に茂兵衛はおさんを愛していて、その愛におさんも目覚めてしまうという、物語。最後は至福のうちに二人は縛られ、町中を引き回されていても、後ろ手に手を握り合い、今までにない晴れやかな、表情をしているのです。愛のために死ぬということは、究極の結末なのかもしれませんね。着物の着付けも非常に美しいです。溝口健二全集に入っているDVDです。Tutayaのコーナーにあると思いますので、ぜひ探してみてください。監督　溝口健二出演　長谷川一夫　香川京子　南田洋子1954年　大映

  2007.06.03

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  フラガール

  この映画はもう一つ楽しみにしていた映画なのですですが、久しぶりに映画を見る時間ができて、ついに借りてきました！この映画はとっても楽しかったです。岸部一徳のとぼけた味わい、また蒼井優が初々しくて可愛いらしく、感動的！女たちの成長物語として、かなりの傑作です！昭和40年代、本州最大の炭鉱であった、常磐炭鉱では、大幅な人員削減が行われ、町の男たちは、仕事を失いつつあった。そんな中、炭鉱を掘るときに出てきた温泉を利用し、北国に常夏のハワイを作ろうと町では起死回生のプロジェクトを起こしたのだった。その集客のためのメインサービスとなるのはハワイアンダンス。さて、盆踊りしか出来なかった町の娘たちが、町を救うため、フラダンスを始めたのだった。東京から呼んだ先生は、もとSKD、「鼻持ちならない東京女」と、町の人々は排斥しようとするが、娘たちは初めて笑顔で人を喜ばせる仕事に出会って、徐々に踊ることが大きな喜びとなっていった。監督は日本生まれの韓国人監督、李相日（り・さんいる）この映画が韓国人の監督が創った映画ということが驚異的です。まさに日本を知り尽くした内容で、まったく違和感がありません。この常磐ハワイについては、実話が元になっていて、松雪泰子演じる、飲んだくれのダンス教師は、現在、日本でのハワイアンダンスの重鎮である実在の人物だそうです。フラの普及に貢献した方で、現在も現役でがんばっておられるようです。この映画でもフラガールたちに踊りを指導したそうです。日本アカデミー賞を総なめしたほか、数々の賞が与えられたこのフラガール、笑いあり、涙ありで、とても感動しますよ！最後のフラガールの皆さんの涙はとっても心打つ涙です。出演　蒼井優　松雪泰子　豊川悦司監督･脚本　李相日（り・さんいる）

  2007.05.21

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  硫黄島からの手紙　　　クリント･イーストウッド

  ずっと見てみたかったこの映画、やっと見ることができました。ハードで、しかも、渋い映画を撮るクリント･イーストウッド監督ですが、今度は第二次世界大戦を描きます。アメリカからみて敵方だった日本をクリント･イーストウッド監督はいったいどのように描いてくれるのかとても楽しみでした。この作品は、父親たちの星条旗という作品と対になっているのですね。まだこちらの作品を見ていないのですが、硫黄島というのが日米の戦いの中でも重要なポイントだったということが、この映画をみてよくわかりました。圧倒的な武力に対して、そのことをよく解っていて、迎え撃つ絶望的に不利な立場の人間たちが、どのように戦っていくのか、自分たちの死を覚悟しつつ、しかし徹底的に生きて帰ろうとする人々のその強烈な意志の原動力は、新しい命、子供たちの存在であり、愛する母であり、家族なのです。硫黄島の最後の指揮官、小栗中将は、アメリカへの留学体験もあり、アメリカ人の友も沢山いた人なのだそうです。硫黄島は、通信基地となっており、アメリカ軍の動きを硫黄島から本土に連絡していました。アメリカ軍は、日本本土へと上陸していく際に、第一の拠点として徹底的に硫黄島に戦力を投入して、硫黄島の日本軍部を壊滅させる作戦にでました。日本兵２万２千人のうち、生き残ったのはわずか千人だそうです。どれだけ壮絶だったかということですね。アメリカからの視点ですから、どうしても、アメリカに友好的だった、二人の日本人軍人がアメリカの価値観に合う立派な人間ということで描かれているので、日本人としては、多少の違和感を持ちましたが、映画としても非常に良く出来ていると思います。次には、ぜひ父親たちの星条旗を見てみたいと思います。監督クリント･イーストウッド出演　渡辺謙　二宮和也　伊原剛志

  2007.05.16

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  「心中天網島」

  この作品は近松門左衛門の有名な心中物語です。篠田三郎監督の代表作ともいわれています。白黒の画面ですが、色が見えてきそうな映像なんです。中村吉右衛門、岩下志麻がまだ若く、また、とても美しいです。浄瑠璃の舞台のように設定されているこの映画、美術や音楽もクオリティが高く、映像も美しく仕上がっています。映画の進行も、舞台を見ているように進んでいくのが斬新です。岩下志麻の遊女姿がとても艶かしく、目を大きく見開くと、まるで浄瑠璃人形のよう。後ろ姿の襟足、うつむいた姿、寝乱れた着物と素足、さすがに自分の妻である岩下志麻さんの女としての艶をすべて知っている篠田監督の表現なんだなと感動します。また、中村吉右衛門の妻役も岩下志麻が演じていて、女の両面を演じているところが面白いです。もっとも対照的といえる地女である妻と遊女を演じさせる篠田監督は女優として岩下志麻の可能性を最大限に引き出そうとしているということなんでしょうね。岩下志麻も果敢に挑戦し、男と女の創造的な作品となっていると感じました。この「心中天網島」は、心中物の映画の傑作として評価の高い作品ですが、ラストのショットがまた、大変に艶かしいのです。江戸時代の男女の最高の死に方だったのでしょうね。ご法度とされている道行。だからこそ長く語り継がれる心中物語。男と女が男と女として生きようとするとき、いつの時代も叶わない望みであったということなのでしょう。これからの時代は生きて幸せとなれる本当の男女の生き方を実現したいものです。出演　岩下志麻　中村吉右衛門　監督　篠田三郎

  2007.04.30

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  地下鉄に乗って

  浅田次郎さんの原作『地下鉄に乗って』の映画化、原作を読んでみたいなと思っていましたが、先に映画を見てしまいました。なかなか映画もうまく出来ていると思います。堤真一がとてもいい味を出していますね。「三丁目の夕日」ではコミカルなお父さん役でしたが、男性の年齢で一番危うく、魅力的な４０代前半の役柄。子供がいて家庭があるけれど、若い恋人もいるちょっと疲れた中年の長谷部真次。早くに死んだ兄の命日に、地下鉄を降り、階段を上がるとそこはなんと昭和３９年の東京だったのです。タイムスリップものの映画というのは、根源的な何かを人の心に投げかけるのでしょう。心に残る映画が多くありますね。この映画も見ていても心揺さぶる何かがあります。この物語自体が浅田次郎さんの自伝的小説といわれています。浅田次郎さんの作品は父親との関係性が多く描かれています。今回一番心引かれたのはやはり堤真一さんですね。どちらかというと個性的で笑いを誘うユニークな役柄が多かったような気がしますが、今回の役は正統派二枚目的でよかったですね。新しい面を発見という感じです。役所浩司さんに継いで、素敵な中年男性を演じることが出来そうな予感です。一人で地下鉄に乗っている表情のなんともいえない深みや弱さ、暖かさ、悲しさ、そんな複雑な彼の表情は見ていて飽きないものでした。今、中年男性で、魅力的なのは、豊悦、堤真一、佐藤浩市あたりでしょうか？父親役の大沢たかおさんはちょっとまだ若い感じがしました。そんなことを考えてしまった「地下鉄に乗って」。なかなかいい映画です。出演　堤真一　岡本綾　大沢たかお　常盤貴子　原作　浅田次郎　監督　篠原哲雄

  2007.04.18

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  究極の恋愛小説４　「美しい人」　　9　lives　　ロドリコ・ガルシア脚本

  この映画は、かの有名なノーベル賞作家であるガルシア･マルケスを父とするロドリコ･ガルシア監督の映画なのですが、遊女asomeはこの映画を「究極の恋愛小説」として紹介したいと思います。このガルシア監督は、女性たちの人生をこのように瞬間的に捉えて表現するという作品を作り続けてきました。今回で、三作目となりました。遊女asomeは『彼女を見ればわかること』『彼女の恋からわかること』のどちらも見ていますが、初めて見たときはとても印象的でした。女たちが語り始めたと感じたのです。切ない恋、痛み、通じない気持ちなど、まだ、女性たちそのものが、語るのに慣れていないというか、そういったおずおずと語りだす初々しさを感じたものです。今回の『美しい人』に出てくる女性たちは、「女という性」というよりも、もっと深く、人として、痛みや悲しみを持ち、その自分の心、内面をみつめているように感じました。そして、それぞれは非常に短いショートストーリーとなっています。しかし彼女たちはその人生の深みというようなそういった瞬間瞬間を生きていて、短い場面に人生の煌きをみせてくれるのです。それは見事な短編小説集を読んだあとのように感じます。充実した魂の深まりを体感できる、素敵な映画です。私は今までの3作の内で、この『美しい人』が、一番好きです。二番目に登場するダイアナは夜のスーパーマーケットで、昔の恋人と出会うのですが、心から好きだった彼と再会したとき、彼女はもうすぐ子供が生まれるという、そんな皮肉なシチュエーションです。彼と何ごともなかったように会話をするのだけど、実は二人は、今でもお互いを忘れられず、会話するごとに二人の気持ちも揺れ動いていくのです。ほんの1２、３分の出来事の中に、人生の切なさと痛みと悲しみがあふれ、胸に迫ってきます。ガルシア監督は、人々が、過去に捕らわれて生きていることについて非常にこだわっているといいます。何によって人は捕らわれてしまうのか。人は過去に捕らわれ、つまずいたり動けなくなったりしてしまうのですが、そういった、捕らわれに気づくときに、痛みを乗り越え、魂はさらに美しく成長していくのかもしれません。映画といえども、深い文学体験ができるということを初めて感じた映画でした。特にショートストーリーはそういった可能性のある表現の仕方かもしれませんね。素敵な映画、ぜひ多くの女性たちに見てもらいたいです。

  2007.04.02

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• 映画『ベニスの商人』

  シェークスピアの有名な戯曲『ベニスの商人』の映画化ですね。なかなかの名作、「イル・ポステーノ」のマイケル・ラドフォード監督が脚本とともに手がけています。なぜこの作品を見ようと思ったかというと、林秀彦さんの『この国の終わり』のあとがきにこの映画のコメントが出てくるんですね。ユダヤ人についての理解を深めるという観点から、この映画のことが出ていました。またもう一方で、岩井克人先生の『ベニスの商人の資本論』を手に入れていて、これを読むにもベニスの商人のことを知っていないとならないなと思い立ち、（はずかしながら原作は読んでおりません）このDVDを借りたのです。後で『ベニスの商人の資本論』を読んでわかったのですが、この映画の台詞はかなり原作に忠実でした。私たちがベニスの商人で頭に浮かべるのはユダヤ人の金貸しシャイロックですが、ベニスの商人とはシャイロックからお金を借りたはアントニオーニのことなんですね。この映画を見てからすぐに『ベニスの商人の資本論』を読み、大変面白かったのです。林さんはユダヤ人という観点からの解説でしたが、経済そして、お金、資本という観点から見たベニスの商人についてのお話は、またそれはそれは面白いものでした。絶対にお勧めです。こんなに面白い解説書はほかにありません。しかし、シェークスピアっていったいどんな人だったんだろうと、思いますね。岩井先生は、別の本でたしか西鶴のことを書いていらしたことがあったと思いますが、文豪が描くテーマには必ずこの経済やお金の問題が多大に関与しているんですね。それほど人間の存在とこのお金という仕組みは、根深い根源的な問題があるのです。この映画の中身を云々というよりは、たまたま最近手元にある本二冊に共通したテーマ『ベニスの商人』の理解を深める為に、この映画は大変参考になりました。アルパチーノもうまいですし、非常に賢いもう一方の主役女性、ポーシャ役のリン・コリンズも魅力的。「恋に落ちたシェークスピア」でシークスピア役のジョセフ・ファインズもはまり役でした。とにかくこの映画のみに終わらず、この二冊を一緒にお読みになり、理解を深めることをお勧めします！監督・脚本　マイケル・ラドフォード出演　アル・パシーノ　ジョセフ・ファインズ　リン・コリンズ　ジェレミー・アイアンズ

  2007.01.13

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• ブロークン・フラワー　

  映画館で上映しているときに、これは見たいなと思っていたのですが、見逃してしまった作品です。最近ビデオやさんで見つけて早速借りてきました。ジムジャームッシュ監督作品は久しぶりです。「ナイト・オン ・ザプラネット」など、なんともいえない人生の哀歓というか、味わいみたいなものが感じられるところがこの人の好きなところなんですけれど、今回は主役のビル・マーレーが、いい味をだしてくれました。ドン・ジョンストンは、元ドン・ファンで、今はコンピュータを売って大成功し、もうけたけれど、なぜか受身の空しい人生を送っているちょっとくたびれた中年。そんな彼のもとを今付き合っている彼女が去っていくときに、行き違いにピンク色の封筒が舞い込んだんです。なんとその手紙には、20年前に付き合っていた女性から、実はあなたの息子がいて、その息子はもう19歳、父親探しの旅に出たと書いてあったのです。差出人の名前のないその手紙をみて、丁度居合わせた隣人のエチオピア人で、探偵好きの友人は、20年前に付き合っていた女性たちの居所を調べ上げ、ドンに会いに行くように進め、ドンはいやいやながらも、20年前の彼女たちに会いに行く旅をはじめるのです。過去の女性たちのその後の人生は、それぞれに現実的であり、たくまししいのです。彼女たちの現実にとってすでに場違いな過去の男ドンがあらわれることで、様々な反応をしめす過去の彼女たち。彼女たちに会うときはかならずピンクの花を持っていけとエチオピア人の隣人に言われたとおり、花束をもって彼女たちに会いに行くのです。この映画では彼女たちとの再開の場面がもっともおもしろおかしいのですが、ドンファンだったドン・ジョンストンは彼女たちに会えば会うほど空しさと哀愁だけがつのってくるような、なんともいえないストーリー展開なんですね。ビル・マーレーのとぼけた風貌がおかしく、切なくっていうところでしょうか。最後はちょっぴり哲学的なコメントもあり、ですが、理不尽な男という存在そのものに哀愁が漂います。男のひとってなかなかなしい性なんですね。音楽がまた、グット心をつかみます。カンヌ賞グランプリ作品です。出演：ビル・マーレー/ジェフリー・ライト/ジェシカ・ラング/シャロン・ストーン監督；ジム・ジャームッシュ

  2006.12.29

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  「るにん」　

  鳥も通わぬ八丈島、江戸時代、流刑の島である伊豆七島の最南端にある八丈島に流された流人は、その島で自由に生きることを許されていたが、自給自足の生活を強いられた。台風の通り道であるその島の自然は、厳しく、何度も飢饉が襲った。八丈島には黒瀬川といわれる黒潮が流れ、絶対に島抜けが出来ないと言われていた。15歳で吉原に火付けをしてこの島に流され、25年間島で暮らした遊女豊菊は、島でも男たちの相手をして生計を立てていた。ご赦免を受けるために密告をして、役人に取り計らったが、この年もまたご赦免状をもらうことがなかった。豊菊は自分の体をただ玩び、ご赦免をほのめかしては騙していた島役人稲葉に切りつけたが、逆に折檻を受けてしまう。賭博の罪で流人となった喜三郎（西島千博）は、そんな豊菊を介抱し、豊菊の心と体の闇に共感し、いまだかつて誰も成功したことのない島抜けをすることを心に誓う。島の流人で島の風土や地形を研究している近藤富蔵に黒瀬川のことを聞き、島の地図を見せてもらう。毎日潮の動きを見続け、近藤が言った、7月に黒瀬川が島にぶつかり、いつもの半分の幅になったとき、そして、同時に南風が吹いたそのときを待ち続けるのだった。もう一度江戸に帰ること、本当の桜を今一度見豊菊に見せるために、不可能といわれた島抜けを果たそうとする喜三郎。奇跡を行った喜三郎をダンサーの西島千博が演じます。周到な計画を練り、奇跡を起こす色香のある喜三郎は西島千博が非常に似合っていました。新しい男の魅力を発揮していました。一方、年増の遊女を松坂慶子が渾身を込めて演じ、惜しげもなく裸体をみせ、艶と女の闇を大胆に表現していました。監督は奥田瑛二。俳優としても映画に出演しています。奥田瑛二は監督としても世界的に定評があり前作の「少女」では国際的な賞をもらっているが、この作品も早々に多くの映画祭から招待受けています。最近、良い俳優が、良い映画を作ることが多いですね。クリント・イーストウッドや北野武、そしてこの奥田瑛二。役者であり監督であるとはどんな感覚なんでしょうね。また、衣装デザインは鳥居ユキが担当しています。着物がなかなか美しいです！久々の見ごたえある日本映画です。監督　奥田瑛二出演　松坂慶子　西島千博　小沢まゆ　麻里也　根津甚八　奥田瑛二

  2006.11.20

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• ライフイズミラクル

  国境近くのボスニアの村で鉄道の技術者として暮らしているルカには、現役を引退したオペラ歌手の妻と息子のミロシュと暮らしていた。憧れのサッカーチームからの入団許可がおりた息子のミロシュが徴兵され、戦争が勃発したとき、妻は、外国人のミュージシャンと駆け落ちをしてしまう。戦争が徐々に激しくなってきたとき、息子のミロシュが捕虜になったという情報が入ってきた。そんな時、仲間の一人が、敵方の要人の娘という女サバーハを連れてきた。息子のミロシュと交換条件にすればいいから、サバーハの面倒をみるように言うのだった。一緒に暮らしていくうちに、サバーハの優しさに徐々に心を癒されるルカ。純粋なサバーハをルカは心から愛するようになる。しかし二人の愛を確かめあい、真実の自分に目覚めはじめたルカのところに、駆け落ちしていた妻が戻ってきた、、、。ちょっとコミカルタッチで進んでいくのですが、戦争というぎりぎりの極限状態の中で、生きるということ、愛するということを一人の平凡な中年男ルカを通して、まじめに描いたとても優しい映画です。家族の長として、一人の国民として、男として、自分の役割を果たしているかに思えた人生。戦争という、一人の人間の力ではどうすることも出来ない、いわば運命のような大きな力に翻弄され、それでも精一杯自分の心に素直に生きたとき、初めて本当の愛に目覚めていく中年男の心温まる愛の物語。じわじわと心に迫ってくる大人の物語ともいえるでしょう。「ライフイズミラクル」ぜひご覧になってみてください。フランス＝セルビア＝モンテネグロ　2004年作監督 ： エミール・クストリッツァ出演 ： スラブコ・スティマチ 、 ナターシャ・ソラック 、 ヴク・コスティッチ 、 ヴェスナ・トリヴァリッチ 、 アレクサンダル・ベルチェク

  2006.10.27

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  THE　有頂天ホテル

  舞台はホテルアバンティー。カウントダウンパーティまであと二時間という設定で、格式高いホテルの、大晦日のホテルマンとお客様とのそれぞれの人生模様を描きます。三谷監督らしい、大変楽しい映画となりました。8月11日にDVD発売で、やっとこの作品を見ましたが、様々な物語が交錯しながら、最後のエンディングで綺麗にまとまるように出来ていて、さすがに三谷監督ですね。　 シンガーソングライターを目指して上京したのに、8年たっても芽が出ないベルボーイ只野（香取慎吾）はもう総てを諦めて郷里に帰ろうと、年内で仕事をやめることにしていた。運が良くなるというお守りのマスコット人形とバンダナとギターはそれぞれ、仲間にあげてしまった。そのおかしなマスコット人形が、それぞれの人間ドラマの橋渡し役となって、物語が展開する。自殺したがる演歌歌手、父親の愛人を許せない息子、過去のあるシングルマザー、追い詰められた政治家、若き日の夢を諦め、偶然訪れた別れた妻に見栄を張る副支配人、マンオブザイヤーの授賞式に愛人に取られた携帯写真を取り戻そうとする受賞者。人のいいコールガールなどなど、多くの個性的なしかも人間くさい人々が綾なす物語。オダギリジョーが、気の弱い筆耕係りをやっていたり、唐沢寿明が、芸能プロダクションのやくざな社長を演じていたり、所々おやっと思うような配役があり、とても楽しいですね。このストーリーのテーマとしては、本当の自分のやりたいことを、誰がどう言おうとやっていくんだということなんですが、最後の香取君の叫びはなかなか素晴らしいものがありました。どちらにしても楽しい気持ちにさせてくれる、非常にまとまった映画ですので、どうぞ楽しみにご覧ください。監督・脚本　三谷幸喜出演　役所広司　松たか子　佐藤浩市　香取慎吾　篠原涼子　唐沢寿明　オダギリジョー

  2006.09.10

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  ミュンヘン　　スティーブン・スピルバーグ監督

  1972年ミュヘンオリンピックの選手村にパレスチナゲリラ「黒い九月」が乱入し、イスラエル選手団を人質に取るという事件が起こった。結果はドイツ警察の失態が重なり、空港の駐車場で、人質は全員死亡という結果に終わったのだった。悪夢のようなこの事件の後、イスラエルは激怒し、すぐさまレバノンとシリアに報復攻撃をしたが、それだけでは収まらなかった。ドイツ警察署にいた犯人は、ハイジャック事件により、釈放され、その後生き延びていた。イスラエル政府は、

  2006.09.04

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  ALWAYS　三丁目の夕日

  昭和30年代の東京　33年に東京タワーが完成し、懐かしさに満ちた東京の町並み、暖かな人々の暮らしが再現されています。映像作家の山崎さんは、年齢的には30年代の終わりころに生まれていらっしゃるので、実際の30年代を経験しているわけではないと思うのですが、非常によく再現されているなと思います。戦後10年、敗戦から立ち直り、苦労しながら高度成長期の礎を作った人たちの明るくも暖かい、心和む映像とストーリー。楽しく、また、胸がいっぱいになるようなエピソードの数々。日本アカデミー賞部門14のうち、12の賞を総なめにした作品です。DVDになってからもレンタル店でずっと出払っていて、つい最近やっと見ることができました。こんなに懸命で、こんなに明るい人々の姿。懐かしさだけではない何か訴えてくる力があります。敗戦の切なさを胸に、唇をかみ締めて、日本再生の希望に燃えていた日本人。総ての日本人の心に訴えかけるインパクトがあるのでしょうね。40代以上の人々にはほんとうに心から懐かしく、また、30代、20代の人々には、どこか、遺伝子がくすぐられるような、そんな感じなのではないかと思います。舞台となる鈴木オートに初めてテレビが来た日、町内のみんなが楽しみに集まり、テレビが映ります。映像は力道山。この当時の人々の想いがいっぱいで、その気持ちに涙する、そんな映画です。子供たちも可愛く、お話も飽きることがない展開です。ちょっとした脇役の一人ひとりの人生、総てが悲しみとせつなさを合わせ持ちながら、明るい未来に夢をはせていたこの時代、日本人が歩んだその方向が正しかったのかどうか、その答えは、今生きる私たちにかかっているわけですが、どんな状況でも生きていく希望を作っていくこと、一人一人を想う気持ちの集積がかならず未来を作っていくんだという、今は忘れてしまった大切な気持ちを思い出させてくれる映画でした。まだ、見てない方はぜひごらんになってみてください！感動します！出演　吉岡秀隆　堤真一　小雪　薬師丸ひろ子　堀北真希　三浦友和監督　山崎　貴　原作　西岸良平

  2006.07.30

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  SAYURI

  絢爛豪華な着物と海外から見た日本、東アジアという不思議の国の物語として、ファンタジー映画のように見るのであれば、また、ひとつ興味深い映画であるといえるでしょう。芸者と遊女あるいは花魁がミックスされているようで、髪型とか、着物のスタイルとか、時代設定や、街の様子など、ここはいったいどこなんだろうと見ていながら非常に不思議な感覚におちいります。また、みんな日本の俳優が、英語でしゃべっているので、なんとも言えず、面白いですね。渡辺謙さんはとっても英語が達者ですね。よどみない感じでした。アーサー・ゴールデンのベストセラー『さゆり』の映画化。物語としては、貧しい漁村の少女千代が、置屋に売られて芸者として数奇な運命を生きていくというストーリー。帰ろうと思っていた実家の両親も亡くなり、姉とも離れて生きていかなければならなかった千代。千代のたった一つの希望は、孤独に耐え切れず橋の上で泣いていた彼女を見つけ、かき氷を食べさせてくれた優しい会長（渡辺謙）の存在だったのです。良い芸者になれば、今の自分の周りとは違う人たちに会えるというかすかな希望に、千代はそのときに会長からもらった小銭を総て賽銭箱にいれ、芸者になれるように神様に誓うのでした。 成長した千代　さゆりに（チャン・ツィイー）さゆりを仕込む豆葉に（ミッシェル・ヨー）おカボには（工藤夕貴）です。意地悪な売れっ子の芸者初桃は、どこかで見たことがある美人だなと思っていたら、「愛の神　エロス」の（コン・リー）でした。チャン・ツィイーとコン・リー、ミッシェル・ヨーがほとんど主演なので、これはもう、断然、大陸色が強くなり、どうしても本当の日本の芸者の色香が立ち現れないのですね。そこがちょっと残念でした。まさにアジアの大輪の華たちなのですが、着物の着方や、踊りにどうしても無理がありましたね。非常によかったのが、子役の大後寿々美。不思議で美しい魅力ある少女役をこなしました。大きくなって、ハリウッド進出が果たせそうな予感です。さゆりを日本人がつくったらどんな映画になったでしょう。本格的な芸者物語の映画を心からみてみたいと思います。監督　ロブ・マーシャル俳優　チャン・ツィイー　渡辺謙　コン・リー　ミッシェル・ヨー　役所広司　桃井かおり　工藤夕貴

  2006.07.18

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  武士（MUSA）

  韓国、中国のスターがそろった、「MUSA　武士」のご紹介です1３７５年、朝鮮の高麗は、中国の帝国明との友好関係を結ぶために高麗の使節団を派遣したが、逆に明にスパイ容疑をかけられ、砂漠に流刑となってしまう。この映画は、歴史上、忽然と消えた高麗の使節団の実話とその真相をイメージして作られたというストーリであるという。流刑となり、砂漠へ連行される途中で、明は元の軍に全滅させられ、図らずも使節団は開放された。ぎりぎりのところで助かった使節団は故国へ帰るために旅を始めたが、途中、明の姫が元軍に捕らわれ、彼らに助けを求めたのをきっかけに、明の姫を救えば、明からの疑惑も解けると考え、明の姫を元から連れ戻し、明へ送り届ける作戦にでた。槍の名手ヨソルは明の姫を助け追いかけてきた元のランブルファ将軍と一騎打ちとなった。ヨソルは戦いに勝ったものの、ランブルファ将軍の命は助け、明の姫をつれ去った。命は救われたが、元のランブルファ将軍は、明の姫を連れ戻そうとし、明の姫を渡さなければ、皆殺しにすると彼らを追い詰める。ランブルファ将軍は、ヨソルの槍の術の見事さに、敵ながら心魅かれる。使節団のチェ将軍は、明の姫を一目見たときから、心を奪われていたが、ヨソルに姫を守れと命令する。気の強い明の姫、追い詰めてくる元軍、中国大陸に壮絶な戦いが繰り広げられる。この映画で、韓国の武士たちの志に、日本の武士の志の原点を見たのですが、愛する人を守るという、男たちの戦いぶりは徹底していて、どこの国でも、男の真価は、徹底して女、子供を守り、命をかけて戦うことなのだと感じましたね。野望や権力をかけて戦っているときよりも、愛する人を守るため、命がけの戦いをするときに、こんなにも男たちは、美しく輝くのだとということを改めて痛感する映画でありました。かっこいいですね！！ほんとうに。この命がけの戦い、魅せてくれます。それぞれ個性的なMUSA　武士たち。守る対象が一人一人、違うのですが、皆、己の命を掛けて戦い、守り抜くのです。「私の頭の中の消しゴム」の、チョン・ウソンは奴隷の身分でありながら長髪の美しき戦士、非常に似合っていました。もう、どこから見てもかっこいいんです。また、チャン・ツィイーもプライドの高い姫役にぴったり。かなり二枚目の若きチェ将軍チュ・ジンモも、過酷な状況を判断決断していきながら成長して行く若き将軍としてなかなかよかったです。しかし、なんといっても、弓の名手であり、長老役のアン・ソンギが、強く、賢く、人間味あふれ、彼の存在が全体のバランスをとって深みをあたえました。味のある役者さんですね。副将軍もいい味をだしていました。また、敵のランブルファ将軍もなかなか天晴れでかっこいいのですね。全体的に脇役の個性が非常に良かったですね。中国・韓国のエンターテイメント、最近なかなか面白いですが、日本では、こうした映画が出てこないですね。ラストサムライも、中国・韓国のMUSAも、やはり微妙に日本の武士道の精神とは違うのでしょうか、それとも日本の男たちに武士道の精神がなくなったのでしょうか？みなさまいかがでしょうか？（笑）監督　キム・ソンス出演　チョン・ウソン　チェ・ジンモ　チャン・ツイィー　アン・ソンギ　ユー・ロングァン　パク・チョンハク

  2006.06.05

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  蝉しぐれ

  藤沢周平さんのベストセラー小説の映画化です。司馬さんとはまた趣の違う時代小説を書き、人気の高い藤沢さんの代表作とも言える作品の映画化とあって、非常に長い月日をかけ、準備されたようです。下級武士・牧文四郎の青春時代、淡い初恋、そして、悲しい父親との別れ。そして父から得た、一貫した真心を貫き通す生き方が、誰の心をも打つのです。「隠し剣　鬼の爪」を見たときの印象と非常に似ているなと思ったのですが、やはり両方とも藤沢周平さんの原作なのですね。今回、染五郎の育ちのよさというか、歌舞伎役者として身に着けた立ち振る舞いが、その牧文四郎の誠実な生き方をとってもよくあらわして、非常に胸がほのぼのとするようでした。誰もが、とっても美しく真の人間の姿に見えるのです。どの役者さんも、生き生きとその人の良い姿が現れ、みんなとってもいい顔をしているのです。木村佳乃　緒方拳　原田美恵子　ふかわりょう　今田耕司　柄本明　など、非常に個性的な俳優さんが周りを固めています。また、美しい日本の風景、山、田んぼ、そして美しい水の流れ、四季折々の風情がふんだんに織り込まれ、懐かしさと心が芯から豊かになるような情景。そして、純愛。切ないばかりの人への想い。今でも思い出すと、心のおくが温かくなるような、温泉効果のようなこの映画、ぜひとも皆様ご覧ください。何気ないようで、深く感動していただけると思います。監督・脚本　黒土三男　原作　藤沢周平出演　市川染五郎　木村佳乃　緒方拳　原田美恵子　ふかわりょう　今田耕司　柄本明

  2006.05.24

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  メリンダとメリンダ

  ウッデイ・アレン監督の映画ですね。彼はもう70歳だそうです。あー、そうですかーという感じです。元気でがんばっていますよね。彼の作品は良く見るほうなのですが、衝撃的だった「アニーホール」や「マンハッタン」。ニューヨークってこんなところなんだって彼の映像を見るといつも思います。最近も何作か見ているですが、「スコルピオン」でしたか、これも恋のお話でした。「ギター弾きの恋」も見ました。毎年精力的に映画を撮って、本当にこの人は映画が好きなんだなと思います。今回は、ウッデイ・アレンは作品には出てこないのですね。いかにも彼らしい作品で、ニューヨークのセレブであろうと思われる、劇作家たちがレストランで話をしているシーンから始まります。人生は悲劇として表すか、喜劇として表すかというテーマで語っています。それぞれが、同じメリンダという女性を主人公にストーリーを語りだします。そんなところから、この映画が始まってしまうのですね。メリンダは同じラダ・ミッチェルが演じ、それぞれのストーリーは別の設定で別の俳優が演じていきます。どちらも和気藹々と映画がらみ、作家がらみのパーティーが始まるはずだったところに、招かざる客のとしてメリンダが現れます。片方は悲惨な状況でも楽しく喜劇として進行し、片方は悲劇として進んでいきます。徐々に二人のメリンダの展開が離れていき、まるで正反対の結果となるのです。そして、最後はまた、映像は、劇作家たちが語るレストランに戻っていくんですね。こんなストーリー展開で映画を作ってしまうというところがウッデイ・アレン監督の凄いところですね。どちらが好きかって言われると、やはりハッピーエンドのほうが楽しいと思いますが、これも人の好みで様々ですね。いかにもニューヨークの文化的な人々は、こんな日常なんだろうと思われるような、非常にしゃれた、こなれた映画です。まさしくウッデイ・アレン、彼そのものの映画にたっぷり浸れますよ。監督　ウッデイ・アレン 出演　ラダ・ミッチェル、キウェテル・イジョフォー、クロエ・セビニー

  2006.05.08

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  ブロークバック・マウンテン

  切ない恋の物語りなのですが、主人公はカーボーイ二人。男性同士の純粋な恋の物語です。美しいブロークバック・マウンテンの自然の映像が圧倒的。静謐な悲しみを誘います。1963年のワイオミング州ブロークバック・マウンテン。季節労働者として、山に入り、何ヶ月か羊の番をする仕事についたイニスとジャック。性格のまったく違う二人は、過酷な自然の中で、仕事をするうちに、互いに相手を深く信頼し、愛していることに気がつき始める。親密な仲間の間柄から、禁断のラインを踏み越えてしまった二人は、自制すればするほど、互いを求める狂おしい気持ちが募ってくるのだった。イニスは婚約者もいて、決してホモセクシャルな感覚を持っていたわけでもなく、ジャックもノーマルのはずだった。互いの気持ちに動揺する二人。青春の真っ只中で出会った二人の青年は、その数ヶ月の二人だけの暮らしの中で、輝くばかりに経験した真実の恋によってそれからの人生がまったく変わってしまったことに、気がつかぬまま、別れてしまう 青年らしく二人は恋をし、結婚をして、子供も生まれ、それぞれの暮らしを紡ぎだすのですが、本当に輝いていた時は、あのブロークバック・マウンテンで暮らした日々だったのです。4年たち、ジャックからの手紙を受け取ったイニスは、心が震えるのを感じ、心から彼が表れるのを待ちわび、彼が現れたときには、思わぬ激情があふれ、彼を狂おしく抱擁するのです。そのシーンを図らずもみてしまった妻は、彼の心が自分にないことを悟り、やりきれない悲しみに、二人の生活は徐々にすさんでいきます。ジャックは金持ちの娘と結婚し、それなりに良い生活をしているのですが、そんな生活が彼の望みではなく、イニスと牧場をもって暮らすことが彼の純粋な夢だったのです。しかし、イニスには小さいころ、男同士で暮らしていたホモセクシャルのカーボーイが、周囲の人たちに殺された姿を目の当たりにしていたので、心から彼を愛していても、危険の伴う、二人の暮らしに踏み切ることはできなかったのです。男同士の恋の強烈な強さ、禁断の恋であればあるほど募ってしまう恋心。ギリシャ時代には恋といったら男同士だったわけで、この映画では、そういった西洋の歴史の長さを感じます。美しき男同士の恋は、アメリカの倫理では、禁断の恋です。ニューヨークなどの都会ではまだ、生き延びる方法もあったでしょうが、地方の敬虔なピューリタンとしてそだった環境、キリスト教の罪意識は、ものすごいものがあるのでしょう。それにしても、この二人の青年の悲しすぎるくらいの恋の美しさが、ブロークバック・マウンテンの静かな自然と重なり、心に響く映画となっています。監督はアン・リー　中国の監督ですね。グリーン・デステニーなどを撮っています。そして、ジャックを演じているジェイク・ギレンホールは、秀作の青春映画、｢遠い空の向こう｣に出ていた少年です。いい、俳優になりましたね。｢ブラザーズ・グリム｣の弟役のヒース・レジャーも朴訥な生まれながらのカーボーイと言う感じで、彼がスクリーンに映し出されるだけで悲しみが伝わり、とっても良かったです。この作品は2005年度アカデミー賞、ゴールデングローブ賞・ヴェネチア国際映画祭の金獅子賞などを受賞しました。泣かせる映画ですよ。監督　アン・リー出演　ヒース・レジャー　　　ジェイク・ギレンホール

  2006.05.03

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  Mr.&Mrs.スミス

  久々に見るアクション娯楽映画です。ブラット・ピット主演とあれば、ちょっと見ておこうかなという気になり、めったに見ないアクションものですが、思わずDVDを借りて見てしまいました。それなりになかなか楽しめました。それぞれが別の組織の有能な殺し屋であるスミス夫妻は、互いに殺し屋とは気がつかぬまま、旅先の偶然の出会いで一目ぼれし、熱烈な結婚をし、5～６年の結婚生活を送っていた。しかし、互いに秘密がある夫婦生活は、どこか作られた、嘘で塗り固められた生活だったので、夫婦関係はギクシャクしていた。二人でカウンセリングを受けながら、なんとか関係性を回復したいと思っているMr.スミスは、あるときの仕事で、標的を狙うもう一人の殺し屋に気がつき、その殺し屋が、自分の妻だということがわかってしまった。仕事は失敗し、そして、妻も夫がライバル組織の殺し屋であるということを知ってしまい、二人は48時間以内に、しくじった仕事を完成させ、そして秘密がばれないように、相手を抹殺しなければならない。そして、ここに壮絶な夫婦喧嘩が始まるのであった。 二人が、お互いの本当の姿を知ったところから、お互いの心に微妙に変化が現れるところがとっても面白かったです。相手の命を狙わなければならなくなったとき、二人はお互いを殺せないのです。互いに深く愛し合っていたことに気がついていくんですね。そして、お互いの正体がわかったとき、熾烈に戦いながらも、また新たに一からやり直す決意をするのです。二人が夫婦だということに気がついた組織は、二人を同時に消してしまおうとしたわけですが、組織から抹殺されかけた二人は、今度こそ、本当の意味で同士となり、世界最強の二人となってしまうのです。そして組織からの追っ手と熾烈な戦いを繰り広げます。バードでコミカル、そして程よいエロス。一番初めに、二人のカウンセリングのシーンから始まるのですが、最後にもう一度カウンセリングシーンで締めくくります。ある意味究極の男と女のセクシュアリティを表現した、なかなかの映画です。意外にジェンダーな展開！！楽しめますよ！監督　ダグ・リーマン出演　ブラッド・ピット　アンジェリーナ・ジョリー

  2006.05.01

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• ぼくを葬る(おくる)　　フランソワーズ・オゾン監督

  久々に日比谷のシネシャンテで見てきました。「死」をテーマにした三部作、一部の「まぼろし」を見ていたので、この映画も楽しみにしていました。第1作目の「まぼろし」は、愛する人の死を描きましたが、この二作目は自らの死がテーマです。三作目は子供の死がテーマに描くことになるそうです。｢死｣を真正面から取り上げるということは、かなり映画としては難しいのかもしれませんが、私はこの手の映画はかなり好きで、今までにも何本かご紹介していると思います。「オール・アバウト・マイマザー」「みなさんさようなら」「死ぬまでにしたい１０のこと」「海を飛ぶ夢」など、どの映画もとても心に残る映画でした。海外では非常に多いのですが、日本の映画となると、なかなか少ないですね。好きな人が白血病で死んでしまうというパターンが多いように思います。自らの死をどのように考えていくのかと言う哲学的なテーマは日本人はどうも得意ではなさそうですね。唯一記憶にある作品で、藤竜也主演の｢村の写真集｣が近いかもしれませんね。しかしあの作品も、息子の目からみた父という描き方をしていました。皆様もし、日本の映画で、このような自らの死に真正面から取り組んでいる映画があったらおしえてください。さて、この「ぼくを葬る」の主人公は31歳のフォトグラファー、ロマン。彼は同性愛の恋人と暮らし、仕事でもチャンスをつかんで、売れ出してきていた。しかし、撮影中に意識を失い、精密検査を受けた結果、余命3ヶ月と診断された。受け入れがたい事実を彼は一人で考え、残された唯一の道、科学治療も受けることを拒む。だれとも話すことができないロマンは、家族にも告げずに、愛する恋人にも一方的に別れを告げる。久しぶりに家族と食事をしたときも、「家族よりも、モデルたちの写真のほうがいいのね」と仲たがいしている姉に言われ、｢撮る気がしない｣と対立してしまうロマンだった。ロマンは大好きな祖母に会いに行くために車を飛ばす。そして祖母にだけは真実を告げるのだった。祖母に「なぜ私に話したの？」ときかれて、｢僕たちは似ている。もうすぐ死ぬから｣と答えるロマン。｢今日貴方と一緒に死にたい｣という祖母の言葉に思わず涙するロマン。祖母の家にいるときに、子供のときのことを思い返すときロマンは姉と過ごした一体感を思い出す。そして愛する祖母と別れるときに、彼は祖母の写真を撮るのだった。仲たがいしていた姉から手紙が届き、姉に電話をかけあやまるロマン、そして、姉には会わずにひっそりと姉の写真をとるロマンだった。徐々に体は蝕まれ、ロマンの最後の望みは、もう一度、最愛の恋人のサシャを抱くことだった。事情を知らないサシャは、もう二人の関係は終わったとロマンの申し出を断わってしまう。ロマンは、以前、祖母の家に行く途中、偶然出会った子供のいない夫婦から子供を作る手伝いをしてくれないかという申し出を受けることを決意する。徐々に死が近づいていくに従い、ロマンの気持ちは様々に変化していく。そして最後にロマンが自分の死を迎えるために選んだ場所は、、。「まぼろし」のときに、愛する人の死のシーンは海辺でしたが、やはり、この第二作目「ぼくを葬る」でも海辺でのシーンとなりました。ロマンが自らを葬るシーンは大変美しい映像でした。人は自分の死というものを普段はなるべく考えないように生きています。死は誰にも確実に訪れるものです。「人間の死亡率は１００％」と、養老先生の本に書いてありましたが、まずは自分の死というものを考えるためにも、死をテーマにした作品をごらんになってみてください。自分だったら、どのように迎えるのか。ロマンのように自分の死を迎えるまでにある期間与えられる場合もあるかもしれませんが、突然訪れる場合もあるわけですから、常に死というものを考えつつ、今、限りなく尊い生を生きることに専念したいと思います。しかし、ロマンを演じたメルヴィル・プポー　も美しく、非常によかったですが、ジャンヌ・モロー　は最高でした。存在感といい、哲学的なまなざしといい、ロマンも、「もっと若いうちに合っていたら結婚していた」と言っていましたが、まさに、そういったいい女の代表格ですね。監督/脚本　フランソワーズ・オゾン出演　メルヴィル・プポー　ジャンヌ・モロー　ヴァレリア・ブルーニ＝テデスキ　

  2006.04.26

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  私の頭の中の消しゴム

  建築会社の社長令嬢であるスジンは、妻ある人と恋をし、裏切られ、やり場のない怒りと悲しみで落ち込んでいるときに、コンビニで、建築志望の労働者チョルスに出会う。最悪の状態で出会ったチョルスはスジンが今までであったことのない魅力をもっていた。育った環境の違う二人だが、強烈に惹かれあい、二人は恋に落ちる。孤独な環境で育ったチョルスは、素直で献身的なスジンを愛していくが、なぜか結婚をすることは拒んだ。自分が束縛されることに恐怖を感じ、何よりも幸せになることを恐れていたのだった。しかし、スジンの愛で、徐々に気持ちが変わり、二人は晴れて結婚することになる。しかし、最高に幸せな二人も、スジンの突然のアルツハイマーという病に引き裂かれていく。愛しているチョルスさえも忘れてしまうスジンは恐怖にさいなまれ、正常なときに、チョルスと別れようとする。徐々に記憶を失っていくスジンを家族は引き取ろうとするが、チョルスは自分が面倒をみると病魔に刻々と蝕まれていくスジンと一緒に暮らすことを宣言する。後半は、涙が止まらないほど泣けてくる映画です。涙がたまっている人には、最高の映画でしょう。｢永遠の片思い｣「ラブストーリー」の時にはまだうぶな少女でしたが、そのイメージから脱却し、上品でありながら大人の女性の艶を見せるソン・イェジンは、今絶好調といういところでしょうか。悲しいけど、素直で愛しいスジンの役をよく演じています。ちょっと野生的なチョン・ウソンもなかなかの好演です。少し線の細いナーバスな役柄がよく似合いますね。たくさん泣きたい人はぜひごらんになってみてくださいね。監督　イ・ジェファン出演　チョン・ウソン　　　ソン・イェジン　　　ぺク・チョンハク

  2006.04.24

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  ドキュメンタリー「Little Birds　－イラク　戦火の家族たち－」　綿井健陽監督

  2003年アメリカ軍のイラク空爆は、私たちの記憶に新しい衝撃的な事件でしたが、燃え盛るバクダッドの映像を私たちも日本で見ていました。ジャーナリストとして、スリランカ・アフガニスタンなど、紛争の真っ只中に入り取材をしている綿井健陽さんは、2003年の空爆下、私たちに映像を送ってくれたジャーナリストの一人です。彼はその後もイラクに残り、取材を続けました。空爆前のイラクの人々の暮らしの映像は、どこの国の人々とも変わらない、家族が生活を営む日常的な情景です。子供たちの笑顔が印象的です。そうした日々が一転して、悲しみと恐怖と怒りの街に変わるのです。子供たちを失った大人たちの悲しみは、涙なしには見ることができません。日常を暮らす人々からすれば、圧倒的な暴力が行われるのです。一番弱い子供たちや老人たちが真っ先に被害を受けます。そして、何日間か空爆のあと、アメリカがイラクを制圧し、アメリカ軍がイラクに入って来ました。｢平和を作るために｣と、、、。アフガニスタンのときも、そしてイラクのときも、現地から送られてくる戦争の風景を、固唾を呑みながらも、平和に守られた日本の茶の間から見ている私たち。しかし、戦争の風景よりも、もっと心に迫ってくるのは、このような戦争下で家族を失い、家族を傷つけられ、自ら傷ついた人々の悲しみにくれる姿なのでしょう。悲しみが胸をえぐるように入り込んできます。一個人として、人間として感じる悲しみです。 この映画は3人の子供を失ったアリ・サクバンさんの子供たちの墓標にそっと添えられた言葉「お父さん泣かないで、私たちは天国の鳥になりました」　から名つけたものだそうです。子供たちが埋葬されるときに、それを手伝ってくれた人たちがそっと墓標の裏に書いたものなのです。日本はアメリカを支援し、自衛隊が派遣されましたが、そういった選択をした日本であるということをよく見据える必要があるでしょう。戦争はいやだ、戦争はもう繰り返してはいけないという気持ちは一人ひとりにはあるに違いないのですが、この悲しみの繰り返しで、戦争が絶えることなく繰り返されてきたという人間の歴史、悲しみを愛に変えていく以外にこの連鎖は断ち切れないと思います。一人ひとりがどのように捕らえ、どのようにこの問題に取り組んでいくのかが問われる時代です。天国に羽ばたいた小さな小鳥たち、そして、これから生まれてくる子供たちに対しても、戦争のない平和な地球を作っていかなければならないと心から感じます。今DVDといなってレンタルされていますので、皆様是非ともごらんになってください。

  2006.04.17

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  ブラザーズ・グリム

  かの有名なグリム兄弟のお話です。私の大好きな、テリー・ギリアム監督の映画と聞いて楽しみにしていました。なかなか楽しめる映画となっています。グリム童話は、語り継がれている伝承の民話を、グリム兄弟が聞き取って残したものと言われています。一方、この物語では、グリム兄弟は、山師というか、ほとんどペテン師です。フランス支配下のドイツの村々で、伝承の物語や迷信を利用して、いんちき魔女払いをしている兄弟なのです。あるとき、とうとうフランス軍につかまり、死刑を言い渡されてしまいます。そんな折、ある村で子供たちが10人さらわれて、村人は恐怖におびえているという事件が起こっていました。そこでグリム兄弟が問題を解決したら、釈放してやるという約束をさせられ、彼らはその恐ろしい事件が起こっている最中の村に向かいます。その村では、子供たち、女の子が次々と森にさらわれていたのです。グレーテルや赤頭巾やラプンツウエルなどのグリム童話の様々なストーリーが総て見え隠れして、非常にうまく展開していきます。たっぷり楽しめます。いんちきの英雄、グリム兄弟が、どうやらこんどこそ本物の御伽噺の世界に入り込んで繰り広げるおかしな冒険物語、キリスト教への批判も含めた、新しいグリム童話秘話といったところでしょうか。小さいときに、魔法を信じた弟が、だまされて牛を魔法の豆と交換し、病気の妹を死なせてしまったというトラウマのあるグリム兄。マット・ディモンがこのグリム兄役をうまくこなしていました。鬼才、テリー・ギリアム監督ならではのストーリ展開です。しかも特撮ありのエンターテイメントに仕上がっていますので、どなたにでも楽しめるはずです。ナルニア国物語りなど、様々な昔話や物語りが流行となっていますが、なかなかこのグリム兄弟、スパイスのきいた見ごたえのある映画となっています。やるね！テリー・ギリアム監督、と拍手を送りたい感じですね。

  2006.04.07

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  映画　「愛についてのキンゼイレポート」

  キンゼイレポートはかなり有名な性についてのレポートですね。しかもこれは今から50年もまえのレポートなのです。驚きですね。キンゼイレポートというと性についてのバイブルのようなイメージがありましたが、このようなプロセスで発表されたものだったということは、意外でした。ティーンエージャーのころ、アメリカは、性についても進んでいると思い込んでいたのですが、ぜんぜんそんなことはなかったのだということは、かなり最近になって、理解してきました。キリスト教、それもピューリタンが多いアメリカでは、性は非常に厳しく制限されていたことだったんですね。ですから、異性間の性についてのモラルはもとより、同性愛についても非常に偏見がつよい宗教的な背景があったのです。この映画を見ると、現在では考えられない状況だったんだと思いました。また、キンゼイ博士は、てっきりお医者さんだと私は思っていたのですが、実は、動物学の助教授で、タマバチの研究をしていた人なんですね。動物学的な研究の発想からインスピレーションをうけて、人間の性行動を調査したということなんです。もしも彼がお医者さんであったら、逆にこういった調査はできなかったかもしれませんね。全米１８０００人への対面式インタビューで、人には話しにくい性への質問を集めたキンゼイ博士とその仲間たちは、それぞれの自分のパートナーや関係性の中で、愛について真剣に考え、取り組んだのでした。また、彼を心から支えた妻のクララとの関係は、非常に感動的です。彼がその研究と調査で得た結論は、愛は科学では測定不可能だということと、人は一人ひとり違うのだとういうことなのです。インタビューでどのように人が答えてくれるか、相手の立場になって考え、訓練し、実際には多種多様なプライベートでデリケートな性のレポートを集めたのでした。男性についてのレポートは非常に公表を博しましたが、女性についての内容は、女性の性の実態を社会で受け入れず、ロックフェラー財団の援助も打ち切られ、大変な思いをしました。でもその女性のレポートがあったことで、女性の性の解放の口火が切られたのは、大きな功績だと思います。どんなことでも、初めて今までの常識を打ち破ることには困難が付きまとうものですが、このような先駆者がいることで、次の世代が生きやすい時代となるということなんでしょね。マスコミからもたたかれ、世間の不評をかった失意のキンゼイ博士に、一人の女性が告白するのですが、彼女の告白が、彼を勇気付けるのです。非常にストーリも、内容も面白く興味深いものでした。いろいろなことを考えるきっかけとなることでしょう。ぜひごらんになってみてください。監督　ビル・コンドン出演　リアーム・ニーソン　ローラ・リニー　クリス・オドネル

  2006.04.03

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  ＮＡＮＡ

  矢沢あい原作のこの映画。かなり少女まんがチックで、それなりに楽しめました。二人のナナの恋と友情のものがたりです。家族と早くに別れたNANA、そして、孤児院で育ったレイ。二人は出会ったときから惹かれあい、同じロックバンドで活動していたが、レイはスカウトされ、東京へ。レンを追いかけるのではなく、NANAは同じロックミュージシャンとして、レンのライバルになるべく東京を目指した。レンと別れてから二年後、東京へ上京するとき、偶然電車の隣に座った奈々とは、雰囲気がまったく違う二人だが、意気投合。奈々は平凡で、ドジで、ちょっと自分中心の女の子で、東京に好きな彼が上京しているので、特に人生の目的もなく彼に会いたい一心で電車にのるのだった。はっきりと自分と言うものを持つＮＡＮＡと、まだ、自分のことがよく見えない奈々、この二人の「ナナ」の恋物語の進展をちょっとメルヘンチックに描いています。中島美嘉・宮崎あおい、そして松田龍平、和風顔の松田龍平がNANAの恋人役です。彼が今時のロックミュージシャンにピッタリでなかなか笑えました。NANAのトレードマーク、蓮（レン）のタトゥーが問題となり、漫画でも映画でも、子供がみていいのかと言う議論にもなったようですが、内容としては可愛いもんだと思います。ファッションの一部としてのタトゥー、文化も変わりましたね。久々の少女マンガを楽しめる映画でした。

  2006.03.18

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  映画の中の美しい着物たち　第一話「忍SHINOBI」

  新しい試みとして着物の視点から見た映画の紹介をしてみたいと思います。まず第一弾は、「忍SHINOBI」戦国時代が終わり、家康の江戸時代が始まった時期のお話です。戦国時代から、長い間、各戦国武将の影には怪しい術を使う忍びの者たちが、常に戦い続けていた。その中で、最も力のあると言われる伊賀と甲賀の忍びの民は、互いに憎しみ続けてきたが、互いの諍いは、忍びのものを統括する服部半蔵の一族によって封印されていた。小康状態をたもっていた伊賀と甲賀の若き跡目である、朧と弦之介はあるとき、川のほとりで出会い、一目でお互いに恋をした。敵対しあう伊賀と甲賀ではあったが、弦之介はこれからは平和の続く時代となるので、戦わずして暮らすことを望み、二人の恋を成就させようとするが、運命は二人に命をかけて戦えと命じていくのだった。まるでロミオとジュリエットのようなお話なのですが、二人は最強の術を持つ忍びの里の後継者、その設定が非常に絵になり様になります。さて、原作は山田風太郎の「甲賀忍法帖」心優しく、しかも最強の術をもつ弦之介にはオダギリジョー。そして、美しく可憐でありながら、もっとも強烈な瞳の術を操る朧に仲間由紀恵。戦うために生まれた忍である若く美しい二人は、悲劇の恋を突き進みます。中国のエンターテイメント『HERO』を思わせるタッチ。テーマとなる着物は、この時代の通常の衣装というより、忍の里の者らしく、かなりフォークロアっぽい着物なのです。素朴な染めの重ねを身に着けているオダギリジョー、くびに巻く襟巻きがとってもお洒落な感じです。ちょっと民族調の着物の重ねの仲間由紀恵も可愛いのです。主人公が忍者ということもあるのですが、今まで見た時代劇のなかでも、かなりくだけた民族調の着物たちが、なかなか、楽しめました。最近の若い人たちの着物ブームが面白く、本当にそれぞれが自由に着こなしていて、その感覚がとっても面白いです。庶民的なんですね。昔の着物文化も本来はきっとそうだったと思うのです。江戸時代の着物の着方をみるとかなりぞろりとして、崩した着こなし方をしていますし、帯の結びもずいぶん自由ですよね。今のピシッとした正統派着物姿は、貴族や上流階級の人たちの着物の着方であって、若者たちの洋服の上に着物を合わせてしまうというような着物姿は限りなく、過去の庶民や、町人たちの発想だと思うのです。衣装だけではなく、ストーリーもアクションも楽しめる映画ですね。

  2006.03.10

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  ヴェラ・ドレイク

  非常に地味なのですが、とっても印象的な映画です。アカデミー賞3部門、マイク・リー監督のヒューマンストーリー。ほとんど有名な俳優や女優が出ているわけではなく、淡々と描かれる人々の暮らし。そして大写しされる、出演者一人ひとりの表情が、とってもリアリティがあり、心に迫ってきます。お話はとってもシリアスでハードです。1950年イギリス。中絶は犯罪ということを知りながら、女たちは、いやおうなしに非合法の中絶をしなければならないことが多かった。貧しいながらも兄弟で自動車修理工場を営むスタン（フィル・デイヴィス）と、彼を愛する妻、ヴェラ（イメルダ・スタウントン）は、家政婦の仕事をしながら、家族を支えていた。平凡だが幸せな毎日。しかしヴェラには、家族にはいえないひとつの秘密があった。ヴェラは、女たちが望まぬ妊娠をした時に、自然流産を促すような処置を秘密にしてあげていたのだった。行き遅れた娘の婚約がきまり、とってもうれしいスタンとヴェラは、弟夫婦を招待し、内輪の婚約パーティを開く。しかし幸せな晩餐の夜、ヴェラのところに警察が尋ねて来たのだった。幸せは一瞬で崩れ落ちた。ヴェラは、ただ、困っていた女性たちを助けるために行った事だったが、イギリスの法律は中絶を非常に重い犯罪だと捕らえていた。ヴェラはそのまま、警察へ連行され、留置されてしまったのだ。捜査に協力的であるとして、裁判の間、保釈はされたものの、家族のショックは大変なものだった。しかし、なんとかヴェラを理解しようとしていた。法廷に立つヴェラは自分の罪の重さを十分に理解してもなお、娘たちを助けざるをえなかったのだ・・・。後半は、法廷に立ち証言をするヴェラの表情が非常に複雑で、かつ、素晴らしいです。この映画のどの俳優さんも女優さんも、非常に丹念に役を演じ、このような映画があったのだと改めて、監督のマイク・リーの手腕に脱帽です。見るべき価値のある作品だと思います。渾身の映画、どうぞごらんになってみてくださいね。出演　フィル・デイヴィス　イメルダ・スタウントン監督マイク・リー

  2006.03.02

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  イヴの総て

  とっても古いクラッシックな映画です。アカデミー賞6部門を受賞した名作。久しぶりにモノクロ映画をみました。なかなかいいですね。新進女優イヴ・ハリントン(アン・バクスター)は、アメリカ劇界最高の賞、セイラ・シドンス賞を受賞した。彼女の本当の姿を知っている近しい何人かは、彼女の受賞を冷ややかに見守っていた。大女優のマーゴ・チャニング(ベティ・デイヴィス)とともに仕事をしている劇作家ロイド・リチャアズ(ヒュー・マーロウ)の妻カレン(セレステ・ホルム)は、毎日劇場の外に見かける貧しげな田舎娘が気になり、あるとき、楽屋に連れて行き、マーゴに紹介をした。田舎娘の不良娘と思っていたその娘が、夫に死に別れ、マーゴに会いたくて上京したという身の上話に心を動かされ、早速秘書として雇い入れることになる。秘書となったイブは、聡明で、控えめで、誰も彼女のことをほめるのだが、自分の恋人ビル(ゲイリー・メリル)にまで取り入ろうとするイヴの姿に女としての直感が働き、彼女を疎ましく思うようになる。実はイヴには野心があり、大女優マーゴの持っているもの総てを手に入れようとしていたのだった。年齢をひしひしと感じながら、女優として生きるのか、それとも女として生きるのかの岐路に立つマーゴは、イヴに総てを奪われそうになるのだか、女として生きる道を選び、ビルと生きる道を選ぶ。ビルをも手に入れようとしていたイヴの望みはかなえられなかったが、賞を得ることで、大女優としての道が開かれた。その授賞式の夜、かつてのイヴと同じように、イヴの部屋には田舎から飛び出してきた女優を目指す少女が待っていた。大女優と野心ある駆け出しの女優との火花の対決は見ていても大変面白いですね。激烈な競争は、男だけのものではないということでしょう。しかし、大女優が、女としての幸せを手にするというところが、なかなか興味深い展開なのですが、現代だったら、どのような結末となるでしょうね。かのマリリン・モンローが、才能のない、イヴに完全に出し抜かれる新人女優を演じています。この小娘が大女優になるとは、このときは誰も思っていなかったかもしれませんね非常に象徴的な映画でした。まさに、日曜洋画劇場で見たかもしれないような懐かしい映画です。時には過去の名作を見るのもいいですね！監督　ジョセフ・Ｌ・マンキーウィッツ出演　ベティ・デイヴィス　アン・バクスター　ジョージ・サンダース　セレステ・ホルムゲイリー・メリル

  2006.02.27

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• ビック・フィッシュ

  チャーリーとチョコレート工場の特集として、ティム・バートンの作品が並んでいたので、その中からまだ見ていなかったこの映画を選んで見ました。かれはどうも、父と子関係性がテーマなのかもしれませんね。このビック・フィッシュも、チョコレート工場も、父と息子の関係について多くを語っています。特にこのビック・フィッシュはなかなかの傑作です。原作はダニエル・ウォレスという人の「ビッグ・フィッシュ　父と息子のものがたり」。息子にとって、父親との関係性をどのように乗り越えていくか、それが非常に大きいテーマなのですね。永遠のテーマですが、そのテーマを非常にファンタジックに楽しく描いてくれます。ティム・バートンならではの映像ファンタジーです。ジャーナリストのウィルは、パリで妻と暮らしているが、彼の父親の様態が悪化したと、ある日母親から電話をもらう。彼の父エドワードは、自分の人生を語るとき、いつも壮大なファンタジーを作り出し、みんなに語ってきたのだった。その話はとっても面白く、みんなは彼の話を聞きたがっていた。しかし息子のウィルには、父の話は単純なほら話と聞こえ、本当の父親の姿を知りたいと思っていた。3年前の自分の結婚式に父親と喧嘩して依頼、父親とはほとんど話すこともなかったが、父親の病は重くなる一方だった。パリから妻を連れて帰ってきたウィルは、病に伏しても、ファンタジーを語る父親に、苛立ちを隠せない。本当のお父さんの姿を知りたいと、父親と対立をするのだった。しかし、子供の時には、そんな父親の話を毎晩楽しみにしていたウィルだった。若き父エドワードの冒険物語の真実は、、。非常によくお話ができていて、楽しめました。父と息子、このテーマは、女の私にはちょっとわかりつらい部分もありますが、偉大な父親と息子との葛藤と、父の人生をどのように理解するか、どのようにその父を乗り越えるかという息子たちの永遠の課題をファンタジックに描いてとっても味のある映画でした。さすがにティム・バートンならではです。若き父に扮するユアン・マクレガーもなかなか上手です。この役はジョニー・デップだとちょっと線が細すぎる感じですが、ちょっとクレイジーな感じをユアン・マクレガーが非常にうまく演じています。お母さん役のジェシカ・ラングがこんなにいい年齢となっていてびっくりしてしまいました。またこの父親役のアルバート・フィニーが、アクーヌ・エーメと結婚していたとはちょっとびっくり。でも上手な俳優さんですね。地味な映画ですが、なかなか面白く見ることができました。監督　ティム・バートン出演　ユアン・マクイレガー　アルバート・フィニー　ジェシ・カラング　

  2006.02.24

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  映画「茶の味」

  ちょっとシュールでアートな映像、たんたんと過ぎる日常、それぞれ個性のあるちょっと変わった家族の肖像。はじめはあまりに断片的な物語に意味を見出せずにちょっと戸惑いましたが、変わり者のおじいちゃんが亡くなってしまってからは、物語の一つ一つの複線が見事につながっていき、ほのぼのとした生きるということの美しさのようなものをほわっと感じることができる、とってもありがたい映画です。これは山の中の小さな町に住む、春野家の物語です。長男は中学生。最近好きだった子が転校してしまい、何も告げずに分かれてしまったことで少々落ち込み気味。小学校一年生の長女は、いつも巨大化した自分の分身が見えてしまうのが悩みの種。どうしたらその分身が消えるか人知れず悩んでいる。そんな二人の母は、義父の指導のもと、アニメーション作家として復帰を果たそうと毎日家の中で、原稿を書いている。父はさえない催眠療法士、その弟たちは、音楽プロデュースや作詞家として都会で活躍中。そんな春野一家のそれぞれの葛藤やもやもやを、ちょっと変わったおじいちゃんは暖かく見ていたのだった。石井克人監督の映画は非常に個性的。映像も、とっても面白いです。何気ない日々、一人ひとりの悩みは人から見たらたいしたこともない悩みなのですが、本人にとってはとっても大事な課題となっているものなのです。その課題を見守るおじいちゃんが、みんなに何も言わずにひそかにしていたことは、いったいなんだったのでしょう。手塚里美や三浦友和、浅野忠信、我衆院達也らの大人たちもさることながら、二人の子役佐野真弥ちゃん、佐藤貴広君がとってもほのぼのとしていていいです。彼の憧れの転校生に土屋アンナ。なかなかの傑作です。とにかく、とっても優しい映画なので、ぜひぜひ見てくださいね。かなり笑えて、楽しめます。監督　石井克人出演　佐野真弥、佐藤貴広、手塚里美、三浦友和、浅野忠信、我衆院達也

  2006.02.20

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  シンデレラマン

  つい最近、ボクシングの映画を見たばっかりなのに、またボクシングがテーマの映画を見てしまいました。「ミリオン・ダラー・ベビー」に続く話題作、「シンデレラマン」。シンデレラボーイは、アメリカの戦前、時は恐慌時代、時代の波に押されながら家族のために一途に働く父親の姿を描いたハートウォーミングでハッピーな物語です。「ミリオン・ダラー・ベビー」同じくボクシングがテーマですが、まったく好対照の映画です。こちらはラッセルクロウがなんと18キロの減量を計り、シャープですっきりした姿を見せてくれます。シンデレラマンと呼ばれた実在のボクサー。その名は　ジム・ブラドック。筋の良いボクサーで、美しい妻メイと3人の子供に囲まれ、タイトル戦も目前に控えていた。そんなときに、右腕の故障により、勝てなくなってしまったブラドックは故障を隠して試合にでるが、怪我をかばうための動きが無気力と判定され、試合にでれなくなってしまう。肉体労働者として働くが、故障した右腕は使えないので、左を使って、仕事をこなすのであった。貧しさゆえに子供たちにも悲しい思いをさせていることを痛感するブラドックは何とかして家族と離れ離れにならないように、必死に働くのだった。そんな時、急に試合に穴があいたからと、以前のマネージャーがブラドックに一日だけの試合を願い出た。急に対戦相手が怪我をし、まったくのピンチヒッター役であった。しかし負け役のﾌﾞﾗﾄﾞｯｸに、奇跡が起こったのだ。すぐにノックアウトかと思われていたブラドックが、奇跡的に対戦相手に勝ったのだった。右をかばうために左で仕事をしてきたブラドックの左はものすごく強くなっていたのだった。おりしも時代は恐慌時代、かれはただ一人、ひたすら家族のために敵と戦い、勝利を得、家族を養っていこうとする。底辺の肉体労働者として苦渋を味わってきたブラドックは以前のブラドックより数倍強くなっているのだった。奇跡が起こり始め、ブラドックは、勝てないような敵を次々に打ち負かしていった。彼の目標は家族を養うということだった。そのようなブラドックの必死の姿に、いつしかアメリカ国民はブラドックと自分を重ね合わせ、希望を見出そうとするのであった。恐慌時代の実話で、アメリカ国民の夢と希望となったボクサーの物語。心から感動します。ブラドッグはいつも妻のサラに、君の助けがないと勝てないよと、なかせる言葉を言うのです。子供たちと妻のために戦う男の姿は感動的です。どうぞ貴方もぜひごらんになってみてくださいね！監督　ロン・ハワード出演　ラッセル・クロウ　レネー・セルヴィガーポ　ポール・ジアマッティ

  2006.02.17

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  ロスト・イン・トランスレーション

  フランシス・フォード・コッポラの娘、ソフィア・コッポラ監督の映画デビュー第二段です。新宿パークハイアットとニューヨークバー・ニューヨーク・グリルなど、ちょっと憧れのホテルとレストランバーの隅々まで見られる映画なので、とっても楽しんで見ました。日本にコマーシャルの撮影に来た中年アクション俳優と、カメラマンの夫の仕事に一緒についてきた25歳の女性の旅先での刹那的な関係。異国の地での孤独感、そして同じ国の人間であると言うだけで、親しくなれるというあの不思議な経験をさらりと切なく描いています。やはり海外の映画でも日本が背景の映画だと、画像の色が違うのですよね。映る空気が違うので、アメリカ映画でも非常に日本映画の画面だなーと当たり前のことながら、感心したのでした。あの雰囲気って湿気とか、日本独特の空気なんでしょうね。二人は新宿パークハイアットに滞在している。一週間ほどの滞在期間に、ニューヨークバーでよく顔を合わせる二人はいつしか、互いの部屋も行き来する間柄になる。夫が福岡に撮影に行っているあいだに二人は東京の街に冒険にでる。倦怠的な妻との空虚な国際電話、仕事に夢中の夫とすれ違う妻、そんな二人のつかの間のふれあい。スカーレット・ヨハンソンとビル･マーレイがなかなかいい味を出していました。パークハイアットに自分も滞在しているような気分にさせてくれて結構私はそれがうれしかったのですが、話の内容もさらりとしてまずまずの映画です。渋谷の街なども出てきて、海外から見る日本の姿を感じ取れるので、非常に面白かったですね。まあ、確かに海外から来た人たちにはこんな風に見えるんだろうなと思いながらも、日本の風景になじんだ二人、そして映像は、静けさや侘び寂びを感じる日本の空間や情感を映し出す、あるようで今までなかった映画となりました。ぜひごらんになってみてください。監督　ソフィア・コッポラ出演　ビル・マーレイ　　　スカーレット・ヨハンソン

  2006.02.13

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  マラソン

  大好きなチョ・スンウの出演で、しかも韓国で絶賛された映画。前評判の高い映画ときいて楽しみにしていました。やはりとっても素敵な映画でした。「フー・アー・ユー」「ラブストーリー」などで非常にイノセントな演技を見せてくれたチョ・スンウが自閉症の青年を見事に演じてします。さわやかな最後の走りの場面、そして笑顔、役者として大きな飛躍をはたしたチョ・スンウをぜひ見てください！自閉症児であるチョウォンはシマウマとチョコレートパイが大好きな19歳の青年。彼の心は5歳児のまま。わがままで自分の事しか考えられないチョウォンとともに生き、苦しみながもらなんとか彼の好きなことをさせたいとがんばる母キョンスク。弟や夫はキョンスクがあまりにチョウォンにかかりっきりになっている生活に疲れてしまっている。しかし、キョンスクは何かにすがるような気持ちで、チョウォンのマラソンの才能を伸ばして、フルマラソンに参加させたいと願っている。そんな時、昔、マラソンの選手であったチョンウクと出会い、彼にコーチを頼むが、やる気のないチョンウクも、徐々に純粋で、裸の魂を持つチョウォンに心引かれていく。母親のエゴと家族の葛藤、そして、人々の中で、にマラソンの楽しさや人との関係性を自然に学んでいくチョゥオン、母は無理をしすぎて胃痛で倒れ、自分の押し付けでチョウォンにマラソンをさせていたのではないかと、出場予定となっていたフルマラソンには出場させないことを決めた。しかし本当はチョゥオンは走ることが好きだったのだ・・。実話を元にした映画ということで、非常にリアリティのあるスイトーリーです。自分の子供が、正常ではないということを認めることは母親にとって非常に大変なことなんだと思います。しかし、何か正常で、何が異常なのか、ピュアな彼らを見ていると、正常ってどういうこと？と考えてしまいます。しかし、母親は自分を責め、世間との葛藤に疲れ果ててしまうのです。でも、チョゥオンが自ら走ることで、そして完走することで、家族の絆を取り戻すことができるという、とっても感動的なストーリーです。とにかく、チョゥオン役のチョ・スンウから目が離せない、そんな映画です。ギルバート・グレイブで、デカプリオが知的障害児を非常にうまく演じていましたが、チョ・スンウも負けず劣らずと言うところです。彼は演技の鋭さ、才能は、デニーロを目指せるのではないかと心から期待します！みなさんぜひ見てくださいね！きっと感動しますよ。監督：チョン・ユンチョル出演・スンウ　キム・ミスク　イ・ギヨン

  2006.02.10

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  チャーリーとチョコレート工場　　2005年作品

  ティム・バートン＆ジョニー・デップコンビで、またどのような楽しいファンタジーを見せてくれるかと思い、楽しみにしてました！シザー・ハンズ　エド・ウッド　スリーピー・ホロウ　など、いつも期待を裏切らない、楽しい映画ですが、今回はさらにファンタジー色が強く、子供たちも楽しめる楽しい映画となりました。こういった、クレージーなちょっといってしまっている役をやらせると、ジョニー・デップって最高なんです。チャーリー少年のおじいちゃんは昔ウォンカのチョコレート工場に働いていた。世界一のチョコレート工場であるウォンカの工場では今や働いている人は一人もいなかったが、工場ではたくさんのチョコレートが製造され爆発的に売れているのだった。そのウォンカから、世界で5人の子供たちをチョコレート工場へ招待するというメッセージが送られた。その招待状はウォンカチョコレートの中に5枚だけ入っているのだった。チャーリー少年の家は貧しく、誕生日にチョコレートをやっと買ってもらうという生活だったが、両親はチャーリーのために誕生日を早めてチョコレートを買ってきた。しかしやはりあたるはずもなかった。4人までチケットが見つかったと発表され、残りの一枚は誰の手に？望みをたたれたチャーリーにおじいちゃんはへそくりを渡すのだった。奇跡的にチャーリーは招待を勝ち取り、おじいちゃんと一緒にウォンカ氏の経営するチョコレート工場を見学できるのだが、さて、そのチョコレート工場とは・・。家族の愛をテーマに楽しくも、皮肉に満ちたファンンタジーは、ティム・バートンの得意とする世界です。とにかく画面がきれいです。そしてジョニー・デップがまさにはまり役。ちょっとメークした美しくもエキセントリックな天才チョコレート製作者、ウォンカ氏を見事に見せてくれました。お互いのよさを引き出す、監督と俳優のコンビ。また見せてもらいたいと思います。工場に出てくるリスの胡桃割りはかわいくておかしかったです！中身がからの胡桃を振って音を聞いてだめな胡桃を捨てるのですが、なんだか、ピーターラビットの尻尾をとられたリスを思い出してしまいました。何しろ、皮肉がきいている辛口ファンタジーなんです。ジョニー・ディップファンも、子供たちも、とにかく楽しめる、辛口のファンタジー。ぜひ見てくださいね。今TSUTAYAで借りるとウォンカチョコのステッカーがもらえるはずです。（笑）監督：ティム・バートン出演：ジョニー・デップ　フレディ・ハイモア　ヘレナ・ボナム＝カーター

  2006.02.08

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  ミリオン・ダラー・ベイビー 2004作品

  クリント・イーストウッド監督の最近のヒット作、ミリオン・ダラー・ベイビー。評判の高い映画だったので、楽しみに見ました。74歳になるイーストウッド監督なんですが、渋さを増し磨きがかかって、非常に深い映画を作り出しました。老トレーナーのフランキーは、一人娘とも長らく連絡もとれないまま、孤独な人生を送っている。信仰も熱心ではあるが、いつも様々な人生の疑問を投げかけるフランキーに神父は、辟易としていた。古典や哲学を愛する孤独な男、フランキーは、以前は有望なボクサーだったスクラップと一緒に、ボクサーを育てるジムを経営していた。非常に慎重なフランキーは、タイトルを取れるであろう有望な選手であるウィリーに裏切られてしまうが、スクラップは熱心な女性の練習生マギーを見出し、フランキーに指導するように仕向ける。貧しく育ったマギーは、ボクシングだけが生きがいだったが、新人としては年齢が立ちすぎていた。昔かたぎのフランキーは、かたくなに女性のボクサーを扱うのを嫌がっていた。しかし、マギーのひたむきな熱心さにフランキーも徐々に心を開いていった。とうとう、マギーの申し出を受け、二人の厳しいトレーニングが始まり、マギーは圧倒的な強さをみせたが、、、。後半は非常に衝撃的なストーリーとなります。マギーの選択、そして、フランキーの選択、いつしか父娘のような信頼関係をもったこの二人に訪れた運命。信仰の意味、そして神とは、という深遠なテーマに到達し、ストーリーはクライマックスを迎えます。人生とは、生きるとはを考えさせられる渋くて味わいのある映画に仕上がりました。ぜひ見てない方は、ごらんになってみてください。監督；クリント・イーストウッド　出演；クリント・イーストウッド　モーガン・フリーマン　ヒラリー・スワンク

  2006.02.06

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  イブラヒムおじさんとコーランの花たち

  フランス映画なのですが、ユダヤ人の少年とトルコ人の孤独な老人との物語です。フランスの猥雑で魅力的な娼婦街、雑多な人種がひしめき合う街、サンンドニ通りを思わせるような街で、モモは、母親に捨てられ、暗くてうだつのあがらない父親と一緒に暮らしていた。お金に厳しい父親から、わずかな食費をもらい、モモはいつも食事の用意のために、近くの食料品店に買い物に行くのだった。そこはトルコ人のイブラヒムおじさんの店だった。イブラヒムおじさんは、時には物をくすねるモモをじっとみつめ、「頼むからうち以外で盗んじゃいけないよ」とささやくのだった。父からの愛情も薄いモモには暖かく愛情深くみつめてくれるイブラヒムおじさんとの会話ややり取りが楽しみになっていった。一方では娼婦を買おうとし、もう一方では、少女にあこがれるモモに、イブラヒムおじさんは靴を買って上げる。いつもモモの気持ちがよくわかるイブラヒムおじさんは、モモに生きる知恵を教えているのだった。モモはお金をためては、娼婦を買い、経験を重ねていく。少しずつ大人になっていくモモをイブラヒムおじさんは、優しいまなざしでみつめる。そんなとき、父親が失業して、家出し、自殺してしまう。父親にも捨てられたモモをつれて、イブラヒムは故郷のトルコへ向かう旅にでる。思春期の苛立ちや葛藤をやさしくみつめる人生の師のようなイブラヒムもまた、孤独な生を生きていた。まだ人生経験の浅いモモに、生きることのなんたるかを教えるイブラヒム。彼ににとってもモモという存在は、逆に、なくてはならない存在だったのです。人生を終わろうとしている人間と、これから人生を生きていく少年との心からの交流。深い人生の意味を教えてくれるような映画でした。パリの危険で魅惑的な娼婦街、そしてトルコの不思議な街、とても絵になる一場面一場面です。若いモモはとってもナーバスでいい感じです。またオマー・シャリフ演じるトルコ人のイブラヒムおじさんも愛すべき不思議なキャラクターで、非常にいいですね。パリに住んでいたころ、アラブ人の食料品店が近くにあり、不思議な食べ物を売っていました。実は人種の坩堝であるパリ。実際のパリに近い描写で、非常に懐かしく、楽しく見た映画です。トルコの街も非常に面白かったです。皆様もぜひ機会があったら見てくださいね！監督：フランソワ・デュペイロン出演：オマー・シャリフ　　　ピエール・ブーランジェ　　　イザベル・アジャーニ

  2006.01.30

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  映画「コーラス」　　2004年　フランス作品

  コーラスと聞くと、その昔、ウィーン少年合唱団の美しいボーイソプラノを聞いて感動したことを思い出しましたが、このところ、映画『バッド･エデュケーション』でも、天使の歌声と呼ばれるボーイソプラノの少年が出てきて、彼らの美しい声、有る一時期しか聞くことの出来ない天使の声というものがどのようなことなのかということを再認識しました。この映画は、そんな少年時代の一時期、歌を歌うという事を通して、傷ついた少年達に、未来への希望をあたえた一人の音楽教師の物語です。世界的指揮者のピエール(ジャック・ペラン)のもとに母の訃報が届く。母の葬儀に出席したピエールの元に、子供の頃、寄宿舎で一緒に過ごしたぺピノが尋ねてきて、その当時、彼らの舎監であった音楽教師の日記を渡した。『池の底』と呼ばれたその寄宿舎は、問題児が集まる寄宿舎だった。子供たちに容赦なく体罰を与える校長、その校長に服従する教師たちの合言葉は『やられたらやり返せ』だった。そのような『池の底』に赴任してきた音楽教師マチュー（ジェラール・ジュニョ）は、赴任当日から、すさんだ寄宿舎生活と子供たちの姿をまざまざと見せつけられた。しかし、子供たちに書いてもらった将来の夢を読んだ時、どの子供たちも将来に子供らしい夢を持っていることを感じ、何かできることはないかと考え始めた。音楽教師であるマチューは自ら作った曲をみんなで歌う合唱団を作ろうと努力を始めた。そんな時、一番の問題児、ピエール（ジャン＝バティスト・モニエ）の歌声が美しいボーイソプラノであることに気が付く。上手く行き始めた矢先に、更生施設から、非常に扱いの難しい少年が送られてくる・・・。様々な痛みと、傷ついた心をもつ少年達を描きつつ、徐々に、歌うことで自信や希望を見出していく子供たちの姿、その透き通った声を聞き、今までいた教師達の心もまた代わっていく。そんな感動的な誰でもが感動するストーリーの映画となっています。『ニューシネマ・パラダイス』のジャック・ペランが制作も担当し、あらたな感動的作品を作り上げました。息子のマクサンス・ペラン　もとっても愛くるしく映画デビューしています。この映画はフランスで、『アメリ』の興行記録を抜いて、トップとなった映画です。万人に愛される映画ですね。天使の歌声も充分に楽しむことができ、とっても気持ちが暖かくなる映画です。ぜひご覧になってみてください。監督　クリフトフ・バラティエ出演　ジェラール・ジュニョ　ジャン＝バティスト・モニエ　ジャック・ペラン　マクサンス・ペラン

  2006.01.25

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  英雄／Hero　2002年　中国・香港作品

  「西の『マトリックス』、東の『ＨＥＲＯ』」と並び賞されるという英雄／Heroを見ました。スタッフが素晴らしく、中国のチャン・イーモウ監督　日本からは衣裳のワダ・エミそして撮影監督にはクリストファー・ドイル（ウォン・カ－ウァイ監督作品で著名な）特撮では『マトリックス』のＣＧチームが参加しているそうです。中国から世界へ発信したエンターテイメントといわれるだけあって、非常に面白く、また、深い内容の映画でした。紀元前２００年、後に秦の始皇帝と呼ばれることになる秦王は、戦乱期にあって、7つの国を治めようとする実力派の王であったが、当然、敵対する立場から、彼を狙う刺客は中国全土に多くいた。その中でも、秦王を恐れさせる3名の刺客を打ったという「無名（ウーミン）」（ジェット・リー）という男が秦王のもとにやってきた。3名の剣を持つ無名に話を聞く為に秦王は、無名を３０歩の距離に招き入れる。幼い頃に孤児となった無名は、十歩以内であれば必ず相手を倒すという必殺の技を持っていた。無名は静に語り始める。始めの刺客は長空（ドニ－・イェン）、一騎打ちは、長い精神的な戦いであったと告げる。その戦い振りを聞いた秦王は無名をあと１０歩近づけることを許す。次の残剣（トニー・レオン）と飛雪（マギー・チャン）をどのように討ったのかを語るようにと秦王は、無名を促す。無名が話した内容に秦王は納得をしなかった。なぜなら恋人同士であった、残剣と飛雪の互いの嫉妬を利用したというが、秦王は、一度残剣に襲われたことがあり、その時、秦王が受けた残剣の印象とあまりに違う話だったからだ。「流石に秦王」と、無名は新たに真実を話し始める。二転三転とする真実は非常に面白く、そして、真の意味での人間の心を表し、流石にアジアならではの英雄を現してくれました。日本人の私には非常にフィットする内容でした。アジアならではの哲学を背景にした西洋的英雄観ではありえない新しい英雄の誕生というところでしょうか。西洋で評価されたのも頷けます。映像やCGもなかなか楽しませてもらいました。花様年華のトニー・レオン　マギー・チャンが恋人同士の刺客で、男女の深い愛をよく演じてくれてよかったです。話のことに色の違う衣裳が非常に印象的。ワダ・エミさんの衣裳は美しいです。チャン・ツィイーはまだこの映画では、脇役で、幼さを残していましたが、今は立派に主役をこなす女優となりました。監督　チャン・イーモウ出演　トニー・レオン チアン・ウェン マギー・チャン ジェット・リー チャン・ツィイー

  2006.01.23

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  花様年華

  とっても美しいタイトルですね。この映画はウォン・カーウァイ監督の「２０４６」と対のような映画なのです。60年代の香港が舞台となっており、ちょっとレトロなノスタルジックな雰囲気をかもし出しながら、非常にセンスよく、あくまでも大人の感覚でお話が進みます。セリフの少ない、静かな映像とストーリー。この静けさに惹かれるのか、私はウォン・カーウァイ監督の映像に、どうやらほれ込んでしまったようです。商社の秘書をしているチャン夫婦（マギー･チャン）と新聞社に勤めるチャウ夫婦（トニー･レオン）がそれぞれ隣同士に越してきた。2組は共働きの子供のいない夫婦であった。普通の隣人としての付き合いをしている中で、どこかお互いに心惹かれるものがあった。2人のそれぞれの夫婦関係は良好ではなかった。相手との生活はすれ違うことが多く、どこか冷めた関係だった。何かがおかしいと感じながら、確信が持てないでいたとき、取り残されたチャンとチャウはお互いの孤独を埋めるために一緒に食事をした。しかし会話の中で、お互いの相手同士が実は不倫関係であったことがはっきりとわかってしまう。その事実を受け止める2人。2人の関係の始まりは互いの孤独だったが、付き合っていくうちにお互いの気持ちは変化し、はっきりとお互いを求めるようになる。しかし、チャウに惹かれながらも第一線を超えようとしないチャンの心の揺らぎがよくわかったチャウは、シンガポールへの旅立ちを決意する。彼女は一度はシンガポールまで行くがやはりチャウに会わずに帰ってしまう。最後まで抑制された成就しない恋。60年代の既婚者同士の恋という、まだまだ、女性が大胆に離婚したり、一人で生きるということに抵抗感があった時代、そんな時代背景をも表現したかった、とウォン・カーウァイ監督は語っています。ワンシーン・ワンシーン変わるちょっと衿の高いチャイナドレスがとても美しく魅力的、絵になるカットとなっています。そしてふんだんにつかわれる雨。だけどちょっと乾いているような大陸的な雨は日本の雨のシーンとは微妙に異なりますが、大人の恋の雰囲気をかもし出しています。この映画、2000年カンヌ国際映画祭　主演男優賞（トニー・レオン）を取り、2000年台湾金馬奨　主演女優賞（マギー・チャン）衣装デザイン賞（ウィリアム・チョン）、撮影賞（クリストファー・ドイル、リー・ピン ピン）を取っているのですね。よく出来た映画だと思います。ウォン・カーウァイ監督は、日本の映画もきっと好きなのではないでしょうか。日本的な感覚、抑制された美や静けさをよく理解し、かなり感化されているのではないかと思います。またこの「花様年華」を見ると、「2046」がよく理解できるのですね。私は順番が逆になりましたが、もしまだ見てない人がいたら、「花様年華」を見てから「2046」がいいと思います。私は結構、この二作が好きです。恋の物語としては愛の神　エロスの『仕立て屋の恋』と並んでなかなか心に残る名作だと思いますよ！ぜひご覧になってみてください。監督：ウォン・カーウァイ　出演：トニー・レオン　マギー・チャン　レベッカ・パン　　

  2006.01.16

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  映画「トニー　滝谷」

  宮沢りえの印象と、村上春樹の原作と知って、ちょっと気になっていた作品です。非常に抑制されたセンスのよい映像は村上春樹的世界をよく表現していました。音楽は坂本龍一。映像にピッタリのピアノの音です。監督は市川準さん。｢竜馬の妻とその夫と愛人｣の監督ですが、彼はこの作品ではとんねるずの木梨憲武を出演させていましたが、今回はイッセイ尾形が、主人公のトニー滝谷および父親を演じました。非常にうまいですね。宮沢りえも二役演じ、とっても似合っていました。ベストな配役だと想います。ジャズ・ミュージシャンだった父親に、トニーと名付けられた少年は、生後数日で、母を亡くし、孤独な少年時代をすごした。そんな環境は、彼にとっては生まれつきの環境であったから、彼は自分を孤独と自覚する事がなかった。機械を正確に表現できる彼の才能は、イラストレーターとして開花したが、その無機質な絵から伝わってくる感情やこころが何も無かった。しかしそんな彼のイラストは、それなりに、現代の物質主義の世界では評価され、仕事は順調に進んでいた。そんなトニーのもとに、一人の女性がイラストを取りに来た。それはトニーの孤独な暮らしが変わり始める兆しだった。とても自然に服を着こなす彼女に心惹かれ、３度目には彼女をお昼に誘い、5度目に会ったときにはトニーは結婚を申し込んでいた。彼女の存在によって、初めて自分の孤独だった人生がわかったトニーは、彼女にそのことを淡々と語った。結婚生活はとても幸福に順調に進んでいた。手に入れたものが大きいほど、失った時の孤独を考えるだけで彼は恐ろしかった。もう、トニーは一人で暮らすことが考えられなくなっていた。しかし一つだけ気になることは、彼女が洋服を買いすぎることだった。自分に欠けているものを埋めるために洋服を買い続ける彼女のコレクションは、次々に増し、ついに洋服部屋が溢れるくらいとなっていた。そんな彼女に、ある日、トニーは服を買いすぎることを伝えた。彼女は服を買うのを抑制しようとするが、新しく買った服を返しに行った帰りに彼女は事故にあってしまう。一人で暮らしつづけた時よりも幸せを知っただけもっと孤独になったトニーは、妻と同じサイズのアシスタントを募集し、妻の服を毎日着て仕事をしてもらうことを思いついた。何人か応募に来た中に最もサイズのあった一人の女性を選んだが、彼女に服を着てもらおうと試着している最中に、妻のクローゼットでその女性は突然悲しみに襲われ泣き出してしまう・・・。彼女が帰ったあと、しばらく、妻の服を眺めていたトニーは、服は妻の影に過ぎないことをわかり、その服を美しく輝かせていた、妻の存在を失ってしまったことを忘れようとするために彼女をアシスタントとして雇うことは辞めにして、妻の服を全て処分してしまうのだった・・・。抑制された、無機質な映像、演技、相対する洋服や、センスのいい家具や家や車、そう言った物質に囲まれた現代の暮しの空虚さが、よく現れています。映画としての印象も、題材も非常にマッチして、独特な現代の虚しさを表現して、非常に印象的な映画となりました。私などは、同時代に生きて、かつて、物質至上主義のその美しい服たちの世界で仕事をし、生きてきたので、非常に共感できるところがあります。孤独なんですよね。物の世界は人間の真実が見えない世界なんだと、この映画をみて改めて感じました。このように映像として、作品としてみせられると、自分の日常として暮らしてきた生活の虚しさが現れ出て、見事だなと思いました。映画の最後は原作にはないストーリ展開となっているようですが、ほんの少しの希望が感じられました。前回の　｢竜馬の妻とその夫と愛人｣とは全く印象の違う映画ですが、なかなか面白いです。この映画は第57回ロカルノ国際映画祭で審査員特別賞、国際批評家連盟賞、ヤング審査員賞受賞しました。

  2006.01.14

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  映画「フォーチュン・クッキー」

  久しぶりのコメディー･映画。なかなか楽しめました。身体が入れ替わるという、良くあるパターンなんだけど、この親子2人の入れ替わりの演技はたいしたもの。すっごく笑える映画です。精神科医のシングルマザー、テスとロック狂いの娘アンナは毎日喧嘩ばかりを繰り返す。優等生的テスと学校ではいつも問題児のアンナは、お互い、どうしても理解し合えないのだった。テスはもうじき再婚する予定で、結婚式前夜のリハーサルの日にアンナに介添え役を頼んでいた。しかしアンナはその日にロックコンテストの出場が決まってしまった。アンナはどうしてもコンテストに出たいという。そんな2人は、行きつけの中華レストランで大喧嘩を始める。喧嘩している2人を見た中華レストランのマダムの母親は、特効薬のおみくじ入りクッキーを2人に渡す。そのクッキーを食べたとたんに大地震が起こったが、2人以外はなんとも感じていないようだった。その晩帰ってベッドに入って眠った途端に2人の身体は入れ替わってしまった。朝、目覚めた2人は大騒ぎ、しかしどうにもならずに互いに入れ替わったままで、それぞれ学校と職場に赴く。なんといってもクーキーのおみくじには、互いに理解しあい、無償の愛を与えることで元通りになると書いてあり、その通りにしないと身体は入れ替わらないのだからさあ大変。このままでは一生変われないかと2人はがっくりする。しかも明日はテスの結婚式、１５才で結婚したくないと嘆くアンナ。一方アンナに入れ替わったテスは、ロックコンテストに出場しなければならず、いよいよ本番がきてもギターが弾けるはずもなかった・・・とにかく、繰り返しのどたばたですがとっても楽しめます。2人のめりはりの利いた演技が、非常に自然でいいです。アンナ演ずるリンゼー・ローハンもとってもキュートだし、テス役のジェーミー・リー･カーティスも上手。流れるロックも決まっていて、非常にカッコいいんです。特にテスに入れ替わったアンナがギターを弾く様がなんとも言えずカッコいい！また、テスの父親のとぼけた演技とテスの婚約者のおろおろぶり、弟役の憎たらしさががなんとも言えず、上手く脇を固めてます。（笑）最後まで楽しく笑わせてくれる久しぶりのコメディー映画でした。ちょっと落ち込んだ日にはこんな映画が優しいかもしれません。2003年（アメリカ）監督：マーク・ウォーターズ出演：ジェーミー・リー･カーティス　リンゼー・ローハン　マーク･ハーモン

  2006.01.11

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